夜の星明かりがよく目立つ砂漠地帯の一角。そこでは砲声が轟き、所々砂柱が立っていた。
そんな砂丘の裾野の一角。そこでは複数人のプレイヤーが隠れていた。
「くっそぉ…あのマッドめ……後で文句言ってやる……!!」
そんな中、男の娘の格好をしたキリトがそうぼやく。するとその横で動きやすい青を基調としたコンバットスーツを着たユージオが答える。
「それ、ブレ……フリューゲルに言っても意味あるかなぁ……」
「何も言わないよりはマシだろ」
そう言いながら二人は先ほどから止まらない砲撃に四苦八苦しながら隠れていた。
マキナ、ストレア、ユイの人形を作った翌日
GGO 四号大陸横断高速線
そこでは一台の装輪戦車が疾走していた。その上では何人かがタンクデサントをして風を感じていた。
「ヒャッホー!」
「ひええぇぇぇえ!!」
「おー、落ちるぅぅう!!」
時速100キロで障害物ありきの高速を左右に避けながら走り、砲塔に乗っていたキリトとユージオが悲鳴を上げ、リーファは嬉しそうな声を上げていた。デサントをしている物は他にもおり、そこにはノーチラスやユナの姿まであった。
「すごい飛ばしますね」
ノーチラスがそう言うと運転席にいるフリューゲルが答える。
「ああ、何で今回は人数が多い上に最難関ミッションだ。色々と忙しいぞ」
そう言いながらフリューゲルは豹丸を飛ばしていた。この豹丸も、前回から色々と拡張工事を受けた様で、前面の至る所に鉄板が追加されて貼り付けられていた。
今回、フリューゲル達が集まったのは数時間前まで遡る。夏休みも終わりかけと言うことで、最後に全員で集まろうかとアスナが提案した時に、ユナが言ったのだ。
「私達、この前ライブでGGOに行けなかったので、みんなで一緒に行きたいです」
と言うことになり、ALOでステータス上げをしていたユージオ達も新しい場所に行ってみたいと言うことで自然と全員が集まることになった。その過程でクラインやエギルも参加する事になり。
キリト、アスナ、フリューゲル、シノン、リズベット、シリカ、リーファ、クライン、エギル、ノーチラス、ユナ、ユージオ、アリス、マキナ、ストレアと言う総勢一四人の大御所となってGGOにコンバートして遊びに来ていた。全員が豹丸に乗り込むと何人かがこうして戦車の上にしがみつく形となっていた。中も結構窮屈で、普段は閉じているはずの扉も全部開けて走行していた。
しかし、こんな大人数ならとフリューゲルは今までやりたがっていたゲーム内最難関ミッションをここでやる事にした。
「ーーーで、俺たちはどこに行くんだ?」
「このまま南の砂漠地帯に向かう。ミッションはそこで始まるからな」
まぁ、詳しくは話さないでおこう……絶対嫌がるから……。
そう思いつつ、フリューゲルは高速を降りた。そして高速を降りると一旦停車して、全員が車から降りる。鮨詰め状態だった為に全員が各々背を伸ばしたりしていた。
「全員、武器は持ったか?」
フリューゲルがそう聞くと全員が各々剣や銃火器を持って頷く。
GGOだからと銃を手に持つノーチラスやユナにエギルとクライン。
分からないからと剣を持つユージオとアリス。
前回から引き続いて散弾銃を持つリズベットと、戦車についている重機関銃を持つシリカ。
そしていつも通り光剣を持つキリトとアスナ。
そしてバルカ小隊の四人も銃火器を持つ。
確認を取ったフリューゲルはPKPを持ちながら皆に向かって言う。
「今から行うミッションはGGOでも最難関と言われている、いまだに攻略者がいないミッションだ。恐ろしく厳しい戦いになるかもしれないが……
まぁ、気楽にやっていこう。失敗しても何も言われないしな」
「「「「………」」」」
フリューゲルがそう言うと、ゲーマーとしての何かが目覚めてやる気に満ちるキリト達。この誰もクリアできないミッションを攻略してみたいと言う願望が生まれていた。それを見てフリューゲルは少しニヤリとした。計画通り…!
「……よし、すぐに出る。行くぞ」
「「「「「「了解!」」」」」」
そう言うとキリト達はゲーム内最難関ミッションに挑み始めた。
少しして、エリアに入ったのだろう。黒塗りされていたミッションタグが晴れて文字が浮かび上がる。
「ミッション名……『列車強盗』……?」
「なんだ、この名前?」
キリトが呟き、クラインが答えると運転席のフリューゲルが車を停車させる。
「うおっと」
「ど、どうしたの?」
いきなり止まったことに驚いているとフリューゲルが指を指す。全員がその方を見るとそこには砂漠地帯の中に一本だけ敷かれた線路があった。線路は永遠と続き、地の果てまで続いていた。
「もうすぐ見えるはずだ……」
「?」
全員が疑問に思うとふと遠くから音が響いてくる。列車の音だ。タタンタタンと車輪と線路の音を立てて向こう側から線路の上を走る細長い影が見えて来た。
「あれは……」
その影がクッキリと見えた時、エギルが思わず冷や汗をかく。
「おいおい……まじかよ…!!」
見えて来たのは砂漠迷彩が施され、傾斜のついた装甲が張られ、機関銃座取り付けられ、砲塔のついた大きな車両もあった。それはまさに………
「装甲列車……」
そこには十七両の装甲列車が中央に機関車を挟んだ状態で線路上を高速で走っていた。
100キロは出ているだろう速度を見ていると、その装甲列車に襲いかかる大勢のプレイヤーがいた。結構大きめで、二、三十人はいるだろうか。
「よく見ておけ。次のアイツの相手はウチらだからな」
そう言われ、全員が思わずジッと襲撃するプレイヤー達を見る。
『突撃ぃぃいい!!』
司令官と思しき人の合図に合わせ、プレイヤーが走る。直後、列車から機関銃の攻撃が飛び、プレイヤーがやられていく。そして列車から砲撃も飛び、プレイヤーが吹っ飛ばされる。
砲声や銃声が飛び交い、さっきまで大勢いたプレイヤー達は一斉に消えてしまった。そして列車は何事もなかったかの様に走り出した。
「「「「…………」」」」
全員が絶句する中、キリトが叫ぶ。
「あ、あんなのやれるかぁ……!!」
するとユージオとアリスが聞いて来た。
「あれ……何?え?すごい強いね……」
「あれは……鉄の竜か何かですか?」
まぁ、今の砲撃を見て絶句するのも無理はない。何せ相手は装甲列車だ。並大抵の事じゃびくともしないだろう。だが、撃破できればその分の報酬も多い。だからこそ、その為に豹丸に追加防弾板を取り付けた訳だが……
「なに、豹丸にはミサイルポッドも重機関銃もある。前進する分には問題なかろう」
「「「「それ以前に敵が異常だわ(よ)!!」」」」
そこで総ツッコミを受けてしまうとシノンが横から話し出す。
「まぁ、無茶なのは分かるけどこれもユージオやアリスの為だったりするのよ?」
「「「「え?」」」」
思わずキリト達とユージオ達が反応するとマキナが答える。
「ええ、もしここでこの最難関ミッションをクリアすれば確実にネットに上がります。
その時にアリスさんやユージオさんが『一般の人たちと一緒にゲームをした』と言う記録を残せて、『より近い立場で接する機会があるぞ』と世間に訴えることができる。と言うわけです」
マキナの話に思わずフリューゲルを見る一行。そこまで考えていたのかと思っていると肯定の意を示す様にため息を吐く。
「まぁ…そんな所だ。大衆を味方につければ民主主義を唱える国ならば、国民の意見を聞かざるを得ない。
ならば、大衆を味方につけるにはどうするべきか。それは身近な存在として関わる機会が多ければ良いと言う事。
そこでインターネットの利点を活かす。
不特定多数の目に留まり、尚且つ普段からゲームをしている面々とやっていたと分かれば自然と関わりたいと思う人が増える。そうして心を掴めば国の方針に反対するものが増える。そう言う事だ」
長々と話したが、理解できた面々は改めて修也の脳の回転率に舌を巻いていた。そこまで考えていたのかと…
「そう言うわけだから、このミッションはできればクリアできた方が良い。そうは思わんか?」
そう言うと全員が頷いていた。ユージオ達の為ならと全員が頷き、フリューゲルの作戦を聞いた。