その日、修也のマンションでは何人かの青年少女達が話に花を咲かせていた。
そんな中、修也は台所で包丁を握っていた。
「おーい、飯が出来たぞー」
「「「「了解〜!」」」」
「飯だー!!」
一人だけやけに元気にテーブルに座り、『飯だ飯だ』と騒ぎ立てて恋人に見っともないと叩かれていた。
それを見て、他の女子達が苦笑しながら修也の料理を見て感嘆の声をあげる。
「「「「わぁ〜、美味しそー!!」」」」
各々『頂きます!』と手を合わせると大皿から盛り付けて料理を食す。
美味い美味いと言ってパスタを食べているとそのうちの一人、篠原里香が修也に聞いた。
「今日、本当に泊まって良いの?」
「ああ、今日は実家に帰る予定だからな」
「あ、そうなんだ」
今日は春休みのっ始まった日。今日は修也の家に学校のメンバーが遊びに来ていたのだ。
全員、定期券の途中に修也の家があることから一番良いと言うことで此処には和人、明日奈、里香、珪子、直葉がいた。
きっかけは昨日の夜、明日奈からの提案であった。
「明日、両親いないから暇だな〜」
ALOで春課題をしていたアスナがふと呟く。それにシリカやリズベットが同調する。
「あぁ……」
「確かに暇ね。春休みって短いし、進級するから忙しいし……」
「でも、何処かで遊びたいのよね……」
「此処では駄目なんですか?」
シリカの問いにアスナは不満足な様子で言う。
「うーん、どっちかって言うとリアルの方がいいなー。欲を言ったらみんなで遊べる所」
「だからって、そんなすぐに行ける場所……」
「「アッ!」」
シリカとアスナが同時に思いつく。同タイミングで思いついた二人は息を合わせる様に呟く。
「「そうだ、ブレイド(さん)の家に行こう!!」」
「何その、そうだ京都行こう。みたいな感覚……」
リズベットが若干苦笑しながら二人を見る。
「良いじゃないですか。ブレイドさんのマンション広いですし」
「それにご飯も美味しいし」
「キリトがウキウキで行くのは間違いなさそうね……」
そう呟き、キリトがよくブレイドをオカンと言ってブッ飛ばされる、天丼と化してる光景を思い出す。
でも実際、修也の作る料理は美味しい。アニメ飯を作るのがとても上手で、食を楽しみながら食べられる。
但し、作る料理はカロリー度外視で作っている事に目を瞑れば……
その点だけ目を瞑れば修也の作る料理は美味しい。なに、食べた分は動けば良い。少なくとも詩乃がそうしていると言う。
そんな生活の影響か詩乃は必然的に鍛える必要が出てきて、今では少し筋肉的になっていると言う。
それを聞いて私がジムに通う事を決めたのは此処だけの話だ。
シリカとアスナの提案を聞いて私はため息混じりにグループチャットアプリを開く。
『アスナ達が明日修也の家に泊まりたいって言ってる』
断られるだろうと思いながら既読を待っていると返事はすぐに返ってきた。
『いいぞ、明日から予定があって家を空けるからな』
『……マジ?』
思わず驚いたスタンプも送ってしまうと返答が来た。
『ああ、詩乃を一人で家に置くよりは安心できる。
五人くらいだったら泊まれる用意は出来てる』
「……嘘ぉん」
リズベットはそう呟き、チャットアプリを閉じていた。
そんな訳で修也の家には五人が遊びにきていた。
前回は最後にバタバタしてしまい。しっかり見れていなかったので、今回はルームツアーを兼ねていた。修也は用事で外出してしまったので、詩乃が案内をしていた。
昼食を終えて五人の来客はマンションの部屋を見て回っていた。
「此処は私の私室。それで、あっちは修也の私室」
「すげぇ、俺の部屋より広い……」
「色んなものがありますね……」
そして部屋を見ていると明日奈があるものに目が止まった。
「あっ!エルメスのバック!あんなの持っているの!?」
「わぁ…いいなぁ……」
「ちょっとまって、目がおかしくなりそう……」
各々自由に呟いていると、和人がある一部屋を指差す。
「なぁ、此処は何の部屋だ?」
親友の家だからと和人は遠慮無く部屋を見ていた。一応、修也から物を壊さなければいいと言われているが、これは遠慮がなさすぎる様な気もしていた。和人の指差した部屋を見て、詩乃は少し苦笑する。
「あぁ、そこは倉庫。修也の部屋にあった色んなものが置いてあるわ」
「へぇ〜、修也のか……」
「……危ないから開けない方がいいわよ」
ドアノブに手をかけた和人に詩乃が注意をする。しかし、和人は興味の方が勝ってしまい扉を開けていた。
「何があるんだろう」ガチャ
そう言い、扉を開けるとそこには物凄い光景が広がっていた。
「何だこれ……?」
「うわっ、臭!」
「何この匂い……」
「お兄ちゃん、臭いから閉めて!」
「相変わらずひどい匂いね……」
女子達が文句を言う中、和人は興奮した様子で中を見ていた。
「うおっ!スゲェ!」
部屋をよく見ると壁に沿う様に大量に積み上げられたプラモデルの箱と。それを塗装する為のインク、墨汁が置かれていた。
プラモデルは主に兵器系のものが多く、他にも色々なものが置いてあった。
和人はそのプラモデルを見て若干の興奮をしていた。
「スッゲェ…修也はこんなにもプラモデル買ってたのか……」
「か、和人くん?」
一人で興奮している和人に明日奈は若干困惑していた。
確かに修也はこう言った兵器が大好きだ。でなければGGOなどと言う銃のゲームをメインにしないはずが無い。しかし、こんなにプラモデルを持っているとは……。
驚き半分、ドン引き半分の感情で明日奈達はこの部屋に入った事を若干後悔していた。
そして、箱を見て興奮する和人を見て、男の子と言うのは基本的にこう言うのが好きなんだと実感した明日奈達であった。
和人がルームツアーで興奮している頃、修也は池袋のとある喫茶店に来ていた。
今日、彼はある人物から連絡を受けていた。
店に入ると既に用の人は座っており、修也を見てはにかんでいた。
「こうやって会うのは久しぶりだナ。ブレ坊」
「そう言うあなたもですよ。ーーー帆坂朋さん
……いや、鼠のアルゴ」
二人はそう言うと小さく微笑んだ。
久しぶりの同僚の再会に二人は花を咲かせることも無く、修也が早速用件を聞いた。
「懐かしい話もせずにいきなり取材とは……」
修也がため息混じりにそう言うと帆坂は申し訳なさそうに言う。
「いやぁ、こっちも色々あってナ。本当は色々と話したかったんだ」
「まぁ、それはいつでも構いません。色々と貴方には手伝って貰いましたからね」
そう言い修也は帆坂を見て言う。最近でいえばユウキを送る為にネットに情報を流したこと。昔でいえば須郷伸之の悪事をネットにばら撒いた事。時々この人には面倒をかけていたので、修也はこの取材に乗ったのだった。
「それより……今日は何故こんな取材を?」
「ニャハハ、相変わらずせっかちダ」
帆坂はそう言うと懐からタブレットを取り出してメモを取る姿勢をとった。完全な記者モードだ。
口調も完全に変わり、修也を同僚ではなく。取材相手として見ていた。
「では、早速……Meacシステムを開発した天才ロボット工学者である赤羽修也さんにお話を聞きたいと思います」
「やれやれ、あの情報はどっから仕入れてきたのやら……」
喫茶店を出た修也は改めて帆坂の情報収集能力に舌を巻いていた。ああ言った情報は個人情報になるので厳重に管理されているはずだ。なのに彼女が言っていたと言うことは……。
「…あの官僚か……」
面倒な事を……
修也はそう感じずにはいられなかった。取材内容を聞いたときには思わず目を疑ってしまった。一体何処で知ったのだろうかと。今まで和人にすら知られていないと言うのに……。
今度バイト先で会ったらじっくりと話を聞かせてもらいたい。
そう思いながら停めてあったバイクにエンジンをかける。修也は喫茶店で帆坂に最後に言われた事を思い出していた。
『いやぁ、まさか君が
「天才か……」
散々アメリカで言われてきた言葉だ。俺がアメリカから離れたと言うのにまだそれを言われるか……。
それが嫌で帰ってきたと言うのに……此処でもまた同じ様に言われるのか。
こうなるのが嫌だから誰にも言わなかったのに……。
修也溜息を吐きながらバイクに跨って家に戻る道を走る。
おそらく自分から言う事はないだろう。
少なくとも今は自分の過去を話そうとは思わない。もし言えば、おそらく自分を見る目が変わってしまうからだ。
友人から違う別の何かに。
それが一番嫌だった。アメリカでも、自分を子供として見てくれたのはザスマンだけだった。
だから、ザスマンが好きだった。だからザスマンの誘いで銃愛好家に入った。
そこは自分にとってはオアシスのようであった。
自分を子供として見てくれる人ばかりで、他の場所では絶対にあり得ない視線を向けてくれた。自分が何者でも、どんな子でも、同い年の子と同じ様に扱ってくれた事に嬉しくて仕方がなかった。
それ以降のほとんどの時間をそこで過ごしたと言っていいだろう。そしてずっとそこに居るうちに、次第に銃や兵器に関して好きになった。
でも、そこ以外の場所は大嫌いだった。
だから、自分のせいでザスマン達に迷惑がかかると思った自分は祖父様の話もあって日本に帰った。
正直、ずっとあの世界にいても良かったんじゃないかとも思っている。
現実を忘れることができる。
今までの出来事を忘れて、兄の作った世界で最後まで過ごす。それが一番だと思っていた。
だけど、それでいいのかと言う自分もいた。
現実世界でやりたい事があるのではないかと言う自分がいた。
此処は偽物の世界で、本当の世界じゃないと言う自分がいた。
悩んだ末、自分は後者を選んだ。あの世界で知り合った友人達は今でも楽しい仲間として今も家に居る。
それに、恋人が出来た。
紆余曲折あったけど、今はザスマンの時かそれ以上に充実した日を送っている。
自分の事情を知らないから、同い年の青年として見てくれている。それが良かった。
あの世界はそう言う意味で自分を変えてくれた場所かもしれない。やはり、兄にはそう言った事でも感謝しか無かった。
兄はいつでも遠い人だった。
いつも自分の目標で、憧れの人だった。
兄の真意を知っても、それに自分は賛同してしまった。それは、決して許される事ではないだろう。でも、兄の役に立っているんだと自覚できて嬉しかった。
今でも、しっかりと覚えている。
兄がわざわざやって来て『手伝って欲しい事がある。これは修也じゃなければ難しい事なんだ』と言われた時ははしゃぎたいほど嬉しかった。こんなにも心が昂ったのも久しぶりだった。自分はそんな兄に喜んでもらう為に今作れる最高の物を作った。兄は作ったものを見て見返りとしてマキナを作った。
『妹の様に可愛がるんだ』と言われて、プログラムを組んだ兄は自分の作ったその金属の体にプログラムを植えて新しい家族を作った。
「今思えば家族を失った後のことを考えていたんだろうか……」
修也はふとそんな事を考えてた。今日はこの後、実家に戻って両親と過ごす事になっている。
東京の街を一台のバイクが走って行った。