ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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間話#12 最難関ミッションⅣ

「ーーそろそろか」

 

装甲列車を見ながらフリューゲルが呟く。かれこれ三時間は経過している最難関ミッション攻略戦。十七両あるうちの既に十五両が制圧された。列車の側面には幾つもの大穴が開き、火花が散っていた。

 

「守備はどうだ?」

『こっちは良好。シノンの方は?』

『問題ないわ』

 

現在三つのチームの分かれて攻略をしている我々。一つは列車内を攻略するキリト達αチーム、屋根伝に砲塔の直接撃破を狙うシノン達βチーム。列車に並走してキリト達の支援をする自分達cチームに分かれていた。

キリト達の上を走るシノン達を見ているとキリトから通信が入る。

 

『フリューゲル!敵が多い。十六両目の真ん中を撃ってくれ!』

「了解した」

 

豹丸の中に入り込み、照準を合わせたフリューゲルは引き金を引く。真横で排俠する音が響き、空薬莢が砲塔内に転がる。

普段は消耗品扱いの空薬莢だが、砲弾ともなると弾薬ショップに行けばリローディングができる様に設定されていた。おかげで空薬莢もアイテムとなってフリューゲルのストレージに溜まっていた。

 

榴弾の爆発で吹き飛んだ装甲面を凝視しつつ、キリト達が生き残ったNPCを倒しているのを確認する。

 

「もういいだろう……」

 

現在使用した砲弾は六発。まだまだ残弾はあるが無駄撃ちはしたくなかった。それに、残す車両も後一両。フリューゲルはマキナに指示を出す。

 

「飛び移る。列車に近寄ってくれ」

「はいはい、了解でーす」

 

そう言うとマキナは丁寧に列車に明けた大穴に近づく。速度を同じにし、飛び移りやすくするとスタントマンの様にフリューゲルは列車に乗り込んだ。

 

「よう、スタントマン見たいだったぞ」

「そりゃどうも……あと一両か……」

「ああ、やっとこさここまで来たぞ」

 

そう言い、フリューゲルとキリトは最後尾の車両に繋がる扉を見る。最後と聞き、全員が息を呑んだ。ここまで来るのにかなりの出費をした。ここで勝たなければ今までの苦労が水の泡と化す。負けられない理由があった。豹丸が離れたのを確認するとフリューゲルは上にいるシノンを見て言った。

 

「チームを二つに分ける。ストレア、クライン、シリカは上に上がってシノンと一緒に動け」

「「「了解(です)」」」

 

そう言うと三人は屋根に上がる。風が吹き、体勢が崩れそうになるが、無理やり整える。

 

「シノン、上から援護を頼む」

「了解、援護すれば良い?」

「ああ、それでいい」

 

確認をとり、準備が完了する。

 

「よし、初めに吹き飛ばす。離れてろ」

 

そう言い、フリューゲルは片手にアンツィオ20mm対物ライフルを出す。2メートル以上あるデカさの銃に驚くユージオとアリス。そしてその大きさに改めてドン引きするキリト。

 

「うわぁ……やっぱでけぇ……」

「これがゲームならではのロマンでもあるさ」

 

そう言い、フリューゲルがボルトを引いて薬室に20mm弾を装填する。

 

「……行くぞ」

「「「「「……」」」」」コクッ

 

ーーカチンッ…ドォォン!

 

引き金を引いた直後。凄まじい反動が伝わる。零距離射撃で放たれた20mm対物ライフルは扉を粉砕し、その奥にいた雑兵諸共吹き飛ばす。その瞬間にキリト達が我先に突撃する。

フリューゲルも負けじと懐に常に携帯しているヒートホークを取り出す。

巡洋艦の装甲であればバターの様に切れるヒートホークを持って車両内を前進する。

 

ダダダダダッ!

 

中にいた装甲兵の銃撃も訓練で最近できる様になった弾丸斬りをしながら前進する。その上ではシノン達が走り、先に車両上部を制圧。そこから入り込んで後方に回り込んでいた。

 

「このまま突っ込め!!」

 

前後を挟まれ、戦力が半減した所を畳み掛ける。一人、また一人と撃破していく。

さっきまで十人ほどいた敵も遂に……

 

「おらぁぁぁあああ!!」

「はぁぁあぁああ!!」

 

キリトとユージオが互いに剣を持って前に突き出し、最後の敵の腹を貫く。敵がポリゴンと化し、消滅する。

敵が居なくなった車両の中で全員がグッタリと床に座り込んだ。

 

「「「「「おわったぁぁ〜〜……」」」」」

 

グッタリと倒れ、一息吐く流石は攻略者の居ない最難関ミッション。ここまで来るのに二時間以上かかっていた。

だが、これでミッションも終了になるはずだ。全ての車両を制圧したから………

 

 

 

その時、フリューゲルは引っ掛かりを覚えた。確かに全車両制圧をした。しかし、本当にそうなのか?

 

 

 

そう考えた時だった。突如、列車の速度が上がり出し、キリト達は車両の後ろに転がってしまう。

 

「うわっ!?」

「なんだ!?」

 

驚愕していると外にいるマキナから通信が入った。

 

『マスター!列車の速度が上がっています!』

「ああ、やっぱりかクソッタレ!」

「ど、どう言う事だ!?」

 

フリューゲルの発言の疑問に思うリズベット。するとフリューゲルはこう答えた。

 

「ミッション完了は『全車両の制圧』。つまり、制圧は終わってないって事だ」

「ど、どう言うことよ!!」

 

リズベットが訳がわからないと言う表情を浮かべるとキリトが呟く。

 

「まさか……機関車か?」

「!?」

 

キリトの呟きに全員がハッとなる。あそこは安地だったからそのまま通過してきた。だから中の制圧はしていなかった。

 

「なんと言う失態だ……」

「フリューゲル!」

「ああ、行くぞ!」

 

フリューゲルとキリトは目線を合わせて走り出そうとするとそこにアリスとユージオが名乗り上げた。 

 

「わ、私もいきます!」

「僕も行くよ」

 

そう言うわけで四人は元来た道を戻り、機関車まで走り出した。その後ろをよろめきながらも他のみんなも追いかける。

走っている途中、マキナから再び通信が入る。

 

『マスター。このままだとあと五分で列車がカーブを曲がりきれずに脱線します!』

「そうか…」

 

右上にタイマーが現れ、制限時間が設けられる。それまでに機関車の速度を落とさなければ漏れなく全員ここで死んでしまう。ここまで来てミッション失敗なんで惜しすぎる。何としても機関車に辿り着かなければ……!!

すると目の前に残敵が現れ、銃の引き金を引いた。全員が避ける中、自分はPKPを持ってそのまま真っ直ぐ突撃する。

 

「邪魔だぁぁあああ!!」

 

ダダダダッ!

 

汎用機関銃が火を吹き、生き残っていた残敵を掃討する。そしてそのまま体を押し除け、列車から突き落とす。

 

「う、うわぁぁあああぁあ!!」

 

悲鳴を上げて突き落とされたNPCを見て思わず顔を顰めるユージオ達。先の戦争でモンスターを狩ってきた二人にしてみれば人を殺し事にやはりまだ抵抗があるのだろう。価値観の差を感じつつも、ミッション達成の為に体術で襲ってきた相手を蹴り落とす。

そして猛速球で走り、揺れる列車を火花の散る通路を駆け抜け、機関車部分にたどり着く。片手に拳銃を持ち、真っ先にフリューゲルが扉を開けて中に入る。幸い中は無人の用で、目一杯前に倒されたマスコンがあるだけだった。

 

「揺れるぞ。何かに掴まれ!」

 

そう叫び、フリューゲルはマスコンを思い切り手前に引く。金属の擦れる音と火花が車輪から散り、列車全体が大きく揺れる。

 

「ふんぬぅぅぅううう!!」

「ぬおぉぉおお!!」

 

キリトやユージオがやや汚い声をあげて堪えながら列車が止まるのを祈る。時間はギリギリ、このまま盛大に脱線して砂漠にほっぽり出されるかギリギリ生き残るか。あとは運任せである。

激しく揺れ、軋む列車。元々豹丸の砲撃で穴だらけの前方車両。この勢いなら車両が破壊されてもおかしくないのだが、持ち前の重装甲がそれを防いでいた。

 

「ひぇぇええ……こええぇぇええ」

「これ、壊れない?大丈夫?」

「わからん」

「分かんないって……」

 

機関車にいる四人が心配になりながら列車が止まるまで気を緩めない。徐々に下がっていく速度計を見ながらフリューゲルは冷や汗をかく。

 

50キロ……40キロ……30キロ……20……10……5……

 

 

……0

 

 

 

揺れが収まり、速度計が0を示す。キリトが最初に徐に握っていた手すりから手を放す。するとフリューゲルやキリト達の目の前に半透明の画面が現れる。

 

 

 

『ミッションクリア!!』

 

 

 

端的に書かれたその文字が現れたあと、恐ろしい量の経験値とアイテムがポップする。中身がどうであれ、取り敢えず全員が肩を組んで喜びをあらわにした。

 

「「「やったー!!」」」

 

キリト達が肩を組んで喜び、フリューゲルもホッとした様子で機関車の椅子に座り込んだ。

 

「終わったか……」

 

そう言い、ホッとしながら機関車を降りるとそこではすでにアスナやシノン達が外で待っていた。

 

「やりましたね!!」

「おう、無事だったみたいだな」

「あたぼうよ」

 

そう言い、全員で喜びを露わにし、そこでノーチラスがリザルトを見ながら呟く。

 

「しかし、すごいですね。こんなに経験値が……」

「アイテムもすごいよ」

 

そう言い、ややはしゃいでいる様子の皆を見ているとシノンが声を掛ける。

 

「危なかったわね……」

「ああ…だが、ミッションは達成した。あとは……」

 

フリューゲルはコンソロールを動かすと写真撮影のボタンを押した。

 

「みんな、記念に写真を撮ってもいいか?

あと、知り合いに記事を作ってもらうからこの写真を使ってもいいか?」

「「「「「いいよ〜」」」」」

 

全員の許可はもらった。後は写真をいい角度で撮る為に良い場所を……

 

 

 

 

 

「撮りますね〜」

「「「「「いえ〜い!」」」」」

 

十四人全員が撃破された装甲列車の前で、豹丸と共に写真を撮る。七人ずつの二つのスコードロンで構成されているフリューゲル達はマキナの設置したカメラに向かってピースをする。その表情はとても満足げで、スッキリとしていた。

 

「3…2…1…」

 

パシャッ!

 

十四人全員が笑顔でシャッターが切られ、データはマキナの手によってそれぞれの携帯に送られる。ここにいるシノンと自分以外は全員が顔はそのままに近いので、少々写真をボカしてアルゴに送るつもりである。既に記事は書き終えているはずなので後は明日のMトゥデを確認するだけだ。あとやることとすれば……。

 

「どうすっべ?この大量のアイテム」

「どうするって言ってもなぁ……」

 

そう、大量にポップされたアイテムの整理だ。十四人という大人数だと言うには恐ろしい量のアイテムがドロップされた。初めての攻略ということもあってボーナスが加算されていた。

 

「うわぁ……エッグいなぁ……」

「どうせウチら長く遊ばないから全部フリューゲルに渡せば良いんじゃない?」

「お、それ良いな」

「……良いのか?」

 

思わずフリューゲルが聞くとキリト達は当たり前と言った様子でアイテムを渡してくる。でも確かにキリト達がGGOで遊ぶ期間はALOに比べれば恐ろしく少ない。だったらGGOメインで遊んでおる人に渡すのがアイテムも有効活用できるだろうという考えなのかと思いながら、四人に渡されていくアイテムを眺めていた。そしてその内の一つ、『装甲列車の装甲板』というものを押して、オブジェクト化する。

 

「お、おぉ……」

 

現れた黒塗りの長方形の板を見て、思わず息を呑む。装甲列車の装甲板はゲーム内最強の硬さを誇る『宇宙戦艦の装甲板』に匹敵する硬さを誇ると言われているものだ。徐にオブジェクト化した装甲板をそのまま豹丸の車体に取り付ける。追加装甲だが、装甲板は後一枚ある。それは反対側につけるとして、なんとなくⅣ号戦車のH型見たくなった豹丸を見てリズベットが思わず呟く。

 

「うわぁ…なんかゴテゴテしてるわね」

 

今回のミッションの為にミサイルポッドも取り付けており、武装装甲共にマシマシである。それも原型がなんなのか分からなくなるくらいには……

写真を撮り。これで解散となる筈だが、装甲を取り付けるのを相談しているといつの間にかそれで盛り上がっていた。

 

「……さて、そろそろ帰るか」

「お?もうそんな時間か?」

 

キリトがそう言い、時間を見ると午後十一時。そろそろ解散の時間だった。

 

「今日はありがとう。こっちの用事にわざわざ来てくれて」

「良いってもんよ、楽しかったしな」

「そうそう」

「また、何かあったら呼んでくださいね」

 

そう言い、装甲をつけてさらに改造を施された豹丸をに乗り込みながらクライン達が言う。確かに、今日は楽しかった。

帰りもミッションクリアをした話や、ユージオ達の最近の話などで盛り上がりながら帰路につくのだった。

 

 

 

 

 

後日、ユージオ達がGGO最難関ミッションをクリアしたニュースはネットで大きな話題を呼ぶのだった。




疲れたのとネタ切れで投稿頻度が激落ちします。
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