ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#9 ユニークスキル

軍との揉め事があってから30分が経っただろうか。途中で、リザードマンの集団と鉢合わせ、その処理に思いのほか時間が掛かってしまった。

集団を返り討ちにし、最上階の回廊に到着した時、

 

『わあぁぁぁああああ!!!!』

「「「っ!」」」

 

何処かから聞こえる悲鳴に考えるよりも先に足が動いていた。

 

「い、今のって……」

「チッ、最悪だ……」

「アスナ、ブレイド。行くぞ!!」

「ああ…」

「お、おい!!」

 

キリトが先行して、最大速度でボス部屋に到着すると、そこには地獄絵図が広がっていた。

 

何人かのプレイヤーのHPゲージがイエローに達しており、それに対しボスの体力は3割も減っていなかった。

ボスは斬馬刀のような武器を持っていた。人数を確認すると2人数が合わなかった。咄嗟にブレイドは叫んでいた。

 

「早く転移しろっ!!」

「そ、それが…クリスタルが使えないんだ……!!」

「何っ……!!!」

 

部隊の返事に思わず唖然としていると

 

「我々解放軍に撤退の二文字はありえない!戦え!戦うんだ!!」

「玉砕する気か!?」

 

そうして、青い悪魔は斬馬刀を振り回し、軍のプレイヤーを襲った。

自分達の目の前に一人のプレイヤー……コーバッツが飛んできた。彼は絶望の表情をしたままパリンッ!と言う音と共にポリゴン片となった。

 

「だめ…だめ、よ…!もう……!」

「アスナ……!?」

「だめぇぇぇぇ!!!」

 

剣を抜いて出てしまったアスナに続いてブレイドも咄嗟にパランジャを抜いてスキル《迅雷》を発動する。キリトもそれに続いてボス部屋に突入をした。

 

「くそっ、どうにでもなりやがれぇ!」

 

クラインも参加し、偶発的にボス部屋での戦闘が起こってしまった。

 

 

 

 

 

スキル《迅雷》で急速で接近し、ボスの背中に剣を突き刺してダメージを出してヘイトを向けさせた。アスナは初手の攻撃で体勢を崩し、部屋の壁に体を打ち付けていた。

 

「そうだ……やるならこっちを向け」

 

そしてボスの斬馬刀を両手剣で抑える。

 

「クッ…一撃が重い……!!」

 

攻撃を抑えている間にクラインは残った軍の部隊をボス部屋の外に退避させた。

大剣は攻撃範囲が広く。なおかつこの部屋に居るメンバーの中でタンク役ができるのは自分しかおらず、よく見れば体力バーも少し減っていた。

攻撃を受けきれていないと判断したのか、キリトが叫んでいた。

 

「ブレイド!アスナ!十秒持たせてくれ!!」

「十秒だな。了解…三十秒持たせてやる」

「嘘でしょ!?」

 

アスナがそんな軽口を叩きながら攻撃をする。幸い、ボスの斬馬刀は自分が抑えているため、何とかなりそうだった。

所詮相手は()()()()()()AI。スイッチに対応が出来ず、徐々にダメージを与えていた。

そして十秒が経ち、キリトが叫んだ。

 

「スイッチ!」

「土産だ…受け取るといい」

 

ブレイドは最後にボスの腹にパランジャを刺し、スキル《雷刀》を発動した。明らかに剣幅とは違う大きさの傷跡が《グリームアイズ》の体を貫通、さらに電撃を食らったのか《グリームアイズ》が痺れたように硬直をしていた。

《グリームアイズ》が痺れている隙に急いで後ろに飛ぶとキリトが剣を()()()()して前に出てきた。

 

「(成程…二刀流か……)」

 

ブレイドは納得をして、初めて見るキリトの技に感心をしているとキリトがソードスキルを発動した。スタンから回復した《グリームアイズ》はキリトを見つめて斬馬刀を振った。

 

「スターバースト……ストリーム!」

 

合計十六回の剣技が《グリームアイズ》を襲い、何回か攻撃を阻まれるも構わずに攻撃を続けていた。そして……

 

パリイィィィィンンッ!!

 

ボスがいた場所には大きく『Congratulations』と表示されており、それを見た自分とキリトは同時に崩れ落ち、意識を失っていた。

 

 

 

 

 

それから少ししてキリトの意識が戻った。

 

「いてててて……」

「バカっ…!無茶して……!」

 

アスナに怒られながらキリトは目を覚ますと回復ポーションを飲んで回復をしていた。

そこにクラインが遠慮がちに声をかけていた。

 

「生き残った奴らの回復は済ませた。ただ…コーバッツ以外に二人死んだ……」

「ボスで犠牲者が出たのは六十七層以来だな……」

「こんなので攻略って言えるかよ……!!」

 

吐き出すようにクラインがそう言うと、話題を避けるためかキリトに聞いていた。

 

「そりゃそうと、おめぇらさっきのは何だよ」

「――言わなきゃ……駄目か?」

「ッたりめぇだ!見たことねぇぞ、あんなの!」

「……エクストラスキルだよ、《二刀流》」

「……」

 

どよめきが広がり、クラインが急き込むように言った。

 

「しゅ、出現条件は……?」

「……分かってりゃもう公開してる」

 

キリトの性格を知っているクラインはそう知り、それ以上追求することはなかった。

 

「情報屋のスキルリストにも載ってねぇ。てこたぁお前専用のユニークスキルじゃねぇか。たく水くせぇなキリト、そんなすげぇ裏技黙ってるなんてよぉ」

 

クラインがそうぼやきながらキリトの肩を掴んでいた。ブレイドはさっきのユニークスキルを思い出していると、クラインがブレイドの方を見て聞いた。

 

「おい、ブレイドはどうなんだよ?」

「どう……とは?」

「見てたぞ、引く直前に剣を刺したらボスがスタンをしていたじゃねえか」

 

やれやれ見られていたとは。こうなったら言うしかないな……と思いながら諦めて話すことにした。

 

「使ったのはエクストラスキル《雷装剣》と言うものだ」

「おぉ!!」

 

クラインが驚いていると《雷装剣》の出現条件もわからないことからキリトの《二刀流》と同じユニークスキルだろうと考えた後、クラインが軍の部隊を帰らせる事になった。

 

「じゃあ二人とも、アクティベートはどうする?」

「任せる…こっちは疲れた……」

「分かった。アスナ…頼んだぞ」

「ま、任せて」

 

そう言い、ブレイドは二人を残すと第七十五層にアクティベートをしていった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日、朝刊はあるニュースで埋まっていた。

 

『74層ボス攻略!!』

『黒の剣士と赤い雷鳴のユニークスキルで撃破!?』

『最強は誰か!!《二刀流》VS《神聖剣》VS《雷装剣》!!』

 

よくもまあこんな特集記事が書けるものだと感心しながらコーヒー片手に椅子に腰をかけているとアスナからメッセージがあった。

 

『大変なことになっちゃった……』

 

アスナがヘルプを求めていると言うことで隠蔽スキルと念の為のフードをかぶって五十五層にある『血盟騎士団』本部に来ていた。

 

「……アスナ」

 

アスナの影から声をかけると彼女は心底驚いた様子で文句をぶつけた。

 

「っ!?もう!いきなり後ろから来ないでください!」

「こっちだって迷惑しているんだ……」

 

そう呆れながらアスナにヘルプしてきた事情を聞いた。

どうも昨日の一件で、アスナの一時退団を申請したときに、ヒースクリフとアスナの一時退団を賭けて勝負になってしまったらしい。場所は昨日第七十五層で見つかったローマ風コロッセオ。

キリトが負ければ血盟騎士団に加入する事になっており、困り果てたアスナはブレイドに相談したと言う事だった。

 

「……で、キリトに今すぐ試合を止めるよう言ってほしいと?」

「そうなの!お願い「無理だな」なんでよ!?」

 

即答のブレイドにアスナが驚きながら理由を聞いた。

 

「簡単な話だ。あいつが、ヒースクリフの『神聖剣』は危険だからやめた方がいいと言って。『はい、そうですか』って言うと思うか?」

「うっ……」

 

どこか思い当たる節があったのか、アスナは言葉を詰まらせていた。

 

「ま、いいじゃないか。負けても別にアスナと永久に別れさせられるわけじゃないんだから」

「な、何を言っているのよ……//」

 

明らかに動揺した様子のアスナにブレイドは面白そうにアスナを見ていた。

 

「(こう言うのはちょっといじっていた方が面白いんだよな……)」

 

ブレイドはそんな事を思いながらとりあえず二人で闘技場まで足を運んだ。

 

 

 

 

 

お祭り騒ぎになっている闘技場に着くとアスナはまず最初にキリトに説教をしていた。

 

「何でこんな決闘を引き受けたのよ!!」

「売り言葉に買い言葉でつい……」

「ついじゃないわよ!!」

 

アスナが軽く怒鳴りながらキリトを叱っていると、ブレイドは軽い様子で話す。

 

「まぁ、《二刀流》もあるし。望み薄しで行けるだろう」

「おいブレイド。それは俺に勝てないと言っているのか?」

「いや?ただあの人の実力は相当なものだったぞとだけ言っておく」

「そうかい……」

 

キリトはそう言うと剣をしまって闘技場まで歩いていった。

 

 

 

 

 

闘技場の端で試合を見ていた自分はヒースクリフの動きに注視していた。

 

「(キリトには申し訳ないが。この試合、ヒースクリフが勝つかもしれん……)」

 

ブレイドはヒースクリフに抱いているある懸念を元にキリトに内心謝っていた。

そして闘技場の歓声に包まれながらデュエルは始まった。初手に《タブルサーキュラー》を繰り出し、ヒースクリフはそれを盾で防いだ。

そしてキリトの剣の速度が上がるにつれ、ヒースクリフが押されているように感じ、ヒースクリフの体勢が崩れた時、それは起こった。

 

 

ヒースクリフが通常ではあり得ない速度で盾を引き戻していた。

 

 

キリトの最後の攻撃が盾に流され、キリトの横腹を突いて決着となった。

 

「キリト君!!」

 

地面に倒れたキリトにアスナが駆け寄っていた。

今の出来事である程度自分の考えに答えを見つけたブレイドは、人知れず闘技場の出口に向かって歩いていた。

その目にはどこか悲しい表情が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

試合を終え、闘技場を後にするヒースクリフはその気配に気づくと振り返った。

 

「おや、君は……」

「待っていたよ。ヒースクリフさん……少し話がしたいのだが……」

 

闘技場の出口で赤いローブを着たプレイヤーが壁に背を預けてヒースクリフを待っていた。

 

「ここでは無理なのか?」

「話が話だ。できれば誰にも聞かれないところで話したい」

「ふむ…では私の部屋に来るか?」

「いいのか?」

「問題ない」

「そうか……」

 

ヒースクリフと赤いローブに身を纏ったブレイドは転移結晶で血盟騎士団団長室に向かった。

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