ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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間話#13 夏の約束

夏休みも終わりの頃

中央自動車道

 

夏の残暑が未だに残る八月下旬。高速道路を一台の車が疾走していた。

 

「まったく、ここ時期でも暑いな……」

 

車の中でそう語るのは赤羽修也であった。春先に学校に内緒で車の免許をとり、ついでに車も中古で前々から欲しい物を買っていた。車種はボルボ・PV544、旧車だが修也が前から欲しいと思っている物であった。

学校の校則では自動車免許を取ると大目玉を食らう。何でバイクはOKなのか、これが不思議だ……。

 

「まあまあ、これから行く場所は涼しいんでしょ?」

 

助手席で答えるのは修也の彼女である朝田詩乃であった。

 

 

 

二人は前々から約束していた富士山の麓のキャンプ場に気分転換と遊びに来ていた。今回は二人だけでの外出であり、マキナとストレアの姿は無かった。まぁ、居ないと言っても二人の機体を持って来ていないだけでいつでも車の端末や修也のAR端末には入って来れるので横にいる様な感覚ではある。

 

「まったく、ここ最近は暑すぎてかなわんな」

「そうね、特に最近は色々と忙しかったでしょう?」

 

修也は特にユージオとアリスを作った張本人である。彼らを入れる器を造った責任者として修也は二人の参加するパーティに後方担当として付いて行く事もあった。ただ、日本では学生の身分というラースでも特殊な立場であるが故に学業の方を優先すべきであると代表のあのイケすかない官僚が判断したので数えるほどしかそう言った仕事をしていなかった。

 

「忙しいか……そうだな。確かに、この夏休みは色々と忙しかったな……」

 

思い出すのはラース……主にアンダーワールドでの出来事だ。その後、修也の生活は大きく変わった。

彼の開発した技術は新たな命を生み出し、世界が注目している。彼の血縁に一万人をネットの檻に取り込んだ悪魔の科学者がいようと、それはあくまでも社会的な意見に過ぎない。ただ赤羽修也という人物が生み出した技術でしかないのだ。

 

「疲れた?」

「そうだな。このキャンプで精一杯息抜きをしたい所だ」

 

和人が言うにはSAOで初めて会った頃よりも健康的で機械的ではなくなったと言う一人の青年はほんの少し口角が上がるとハンドルを回して高速を降りて下道に入った。

 

 

 

 

 

高速を降りて数十分後、富士がよく見えるキャンプ場に到着した二人はそこで車を降りた。

 

「到着したか……」

「うわぁ……」

 

車の後ろに二人分のキャンプ用具一式を積み込んでおり、その分の食材は寄り道した道の駅で購入していた。そして到着した矢先、その絶景に驚く。

 

「富士山がよく見えるわね」

「そうだな……」

 

視線の先に映る絶景。世界百名山にも選ばれる日本の象徴とも言える富士山、その堂々たる威容が眼前に広がっていた。

 

「絶景だ……」

「本当ね……」

 

運が良いことに今日のキャンプ客は疎で良い景色が拝めた。

 

「さ、準備をしよう」

 

景色に見惚れていてはあっという間に夜になる。今日な夏休みも終盤に近いど平日。だからあまり人が居なかったのかも知れない。

 

「手伝ってくれ」

「うん」

 

取り出した組み立てテントを修也と詩乃は共に建て始める。骨組みに布を通し、修也の慣れた手つきであっという間にテントは完成した。

 

「よし、テントはこれで完成だな」

「後は焚き火?」

「そうだな……」

 

しかし焚き火をするのも面倒だと思っているとそんな修也の考えを見透かして詩乃が釘を刺すように言う。

 

「せっかくキャンプに来たのなら焚き火で料理した方が良いんじゃない?」

「……そうか」

 

修也は詩乃にはとことん甘いのは和人達の知るところではある。そしてその事も詩乃は知っているからこそ焚き火を所望したのだ。

 

「準備しよう。そこら辺の松ぼっくりと薪を探そう。あと枝とかを……」

「わかった」

 

そうして二人は森の中を散策し、地面に落ちている枝やキャンプ場にあった薪を少々貰って来た。

 

「よし、これくらいで良いだろう」

 

石で焚き火を組み、そこに新聞紙と吸って火のついたマッチを放り込むと焚き火に火がついた。

薪に残った水分の弾ける音がしばし聞こえ、火の勢いは強くなっていった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「いいなぁ…キャンプかぁ……」

 

ここはALO内のキリトの家。そこでアスナがふと呟く。今日ここにブレイドとシノンは居らず、二人は夏休み最後にキャンプ場に旅行に行っていた。

 

「良いだろう。こっちもキャンプしてるようなもんだし」

「富士山でって言う意味よ。やっぱり本物には敵わないから」

「……」

 

キリトはそこで黙り込んでしまう。元々聞いていた話ではあったが、アスナはどうしても二人でキャンプに行く事に羨ましく思っているようだ。

 

「ねえキリトくん。今からキャンプ行くのとかってどう?」

「えぇ……」

「えぇって何よ」

「いやぁ、俺そこまで料理とか出来無いし……」

 

するとアスナは画面を動かしてキリトに見せる。

 

「最近はグランピングって言う元々いろんな設備が整ったキャンプもあるんだって。これなら行けそうじゃ無い?」

「それってキャンプなのか?」

 

もはやホテルレベルに豪華な写真を見せられ、キャンプなのかと首を傾げるキリトであるがアスナは乗り気な様子でキリトに聞く。

 

「まだ学校が始まるまで時間があるし予約も空いていそうだよ」

「待て待て待て!本当に行くのか?!」

 

キリトはノリノリのアスナに驚いているようで、少したじろいていた。しかし、アスナはそんな彼に問いかけるように聞く。

 

「何その反応?行きたく無いの?」

「い、いやぁ…俺はキャンプとかそんなに得意じゃ無いし…と言うかそもそもあんまり料理できないし……」

 

キリトの料理レベルは最低限に物であり、かろうじて一人暮らしができるだろうレベルのものだ。まぁ、これはあまり家から出たく無いキリトなりの言い訳なのだが……。

 

「大丈夫大丈夫。料理は私が全部やっておくから」

「でもなぁ…色々準備とか必要だろ?それに時間もあるかどうか……」

「キリトくんってこのあと特に予定ないって聞いているけど?」

「……」

 

キリトは内心妹の顔が思い浮かんだ。家族の中でも教えたのはあの人だけだろう断言できる。

 

「あっ!これとか美味しそう!ねえ見て」

「ん?」

 

そう言って見せてきたのは詩乃のメッセージ画面であった。そこに添付された写真を見てアスナが言う。

 

「こう言うの作ってみようかな……」

 

写真にはチーズや野菜を盛り込んだグラタンの写真が映され、楽しげな様子が映されていた。

 

「いいなあ〜」

 

その写真を見ながらアスナは少し羨ましそうにしていた。

 

「ブレイドってよくよく考えると何でもできる最強の人じゃない?」

「うーん、確かしそうだな……」

 

ブレイドはゲームでも現実でも色々とこなせる人間だ。ゲームでは偵察から戦闘、護衛もできる。背中には大剣抱えてたと言うのに良くやっていたな。

だが、よく考えるとそれ以前は山刀と片手斧を持って走っていた。

本来、ブレイドと言うプレイヤーの得意分野は斥候と偵察だろう。だからアルゴの用心棒として仕事をしていたのだろう。

 

「よし、決めた!」

「何を?」

 

キリトは首を傾げるとアスナは言う。

 

「後で迎えに行くから。一緒にキャンプ場に行こう!」

「え、えぇぇえっ!?」

 

キリトは驚愕しながらログアウトして行くアスナを見届けて行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……あっ」

「どうした?」

 

自分達で焚いた焚き火を前に詩乃が携帯の画面を見てふと声を漏らした。

 

「これ、あの二人もキャンプ行くってさ」

「キャンプ……今から?」

「グランピングの方だってさ」

「あぁ、それなら簡単だな」

 

椅子の上で座りながら修也と詩乃は携帯の画面を眺める。ほとんど人のいないキャンプ場で二人は焚き火の奥に映る富士山を見ながら先ほど作った野菜を入れたグラタンとアヒージョを食べていた。

 

「こう言うゆったりとした時間もやっぱり良いな」

「気分転換になりそう?」

「ああ、十分にな」

 

このキャンプの後、いくつか寄り道をしながら名古屋を通って帰ってくる予定だ。旅程五日の予定で山梨を寄ってそのまま東京に帰る予定だ。

 

「良い景色だ……」

 

遠くに映る月光に照らされた富士山を見ながらふと修也は呟く。その横で詩乃も同じようにコップに先程淹れた日本茶を飲みながら考える。

この一ヶ月はとにかく忙しかった。元々埋め合わせとして予定していたこのキャンプ旅行は予定通りに行えた事だけでも良しとするべきだろう。

 

あのアンダーワールドでの事件以降、修也も詩乃も色々と離れることができなかった。家に一人でいる事が多く、マキナやストレアがいるとは言え寂しいことに変わりなくちょくちょくALOに行く事もあった。

当時、和人や明日奈が目覚めるか分からないと言うことで修也もその責任を負うと言うことで二人につきっきりでラースから出てくる事もなかった。

この一ヶ月はまともに休んでいなかったからこそ、しっかりと休息をとって欲しいものだ。

 

「そうね、とても静かだわ」

 

そう答えると二人の間を柔らかな風が吹いていった。

 

 

 

 

 

その後、焚き火も消し、テントの中に寝袋に入った二人は天井から薄ぼんやりと灯るライトを眺めながらなれない寝袋に入っていた。

 

「……ねえ」

 

そんな中、詩乃は横にいるはずの修也に問いかける。

 

「修也ってこの後どうするの?」

「この後?」

 

聞き返す修也に詩乃はさらに続ける。

 

「修也は大学に行くの?」

「あぁ、そう言う事か……」

 

修也は今年で高三だ。大学受験のことも考えなければならないのだが……彼の場合、すでにアメリカにおいて大学は卒業している上に就職まで済ませている。正直言って日本の大学を出なくても食っていける生活を送っているため、今後の進路が気になるところだ。

 

「修也ってすでにアメリカで大学に出ているし、それに就職もしているから。だから日本の大学に行くのかなって……」

 

詩乃の問いかけに修也は納得した上で少し考える。

 

「そうだな……とりあえず進路はこのままかもな」

「大学には行かない感じ?」

「そうだな……また本社から呼び出しをされるかも分からないしな」

 

そう言い、彼は上を見ながら答える。すでに大学を卒業し、自分の作った特許のおかげで一生遊べるほどの財産を有している彼にとって日本の大学に行くことにはっきり言って意味はない。だから高校を卒業しても引き続きアスクレーの社員として働くのだろう。

 

「それってアメリカに帰っちゃうってこと?」

「直接会って話さなければならないこと以外でアメリカに行くことはないな。自分の故郷はあくまでも日本だから」

 

詩乃の問いにそう答え、その答えに詩乃は少しホッとしながらも嬉しく思っていた。

 

 

 

 

 

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