もうネタが尽きかけているのであと数話でアリシ編に行くと思います。
四月二十日 大陸南端 衛星都市『ラサ』
一周年記念で拡張された大陸各地に形成された衛星都市の一つ。この地は大陸南端ということもあり温暖な気候で、海に面しており、近くには川も流れていた。
「すごい、広告の数……」
「こりゃ観光地だな」
この街に雲豹で到着した二人は外の様子を眺めながら思わずそんな事を呟いてしまった。
と言うのも海岸側の道路にはバラックの店が立ち並び、道沿いには大きな立て看板がいくつも並んだ小さな観光地があった。
と言っても海には大量のクリーチャーに海獣がウヨウヨとしており、とてもじゃないがALOのような綺麗な海とはかけ離れた見た目だった。
それでも海岸の砂浜では野郎どもがバーベキューをしていた。
「衛生都市を回ってはいるが……」
「どうする?すぐに移動する?」
「…どうせなら此処のモブを狩っていくのもいいかと思っていたが……」
「じゃあ、あそこ行かない?」
シノンが指差した先には朽ちた大きな釣り橋があり、道中では何台かの車が止まり、横で釣り糸を垂らしていた。
軍服を着ている二人は橋を見ると行き先が決定した。
橋の真ん中ら辺まで来たフリューゲルとシノンは慣れた手つきで車から降りると橋から景色を眺めていた。
「綺麗ね……」
「ああ、向こうの山脈まで見えるんだな」
橋から見えた景色に思わず感嘆の声を漏らしていた。橋は大河の上に架けられており、青々とした川の上流の方を眺めると遠くに雪の積もるグロッケンと南方地域を隔てる山脈が見え、壮大な景色を見せていた。
景色に見惚れているとフリューゲルがさっきの街で買ってきた釣竿をシノンと一緒に車上から垂らしていた。
そして橋の上でのんびりと待つ事十分、いまだに餌に食いつく様子はなかった。
「…暇だな」
「暇ね……」
「「……」」
お互いに無言の時間が過ぎながら車上から釣竿を引っ掛けて待っていると不意に声をかけられた。
「おやぁ?そこにいるのは噂のシノンとフリューゲルじゃねえか?」
「なんだ…
そこには赤いモヒカンと黒い衣装が特徴の闇風と、銀色の髪にぴっちりとした服が特徴の銃士Xだった。
第三回BoBで共にキリトにぶった斬られたプレイヤーだが、あの大会以降ちょくちょく遺跡巡りなどで行動することが多い仲だった。
ちなみに二人はカップルではないかと言う噂がある。
「相変わらずしけた顔をしているな。釣りか?」
「そんな所だ。二人は?」
「新しいマップを見て回っている。一周年記念で追加された部分のな」
「広くなったからな……移動が大変だろう」
「戦車持ってるお前だけには言われたくねえがな」
そう言いながら闇風と釣竿も他所に新マップの情報交換をしていた。シノンとXは車の上で別の話をして盛り上がっていた。
「……で、ここから北西に行ったところにヨーカって言う西部劇みたいな街があった」
「西側にはマースという街があって、そこには目ぼしいものとかは特になかったな……」
「なるほどな……」
マップ情報の共有を終わらせた二人は改めて解放されたマップの広さに呆れていた。
「全く…マップが広すぎて泣けてくるわ。ただでさえ移動とかきついのに……」
「乗り物を買う人が増えそうだな」
「実際、バイクがよく売れているらしいぞ」
「成程な……」
二人ともゲーム発売初期からいる所謂古参勢なので、今までのマップもある程度は把握していたが、今回新マップが追加されたことで新マップの把握に大忙しだった。
「ここら辺は海洋生物のクリーチャーが釣れるらしいな」
「ほーん」
「なんでも釣り上げたらそのまま交戦状態に入るんだと」
「ほーん」
そう言えばクリーチャーの設定とかやったなぁ……なんて思いながら空を飛ぶ鴎を見ていると地面が少しだけカタカタと揺れた気がした。
カタカタッ
「…ん?」
その違和感に首を傾げると、悲鳴が聞こえてきた。
「わああぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
「ヤバイよ!ヤバイよ!」
すると何人かのプレイヤーが走りながらこっちに逃げてきており、何事かと思っていると振動はどんどん高まっていた。
ガタガタガタ……
「「「「……え?」」」」
四人が目にしたのは信じられない光景だった。橋を20メートルはあろうかと言うほどの巨大な機械ザメが大きく口を開いて海面から突き上がっているではないか。
そして機械ザメは橋ごとプレイヤーを飲み込むとそのまま海に沈んでいった。一瞬の光景に四人は直ぐに動いていた。
「やるぞ!」
「ええ、やってやるわ!」
「私は大丈夫」
「いつでも行けるぞ」
崩落していく橋を見てフリューゲルは運転席に滑り込んでレバーとハンドルを握り、車体を勢いよくバックさせた。
体が前に傾く感覚を感じながらフリューゲルは外の景色を眺めていた。
フリューゲルの横の席には闇風が半分身を乗り出して射撃姿勢をとり。射撃席にはシノンが座り、イクスは砲塔から身を乗り出していた。
「シノン、射撃用意」
「……良いの?」
「これ以上橋を壊されたら先に行けなくなる。そしたら遠回りしないと行けなくなるから面倒だ」
「それは面倒ね。一回壊れたオブジェクトは修復されるのに時間がかかるから……」
「ここでやるしか無いか……」
車に乗り込んだ四人は図らずとも共闘という形で闇風とXは車から銃を持って身を乗り出していた。
「ボスの名前は?」
「えーっと……『機械海獣メガロドン』って出ている」
「デカイなこの野郎!!」
「まずは敵の攻撃パターンを確認する。銃の攻撃が通るかどうかを確認だ」
「了解」
フリューゲル以外の全員が身を乗り出して各々銃を放つ。イクスは《Mk14 EBR》。闇風は《キャリコM900A》、シノンは《ヘカートⅡ》を持って機械ザメに射撃をするとザメはフリューゲルの車をロックオンしたようで視線を向けて突っ込んできた。ダメージは一応通るようで体力バーは少しだけ減っていた。
ブォォォオオオオン!!
スピードを上げて徐々に陸地側に移動するフリューゲル達はサメの攻撃に注視していた。機械ザメは大きな巨体を使った体当たりや、ミサイル。レーザーで攻撃をして来たが。フリューゲルは車を左右に揺らしながら攻撃を避けていた。
「図体がデカいから攻撃も激しいわね……」
「橋がボロボロだぞ」
「シノン、次の攻撃の時に105mmで鼻を狙え。おそらく弱点だ」
「了解」
シノンに司令を送り、測距儀を起動すると手に発射レバーを握った。
闇風達はシノンの腕を知っているので大ダメージを期待しながら二人は様子を眺める。
水辺から一気に飛び上がってくる機械ザメが橋の穴を通過した一瞬。
「……」ドォォン!!
放たれた105mmの砲弾は機械ザメの鼻先と接触、爆発して機械ザメの鼻を吹き飛ばした。
『GYAAAAAAAAAA!!』
悲鳴のような機械音声を上げながら機械ザメは橋から落ちた。
「……やったか?」
「いや、リザルトが出ない。まだ生きている……!!」
ザバァン!!
水の音が聞こえると、鼻が大破した機械ザメは体から
「うっそだろ……」
「もう何でもありじゃん!!」
「どうする?」
「取り敢えず逃げるしか無いだろ……」
『GYAAAAAAAAAA!!』
「っ!?来るぞ!」
後退しながらジグザグに避けるフリューゲルは間一髪で突っ込んでくる機械ザメをかわした。
「また面倒な奴ね」
「体力も後少しなんだ。さっさと片付けるぞ」
「勝ったら祝杯でも上げたいな」
「それ、良いわね」
四人はそれぞれそんな事を話しながら陸を走る機械ザメを追っていた。四本脚で陸上を走る機械ザメに、闇風とイクスは車を降りて接近戦を仕掛けようとしていた。
フリューゲルも運転をやめて運転席からPKPペチェネグを機械ザメに向けて銃を撃っていた。105mm砲の威力は凄まじかったようで鼻の部分は火花を散らして動きも少しだけ鈍くなっているように見えた。
機械ザメはボロボロの鼻の部分を見せながら最後にミサイルの乱れ打ちをしていた。
ミサイル自体は無誘導のようで一直線に飛んでくる物をシノンがヘカートⅡで撃ち抜いていた。
そして最後は闇風とXが仕留め、組んでいた自分達にもリザルトが出た。
大量のクレジットとアイテムが二人のストレージに現れた。ネームドモンスターという事でアイテムも豪華だった。
《メガロドンの装甲片》
《メガロドンの装甲片》
《メガロドンの装甲板》
《二十連装ロケットポッド》
《二十連装ロケットポッド》
《レーダー射撃装置》
アイテムを確認した二人はロケットポッドに目が行き、オブジェクト化させると円筒型の兵器が浮かび上がり、中に二十本のロケット弾が詰まったロケット弾発射筒が出て来た。
「これって……」
「確実にこれ用だろうな」
そう言い、フリューゲルはロケットポッドをタップするとホログラムが現れ、ミサイルポッドがどこに付けられるのかなどが浮かび上がった。
二人は二つあるロケットポッドを車体に取り付けてプチ改造をすると闇風達が戻ってきてついでという事でラサまで戻る事になった。
ラサに戻ったフリューゲル達は闇風達をラサの街で降ろし、そこで祝勝会として小さめの宴会を開き、その後二人と別れた。
「じゃあまた会おうぜ」
「ああ、宜しくな」
「シノン、また今度組もう」
「ええ、その時は宜しく」
そうして、フリューゲルが運転席に入るとレバーを引いて装輪戦車はラサの街を後にしていった。
そんな二人を見た闇風がふとつぶやいた。
「俺も車買おうかな……」
「辞めときなさい。アンタは欲張って失敗するタイプなんだから……」
「でも、バイクくらいは欲しい気もする」
「だったらここで貯めてリアルで買いなさいよ」
「いま、金欠だぁ……」
そんな事を話しながら二人は金策の凄く上手い赤いプレイヤーを思い浮かべていた。