マグサリオンの殺戮道場   作:ヘル・レーベンシュタイン

6 / 42
今回はlightユーザーならタイトルの時点で大体察しがつくかなと思います


第六陣Ⅰ 星を掲げる者

 

 

 

また、マグサリオンは戦地へと出る。今度の相手は誰だろうか、何処となくもはや先にそう思うような表情をしている気がする。

すると、突如膨大な熱量を感じ取った。それは前に交戦した火拳のエース、それに匹敵する程の密度だ。そして現れたのは腰まで伸びた黒髪の男性…‥否、男性型のアンドロイドと言うべきだろうか。なぜなら、確かに血肉はあるのかもしれないが、体内から機械音が流れているのをマグサリオンは聴き逃さなかった。それを知ってか知らずか、どちらにせよ気兼ねないような雰囲気を出しながらその者はマグサリオンへと問いかける。

 

「察するに、どうやらかなり前にカーネイジがこちらに参じたようだな。しかし、お前がアレを始末したと言ったところか。」

「だとしたら?敵討ちでもする気かよ。飼い主ならば、少しは飼い犬の躾くらいしておくこだったな。」

「これはこれは、実に耳が痛い言葉だな。しかし、これでも己は当人達の自由は認めているつもりなのでな。よく言うだろう、自由に責任はつきものだろう?ゆえに、自由に動いた結果は本人の責任だ。死ねばそれまでの話である。」

「ふん、違いないが……それで、それだけを話すためにここに来たのか?」

 

突き放す様に、マグサリオンは鼻を鳴らした様な口調でそう言い放つ。すると、相手は笑みを浮かべながら否と告げる。そして両手を広げながら応えた。その姿はさながら、さながら、星を掲げる者(スフィアライザー)というべきだろうか。

 

「そんな訳あるまい、己は己の目的があってこの場へ参じた。それは即ち、我が野望たる聖戦をもう一度、その果てに大和を再び地上へと下ろすこと。それこそ我が不変の使命!その為に、いかなる戦場へと駆け出すことは厭わない。」

「ほう……」

「そういうわけだ、故に付き合ってもらうぞ剣士殿よ。我が名はカグツチ、我が星の輝きを以って道を開かせてもらおう。聖戦の成就のためにッ!」

「良いだろう、それをやりたいというならば成してみるが良い。もっとも、ここに来た以上は俺が貴様を殺すがな。」

 

そう言い放つと、マグサリオンは切っ先をカグツチに。そしてカグツチは燃える掌をマグサリオンへと向けた。それを開戦の号砲と捉えたかの様に、互いに同時に攻撃を開始した。

 

「オォォォォォッ!」

超新星(Metalnove)

 

大和創世、(S h i n i n g)日はまた昇る。希望の光は不滅なり(S p h e r e r i s e r)

 

禍つ黒閃と揺れる煉獄。カグツチが己が星の解放と同時に灼熱の炎が放射状に放たれる。マグサリオンは陽炎を放つ炎熱ごと斬り裂かれるが、それごと塗り替える様に炎の壁が視界を覆う。水ならぬ炎を斬り裂くという非常識なマグサリオンの剣技だが、カグツチの炎も人の常識を既に超えている。

最低でも数億度を超えており、そのまま放っておけば、専門家ですらこの段階では定義できないほどの炎熱に到達していてもおかしくないだろう。

しかし、それでもマグサリオンの進撃は止まらない。そもそもかつての強敵、バフラヴァーンから炎熱を交えた戦闘は既に経験済みであり、数億度では止まるわけもなかった。よって次第に、時間を掛ければカグツチの喉元に剣先を突きつけることは決して不可能ではない。それを証明する様に、後数歩でマグサリオンの剣の間合いへと入り込む。よってカグツチなんぞ恐るるに足らぬ、とはならなかった。

 

「知っておる、この程度では英雄もお前は止まらぬのだろう。その対策を、聖戦を控えてた己に対策がないとでも思ったか?」

「ッ!?」

 

炎の壁を斬り裂き、それと同時に眉間に向けて放った刺突が空を穿つ。そして同時にマグサリオンの側頭部に走る衝撃と熱。それはカグツチの鉄拳であり、拳は炎を纏っていた。あり得ない話である。マグサリオンの刺突は光をも凌駕し、加えて炎の海の中で確かな隙をついたというのに。しかしそれすらも、高練度の演算と根性を以ってして見切るのが光の使徒たるカグツチだ。その直後に返しの刃が放たれるも、それすらも全て見切って回避、悉くが被弾しない。

 

「どうした、まさかこんなものではあるまい?己はまだまだやれるぞ?」

 

光速機動する生体兵器という下手な冗談の様な存在、生前にカグツチと交戦したかの冥王が見れば驚愕するだろう。なぜなら、生前においてカグツチは姫を守護する騎士の如く、一定の場所から動かずに迎撃しながら戦闘していたのだから。しかし、仇敵たる冥王はカグツチからすればあくまでも本来はイレギュラーな存在。本来の来たる聖戦の相手はクリストファー・ヴァルゼライドなのだから。かの英雄は大量破壊兵器は当然ながら、拳の極みたる拳法家すら気合と根性、そして努力を極めて蹂躙する不滅の光。即ちヒットアンドアウェイなど、絶えず動き続ける高速機動戦闘を前提としなければ並大抵の攻撃は当たらない。故に、カグツチがそれを想定するのは本人からすれば当たり前の話である。現世において動かなかったのは、冥王をある場所に到達させてはいけなかったし、下手に動けば最悪な毒の海に飛び込むに等しかったからである。

しかし、今回の戦闘ではそのような縛りはない。故にカグツチは動き続ける、距離を取ったり敢えて詰めて殴り込みに行ったり数多の戦法を行使していく。

 

「やはり、己の見込み通りお前の武は究極の領域にまで達している。かの英雄に匹敵するほどにな。」

「だから?」

「故に、己の星がどこまでの高みへと至れるか俄然興味が湧いた。ならばこそ、付き合ってもらうぞ凶剣よ!その禍つ剣へ星を掲げん!」

「やってみろ、撃ち落としてくれる。」

「ならば遠慮なく!」

 

有利なのはカグツチ、ボロボロで不利なのはマグサリオン。しかしその向き合う姿勢はまるで逆、それは即ち両者とも、状況だけで相手を見ていない証拠である。まだ巻き返すかもしれない、既に布石を振られてるかもしれない。常に油断なく状況を見据える。そんな姿勢を露わにしていた。

そしてそれを踏まえた上で、カグツチは敢えて大雑把に攻めることを選択した。

 

創生・純粋水爆星辰光(フュージョン・ハイドロリアクター)

 

消し飛べィ!」

 

カグツチが手をマグサリオンへと翳せば、膨大な熱量が集まり瞬間的な水爆が出来上がる。それは放射能を発生させない清潔な虐殺の炎であり、それを一瞬にしてマグサリオンの懐へと入り込み同時に躊躇いなく爆発させる。そんなことをすれば自分すら巻き込まれかねないというのに。

その大熱量は間違いなく闘技場全域を蒸発させ、この戦闘を見ている数多の存在の何人かを殺しかねない。

 

「………なんなんだ今のは?」

 

然し、それを一番直撃したであろうマグサリオンは未だ無傷。むしろ先程の虚をついたカウンターの方がよほど痛手だったと言わんばかりに。故にお返しと言わんばかりの一閃が放たれるが、カグツチはそれをバックステップで回避。

そして今度は、天上に輝く星すらも我が手の内にと示す様に片手を上空へ掲げる。

 

「やはりこの程度では止まらぬか、ならばこれはどうかな?

 

重圧・(ベクター・)流星群爆縮燃焼(レーザーインプロージョン)

 

すると今度は、マグサリオンの退路を断つ様に彼の周囲に無数の粉塵爆発が引き起こる。一つ一つの威力自体は先程の一撃の方が上だが、その数自体があまりに膨大。その炎熱爆発の数は不可思議の領域に達しており、人の手に負える数ではないのは、文字通り火を見るより明らかである。

だが、それでもマグサリオンは正面突破をする。その一つ一つの爆破に剣筋を立てて斬り伏せる。不可能?困難?それが止まったり諦めたりする理由になんてならない。除雪車の如く前進し続ける、那由多だろうが無量大数に至ろうがそこに確かな限界があるのならば、そこに至るまで繰り返すのみであると。それを見てカグツチは笑い声を上げながら、煙幕の彼方から再び水爆を放ち込む。

 

「ハハハハハハッ!素晴らしい、それこそがお前の武か凶剣よ。しかし解せぬな、何故この民草共を放置する?ただ人とは生きて死ぬのが当たり前だから、勝手に生かすことこそが正しいと?それは些か、無責任と己は思うぞ。」

「なんだ、俺のやり方にケチを付ける気かよお前。」

 

水爆と爆破を一刀の元に斬り伏せ、文字通り道を開いて互いに視線を交える。そしてカグツチは宣誓するように話を続ける。

 

「自由と悪性がセットになるのは今更故に、論ずるに値しないのは当然だ。だが、それを認知して放置するか手を施すかで大きな差だろうよ。要はお前がその気になれば巨悪を見つけ、裁きを下す様な天下に出来るはずなのにしないのは何故だ?可笑しいだろう、往けるものは往くべきなのだから。お前の名を聞けば悪党共を震え上がらせ、安易な悪に陥らない様にすべきだろうに。」

「お前の大好きな英雄と同一視してるんじゃあない。」

 

カグツチの問いかけを、まるで無価値と断ずる様に食い気味にマグサリオンは否定した。

 

「恐怖の圧政の為に俺の名を屑共に轟かせ、その結果悪党共を震え上がらせろ?何の冗談だ、笑わせるな。そもそも俺は面倒な頂点に興味無いし、そんな義務なんぞ知らん。そんなものは俺の求む不変では無い。」

「ほう、不変とな?」

「その通り、正義とは立場次第で変わるもの。であればまた、恐怖のあり方というのも変わってくるだろう。秩序による恐怖の圧政、武力による恐怖の圧政……等とそんな曖昧なものに俺が成れとでも?誰が決めた、お前か?だとしたら、お前を殺すまでだ。」

「ふむ、なるほど……求めるものは不変故に、立場次第で変わる正義に寄り添いたく無いとな。だからこそ、無名にして無法なる存在でありたいと。良いだろう、理解したし納得もしよう。されどもやはり共感は出来ん。

何故ならば、それでも人とは正義無くして生きられぬ。正義無き力なんぞ、単なる暴走と何が違う!?ならばこそ、人は正義の方向性を定めるべきなのだ。」

 

瞬間、カグツチの放つエネルギーが炎とは異なるものを帯び始めた。マグサリオンは、カグツチが複数の能力を持ち合わせていると思ったが、何か違う様子だとその姿を観察し続ける。それを見越してか、カグツチは不敵な笑みを浮かべながら語り始める。

 

「不変を求めていると、お前は言ったな。ならば良かろう、己も大和を地上に下ろすという不変の使命を掲げるが故に。己の想いこそが上だと、貴様を倒して証明するまでだ。

再結合・惑星間塵(ユニオン・コズミックダスト)

 

カグツチの周囲に、星屑が舞い始める。まるで太陽を中心とした太陽系惑星の如く。それは眷属の能力を命じて使うという力である。だが本来、神星鉄(オリハルコン)という特殊素材がなければ絵に描いた餅である。だがそれを承知の上で気合と根性、すなわち心の力ひとつで不可能という壁をぶち抜いた。

それこそまさに、かつてカグツチが実現しようとした聖戦の疑似再現。英雄単騎による無双劇の幕開けだった。もっとも、相対するものは英雄ではなく万象滅殺を目指す凶剣という違いがあるが。

 




すみません、一回で書き上げきれず2回以上に分けて書く予定です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。