大変申し訳ございませんが、次回投稿は不明です。
大学で知り合った年上の同級生であるザスマン、本名をザスマン・シャザールと言う。
正直に言うなら、今日のこの催しに参加するのはあまり乗り気ではなかった。
射撃場では無数の銃声が響き渡っていた。
重い音、軽い音。
大砲かとも思わせるような銃声までその場所では響いていた。
「…」
そこで呆然と立って射撃場を見つけていた修也。
「ちょっと煩いからな」
そこでザスマンは彼にヘッドホンを被せた。子供用の大きさで、修也の頭の大きさに合うようにザスマンが調整をした。
「次からは自分で調整してくれよ?」
「…そもそも二回目は来ないと思います」
そう言い、修也は無数の銃声が聞こえるこの場所を前にそう言うとザスマンは呆れたため息を吐いた。
「ちょっとくらい付き合えよ。子供なら銃に興味持つだろう?」
「…銃は嫌いです」
彼はそう言ってから次に射撃場を見る。まだこれでも話しかけて答えてくれるからまだ丸くなったかな、などと思いながら彼は修也を案内していく。
「よう、ザスマン」
「悪いな、世話になるぜ」
そこで髭面の恰幅の良さげな男が陽気にザスマンを見て挨拶をして来た。そして次に彼は足元で怪訝な様子で見回していた少年を見た。
「ほお、そいつが噂のギフテッドって訳かい?」
「そうだ。まあ、面倒を見ているんだ。代わりにな」
「へえ…お前が子育ての真似事か?」
そこで妙にニヤついている彼はザスマンを見ると、彼は些か疲れた様子でため息を漏らす。
「おかげで苦労してるよ」
「はっ!はっ!はっ!そりゃあ、妻子持ちじゃねなら尚更だな」
そう言うと次に彼はザスマンに聞いた。
「で?今日は何しに?」
「ちょっとコイツにアメリカ式の教育をとな。二二口径はあるか?」
「おう、ちょっと待っとけ」
そこですぐに男はカウンターの下に消えると、その後に
「初心者なら、まずはコイツで慣らさねえとな」
「悪いな」
そこで拳銃を借りると、見ていた修也は怪訝に聞いた。
「…何をするんですか?」
「銃は嫌いか?」
「…良い思い出はありませんよ」
修也はそこで苦虫を潰したような表情をしたので、思わずザスマンは墓穴を掘ったのだと察した。
「おお、そりゃあ悪かったな」
それしか返すことができなかったが、それでも彼は黙々と拳銃の準備をしていく。
「って事は銃の経験があるって事か?」
「…一応は。私がこの国に来た理由が銃でしたので…」
「へぇ…」
そこでそんな彼の反応に一体過去に何があったのかと興味が湧いたが、まだ深く交流もできていないと言うのに聞くのも野暮だと思ってこの場で問い掛ける事はなかった。
「撃ってみるか?」
「…大丈夫です」
そこでセッティングを終えた拳銃を持って聞いて来たので修也は首を横に振った。相変わらずだなと思って彼は隣に立つ少年を見ると、ザスマンは銃口のネジ切りに消音器を付けると、持っていた拳銃の引き金を引いた。
軽い音が射撃場に響くと、ザスマンの撃つ様子をつまらなさそうに修也は見ていた。すると彼は三発ほど撃った後に拳銃の安全装置を付けて渡して来た。
「ほれ、撃ってみろよ」
「…大丈夫ですよ?別に」
「良いから良いから。正しい打ち方ってのを教えてやるよ」
そう言うと彼は修也の手に拳銃を握らせて使い方を教えていく。
「この照星を合わせるんだ。よーく狙って引き金を引く」
彼は射撃を楽しんでいる様子で修也に照準の仕方を教えると、修也は渋々銃を両手で握り込んで照準を向けた。
「…」
そしてしっかりと両手で握り、引き金を引いた。
消音器の付いた二二口径弾ともなると反動は軽く、修也ほどの体格もあれば反動は受け流すことができた。
「もっと脇を締めろ、疲れちまう」
その射撃を見て後ろからザスマンが話しかけてくる。いったい何なのだろうかと内心で思いながら後々に言われるのが面倒なので指示された通りに腕を少し曲げて脇を締めて引き金を引くと、確かに先ほどよりも撃った後の反動が楽になった気がした。
「流石だな」
「…まあ」
そこで拳銃を置いて彼はザスマンを見上げる。すると彼は先ほどの受付に立っていた男に話しかけられていた。
「そろそろ飯にするが、お前達もくるか?」
「おお、お邪魔させて貰うわ」
そこでザスマンは頷くと、次に修也を見る。
「んじゃあ、そろそろ飯にすっか」
「何処に行くのですか?」
「ここにあるグリル。プルドポークがまた絶品なんだぜ?」
ザスマンはそう言い修也を案内すると、途中から炭火の香ばしい香りが漂って来た。
「よう、先始めてるぜ」
そこでは大人も子供も一緒くたになって皿を持ってバーベキューを催していた。
「新入り連れて来たぜ。ほら、挨拶」
「赤羽修也です。今日は…宜しく願いします」
ザスマンに言われて自己紹介をすると、彼を見た数人が反応した。
「へえ、日本人?」
「お前が日本人かよ。珍しい」
「大学の知り合いなの」
ザスマンはそう言いグループの中に居た日本人の面々を見る。
「へえ、赤羽くんか」
「若いな、飛び級か?」
そこで口々に日本人のメンバーは修也を見て話しかけてくる。
「赤羽くん、日本語は?」
「大学に入る前の数年は日本にいたので…」
「おお、そうかそうか!」
そして日本語を話せると聞いて更に気を良くする彼ら。
「宜しく」
「は、はい…」
そこで手を差し出されて少し緊張気味になる修也。どうして射撃場だと言うのにグリルを囲んでバーベキューをしているのかは定かではないが、日本にいた頃は最低限の付き合いで同級生との交流はしていたので、大して世間知らずな事はないと思っていた。
「もしかして飛び級したの?」
「はい…一応」
「おお、すげえな」
そして修也の容姿を見て彼らは驚いていると、このパーティーに参加していた他の子供達が羨望の眼差しを向けた。
「ええ、お兄さん飛び級してるんだ!」
「凄えー!」
彼らはこのパーティに参加している面々の子供達であり、修也を見て口々に話しかけてくる。そこで彼らは根掘り葉掘り聞いてこようとするので、途端に鬱陶しいと思ってしまった。
「ほらほら、コイツあんま人慣れしてないんだから」
するとザスマンが軽くそんな子供達を諌めるように話しかけると、皿を持って修也に渡していく。
「チリコンカンとかプルドポーク、他にも美味いものはあるから食ってけ」
そう言いザスマンがテキパキと用意されていた料理を取り分けて持ってくる。
「どうしてこんな事を…」
「んなこと言うな。全部忘れるって事も覚えろよ」
ザスマンはそう言って修也に取り分けた皿を押し付けるように渡すと、修也はそこでプルドポークをフォークで刺して一口、口に頬張る。
「どうだ?」
「…美味しいです」
「だろ?」
こんがりと焦げ目のつけられて、フォークで触れるとすぐに崩れてしま居そうなほどよく仕込まれたプルドポークは修也も美味しそうに食べていく。
「普段からまともに飯食ってないからな。これを気にマトモな飯を食べようぜ?」
「…食事をする行為が面倒くささを上回れば食べますよ」
「だから最低限すぎるんだって…」
ザスマンはそう言い、半眼気味に修也を見た。
「ねえねえ、こっちに来なよ〜!」
すると食べていた修也は腕を引っ張られると、そこで他の子供達が座っていた場所に案内された。
「こっちにお菓子とか用意してあるよ、修也。食べない?」
「…ごめんなさい。あまり甘いものは…」
「もしかして苦手なの?」
「いえ…ただ味が濃いので…」
修也はそこで他の子供達を見ながら少しだけ日本のことを思い出して苦手意識が蘇りながら対応していく。
「あー、分かる分かる」
するとその席の中で日本人の子供が頷いた。
「アメリカの菓子って甘ったるいよなー」
「日本だとどうなのよ、甘くないの?」
「こんな甘くねーって話だよ」
彼はそう答えると、次に修也を見た。
「ほら、一緒に食べようぜ。あ、お菓子じゃねえからな」
「…失礼します」
そんな対応をされ、修也は『ここは日本でないんだ』と気を取り直すように、しかし初対面であるのでやや畏まりながらその席に座ると、そこで同世代の面々は修也を見る。
「今何歳なの?」
「十四になります」
「すげぇ!俺と同い年だ!」
年齢を答えるとそこで同じ席に座っていた彼らは更に盛り上がっていた。
「十四で大学かよ」
「すげぇ天才だってのは有名な話さ」
修也を見ながらザスマン達はそう話していく。
「身長もそうだが、本当に十四歳なのか?」
「らしいぞ、まああの身長のおかげで大学でもあんまり違和感持たれていないんだけどな」
射撃クラブの催していたバーベキューに参加していた彼らは、新人となる修也に驚いています。
「親は?」
「日本にいるってよ、まあ俺が半分子育てみたいなことをしている時点で察せよ」
「何てこった…」
ザスマンの話を聞いて彼らは何とも言いようのない驚きをしていた。
「放任もすぎるぞ。捕まるんじゃないのか?」
「学生寮だからな、仕方ない部分もあるんだろう」
「いやだからって…子供一人で海外に行かせるとかどう言う神経してんだよ」
そこで修也の家族の対応に彼らは引き気味に言っていた。
これに関しては彼の家の環境が大きく関わっていたのだが、彼らは知らぬところであった。
「本当は、今日もあんまり乗り気じゃなかったんだがよ」
「その割には楽しそうじゃあないか」
そこで一人が戸惑いつつも話のキャッチボールをしている様子の修也を見る。そこでは年相応の十四歳の少年少女の輪に混ざっている修也を見ていた。
「連れて来て良かったかな?」
「あの様子ならな」
そんな光景にザスマン達も安堵した様子で修也を見ていた。
「…?」
その時、修也はこの射撃場の店主の足の動きを見て首を傾げた。
その後、日が落ちる頃まで料理に舌鼓を打ってから帰路についた。
「どうだった?」
「…別に」
ザスマンは運転をしながら聞くと、修也は窓の外を見ながら素っ気なさそうに答えていた。しかしザスマンは彼が行きではずっと眺めていたタブレットを持たず、視線が射撃場の方を何度か気にしていたのを見ていた。
大人っぽくても中身は結局子供なんだなあと笑いそうになってしまいそうなところを抑えてザスマンは助手席に座る少年を気にかけながら大学に帰る道を走った。