年を明けると逆に時間がなくなりそうなので、年内でカグツチ戦を書き上げることにしました。そして無事終わらせてホッときたしています。どうぞお楽しみください。
まずカグツチが動かしたのは、赤と青の輝きを放つ魔星。その名は
「
主神の司令により個別の筈の紅蒼が融合を実現させ、原子単位で結合分解を齎す瘴気が凍結という形で災禍を齎してきた。剣士一人で対処しようもない攻撃だが、マグサリオンは一歩も引く様子を見せない。
「温い、逃げ場無き攻撃程度で俺が止められるとでも?」
冷徹にそう言い放ちながら漆黒の剣戟を一閃、二閃と何度も放ち続ける。すると凍結や分解といった現象が起きないまま、紅蒼の災禍は斬り裂かれた箇所のみとはいえ解体され無へと還っていく。それはまるで、かつて光の英雄の絶技を前に敗れた歴史をなぞるが如く。
それは数多の現象に偏在する解れや隙を見抜き、そこに剣を通して解体しているが故に。それを観察してカグツチは感嘆の声を上げる。
「なるほど、おそらくこの世全てに存在しているであろう解れや隙の概念を見極めているわけか。いや、それだけではなく作り上げているとも言えるか。おそらくお前はずっと、瞬きや食事、剣を鞘に収めるといった休憩の類をしていないと見た。何せ己が見ている限りではずっと、一度も瞬きをした様子がない。それは人としてあり得ぬ話だ。
つまり、休憩や安らぎといった隙を作らぬ代わりに、数多の存在の隙や解れを見極めるのがお前の能力というわけか。」
「……
それが俺の戒律だ。」
「ふふ、ふはははは!恐れ入ったよ、この様な狂気的な行動をとる人間がいるとはな。いや、お前は人間ではないな。己の知る英雄とは違う因子を感じる。」
「……」
「まあいい、なんにせよ勝負はここからだ。
産霊べよ、
次に輝いたのは
直撃すれば凍結と分解が同時に迫り、これだけの数を処理するためには大規模破壊を齎す兵器がなければ不可能だろう。
「舐めるな」
しかし、その数の差すらも嘲笑う様にマグサリオンは蹂躙していく。無量大数といえど、結局のところ終わりなき無限ではない。故に、終わるまで殺し続ければ良いだけのこと。
最速にして最短、そしてこの刹那に最強の火力で剣戟を放ち続ける。隙を見出し、そこを退路として身を滑り込ませ、迫る蜂達を回避していく。そしてカウンターの如く返しの刃を放つ。シンプルながらも、単純だからこそ効果的でそれを我武者羅に繰り返すだけ。其れを以って蜂達を斬り払っていく。そしてそれをカグツチが想定してない訳もなく……
「孤独で空虚な
続けて起動したのは
しかしカグツチに外傷はなく、視界の外から何かが破壊する音が鳴り響く。不可解な現象にマグサリオンの混乱を招き、その間隙をカグツチは見逃さない。既に既存法則を凌駕した炎熱を拳に纏わせ、それをマグサリオンの腹部へと叩き込む。
「ゴガァッ!?」
「やはりな、確信したぞ。お前のその身体を構築するのは即ち無の概念。そしてそれを支えにしているのは殺意という名の意志力。血は無く、骨も無く、まさに伽藍堂の無の体。しかしそこに確かに存在している、故に物理的な破壊では無の剣士は倒れないからこその無敗。己の炎熱で倒れなかったのも納得の話である。ならば、その殺意が無意味となる刹那を作り上げれば良いだけのこと。例えば今みたいに、お前の予想を超えて隙を作り上げるとかな。」
「………」
「故に、この状況はまさにお前の様な存在に対しては鬼門だろう。蜂だけでなく、己もまた参じた上に攻撃の矛先も逸らされるとなれば……」
「なるほど、その星の輝きは本来は衝撃操作というわけか。」
「ッ!?」
勝利を確信してたカグツチは、マグサリオンの唐突な指摘にまるで世界が壊れたかの様な衝撃を受けた。追撃は無く、しかし二の次に放たれる言葉がよりカグツチの混乱を招いた。
「拳の研鑽、経絡秘孔を経て確実に人体を破壊する拳の極み。それを夢見た星の輝きだが、貴様が使うことで異能すらも受け流す力へと変換したわけか。なるほど、機械らしく合理的で、実につまらん真似をするな。」
その直後、カグツチの視界からマグサリオンは消えた。その直後にカグツチの身体に刃がめり込む。当然、その損傷は蜂へと肩代わりさせる。しかし放たれる攻撃は一度だけではない、二度、三度……否、気がつけば四桁以上にまで及んでいた。先程とはパワーもスピードも圧倒的に違っている。
「止まれィッ!」
カグツチはマグサリオンの進撃を阻止しようと再び拳が畝りをあげて直撃する。しかし、直撃した拳によって損傷を負うどころか、逆にカグツチの拳が砕けた。まるでより強大な壁に拳をぶつけてしまったかの様に。
「なんだ……これはァッ!?」
「そのまま死ね」
そしてマグサリオンはそのまま攻撃を続け、次第に蜂達の総数も残り三桁となった。このままでは殺される、そう確信したカグツチが翳したのは
「手を伸ばせ、愛に破れた
地面に転がる蜂達の残骸、それを媒介に磁場の
故に目に見えない巨人に頭上から抑えられる様に、地面へと押しつけられる。しかし、それも束の間。振り下ろした剣戟が、その分だけ空間を消滅させる。無論、その場にあった磁力もまた例外なく。磁力も空間という下地がなければ存在することは叶わない。
「その星の輝き、本来はお前とは相容れない奴が使っていただろう?こんなやつに使われたくないと、嫌悪感を露わにした匂いが感じたぞ。ああ、臭くて敵わんな。」
「ふっ、安心すると良い……次で最後だ。
いざ、鋼の光輝は此処に有りーー浄滅せよ、
それを前に、マグサリオンは一歩も引かない。真正面から刃を突き立てるという、あまりに無謀な真似をする。
「オオォォォォォォォッ!!」
爆光と剣戟がぶつかる。放射線が無の身体を駆け抜け、桁違いの激痛が襲い掛かる。しかし倒れることなく、殺意が途切れることはない。この光を放つ英雄は、気合と根性で数多の困難を乗り越えてきた。ならば、あえてマグサリオンもそれを行いつつもこの光を穿つための行動をとっていう。
ゆっくりと、しかし確実に剣が動き出す。第一戒律によって光よりも強い力を獲得し、そして第二戒律によって光そのものの解れを作り上げてそこに剣を通していく。光が割れ、禍つ黒閃がカグツチの身体を割いて行った。
「グオ、オォォッ!?」
「これで終わりだ、カグツチ!」
よろめく身体、そして超光速を越えて迫ってくるマグサリオン。既に守る星々は潰され、どれだけ炎熱を放っても止まらない。故にもはや対抗する術は無し、詰みであると誰もが思うだろう。
「まだだッ!」
最早これまで、そう思うような展開を光の使徒は認めたりしない。寧ろ起爆剤となり、意志の力が常軌を逸脱して暴走する。その果てに覚醒、成長して逆転劇を実現するのだ。
「
灰燼滅却、
今までの熱量、それの数百倍の威力を誇る爆光がカグツチの鉄拳と共に放たれた。その果てに、マグサリオンの身体に激突すると同時に熱波が放射状に広がる。その結果、闘技場は完全崩壊を起こし、足場すらも崩壊させてその果てに天体崩壊を起こして両者共に宇宙空間へと放り出された。
それを成したのは気合と根性、即ち心の力である。
「……ああ、お前ならばそのくらいのことはやると確信していたとも。」
しかしそれすはも、マグサリオンの想定範囲内。太陽系全土にすら及びかねなかった破滅の光を一刀両断、それでも周囲の環境は破壊は止められなかった。
だが、これだけの大技と急な覚醒。その反動が大きいのは想像な難しくない。故にこの気を逃す手はないと、一流の戦士ならば誰もが思いつくだろう。
「ま だ だ ッ!」
しかし、カグツチが切ったカードは掟破りの二重覚醒。カグツチはマグサリオンを見くびってない、寧ろ必要以上に評価しているからこそ、この程度で仕留めきれないと正しく評価する。
意志の力を暴走させ、炎熱の熱情をこれでもかと限界を越えさせて空間の壁を突破。大出力のエネルギーの果てに、宇宙空間に現れるのは次元孔、即ちブラックホールである。
「虚空の彼方へ堕ちるがいいーー
生み出された無明の暗黒天体は、三次元宇宙空間に亀裂を生みだして銀河を瞬時に二桁大飲み込み始める。その先は虚無で有り、どこへ辿り着くかはマグサリオンどころか発動者であるカグツチですら知り得ない。
その重力崩壊にマグサリオンは巻き込まれ、次元の狭間へと墜落しそうになる。その最中、空間を鷲掴みしながら抜け出そうとするがある程度の時間を有するだろう。
「ま だ 、 ま だ ァ ッ ! !」
故にカグツチは更なる追撃を放とうとする、油断はしない。マグサリオンに確実な手で敗北を叩きつけて勝利を収める。そのために己のリミッターをかなぐり捨て、更なる覚醒へと手を伸ばす。だが……
「……ぁ、アァ……」
パリンと、自身の内から決定的な何かが壊れる音が聞こえた。人体と機械には、どうしても限界というものが有る。気合と根性による踏ん張りも、結局のところは未来を犠牲にした前借りみたいなものには等しい。よって、限界に達したことでカグツチに未来は無く、敗北の文字を前に屈するのであった。
「………ふははは、あははははは!!そうだなぁ、我が宿敵よ。応とも、誰にものを言っている!ならば刮目するがいい、
だが、それすらも心の力で凌駕する。かつて宿敵たるヴァルゼライドからの叱咤を連想し、それを以って心の昂りを再起させて覚醒へと至る。その果てに、自壊した身体を復元するかの様に金属細胞で埋め合わせを行い、そしてどこまでも大雑把に自信の持つエネルギーを天井知らずに跳ね上げ、チャンドラセカール限界寸前まで昂りながら、カグツチは星の爆弾を作り上げた。ソレはもはや既存の宇宙法則を凌駕しており、直撃すれば如何なる生命体であろうとも、放射能で根源から絶滅させる宇宙現象である。幾ら宇宙を絶滅させたマグサリオンであろうとも、これならば真正面から直撃すれば無事で済まないのは確かである。その異界現象を、森羅万象を焼き尽くす爆光をマグサリオンに向けて指向性を持たせて放とうとする。
「
これを以って完全勝利、重力崩壊に巻き込まれたマグサリオンにこれを逃れる術はない。窮地に立たされ、困難を乗り越えてこそ英雄譚は眩くなるもの。
よって、此処で勝負は決した。凶剣は光に飲まれ、カグツチの勝利でこの一戦の幕は降りた。
「いいや、お前の負けだよカグツチ。お前に勝利は訪れない。」
「ッ!?」
「手を見てみろよ。」
が、その幕ごとマグサリオンは破壊した。否、それは既に行われてたというべきか。暗黒天体に囚われ縮退星に呑まれた筈のマグサリオンは、なぜか既にカグツチの背後に立っていた。
否、それは成功してなかったのだ。マグサリオンの指摘通りカグツチは手を見ると、その両手は斬り飛ばされており、縮退星の発動は防がれてたのだった。だが、それはいつから?そんな疑問を浮かべたカグツチだが、それを読み取られたかの様にマグサリオンが答えた。
「お前が限界突破して自壊していた辺りで、俺は既に次元孔から既に抜け出してたのだよ。そして覚醒したが、それは同時に隙でもある。それを態々、見逃すと思うか?」
「ーー」
「故に終わりだ、カグツチ。この勝負の幕を引こう。」
「……否、否否否否否否否否ァーッ!己は、まだ……」
まるで駄々をこねる様に足掻くカグツチ、この窮地すら起爆剤にせんと心の力を奮起させようとする。しかし、その刹那に。
「ああ、英雄譚をやりたいならば……俺のあずかり知らない、何処か遠くでやってくるといい。」
マグサリオンの剣先が、カグツチの首を刎ねた。かつて抉られて敗北を叩きつけられた一撃、それをなぞるかの様に。過去に受けた傷だからと、流石に三重覚醒後に易々と出来るものではない。この一撃は暗黒天体、縮退星という窮地を超えた剣戟で有り、カグツチの意志力を凌駕する程である。
更に、オマケと言わんばかりに残った肉体も裁断して宇宙に漂う星屑にした。その様子を見届けたカグツチは、愉快に満ちた声で最期を口にする。
「ははははは……なんと、己の全霊が届かぬとはな。ままならぬものだ……だが、まだだ。また次がある時、必ず勝利して見せよう。勝つのは、己だ。」
「いいや、何度戦おうと俺が勝つ。誰が相手だろうと俺は負けない。」
「ふは、それでこそよ。ならばこそさらば、また会おうぞ。」
そう言い残して、カグツチの首が星屑となって消えた。その直後、マグサリオンは吐血し身体が倒れかける。
「ぐゥ……あの手の相手は、流石に手が焼けるな。あの一撃を許していたら、流石に不味かった……だが、だからといってあの手の相手に負けるわけにはいかん……なあ、お前だってそう言うだろうバフラヴァーン?」
そうマグサリオンの脳裏には、かつて己の手で撃ち滅ぼした魔王の貌が浮かび上がった。不変の闘争を掲げ、闘争の概念そのものになった男である。
今回の一戦を見届けていたとすれば、さぞご満悦の笑みを浮かべたのは違いない。そう考えれば、呆れた様にマグサリオンは血を吐き捨てたのだったを
ぶっちゃけマグサリオンが勝てたのは、この物語において主人公だからと言う補正でと言えます。何せカグツチの最後の縮退星と正面からぶつかり合わせれば、もはや決着がつかなそうだったのであの様な形で収めさせていただきました。
一部の技も原作より規模が大きくなってますが、正直マグサリオンとぶつかったらあそこまで覚醒しそうだなと思ったのでつい……描いてて楽しかった分、どう決着つけさせようか凄く悩んだ一戦となりました。