正直アメリカの大学生の生活を詳しく知らないので少々和風になるかもしれません。
あとメチャクチャ更新頻度は低いです。
それと若干のクオリティの低下はお許しを。
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季節は冬、この時期でも南部にあるカリフォルニア工科大学は比較的温暖な気候故にそれほど厚手の服を着ている人物は少なかった。
そんな大学の講義室で大学生、ザスマン・シャザールは受けたかった講義を終えて軽く息を吐く。
二四時間営業の超絶変則的な講義で、たまに生徒が講義をしている様な講義室で彼は部屋を後にするとそのまま売店に向かう。
一応、生体工学を専攻で選び。親に顔が立つくらいには努力して入った彼だが、同室の同級生を見てしまってからは何というか…唖然とならざるを得なかった。
「よぉ、ザスマン。またお守りか?」
「五月蝿ぇ、俺はやりたいようにやるだけだっつーの」
そんな友人の揶揄いにも適当に返しながら彼は大学近くのコンビニに入り、そこで果物や栄養ドリンクと言った物を買ってとある研究室に向かう。
「うっ」
扉絵を開けた瞬間に鼻に付く刺激臭。いったい何をどうしたらこんな匂いを出すのか問い詰めたい気分だが、相手が相手なだけに目一杯叱ると変な事をしでかしそうだった。
備え付けられたガスマスクを我慢できずに装着して小さな研究室の中に入ると、そこでザスマンは部屋の中で唯一まともに生存している白衣を着ている人影を見た。
「今日は一体何の実験をしたんだ?」
おそらく気絶しているだけだろう、ケージの中のマウスを見ながら聞くと。その少年は顔を上げた。
「あぁ、貴方でしたか」
とても同い年の子供よりも大きい身長の体で、本当に十四歳の少年なのかと思いたくなるが。戸籍上ではちゃんとそう言う事になっている。
「ほれ、今日分の飯だ」
「ああ、ありがとうございます」
ザスマンの購入してきたリンゴや栄養ドリンクを手に取ると、代わりに紙幣と硬貨を取り出す。
「全く、何をしたらこんなマウスも気絶する様な物を作るんだ」
「アンモニアを使った香料を試しに作っているんです」
「はぁ、何をやっているんだか…」
ガスマスクをしないといけない現状で、何か変な化学物質でも使っていないので取り敢えず窓を全開にする。すまんがもう我慢ができないのだ。
「うっひゃぁ、ひっどい匂いだぁ」
そして窓を開けて換気をして新鮮な空気を取り入れる部屋。
少なくとも一般的な大学生がガスマスクをつけたくなるほどの悪臭部屋で過ごしていた目の前の少年の名は赤羽修也。後に技術者として活躍する若き天才児であった。
「もうお前さんと出会って三ヶ月か」
「そうですか」
部屋の机の上に座ってペットボトルの蓋を開けるザスマンに無機質な声で答える修也。
「お前も年頃の人…みたいには無理か」
「失礼な人ですね」
そう言いながらパソコンを見てキーボードを打ち込む修也。ザスマンとしてはまともに返してくれるだけでも成長しているかと納得しながら窓の外を眺める。
「あっ、起きましたね」
「本当だ。まだ生きてたか」
そしてケージの中で悶絶していた白いマウスが鼻をヒクヒクさせて動き始めると、それを修也は観察していた。
「何をしているんだ?」
「いつもの作業です」
そうして部屋で過ごしていると、部屋の扉を誰かがノックした。
「おっ、来たか」
ザスマンはそれを聞いて扉の方に向かい、修也もパソコンを閉じると部屋に数人の五十代くらいの人物が入ってきた。
「シューヤ君」
「どうぞ、教授」
「今日の講義もよろしく頼むよ」
そう言い、ホワイトボードの前に座るとそこで修也は前に立ってボードに書かれた文字や計算式を説明し始めていた。
十四歳の少年が五十、六十の教授を相手に講義をしていると言う。中々日本人からすると滑稽な景色かもしれないが、アメリカでも中々こう言う授業はなかった。
「……」
そんな教授の後ろで話を聞いているザスマンだが、それでも中々キツイものがあり。教授たちの方が熱心に聞いて質問もしたりしていた。
「(天才って、すげぇな…)」
そう思いながらザスマンは彼の講義を無料で聞けているだけでも儲け物だと感じながら資料を読んでいた。
彼のと出会いはとても簡単な物だった。
入学して早々、学生寮に二年間は住むのが当たり前のこの大学。ザスマンもその慣習に習って学生寮に引っ越したのだが、その時に部屋で同室となったのが彼だったと言うだけの話だ。
初めは体も大きいので珍しい日本人からの留学生だろうと思っていたのだ。
だが、彼はやたらと教授から話しかけられたりしており。どう言う事だろうと気になって話しかけてみたらあらびっくり、何と彼はまだ十四歳だと言うのだ。
要は飛び級をして大学に入ってきた事になり、それだけで相当な実力なのが伺えた。
初めはほぼ返事をすることもなく、何というか死んだ人間が歩いている様な感じだった。
そして何より、マトモに食事をとったところを見たことがなく。誰か親がいそうな雰囲気でもなかったのでみるみる衰弱していくのが目に見えて分かったので自分が同室なので世話を焼こうと言う親切心から始まった関係だった。
「じゃあ、すみません。今日はこれで」
「ああ、分かった」
「ありがとう」
アレから数時間、陽が傾いて地平線に消え掛かった頃になって今日の講義を終え、教授たちは部屋を後にしていく。
修也の為に教授に頼んで用意してもらった小部屋には毎日多くの教授が講義を聞きに訪れていた。
「教授が訪れるとはね…俺には少し珍紛漢紛だ」
「貴方はもう少し勉強をした方がいいですよ」
「世界はお前を中心に回ってる訳じゃねえぞ」
十四歳の少年と言うのは色々と不安を抱えているだろうと言うことでザスマンが教授に掛け合ったのだ。
見た目がアレなので彼が十四歳の少年と言うのはあまり気づかれていないが、もし広まったら注目が集まるだろうなと思ったので。予め教授たちも修也の事は広めない様にしていた。
「取り敢えず、そろそろ寝ろ」
「良いですよ。まだ」
「阿呆、何轍する気だ」
そう言い目元にくっきりと残るクマを指差しながら言う。
「何日学生寮に戻っていない?」
「さぁ…」
「さぁじゃねえよ。ちゃんと飯食って寝ろ」
そう言って彼の腕を引っ張ると、力が抜けていたのか。そのままナメクジのように修也は地面に倒れた。
「お腹が空いた」
「ほら言わんこっちゃねぇ」
「…ちょっと寝る」
そう言い修也は部屋の地面で突っ伏して寝ると、そのまま寝息を立て始める。
「あー、もう…」
でっけぇ赤ん坊見たいだと軽く愚痴りながらザスマンは修也を背負うと、そのまま部屋を出た。
そして学生寮に帰宅すると、部屋の彼のベッドにゆっくりと降ろして寝かせる。
「こんな子供でも俺と同級生とはね…」
そしてベッドで寝ている少年を見ながら吐露してしまう。
自分が苦労して入学したこの大学に、今ベッドで寝ている少年は十四歳で入学している。
「俺が十四の時は何してたかな…」
多分、他の奴と同様。中学校で馬鹿なことしていたに違いない。何というか、本当に目の前で寝ている人は本当に人なのだろうか?
十八で大学に進学か、就職をしないと家から追い出されるアメリカで自分も追い出されないように努力をして入学をしたが。目の前の少年を見ていると、それも馬鹿らしく思えてしまうのは気のせいではないのだろう。
「しかし…」
『世の中天才はいても、完璧な人間は存在しない』と言うことをまざまざと見せつけて来てもいる。
大学の教授が講義を受けに靴ほどの天才だが、私生活に関しては瀕死もいいところであり。少し放っておくと死んでしまいそうな、目が離せない存在だった。
「はてさて、どうしたものかね」
同室の非常に世話のかかる子供を相手に学生生活に早速曇りが差し込んでいる常用にザスマンは考えていた。
夢を見ている、とても久しぶりに。
その手には拳銃…黒星と呼ばれる54-1式拳銃を握っている。
「…」
そして向かってくるゾンビのような見た目をした男。誰だコイツは?
あぁ、あの銀行の時の男か。全く、鬱陶しいなぁ。
ッ!
そんなゾンビに銃口を向けて引き金を引くと、そのゾンビはゲームのように霧散した。
黒星の装弾数は八発、一発撃ったので残りは七発。しかし今見えている敵だけでも到底この七発で倒し切れる量ではなかった。
「…仕方ない」
一発ずつ丁寧に引き金を弾き、敵を倒していく。
ッ!ッ!ッ!
そして敵を倒すも、到底防ぎ切れるものではなく。修也の体にその男が腕を掴んだ。
ッ!ッ!ッ!ッ!
そして八発撃った時、拳銃のスライドが下がったままオープンしなかったのでもう一発あったのかと理解する。
「でもまぁ…」
この状況で何とかなるはずもなく、結局修也はその一発を撃つ事はなく、修也の視界は真っ黒になった。