「親父……なんで、アンタが?しかもその姿は……」
「遅くなってすまねェな、エース。」
マグサリオンとエース、その二人の間を割るように現れたのは金髪の巨漢、エドワード・ニューゲート。伝説の海賊であり、通り名は白ひげと呼ばれていた男。それを前にマグサリオンは傲岸に言い放つ。
「親父……か。息子の喧嘩に間を割ってくるとは、だいぶ恥知らずなようだな。」
「テメェッ!」
激昂し立ちあがろうとするエースだが、それを静止するように手を差し出す白ひげ。
「誰が息子のピンチを救ったらダメなんてルールを決めた?そんなのが嫌なら、この闘技場のルールでもそこらに出しておけ。無いなら誰だって無法地帯って思うのが普通だろうが、アホンダラが。」
「……ほう、口が回るようだな屑めが。」
「グララララ!返答が減らず口ってなら、特に俺と闘うことに異論はないって思って良いんだな?」
「構わん、やるならさっさと来い。」
「上等だァ、なら早速始めるぞォッ!」
瞬間、白ひげを中心に圧倒的な威圧が放たれた。覇王色の覇気といい、未だ謎の多い力であるが顕著な現象として発動者の威圧感に精神的に屈すれば気を失ってしまう。事実、周囲に漂う魂の多くが威圧感に敗北して色を失い、エースですら言葉一つ発せない状況となっていた。
だが、マグサリオンは……
「……弱者狩りの威圧で俺を試してるつもりか?舐めるな、この程度で俺を止めれると思うなァッ!」
常に受け続けてる威圧感を鼻で笑うようにそう言い放てば、地を蹴って距離を詰める。数mを光速で駆け、そして首狩りの一閃を放ち込む。加えてこの一撃は白ひげの隙を突いており、肉眼で認識して捉えるのは不可能だろう。
しかし、それを阻止するかのように白ひげの薙刀の穂先が中で激突した。刀身一瞬で黒くなり、マグサリオンの剣とぶつかる直前に黒いスパークが放射状に広がり威力が周囲を巻き込んでいく。その辺りの衝撃が周囲を巻き込み、エースも柱に掴まらなければ宙に放り出されるほどであった。
(見聞色であいつの剣筋を読み取り、武装と覇王を組み合わせ、そしてグラグラの実による振動攻撃か。親父の全盛期はロジャーと互角とは聞いてたが、これほどとは……)
「ヌゥゥゥゥゥッ!」
「ッ!」
激突無き鍔迫り合いが数秒続き、その果てにマグサリオンが宙を舞い背後にある壁面へと吹き飛んでいった。一方で白ひげはその直後にその反動によるものか、数歩後ろに下がっていた。その光景を見てエースは歓喜の声を上げる。
「親父が激突で勝ったか!」
「グラララ…….そう見えるだけだ、まだ勝負はついててねェ。」
「だけど、あいつが吹っ飛んだってならパワーなら親父が上ってことに……」
「違う、寧ろ逆だ。パワーで押し負けそうだったから振動でアイツの力を分散させて誤魔化してただけだ。」
「なッ……」
「しかも俺の一撃を致命傷を避ける為に、うまく直撃からズラしてやがった。あの一瞬で恐ろしい青二才だ。」
白ひげの返答を聞いて、エースは感嘆と戦慄を帯びた声を上げた。マグサリオンは白ひげと激突した際、白ひげから発した振動による影響で剣戟の衝撃が分散され、不安定な状態になったところを一撃が狙われたのだろう。裏を返せば白ひげが直接的なぶつかり合いを避けたことであり、エースからすれば信じられない光景である。
「あり得ねェ!親父より小さい上に、剣の才能が明らかにないあいつがどうやって親父より上のパワーを……」
「まあ、普通ならあり得ねェが少し見えた気はする。理屈は知らねェが、アイツは自分と他人を含めた殺意の量だけ強くなれるんだろう。」
「……は?」
「何せ鍔迫り合いしてる時、こっちが限界の限界をどれだけ出しても必ず上回ったパワーを出してたからな。だとしたら、そう言った力の出所があってもおかしくないだろう。」
淡々と推測を述べる白ひげに対し、唖然とした表情を浮かべるエース。たった一度の接触でここまで考察できることに感心していたのかもしれないが、即座に頭を切り替えて言葉を返す。
「な、なるほどな……それなら確かにパワー面では不利かもしれねェ。だが、それはグラグラの力で分散して吹っ飛ばすことはできるんだろう?だったらそれを上手く活用して……」
「そのつもりだが、それも何処まで通用するか……」
「……どういうことだ、親父?」
「黙ってろ、来るぞ。」
その瞬間、崩壊の音とともに歩く男が聞こえる。音の元からマグサリオンが現れ、肩に剣を担ぎながらこちらへと迫ってくる。そして一定の距離を詰めれば、口を開いた。
「なるほど、振動で俺の攻撃をブラしてたか。」
「やはりアレだけじゃ傷一つ付かねェか。あの一瞬でよく、俺の攻撃を捌いたもんだ青二才。それで、テメェの攻撃力はこの場にある殺意全てを掻き集めて力に変換しているものというわけだな?」
「………『
「ッ!」
なんとマグサリオンは白ひげの問いに対して、態々自ら答えを示した。その光景にエースは驚きを隠せず、一方で白ひげは歩的な笑みを浮かべていた。
「ほォ、戒律と言ったか。つまり自分のルールということは、守らなきゃならん決まりがあるはずだ。そうだ、例えば『接触の際には必ず殺意が交わらねばいけない』とかな?それを破れば死ぬか、想像を超えた最悪の結末が待ってるとか、そんなところか?」
「………」
「なんだ、よ………それ?そんなの人としての生活なんぞ望めやしねェじゃねェか!」
「だろうな、まるで自らを殺す為にしか使われない剣として扱ってるみたいな戒律だ。で、黙ってるということは肯定と受け取っても良いよな?」
「好きにしろ、それで仮にこれが事実だとしてお前に何の関係がある。不憫だからやめるとでも?それとも殺意無く触れば容易く折れる塵だとでも思ったか?」
「グラララ!へそ曲がりが、んな訳ねェだろ。海賊の闘いは常に生き残りを賭けた殺し合いだ。危険な相手に殺意を封じて闘うなんぞ、そんな器用な真似は出来ねェよ。聖者でも相手してるつもりかアホンダラ。」
白ひげは己の獲物『むら雲切り』を旋回させ、そして勢いよく地面に叩きつけた。局所的な地震が発生し、再び覇王色の覇気を撒き散らしながら仁王立ちする。
「ハナッたれの若造の癖に、一丁前に格好つけるじゃねェか。常に殺し合いに身を投じようとする姿勢、俺は気に入ったぜ?平穏な日常や安心な環境、そういうのはもう望めねェだろうが承知の上なんだろう?」
「無論だ、俺にそう言ったのは不要だ。誰であろうと必ず殺す、例外なく呑み込んでくれる。」
「グラララララララ!面白ェ……青二才が、やってみろォッ!」
刹那、先に動いたのは白ひげだった。その巨大からは似合わない速度、エースですら初動すら反応することができない。まさに光を凌駕せし速度、超光速疾走からの壊天。即ち震災鉄拳が繰り出された。音を壊し、振動を砕く一撃。加えてエースと同様にマグサリオンの退路を見聞色で予め観測しており、安易な回避は叶わないだろう。
「笑止。」
白ひげの予測通り、マグサリオンは正面から迫る鉄拳を正面からズレた位置に移動して回避をしようとする。当然、白ひげはその退路を塞ぐようなポジショニングの動きをする。重心移動によって射程を僅かに伸ばし、むら雲切りを横に添えることで逆方向の退路を断つ。海賊として数多の戦闘によって積み重ねた経験による創意工夫。それらの組み合わせがマグサリオンの退路を塞ぎ、的確な一撃を直撃させるだろう。
しかし、それに対してマグサリオンがとった行動は出鱈目そのもの。剣を肩に担いだかと思えば、そのまま白ひげの股を潜り抜けるような形で乱雑なスライディングを行って鉄拳の直撃を回避した。そして、そのまま上体逸らしと同時に全力のフルスイング。宛ら金属バットを振り回す、ならず者のような所作だった。熟練の剣士が見れば失笑は避けられないような立ち回りだったが、マグサリオンからすれば関係の無い話。本人からすれば、どんな手段でも己の手で確かに殺すことができればそれでいいのだから。
「ッ!グラララララ!とんでもねェ真似するなこの野郎!」
下方から迫る矛先を、直感でむら雲切りの肢で防いだ。そして笑みを浮かべたまま、すれ違ったマグサリオンを追う形で再び疾走。今度は、むら雲切りに振動を纏わせてそれをマグサリオンへと直撃せんと迫りくる。
それを振り返りと同時に漆黒の剣閃が放たれ、互いに矛先がぶつかり合って衝撃が放射状に分散する。しかしそれだけで終わらず、白ひげとマグサリオンは何度もそれを繰り返す。地上で、時には空中で極限のぶつかり合いが広げられ、それは宛ら宇宙空間に浮かぶ星々の爆発と死滅を連想させる光景であった。それを第三者として見届けていたエースは、唖然とした表情で見ているしかなかった。
(ほとんど見えねェ……マグサリオンもそうだが、親父も早すぎるだろう……あの速度でパワーを減少させないどころか、どんどん上がってきている。マグサリオンが隙をついて攻撃するも、親父が見聞で先読みしてはぶつかり合いの繰り返し。単純だからこそ、互いに突破口を見つけるのが難しいこう着状態化か……しかし、これが親父の全盛期とはな。って、というか光速で動ける黄猿より早くねェか!?)
最早何回繰り返されたかわからない衝突の果てに、マグサリオンと白ひげが再び激しい鍔迫り合いした。視線が交差し、殺意の帯びた眼光を激突させながら両者が口を開く。
「グラララ!こんな激しいぶつかり合い、ロジャーの時以来だぜ。やるじゃねェか、下手っぴな剣でよくここまで食い下がるものだ。」
「食い下がる?そうか、お前にはそう感じるか。」
「……なんだと?」
「……なあ、おい貴様。罪人風情が“家族ごっこ”をして満足か?」
「ッ!?」
「過去の罪、過ちはどれだけ言い訳しても拭えるものではないだろうが間抜けが。」
刹那、下方から跳ね上がった漆黒に白ひげは呑まれてしまった。逆袈裟状に刻まれる斬撃痕、激しい血飛沫が地面を朱色に染め上げる。
マグサリオンの攻撃を未来から予測し、捌き続けた白ひげの見聞色が、この瞬間まるで捕捉することができなかったのだ。
「グゥッ!」
「親父ィィイッ!?」
「狼狽えるんじゃあなィ!この程度かすり傷だアホンダラッ!」
駆け寄ろうとするエースを、白ひげは叱咤して止めた。仮にも父親として威厳を保ちつつ、荘厳な武将の如き笑みを浮かべながら。だがその反面、内心は混乱に満ちていた。
しかしマグサリオンが考える余裕も与えるはずもなく、空かさず追撃が正面から迫り来る。この一撃も見聞色で読み取ることは出来ず、咄嗟に正面にむら雲切りを翳して辛うじて防ぐことしかできなかった。反撃に転じる余裕もなく、今はひたすら防御することしかできない。その光景を嘲笑うようにマグサリオンが口を開く。
「お山の大将を気取ってた割には無様な姿だな、間抜け。瑕疵を晒してるからそうなる。」
「グラララ……跳ねっ返りやがって。だったら言ってみろよ、この俺の瑕疵とやらよ。」
「おうとも、言ってやる。なあ、偉大な親父殿とやらよ。家族にこだわるなら、何で“其処にいるバカ息子”と一緒に俺と戦わせてやらない?最初はともかく、そろそろ立ち上がるくらいの体力は回復しているだろう?」
「ッ!」
「………」
マグサリオンの指摘に最初に反応したのは、エースだった。白ひげは険しい表情をしながら攻撃を防ぎ続ける。マグサリオンはそのまま、力を込めて白ひげを押し続けつつ話を続ける。
「こいつ程の実力者を育て上げる以上、親の七光りとして甘やかして堕落させるような無能は晒さんだろう。
ならば察するに、其処のバカ息子が過去に無茶をやらかしてそれが原因で取りこぼしたことがあるんだろう?そしてここでも、また同じ過ちを繰り返さない為に、戦線復帰をさせないようにお前は立ち回ってるわけだ。まあ、個人として俺の武力に関心を抱いてる部分も多分にあるのだろうがな。」
「……ヘッ、好き勝手言いやがって。」
「言っただろう、過去はどう足掻いても拭えんとな。家族という聞こえ心地のいい言葉を盾に、馬鹿息子の尻拭いと自分の贖罪を都合良く収めようとするのは厚顔に程があるだろう。緩い、甘い、欠伸が出るぞ老害が。そんなブレた無能に俺が負けるわけがない。」
「親父………」
マグサリオンの指摘に、白ひげは反論することはなかった。皮肉なことに、無言を貫くことが事実上の肯定に繋がるという事象が今度は彼に返ってきたのだ。
エースも内心は憤怒の炎で燃えているが、マグサリオンの指摘が正しいのは認めざるを得ない事と、今自分が戦線に参加したところで却って足手まといになる事が嫌となる程自覚している。ならば、今自分にできる事を考える……そして決意をすれば、起き上がりつつ声を張り上げた。
「親父ィッ!」
「ッ!エース……」
「……」
エースの声に白ひげは驚きの表情を浮かべる。その一方でマグサリオンは無表情を貫くが、その間を割るような真似はせず、ただ二人の行く末を見守っていた。
「ハァ………ハァ……俺の失態の尻拭いとか、後悔からの贖罪とか、色々あるんだろうけどよ……もうそういう難しいのはいいんだよ!俺をあの戦争で救おうとしてくれて、息子として愛してくれただけでも満足なんだ俺は!」
「……」
「だから……ハァ………白ひげの、世界最強の男の全力を俺に見せてくれよォーッ!!」
「ウォォオオオオオアアアーーッ!!!」
瞬間、白ひげは世界が割れるほどの咆哮を挙げた。それと同時にむら雲切りを上空へと勢いよく投げ飛ばす。その影響でマグサリオンも数歩分吹き飛ぶ。その間に白ひげは大気を掴み、まるでカーテンをちゃぶ台返しするような所作でひっくり返した。それに連動したかのように、マグサリオンも宙に放り込まれる。唐突な出来事に、マグサリオンは一瞬だけ混乱した。
「ヌォオオオオオオオッ!!」
「グオォォォォッ!?」
興奮状態の偶然の産物か、あるいは歴戦による経験則か。そのどちらにせよ、その一瞬を狙い穿つように戻ってきたむら雲切りを掴み、即座に振動、武装色、覇王色を纏った刺突を放ち込んだ。流石のマグサリオンもこれには溜まらず、苦悶の声を上げながら遥か後方に吹き飛び、苦悶の声を出しながら激突した。あまりの出来事、それも一瞬だった為、誰も声を出すことができず静寂を齎した。そしてそれを最初に途絶えさせたのは、肩で呼吸をしている白ひげだった。
「ハァ………礼を言うぜ、エース。どうやら俺も、余計な事を考えながら戦闘してたようだ。だが、今はお前のおかげで吹っ切れることが出来た。」
「は、ははは……水臭いこと言うんじゃねェよ、親父。アンタの息子だ、このくらい役に立ちてェと思うもんだ。」
「グラララ、はなったれの癖に一丁前のことを言いやがって……立派になったな。」
「……茶番は終わったか?」
親子同士の微笑ましい会話、それを切り捨てるような言葉が間を裂いた。おぼつかない足取りながらも、全てを殺さんと途切れることのない殺意の視線が二人を穿つ。
「コイツ、親父の本気を受けながらまだ死んでなかったのかよ!?」
「……確かな手応えはあったと思ったが、覚醒した
「なんか分かったのか、親父?」
「いや、何でもねェ。」
エースの問いかけを振り切るように、白ひげは再びマグサリオンへと接近した。そして互いの獲物がギリギリ届く間合いまで詰めれば、白ひげが先に言葉を発する。
「悪いな、余計な不純物を抱えたまま戦闘しちまってよ。」
「俺には関係ないことだ、抱えていようが何だろうがお前を殺すことには変わりないからな。」
「ヘッ、素直じゃねェな。まあいい、俺の瑕疵を指摘した返しに俺からの返答も一つ聞いてくれよ。」
「……言ってみろよ、聞いてやる。」
マグサリオンの返答を堪えるように、白ひげは周囲に浮かぶ数多の視線を指差すようにむら雲切りを宙に掲げながら言い放った。
「“コイツら”はお前が生み出してるんだろう?」
「……何故そう思った?」
「お前の戒律が殺す事に長けてるのとはよく分かった。そして、その果てに全てを殺す覚悟を抱くのも確かなのだろうよ。だがな、それが実現した時、お前という剣に価値はあるのか?もう誰も殺せる相手が居ないと言うのによ?」
「………」
「もしお前に自殺の趣味があるなら、最終的にお前を殺して完全な無の世界の完成だ。だが、そうじゃないと言うなら、何処かから他人を生み出すシステムを設けるのは自然な事だろうよ。」
「その通りだ、俺に自滅の趣味はない。故に生まれ出てもらうまでだ、俺の殺意に触れた俺の民に。」
「グララララ!王のような真似をしやがって、慕われはしてもそう言う性分じゃないだろうに。」
「貴様に言われるまでもない、自覚している。それで、確認は終わりか?」
「あァ、ケジメは付けた。ならそろそろケリを付けるか。いくぞ青二才ッ!」
「こい老害、殺してくれるッ!」
マグサリオンと白ひげは同時に地を蹴り、そして同時に闘技場の中心で激突した。金属音とともに周囲の物質が崩壊し、その衝撃音は空中、地面など数多の方向から聞こえてくる。それをエースはただ見守るしかなかった。
「ヌァアッ!」
刃をぶつかり合い、白ひげが数歩下がれば片手で大気をつかんで再び空中へ放り出そうとした。そして今度は武装と覇王、振動を纏った鉄拳を繰り出そうと目論む。
「甘い」
しかし、先程も似た戦法で損傷を負った以上は二の足を踏まないよう立ち回るのがマグサリオン。白ひげが掴んだ大気に向けて、剣を振り切る。すると彼我の間にあるはずの大気が空間ごと消失し、その分だけ白ひげがマグサリオンへと近づいたのだった。
「な、グウッ!?」
そしてその現象が起きた動揺の隙を突かれ、身体の中心に刺突を繰り出された。全身に激痛が走り、腹部から爆発したような血が噴出し、口から血が爛れ落ちる。
「オォォォォォォォッッ!!」
しかし、白ひげは足掻くようにマグサリオンの頭部を掴みそのまま地面に武装、覇王色の覇気、そして渾身の振動を纏わせて地面へと叩きつけた。それは局所的な世界崩壊を連想させる一撃、それら全てがマグサリオン個人へと集中した攻撃だった。
激しい土煙が舞い、それが視界を覆う。暫くして晴れれば、闘技場の中心にはマグサリオンが地に倒れ、白ひげが立ち尽くした姿がそこにあった。
「親父ィ!親父が勝ったんだな?」
歓喜の声を纏わせながら、エースはその場に向かって駆け寄った。しかし、暫くしたらマグサリオンがゆっくりと立ち上がり、ボソリと呟く。
「大した奴だ、死ぬ間際にあんなカウンターを繰り出すなんてな。こういうのを、立ち往生と言うんだったか?」
「……何?」
「逃げ傷一つなく、たったまま死ぬとか本当に人間かよ?とんだ頑固親父だな。」
「お……や、じ……」
マグサリオンとエース、この二人が見上げてたのはたったまま命を失った白ひげ、エドワード・ニューゲートの亡骸だった。マグサリオンへのカウンターが最後の気力であり、仮にマグサリオンがそれで死んだとしても、変わらない結末だっただろう。もっとも、マグサリオンからすればまるで勝ち逃げされたような気分、その不快さを吐き捨てるように言い放つ。
「だが言ってたよな?海賊とは生き残りをかけた戦いが常、とな。ならば、その理屈に倣って俺の勝ちだ。何か文句あるか、馬鹿息子?」
「あァ……無ェよ。この勝負、お前の勝ちだ。親父だって生きてたらそう言ってるよ。」
「ならば、これで終わりだ。それはお前の好きに扱え。」
「ああ、じゃあな。」
そう言い放てば、マグサリオンは二人に背を向けて何処かへと立ち去っていった。それを見届けることもせず、エースは自信と白ひげを中心に炎を発生させる。まるでそれは、火葬のように穏やかながらも苛烈な熱量を感じさせる。
「親父……やっぱ俺は、アンタの息子だよ。だけどさ、一つ付き合ってくれ。今度は俺が、アンタに自慢の息子としての姿を見せてェ。その為に、俺はロジャーに喧嘩を売る。あの面に火拳をぶちかまして吠え面かかしてやるんだ。」
「………」
「はは、アンタならロジャーの首はそこまで安くないアホンダラって言うかな?だけど、俺は必ずやるぜ。これもまた、俺のケジメみたいなものだからよ。だから……これからも頼むぜ、親父。」
その言葉を最後に、白ひげとエースの姿が闘技場から消失していった。それを背中腰にチラリとマグサリオンが見れば、ポツリと呟いた。
「アンタが欲しかったのは、ああいう普通の人間関係ってものだったんだろう。なぁ、兄者?」
ちょっとオチが微妙になってしまったかもしれませんね……