二〇二五年 二月十三日
この日、詩乃は明日奈の家にお邪魔してチョコを作っていた。
「しののんすごい上手だね」
「え?そう?」
「うん。私も結構頑張っているけどしののんと同じくらいだもの」
そう言われ、詩乃が手元を見ると其処には焦がしたビターチョコレートにココアをまぶし、コーヒー豆をあしらったチョコレートがあった。
アスナと違い、大人な印象の見た目と味をしているそのチョコは詩乃の手で丁寧に梱包されていた。
「修也が色々と教えてくれたからかな……?」
「あぁ、確かに修也はすごい料理上手だもんね」
「アニメとかに出てくる料理をそのまま再現できるのってすごいと思う」
そんなことを言いながら包装をしていると不意に詩乃が明日奈に聞いた。
「明日奈。去年修也って何個くらい貰っていたの?」
「え?何で?」
「ほら、修也って紳士的というか、同世代でも大人びているから、そう言うの好きそうな人って多いから……」
修也の性格を思い出しながら詩乃が聞くと明日奈は微妙そうに指を四本出した。
「四個?」
「ううん…………四十個」
「はぁ!?」
思わず声に出して驚いていると明日奈は申し訳なさそうに細かい数と追加で説明をした。
「細かく言うとチョコは四十三個貰って、十人から告白されてた。それも私が直接見たのだから本当はもっと多いかも……」
「……」
「あぁ、もちろん告白は全員断っていたよ!!!」
「……そうよね…ふぅ」
慌てて明日奈はそう言うと詩乃はホッとした様子で梱包したチョコを置くと明日奈はさらに続きを話した。
「修也さんが言っていたんだけどアメリカだとバレンタインは愛する人や親しい人に感謝や愛を伝える日なんだって」
「というか、それ以外に何かあるの?」
「え?あぁ…うん、そうなんなけどね……」
明日奈は他にもアメリカのバレンタインの文化を聞いていたが、今言うべきではないと直感的に感じて続きを言うことはなかった。
そして二人はチョコを作り終えると詩乃が明日奈の家を後にした。
「今日は色々とありがとう」
「いいよいいよ、私も作る相手がいて嬉しかったから」
明日奈と短く別れをすると詩乃はそのまま家に戻ると自分の部屋の冷蔵庫に閉まった。
修也は現在バイトのため家には居なかった。ちなみに、バイト先は何なのかは教えてくれなかった。
修也と同棲しているマンションの部屋は4LDKと言う大きな部屋でマンションの一階分を丸々使い、外にはバルコニーまであった。
藤吉さんの所有するマンションの一つだそうで、藤吉さんは関東中にマンションやビル、土地を持つ大地主らしい。
修也はその中から学校に一番近いマンションの空いている部屋を藤吉さんから渡されていた。
最新式の電子錠に、鍵がないと乗ることもできないエレベーター。天気が良ければバルコニーからは富士山を眺めることの出来るこの部屋は普段パソコンばかり眺めている修也には正直勿体無いと言うような部屋だった。
詩乃が此処でお世話になるまで修也の
だが、年を越した後。部屋の模様替えで、図書室は本をリビングに出して其処にベットを運び入れて寝室にしていた。
寝室となった部屋には図書膣の名残で本棚が残してあり、其処には二人が読む本などが置いてあった。
入りきらない分はリビングのテレビ台の空いている部分にしまっていた。
今までとは打って違い、豪勢な生活に詩乃は初めはタジタジだったが、三ヶ月もすればすっかり慣れてしまっていた。
そんな生活をしている中で、修也と詩乃の部屋にはそれぞれ飲み物程度しか入らない小さめの冷蔵庫があった。
これは修也が飲み物をすぐに取り出せるようにと買ったもので、詩乃の分と言って買ってもらったものだった。
今この中には冷蔵する必要のある化粧品やスプレー缶や若干のジュースが入れてあった。
温度的にチョコレートを保存するにはとっておきの場所であり、詩乃は明日が待ち遠しかった。
ちなみに修也の部屋の冷蔵庫には飲み物のほかに常時冷却する必要のあると言うよくわからない機械が詰まっていた。
少なくとも安易に触ってはいけない物だと直感的に察っせた。
翌日 二月十四日 バレンタイン当日
土曜日の今日。詩乃は学校がなく、修也は昼に帰ってくる予定だ。
詩乃は帰ってくる修也を待ちながら部屋で待っていると扉の開く音がしてガサゴソと何か擦れる音と運ぶのに苦労している様子の声が聞こえ、リビングの扉が開くと紙袋パンパンに詰まったチョコレート菓子を抱えた修也が制服を着た状態で帰ってきた。
「帰ったぞ〜」
「あっ…うん……その荷物なに?」
「学校でもらったお土産。こんなにいらないのだが……」
面倒臭そうに台所の冷蔵庫に全部入れていた。
今日が何の日かを知らないわけがないはずなので、詩乃は修也に恐る恐る声をかける。
「修也、そのチョコどうするの?」
「ん?あとで全部食べるよ。あとで二人で頂こう」
そう言うと修也はそのまま自室に戻ると修也はすぐに戻って来て詩乃の反対側の椅子に座り、卓上の赤いリボンで結ばれたブラウンの箱を見るとその横に緑色のリボンに赤色の箱を置いた。
修也の取り出した箱に詩乃は思わず疑問に声が出てしまった。
「これって……」
「あれ?明日奈から聞いていないのか?」
「うん…何も……」
そう言うと修也はなるほど言って様子で納得をすると詩乃に説明をした。
「アメリカじゃあ、チョコレートを渡すのは男性からなんだ」
「へぇ…そうなのね……」
思わずお互いにダンマリとしてしまうと、修也が口を開いた。
「……ま、取り敢えず私は詩乃のチョコをいただくよ。早く他の余りを食べたいからな」
「!!」
詩乃が驚きながら修也を見ていると修也は詩乃の作った箱を丁寧に開けて中身を取り出していた。
「ほぅほぅ、見た目も綺麗で…美味いな……やはり詩乃のを最初に食べて正解だったな」
「あ、ありがとう……///」
思わず顔を火照らせながら詩乃も修也の作ったチョコレートを見た。
中身はミルクチョコレートとビターチョコレートを交互に置き、その上からルビーチョコレートをかけた、店にも出せそうなほど綺麗だった。
「……美味しい」
一口チョコを食べた詩乃はそんな感想を言うとお互いに作ったチョコを食べ終えると、修也は先程しまっていたチョコを取り出すとため息混じりに呟いた。
「これも食べなきゃいけない。詩乃も食ってくれるか?」
「ハハハ……」
詩乃は思わず苦笑しながら机に出されたチョコレートを修也と一緒に食べていた。
数時間後、詩乃は夕食の場で修也に聞いていた。
「ねえ修也。BoBって次いつやるの?」
「え?うーん、十二月の事件があってからなるべく控えていたんだけどな……」
「そろそろやりたい」
「……いいのか?」
「大丈夫。もう、怖くないから……」
詩乃は今のGGOの目的が変わっている事に気づいていた。
前はただ強さを求めて荒野を駆けていたが……今はもう違う。
ただ純粋にゲームを楽しむ。
詩乃は最近はそんな風に思いながら荒野を修也と共に駆けていた。
ゲームが楽しい、GGOが楽しい。
そんな風に思いながら詩乃は修也と共に銃を撃っていた。
最近は修也に教えてもらっているおかげか。勉強時間が変わっていないのにも関わらず成績が伸びていた。
修也曰く、『正しい方法で勉強をすれば時間が少なくても成績は簡単に上がる』らしい。
今、思えば修也が勉強をしているところを見たことがない気もするが……。
と、そんなことを勝手に思いながら詩乃は少し悩んでいる修也を見て、もう一押しした。
「それに、私の今の実力も見てみてみたいから……」
「……分かった、いつできるかはわからないが……相談はしてみよう」
「ありがと」
修也がそう言い、詩乃も嬉しそうにすると修也は席から立ち上がって私室に入る。
最近、私室に篭ることが多い修也だが。どうやらバイトでロボットを作っているらしい。
一体どんなバイトなのだと、思わず聞きたくなってしまったが。修也の邪魔をするわけにはいかないと思い、詳しくは聞こうとも思わなかった。
その日の深夜
寝室で本を読んでいた詩乃は修也が寝巻きで入ってくるのを確認した。
「なんだ、まだ起きていたのか」
「ええ、修也にまだまだ話したいこともあったし」
そう言い、修也の隣で布団に入った詩乃がそう言い、修也もやれやれと言った様子で詩乃の隣の布団に入った。
「ねえ修也」
「なんだ?」
「来年もこんな感じで行きたい」
「…なんだ、そんな事だったか……」
「何よ、その言い方」
「いや、嬉しいと思っただけだ」
思わず膨れっ面の詩乃に修也は本心を言うと詩乃も満足したようで少しだけ笑うと、来年はチョコを送り合うことが決まった。
ようつべで沢城さんの歌うルージュの伝言を聞いて興奮してしまった……。