ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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間話#8 親バカ

西暦二〇二六年 八月三十日 昼

都内 ダイシー・カフェ

 

その日、ダイシー・カフェには幾人かの人物達が集まっていた。和人や明日奈、里子や珪子、直葉などののいつものメンバーや、エギルや遼太郎。鋭二や悠那、更にはユージオ達までもが集まっていた。

 

その視線の先では修也、和人、鋭二が椅子に座る三つの人形とコードを繋げていた。かれこれ一時間は修也達の持参した自慢のノートパソコンと睨めっこしていた。

 

「だぁぁ、まずい!灼けちまう!」

「このコードを繋げ。外のバンと繋がる」

「修也さん。こっちのデータ移行がもう直ぐ終わります」

「よし、後は勝手にやってくれる。今は和人のバックアップだ」

 

阿鼻叫喚と言うべき光景を横目にカウンターでは里子が椅子に座り、恐ろしい量の電力を食っているだろう三つの人形を見ながら呟く。

 

「まさか修也がこんな物をねぇ……」

 

見た目は完全に人の見た目をしている……しかし中身は最新技術の塊。普通なら自分達のような一般人にはお目にかかることはない様な逸品だ。修也の招待にウキウキで飛んで来たが……

 

「何言ってんのか全然分かりませんでしたね」

「大学生の鋭二さんでですら限界だったしね」

「むしろすんなりと理解してる和人が可笑しいのよ」

「でも、こんな凄い物を近くで見せて貰えるなんて……修也さんは器が大きいですね」

「あら、修也は前からこんな感じよ?」

 

カウンターで女子達がそう話していた。ここ最近、みんなでダイシー・カフェに集まる事が多かった。理由としては夏休みだから全員が家にいる事が多いからと言うのと、集合場所にしやすかったと言うのがあった。ゲームでもいいじゃないかと言うかもしれないが、やっているゲームもバラバラで予定が合わせづらいのだ。だったらいっその事現実世界で集まった方が良いと言う事だった。

ユージオ達に関してはカフェの席で現実世界の料理に夢中になって食べていた。

こっちに来てからと言うもの、食べ物に目が無い二人は経費で落ちるからととことん食べたい物を食べていた。

 

 

 

 

 

儲けを考えなくていい国営企業でやりたい放題にやった結果、なんと食べ物を食べてエネルギーを作れる器官を搭載してしまったと言う。それなんてオーバーテクノロジー……

少なくとも説明を聞いた和人が『意⭐︎味⭐︎不⭐︎明』となった代物とだけ言っておこう。

 

三人は各々自慢のパソコンを持って来て、それらが悲鳴を上げながら処理を終えたようで、三人が大きくため息を吐いて机に突っ伏していた。

 

「「「はぁ〜終わった〜……」」」

「「「お疲れ(様)!」」」

 

そう言い、倒れた三人の元にそれぞれの恋人達が飲み物を差し入れる。それを受け取ると、和人が最初に口を開いた。

 

「いやはや、俺のパソコンが壊れかけたぞ……あれ結構高いのによ…」

「いやぁ、まさかここまでとは……」

「だが、後は起動すれば良い」

 

そう言うと修也は目の前に並ぶ三人の少女達を見ると満足げな表情を浮かべた。

 

「(やれやれ……全部吐き出されたからか、随分と気が楽だな……)」

 

そう思いながら修也は何日か前の出来事を思い出していた。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数週間前

新生アインクラッド第二二層 キリトのログハウス

 

そこでは何人もの人が集まっていた。メンバーはキリト、アスナ、リズベット、シリカ、リーファ、ノーチラス、ユナ、クライン、シノンだった。

 

「ーーー成程…」

 

シノンとアスナから聞いた話を聞き、クラインがそう答える。他の面々は驚愕や納得の色を見せていた。

現実世界で何徹もして爆睡中のブレイド。彼の全てを知った彼らは同情し、心を痛めていた。

 

「その……何と言うか……」

「大変だったんですね……ブレイドさんは……」

 

リズベットとシリカが言いづらそうにしているとキリトが言う。

 

「正直、俺も初めは信じられなかった。………普通思わないだろ。血の繋がった兄が、あんな事件を引き起こすだなんて……」

「「「「「……………」」」」」

 

ここにいる全員が同じだった。リーファからしてみれば、あり得ないがキリトが大事件を引き起こした黒幕になると言う事だ。おまけに、その事件に自分も巻き込まれてしまった……

それでいて心を平常に保てただけでも凄いと思う。それなのに……

 

 

 

大勢を助ける為に実の兄に手を掛けた。

 

 

 

キリトが最終戦での話を全くしないのがクラインは理解できた。ここにいる面々で75層での戦いを見ていたのはキリトを除くと自分とアスナのみ。あの現場で、ブレイドが泣いているのを見ていた彼はその理由が嫌でも理解できた。

 

「辛い事を……させちまったんだな……」

 

クラインはポツリと呟いた。あの戦いを見ていたからこそ、アスナもその意味が十分に理解できてしまった。

 

 

 

ノーチラスやユナはユナの実父である重村教授と関係があった人物との関係に驚愕せざるを得なかった。

 

「まさか……茅場晶彦と修也さんが兄弟だったなんて……」

「私も……知らなかったです……」

 

直前にALOで特別ライブを終えた後だと言うのに、完全にその熱も冷め切ってしまっていた。彼らにとってブレイドは命の恩人であり、親しい友人。現実世界でもよく会っている人物だ。その人と、自分たちをあの世界に閉じ込めた人物との関係に息が止まってしまった。

 

 

 

全員が暗い雰囲気になってしまい、しばらく呆然としてしまっているとリズベットが口を開いた。

 

「でも納得が行った。何でブレイドが私たちと深く関わろうとしなかったのか……

 

多分…申し訳なかったんだろうね……実の兄がこんな事件を引き起こして…それなのにあの世界で生き残ってしまった事に……」

「そうかもな…恐らく彼奴がGGOメインでゲームをしているのも……」

 

キリトが反応するとリズベットは答える。

 

「きっと……自分の立つ瀬が……ここには無いと思っていたんだろうね……だから滅多にここには来ない……」

「辛く無い……訳ないよね……」

 

リーファの呟きに全員が思ってしまう。シノンはそこで口にする。

 

「ブレイドは茅場晶彦と差し違える事で贖罪をしようとした……だけど実際は生き残ってしまった……」

 

その時の気持ちは形容し難い物だっただろう。恐ろしい絶望と虚無で廃人となっていてもおかしく無かったのに……

それでもブレイドは生きる事を決めた。次の死に場所を探す亡霊の様に……

 

 

 

全員が暗い雰囲気になった所で、リズベットが口を開いた。

 

「ーーいやぁ、まさか彼奴が大学を卒業していただなんて思わなかった」

 

重く暗い雰囲気を紛らわす為に話し出した内容に他の面々も同じ様に口にした。

 

「そ、そうですね。……やっぱりブレイドさんは天才だったんですね」

「ふんっ、やっと化けの皮が剥がれてスッキリしたってもんよ」

「そ、そうですね」

 

話題変えて話している中、キリトはそっと目を閉じてあの時の事を思い返していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

シノンから事の全部を聞かされ、全員がどんな反応をするかと思っていたが……変わらなく接してくれて心底ホッとした。寧ろ、

 

『あんたが社会人なことにビックリだわ』

 

と言われてしまい、マキナがAIである事にも驚かれた。その後の和人の追求にも驚かざるを得なかったが……

 

 

 

そんな訳で和人の要求とマキナの機体の新調とタイミングが被ったから。前に使っていたマキナのあの身体をキリトのユイちゃんのために設定し直して中古という形だが、和人に譲る事にした。その時、和人が『良いのか?!』と言っていたが、問題ないと答えると和人も納得してくれた様子だった。

 

「……さて、三人を起こすとしよう」

 

予算の関係上、ユージオ達よりもパーツをオミットしているが、食べる動作が出来ないだけで、後は変わらないと言ってもいいだろう。修也は脊椎部分にある指紋認証式のボタンをタップし、スリープ状態の三機の電源をつける。するとパチッと瞼が空き、三人が顔を上げる。

 

「パパーッ!」

 

起動するや否や三人の中で最も小さいユイが和人に飛びかかる。胸に飛び込むユイを和人は両手で迎えるが……

 

「ゴホッ!」

 

百キロ近くもある金属の体は和人の体にダメージを与えた。衝撃を受け、後ろに倒れてしまった和人を見て全員が笑ってしまった。

 

「ユイちゃん!?」「か、和人くん!?」

 

その様子を眺め、場が和んでいると修也の元に二人の少女が歩み寄る。

 

「マスター」

「……動作に問題は無さそうだな」

「ええ、快適ですよ」

「流石はマスターですね」

 

そこには背が大きくなって高校生くらいの見た目となったマキナと新規で設計したストレアがいた。最新型のバッテリーを搭載し、充電無しでも一ヶ月は持つ優れものだ。試験的に燃料電池搭載型も設計したが、見積もり時点で予算オーバーになるのでまたいつかという事になり、旧来のバッテリー型で我慢していた。因みに体はネット環境下での姿を完全に模しているので、ストレアの大きな胸部装甲に遼太郎が凝視をし、取り敢えずそれに気づいた里子が頭を引っ叩いていた。

 

「自分も新しい身体をもらいましたが、良いですね……」

 

体の節々を動かしながらストレアが呟く。ゲームの世界でも、現実世界でも同じ動きができるこの体にストレアは驚きの声を出した。

人体の体を徹底的に解析し、人と同じ形の筋肉や骨を模した構造を持ち、擬似神経結晶とMeacシステムを使って思いのままに動かせる物を作っていた。

何日も徹夜して、アスクレーやラースからも部品を取り寄せて作ったそれに、今までの疲れも霧散するくらい今は気分が良かった。ユージオ達の世話をほっぽり出してしまったが……凛子さんには感謝しかない。新しい身体に慣れるのに時間が掛かるかもしれないが、それまでは積極的に動かしてもらおう。

するとマキナが嬉しそうに身体を自在に動かしながら小さく言う。

 

「念願が叶って良かったです」

 

その呟きは二年前、ALO事件の際にアスナの写真を見たマキナが呟いた一言だったのを思い出す。確かにあの時からマキナの要望に答える形で身体を作った。この前の事件でマキナは存分に働いてくれたと父から聞いている。

この身体を作る為に振り込まれた金のほとんどを使ってしまったが、いずれはこれを作る技術も追いついてくるのだろうかと考えながら盛り上がっている和人達を眺めていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ユイタンクと違い、完全な人型のユイに大興奮の明日奈と和人。するとそこに水を指す様な形で珪子が聞く。

 

「これ……どの位お金が掛かったんですか?」

 

そう問うと和人は自信満々に答える。

 

「予算が足りなかったからな。修也にローンを組んで貰ったんだ。()()()で」

「「「「五百回!?」」」」

 

消費者金融も真っ青になりそうなくらいの回数に驚愕する里子達。すると和人は詳しく話し出す。

 

「まとめて払える金額じゃないからな。何回かに分けて払うことにしたんだ。払える時にまとめて払う事もできるし、問題ないさ」

 

そう言い、和人は良い買い物をした人の顔をすると周りの人達はドン引きしていた。

 

「「(うわぁ、親バカって怖い……)」」

 

ユイを見ながらそう感じる里子達であった。




早くユナイタルリング編を書きたいけど、展開が読めないから投稿しずらいなぁ……
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