ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#8 接近

二〇二四年 十月十八日 五十層 エギルの店

 

ブレイドはいつも通りダンジョンに潜ってそこで得たアイテムをエギルに売りに来ていた。

 

「200コル」

「いいや、150コル」

「これだけは譲れん」

「こっちだってそうさ」

 

ブレイドとエギルは値段交渉で若干揉めていた。

するとそこに来客があった。

 

「よ、また値段交渉で揉めているのか?」

「キリトか……」

「何しに来たんだ?」

「これを見せに来たんだ」

 

そう言ってキリトが見せたアイテムにエギルは驚いていた。

 

「これは…!『ラグー・ラビットの肉』!?S級食材じゃねえか!?」

「(ほう、キリトも見つけたのか……)」

 

ブレイドはそんな事を思いながら驚いた様子のエギルと相談しているキリトを眺めていた。

するとキリトがブレイドの方を見てある事を思い出していた。

 

「そういやぁブレイドって確か料理スキル育ててたよな」

「ああ、ほとんど習得してあるぞ」

「本当か!?じゃあ「男に料理を振る舞う趣味はない」だよなぁ……」

 

そう言ってキリトは萎えていた。

ブレイドは二十二層に買った森の中のコテージをホームとしており、そこで採ってきた食材を加工して料理にしていた。その影響で、料理スキルが育っていたのだ。

 

因みに、コテージを買った事は誰にも話していない。

理由としては一人でコテージのベランダで風の音や小川の流れる水の音、木の葉が擦れる音を聞きながら料理を嗜むのが最近のお気に入りだからである。

 

娯楽が少ないこの世界での料理は彼にとって楽しみの一つであった。

その為、彼のストレージには数多くの食材が溜まっている。

食材だけは絶対に売る事はなく、攻略や特に用事のない日は料理をしてコテージから景色を眺めながらシードル(みたいなもの)をグラスに注ぐ。

ここはゲーム内。本当は酒を飲める歳ではないのだがこうして酒を飲むことができる。

 

アメリカにいた頃に一度だけウィスキーを試しに飲んだが、苦くてとても飲めたものじゃなかったが……歳をとったのだろうか。ここ最近、酒を美味しく感じるようになってきていた。

そんな事を思っているとエギルの店に白い服が特徴のアスナが見知らぬ人を連れて店にやって来た。

 

「シェフ捕獲」

「へ?」

 

いきなり肩を掴まれ、アスナは変な声が出てしまっていた。

彼女もキリトの後にエギルの店に訪れていたのだ。

するとキリトがアスナに料理スキルの修得状況を聞き、彼女が完全修得したと言うとキリトはアスナにストレージ欄を見せていた。

 

「これって……!!《ラグー・ラビットの肉》!?S級のレア食材じゃない!」

「取引だ。こいつを料理したら一口「は・ん・ぶ・ん!!」…分かったよ……」

 

交渉がまとまるとキリトはエギルの方をくるりと向いた。

 

「じゃあそう言う事でエギル。取引は中止だ」

「なあキリト…俺たち友達だよな…一口ぐらい味見を……」

「感想文を800字以内で書いてやる」

「そ、そりゃあないだろう……」

 

そう言うとキリトは店を後にした。ブレイドはアスナの背後に居る護衛が、キリトのことを睨みつけていたのを見て一種の危機感を感じていた。

 

そして自分も店を出るとホームである二十二層のコテージに戻った。

コテージは広々とした内装で、中には本とランプ、ベットしかない質素な内装だった。

 

「さて、今日の夕食は何にしようか」

 

そう呟きながらブレイドはアイテム欄から《ラグー・ラビットの肉》を取り出した。

 

「前はシチューだったからな。今回はフランベでさっと焼くか」

 

ブレイドはアイテム欄に残っている《ラグー・ラビットの肉》を見て心の中で愉悦感に浸っていた。

 

「(まさか《ラグー・ラビットの肉》がよく手に入る狩場を見つけたなんて言えないよなぁ〜♪)」

 

ブレイドはそんな事を思いながらフランベをするとベランダに出した机の上に作った料理を並べて、薄暗いランプを付け、月を眺めながら今日のメニュー『ラグー・ラビットのフランベ』を嗜んでいた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日、ブレイドは七十四層の迷宮区にいた。目的は迷宮区のマッピングとボス部屋の捜索である。

 

「大体八割方マッピングしたから…ん?あれは……」

 

ブレイドの視線の先には見たことある二人組が通路を歩いていた。

 

 

 

 

 

キリトと二人で迷宮区を探索しているアスナはボス部屋の前に辿り着いていた。

 

「ねぇ、キリトくん…開けてみる?」

「あぁ、《転移結晶》を持てば……」

『動くな』

「「!?」」

 

咄嗟に剣を構えながら振り向くと、そこには赤い装備に身を包んだブレイドが立っていた。

 

「なんだ、ブレイドだったか……」

「驚いたかな?」

「ビックリしたわよ!」

「その反応だけで十分だな」

 

ブレイドはそう言うとキリトに向かって聞いた。

 

「今からボス討伐か?」

「いや、覗き見だけだ。ブレイドも来るか?」

「そうだな……せっかくだから参加させてもらおう」

 

そう言うとブレイドが先導して扉を開く。

少し足を踏み入れると、脇から青い炎が走りボス部屋の中が露わになる。

中央にいたのは悪魔だった。人型をしているがその頭は山羊のそれで、脚にも毛が生えており山羊のようだった。人間らしさを残した上半身含め全身が青く、その眼も青かった。名は《ザ・グリーム・アイズ》。持っている武器はーー

 

『GAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

「(なるほど、大剣か……)」

「わぁぁぁぁぁああああ!!!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」

「はぁっ!?」

 

悲鳴を上げながら颯爽と逃げたキリト達にブレイドが唖然としていると

 

『グルルルルル……』

「……」パタンッ

 

逃げよう。

そう思ってからの行動は早かった。スキルを最大限使って迷宮区の安全地帯まで走っていた。

安全圏内ではキリト達が先に息を切らして地べたに座っていた。

 

「随分と焦っていたな……」

「いやぁ、あれで平然としていられるお前が可笑しいわ!」

「でも、あれは苦労しそうね……」

「そうだな。相手は両手大剣を持っていた。盾装備の兵が十人ほどは欲しいな」

「あの一瞬でそこまで見ていたのかよ……」

「流石はブレイドさんね……」

 

そう言うとアスナは盾という言葉からキリトに思わず聞いていた。

 

「ねえキリト君。片手剣って盾持てるのが利点なのにキリト君が盾を持っているところを見た事がない。私は速度が落ちるからだけど……」

「アスナ、そう言うのはマナー違反だ。人のことを詮索しすぎるのは嫌われるぞ」

「あ、そうだね。ごめん……」

 

そういうとアスナは食事と言ってサンドイッチを取り出し、それをキリトに渡していた。

かくいう自分もおにぎり(青白い)と漬物(のようなもの)を取り出すとアスナが興味深そうに漬物モドキを見ていた。

 

「ねえブレイドさん。それ何?」

「これか?食べてみるか?」

 

そう言ってアスナに漬物モドキを食べると目を輝かせて驚いていた。

 

「これは……沢庵!」

「赤いがな」

「何!?じゃあこっちは……柴漬け!?」

「青色だがな」

 

赤色の沢庵と青色の柴漬けを食べて二人が感動をしているとアスナが真剣な目でブレイドに聞いた。

 

「ブレイド、この漬け物の作り方教えて。代わりに私からこれの使い方を教えるから!!」

 

そう言ってアスナが見せた紫色と黄緑色の液体を舐めた。さんをつけ忘れるほどに興奮していた。

 

「マヨネーズと醤油か……これなら食のバリエーションが増えるな。いいだろう、交渉成立だ。これなら他のものを教えてもいいだろう」

「やった!」

 

アスナが喜ぶ横でキリトが呆れたような目で見ていた。

 

「と言うか他ののも作ったのかよ……」

「まあ、主に和食を真似ている。……試しに鮒寿司作った時は匂いで死ぬかと思った」

「お、おう…ソウカ……」

 

どこか遠い目をしていたブレイドにキリトは若干引いてしまっていた。

そして食事を終えた頃、やって来た気配に一瞬だけ警戒をするも、その姿を見たキリト達は安心していた。

 

「おお、キリトにブレイド!しばらくだな!」

「久しぶりだな、クライン」

 

キリト達が再会したのはギルド『風林火山』のリーダー、クラインであった。クラインの後ろにはメンバーだろう、クラインと同じ赤を基調とした装備をしているプレイヤーがいた。

 

「元気そうでよかった。ん?後ろにいるの…は……?」

「あー、ボス戦で顔合わせしてると思うけど、一応紹介しとくよ……こいつはギルド〈風林火山〉のクライン。で、こっちは『血盟騎士団』のアスナだ」

 

そう言いアスナが小さくお辞儀したが、クラインは固まったままフリーズしていた。

 

「(あ、これは……)」

「は、初めまして!クライン、24歳独身です!」

「おいおい……」

 

ブレイドの呆れた声とほぼ同じタイミングでキリトに軽く腹を殴られ、ゲホゲホしていた。

 

「何やってんだか……」

 

そう言って横で呆れていると索敵スキルに反応があった。

 

「っ!誰か来る!」

 

そう叫ぶと同時にアスナも口を開いた。

 

「あれは……『軍』だわ!」

 

そこには深緑色の重装備を身につけ二列縦隊で安全エリアまで歩いて来た、本来は下層を根城にしているはずの『アインクラッド解放軍』だった。

 

「(『軍』が何でわざわざ最前線まで……)」

 

ブレイドは明らかに疲労している様子のプレイヤーを見ながらそんな事を思っているとおそらくは隊長だろう、装備が一番整っている人物が声をかけてきた。

 

「私はアインクラッド解放軍、コーバッツ中佐だ」

「キリト、ソロだ」

「(偉そうなもんだ。それに……頭が硬そうだな)」

 

ブレイドはそんな事を思いながらコーバッツを観察していると、彼はとんでもない事を言い出した。

 

「君たちは、もうこの先も攻略しているのか?」

「ああ…ボス部屋までのマッピングはもう終わってるよ」

「ふむ……では、そのマッピングデータを提供してもらいたい」

「「「!?」」」

「(やはりか……)」

 

ある意味予想通りの展開にブレイドは内心呆れていた。

 

「な…てっ…提供しろだと!?手前ぇ、マッピングの苦労がわかってんのか!?」

「我々は君ら一般プレイヤーの解放のために戦っている!よって、諸君が協力するのは当然の義務である!」

「貴方ねぇ……!」

 

アスナが反論し、クラインが刀を手に掛けていたが、キリトが手で制すると

 

「どうせ、街に戻ったら公開しようと思ってたデータだ。構わないさ」

 

そう言うと一瞬だけキリトが自分の方を向いた。おそらくマッピングの話だろう。早朝から潜っていた自分はマッピングを全て終わらせていた。そのことも考えているのだろうと思い、キリトに向かって小さく頷いた。

キリトはコーバッツに情報を渡すと

 

「協力感謝する」

 

それだけ言って、背を向けた。その背中に向けて、キリトが忠告した。

 

「ボスにちょっかいかけるなら、止めておいた方がいいぜ」

「それは私が判断する」

「何だと……!?」

 

流石にこれに関しては驚いてしまい、思わず声に出てしまった。

明らかに後ろにいる兵士たちは疲弊しており、戦闘が続行できるとは思えない。第一、攻略組に関しては素人にも等しい奴らがいきなりボス相手にどうこうできるはずがない。キリトが忠告するもコーバッツは苛立ったように無理やり兵士を立たせて安全圏を出てしまった。

 

「……」

 

ブレイドはコーバッツの焦っているようにも見える表情に若干の懸念を抱きつつ、クライン達と共に行動し始めていた。

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