先ほどの襲撃から数時間が経った。ここの砂漠地帯のフィールドボスでもある『装甲列車ジークフリート』は真っ暗な平原を駆け抜ける。線路上を走るその姿はまさに鉄の竜だった。
線路上を走る怪物は砂漠の中の一本の線路を疾走していると突如線路から爆発し、先頭車が爆発に巻き込まれる。
列車が急停車し、機関銃や砲塔が動く。そして砂漠の中を動く影を見つけ、砲撃が飛ぶ。
激しい砂埃が立ち、視界が埋め尽くされる。
すると次の瞬間、土煙の中から銃弾が飛ぶ。
銃弾は列車の機関車の機関部を直撃、火を上げる。
その直後に煙の中から一両の車両が飛び出す。
ドォォン!!
放たれた105mm対戦車榴弾が最後尾の砲塔付きの列車に砲撃をする。機関銃の攻撃も追加装甲に阻まれ、戦車は手前の岩でバウンドすると最後方の空っぽの無蓋貨車の上にピタリと収まる。
「「「うらぁぁあああ!!」」」
そして戦車からキリトやアスナが飛び出し、列車に乗り込む。そしてキリト達と同じ様に列車に飛び乗ったフリューゲルが叫ぶ。
「急げ!!列車が出るまで時間がないぞ!!」
「「「「了解!!」」」」
そう言うとフリューゲル達は全員が列車に乗り込む。豹丸にはマキナとフリューゲルが残り、飛び乗った無蓋貨車に豹丸を括り付ける。
「ここからは接近戦だ!忘れるな!!目的は装甲列車全ての車両の制圧だ!」
直後にガコンッと言う音と共に慣性が働く。列車が動き出した合図だ。鎖でバッチリと繋いだ豹丸はびくともせず、ギリギリで列車に乗り込むことに成功していた。
フリューゲルが立てた作戦はこうだ。
①線路に設置した地雷で先頭車を吹っ飛ばし列車を止める。
②列車を止めた所でシノンの射撃で機関車を壊し、修復が終わって走り出すまでに豹丸が最後尾の砲塔を吹き飛ばして無蓋貨車に乗り込む。。
③キリト達を車内に乗せて中で接近戦をする。
④全ての貨車を制圧してミッションクリア。
大まかな作戦がこれである。なかなか博打な部分もあったが上手くいった。今頃キリト達が貨車で光剣や実体剣で敵を倒しているだろう。MG42を持ったストレアも居るから制圧射撃も問題ないだろう。そう思い、フリューゲル達は豹丸に鍵をかけると最前線に飛んでいった。
PKPを持って前線に向かうとそこでは激しい接近戦が繰り広げられていた。
「うおっ!あぶねぇっ!!」
「無理に突っ込むな!蜂の巣になるぞ!!」
そう言い、銃を持ったNPCが車内に突撃したキリト達を迎え撃っていた。現在、制圧した車両は三両。事前の地雷や豹丸を停めた無蓋貨車を引いても残り十一両残っている。中間の機関車までは後四両。とりあえずそこまで行けばあとは何とかなる。そこまで行ければの話だが……
「くっそぉ……狭くて近づけねぇ……!!」
ここは車内、それも軍用列車ということもあって動きがとても制限される。その癖相手は短機関銃や自動小銃で武装した装甲兵もいる。
「流石は最難関。相手も無駄に強いですか……」
「手榴弾!投げるわよ!」
「みんな伏せろ!!」
するとリズベットが手榴弾のピンを抜いて投げ込んだ。その直後にカンカンッ!と言う音と共に爆発音が炸裂する。相手が怯んだ瞬間を見逃すウチらではない。
即座に狭い車内を蛇の様に動き、突撃する。
「重装甲がナンボのもんじゃあ!!」
「うらぁぁああ!!」
光剣を持って突撃するキリトを筆頭にアスナやユージオ、アリスが突っ込み、それに続く形で他の者も突撃する。もはや乱闘だ。銃も使えないくらいの距離まで接近して喉元をキリト達が剣で突き刺す。車内の扉はシノンの銃撃で吹き飛ばし、ソフトスキン相手にはストレアやノーチラスなどの銃を持った面々が撃つ。
「うわぁ……すごい銃撃……」
「流石ですね……」
続々と攻略されていく車両を見ながらノーチラスとユナがそう呟く。その横でフリューゲルが呟く。
「まだまだ、中央の機関車まで辿り着いていない……始まってから四〇分。まだ半分も終わっていないと言うことは時間がかかるぞ……これ……」
そして八両目の制圧が終わった。やはり、ミッションの半分まで進んだと言う事でここで中ボスらしき敵と戦った。
「フルアーマーのミニガン持ちだなんて……聞いてねぇよ……」
肩で息をしながら片手に光剣を持ったキリトが言う。同じ様に他に面々もグッタリとした様子で八両目の天井のポッカリと開いた穴だらけの客車に座る。
と言うのもキリトの言う通り、ここに繋がれた客車に超重装甲の歩兵が片手にミニガンを持って此方を粉微塵にしようとして来たのだ。
毎分何千発もの弾丸の雨を降らせる狂気の武器に全員が一旦撤退を余儀なくされる所まで持っていったのだ。ストレアの起点で制圧した装甲車両の戦車砲を使って砲撃をしなければやられていただろう。
「いやぁ、怖かった怖かった……本当にね……」
どこか哀愁漂う雰囲気を漏らすユージオにアリスが駆け寄る。
「流石にあの攻撃は驚きました。まさかあの大砲で吹き飛ばすとは……」
そう言いながら客車の屋根を吹き飛ばした装甲列車の戦車砲を見る。さっきの砲撃で壊れてしまったそれは目の当たりにすると少しばかりの恐怖が生まれたが、動かないと分かると自然と怖く無くなった。一旦休憩をしているとそこでクラインがフリューゲルに聞く。
「なぁ、この先は何があんだ?」
「この先は機関車だ。ここでようやく半分だ」
「げっ!ここでまだ半分なのかよ……」
そう呟き、キリトが思わず時間を見る。現在午後八時、このミッションを開始してからおよそ一時間が経っていた。
ここでようやく半分である。単純計算で残り半分を攻略するのに一時間。宇宙戦艦の装甲板を使用した盾を持ってマキナが突撃して前線を張っていたが、疲労は溜まっていた。
「さ、行くぞ。グズグズしても時間が過ぎるだけだ」
そう言い、フリューゲルは機関車に繋がる扉を開ける。走行中の風が吹き、連結部分の柵が見える。走行中と言うこともあり、連結部の下にある線路が恐ろしい速度で過ぎていた。
「……」
フリューゲルが最初に機関車の柵に飛び、安全を確認する。するとそこで安全域を示す表情が現れ、此処が安地であることを示していた。
「安地狭すぎだろ!!」
続いて来たキリトがそう叫ぶ。確かに狭い。それに走行中と言うこともあって怖い。目の前をトンネルで突っ走った時なんか恐ろしい。
フリューゲルを先頭に進み、通路を周って次の車両に移動しようとした時……
キキーーッ!!
と言う甲高い音と共に曲がりカーブで列車が急停車する。カーブの外側にいたフリューゲル達はそのまま慣性の法則で外の砂漠に投げ出される。
「ワブッ!!」
「ごはぁ!!」
全員が投げ出され、砂漠に飛ばされる。いきなりの事に全員が困惑しているとフリューゲルが叫ぶ。
「っ!!みんな逃げろ!!砲撃が来るぞ!!」
そう叫び、キリト達は旋回する装甲列車の砲塔を見る。戦車を流用した120mmの砲口がこちらを向き、咄嗟に全員が散った。その距離およそ二〇メートル。砲撃ができる距離だった。
ーードドドドドドォォオオオオン!!
四両八門の斉射が砂漠を吹き飛ばす。ついでに機関銃の銃撃も始まり、装甲列車が攻撃を仕掛けてきた。
咄嗟に全員が丘陵の裾野に隠れ、砲撃をやり過ごす。立ち上がる土煙が頭上に降りかかり、全員が砂まみれになる。
「ゴホッゴホッ!……おい!
列車が急停止したぞ!!
それで俺たちが吹っ飛ばされたぞ!!
そんでもって列車からの砲撃が飛んできたぞ!!
取れ高飛ばし過ぎじゃない……??」
キリトのツッコミに全員が苦笑いするしかない。それほどまでに今までの出来事はぶっ飛んでいたからだ。普通思わないだろう。列車が急停車して自分たちを砂漠に吹っ飛ばすとは……
止まない砲撃の中、フリューゲルは顎に手を当てて考える。
「……一旦豹丸を取りに行こう…まずはそれからだ」
「誰が行くの?」
リズベットの問いにフリューゲルは即座に答える。
「私とマキナで行く。あとはここで耐えるか、可能なら列車に近づいてくれ。列車もここに敵がいると分かれば動かないはずだ……」
「オッケー、じゃあ列車に近づくのは……キリト。お願い」
「ぶえぇぇええ!!うっそぉぉおお!!」
リズベットのいきなりの指名に驚愕するキリト。そしてキリトが思わず恐る恐る砂丘から少し顔を覗かせると……
ダダダダダッ!
「ぬぉわぁあ!!」
頭上を弾丸か掠めていた。即座に滑り落ち、戻ってきたキリトは開口一番、
「あんなのにどうやって近づくんだよ!!」
と叫んでいた。そんな叫びにフリューゲルがキリトにあるものを投げる。
「これを使え」
そう言い、投げたのは発煙弾だった。BoBでも使ったその武器にキリトは使い方を模索する。
「それで視界を切れば簡単に行けるだろ。じゃあ、こっちは行ってくる」
「あ、ちょっと!!」
そう言い、アスナのかけ声も虚しく二人は砂丘の中に消えていった。残されたメンバーは呆然とするも、シノンが声を上げる。
「……仕方ないわね…」
半ば諦めた様子を浮かべながらシノンはへカートを持って構えると指示を飛ばした。
「キリト、二時方向に発煙弾を投げて」
「りょ、了解」
そう言い、キリトが投げると発煙弾が作動し、一面を煙幕で包み込む。
「援護するから。その間にみんな前進!!」
「え、でも……」
「早く!!」
シノンの叫びにキリトは敬礼もどきをしてしまった。
「りょ、了解っす!!」
するとストレアがマーチングファイアをしながら裾野から飛び出した。
「yapaaaaaaaaaa!!」
ストレアの声に合わせて一斉に全員が丘陵から飛び出す。ストレアの後をキリト、アスナ、ユージオ、アリスが走り、その後ろを銃を持った面々が追従する。
「「「「「わあぁあぁああぁぁぁああ!!」」」」」
半分ヤケクソで走る中、空中で爆発が起こる。
「え!?何!?」
「シノンさんの援護です!投げた手榴弾に弾を当てているんです!!」
その爆発に驚愕するリズベットにストレアが指摘をする。それを聞き、『流石っすシノンさん!!』と言いながら最前線で銃弾を切るキリトとアスナ。
そして二人の真似をしているうちにいつの間にか弾丸切りを取得しているユージオとアリス。爆炎の中を突撃するその姿はなかなかに映えていた。そして全員が突っ走り、列車の下にスライディングをする。流石にここは大砲も機銃も仰角が足りず、ある種の安全地帯となっていた。
「ぜぇ…ぜぇ…んで?この後どうするよ。シノン」
肩で息をしながらそう聞くクラインにシノンは上を見ながら少し考えたのちにこう提案する。
「……このまま登れるかしら?」