ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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時間軸はFLAでいくらでも加速できるからという暴論でアンダーワールド側の時間軸は一切考慮していません。


間話#21 Bofore Alicization Ver.1.0

二〇二六年 六月二八日

東京ヘリポート

 

その日、修也は片手にアタッシュケース、片手にスーツケースを持って車に乗っていた。

新木場まで列車に乗って、そこから迎えの車に乗ってヘリポートに到着するとそこでは一機の中型ヘリコプターが離陸準備を済ませていた。

 

「荷物は?」

「すでにオーシャン・タートルに運び入れています」

「分かりました」

 

黒服を纏った人物に確認を取ると、修也はそのままヘリに乗り込んで扉が閉められた。

これから修也が向かうのは菊岡の指定したバイト先の本部だ。いつもは六本木のラースでしているが、今回ばかりはどうも違うようだ。

 

「まもなく到着します」

「了解です」

 

無線でそう答えると、洋上に浮かぶ巨大な建造物を見た。

 

「……まじか」

 

噂には聞いていたが、こうして見ると恐ろしい大きさだ。よく建造許可が降りたなと思うほどだ。

分かりやすく言うなら『ちきゅう』を四つ繋げた、奇想七胴戦艦フェルゼンか、もしくは超巨大航空戦艦ムスペルヘイムのような、見るからに異常な見た目をしていた。

 

「原子炉とコンピュータの冷却が目的とはいえ、ここまでのことをしてよくバレないな」

 

しかし、情報通信などを担当している総務省と防衛省が結託して出したと言うのなら隠蔽も可能なのだろう。きっとそうだ。

 

「しかし菊岡さんも人が悪い」

 

思わずそう溢すと、ヘリはヘリポートに着艦し。そこで扉を開けると、早速出迎えを受けた。

 

「やぁ、久しぶりだね修也君」

「菊岡さん……」

 

その姿を見て思わず呆れてしまう。そこにはアロハシャツに半ズボンとサンダルを履いている菊岡の姿があったからだ。

 

「もっと格好どうにかなりませんか?ここ一応国立機関ですよ?」

「こっちは二ヶ月以上ここの上で生活をしているんだ。服装くらい自由にしてもいいだろう?」

「まぁ…それは個人の自由ですし」

 

そう言い、修也はこれ以上菊岡の服装に関して言うことはなかった。

 

「例の物は?」

「ここですよ」

 

そう言い彼は足元にあるアタッシュケースを見ると、菊岡は待っていたと言わんばかりにそのケースにだけ目が入っていた。

 

「他の部品はすでに運んでいる。すでにいる研究者とも挨拶をしてくれ」

「分かりました」

「まあ、ここにいる職員の殆どは君の正体を知っているわけだが……」

「それはどっちの話ですか?」

 

修也は警戒した様子で聞くと、菊岡はそんな警戒をしなくともと入った様子で修也に答える。

 

「ん?Meacの方だね。お兄さんの方は比嘉君しか知らないよ」

「比嘉……ああ、兄さんの後輩ですね」

「おや、知っているのかい?」

 

菊岡の問いに彼は短く頷く。

 

「名前だけですけど、面白い人だと言ってました」

 

数日間滞在するので着替えなども入ったスーツケースも引きながら修也は菊岡の案内を受ける。その間、アタッシュケースを手放すことは一度もなかった。

 

「社員証を出してくれ」

「はい」

 

そこで何重もの金属ゲートを通り、まず初めに案内されたのは自分に割り当てられた客室だった。

 

「客船ですねこれはもう」

「君はラースの中でも重要な人だからね。待遇も厚いのさ」

 

そう言い、部屋にスーツケースを置くと修也が嫌味まじりに菊岡に言う。

 

「それは菊岡さん。貴方がそうしたんでしょうに」

「ははは、君もお父さんに似て僕には厳しいね〜」

 

飄々とした様子で菊岡はそう答えると部屋の次にここにある施設を色々と紹介してもらっていた。

 

「それでここが第一制御室だ」

「ここですか……」

「君の一つ目の仕事場だね」

 

そう言うと、大きな制御室に一人だけが席に座って作業をしていた。するとその不精髭を生やした男は振り返ると、修也を見てやや驚いていた。

 

「菊さん、やっと戻ってきたんですか……ってあれ?」

「紹介するよ。彼が比嘉君だ」

「あっ、どうも比嘉健ッス。君は赤羽修也君でしょう?」

「どうも初めまして比嘉さん……噂は兄から常々聞いていました」

「おお、本当。そりゃありがたいッス」

 

先ほど菊岡から彼は知っていると聞いていたので、その定で話すと彼はやや嬉しげにしていた。

 

「いやぁ、僕もまさか先輩に血の繋がった弟がいたのは予想外でした」

「そりゃそうでしょうね。特にこの立場もあれば……」

「そうっすね。……有名人の子って大変っすね」

 

比嘉は修也とそんな話をしていると、早速菊岡が比嘉に行った。

 

「比嘉君、早速だけど彼を工場に連れて行ってくれ」

「分かりました。そろそろ荷物も片して欲しいと思っていた頃でしたよ」

 

そう言い、比嘉は席を立つとそのまま修也を案内していた。

 

 

 

 

 

「かなり人は少ないんですね」

「ええ、元々STLやサーバー、ライトキューブクラスターなどを諸々集約するために建造されたっすからね。この大きさとはいえ人間の居住区画は意外と無いんっす」

 

そう言い、第一制御室から降りて移動していると数名の他の研究者とすれ違った。

その時、ある一人の研究者が修也を見て一瞬だけ異質な目線を向けていたのを修也は見逃さなかった。

 

「ココっす」

「うわぁ……」

 

案内された部屋では大量に梱包された部品の山が積まれていた。

 

「これはひどい」

「それ注文した君が言うんっすか?」

 

半ば呆れるように比嘉は修也を見ると、彼は組み立て部屋に置かれた二台の人型の機械を見た。

 

「あれは?」

「ああ、あれは僕が作った試作品っす。名前はイチエモンとニエモンっす」

「なんて安直な……」

 

そう言いながら肩に番号の書かれた二つのロボットを見ていた。

 

「なかなか精巧ですね」

「君にそう言って貰えて何よりっす」

 

そう言うと修也はイチエモンの大きなバランサーを見た後。部屋に積まれた部品を見る。

 

「それで、例の物はどこっすか?」

「ここにありますよ」

 

そう言い彼は持っていたアタッシュケースを開けると、そこには昔のゲームカセットのようなものが置かれていた。

 

「MeacシステムをA.L.I.C.E用にオリジナル加工をした物です」

「おお」

 

元々ラースが欲していた物はマキナのボディの技術だが、修也が参画するに当たりある条件を加えていたのだ。それはA.L.I.C.Eに対し、Meacが有効するかどうかの実験をすることだった。

 

「Meacに関してはここのフラクトライト同様、人外未知の未解明な状況がありますから」

「開発者ですら分からないんっすね。あの原因は」

 

Meacにはその後の実験である欠陥がある事が分かり、軍事転用が難しいと言う事態に発展していた。

 

「だからこそ、箱庭で育ったAIにMeacに通用するかどうかの実験をしたいんですよ」

「なるほど、でもA.L.I.C.Eは貴重っすからね」

「数日前に現れたと聞きましたが……?」

 

修也はそう言うと、荷物の梱包を解き始める。プラケースの中には大量の小さな部品やパーツが入っており、それらは丁寧に分解されていた。

 

「流石は世界一の義肢の会社っすね」

「慣れた物です、早速組み立てましょう。手伝って貰えますか?」

「もちろん。その為に僕は着いて来たんっすから」

 

そう言うと比嘉も楽しげにアスクレーからの荷物を開封していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

修也がオーシャン・タートルに訪れる数日前。六本木のラースでバイトしていた和人が研究の目的であるA.L.I.C.E.の顕現に精巧した話は修也も耳に挟んでいた。

そして現在のアンダーワールドの状況を知って首を傾げた為に彼はオーシャン・タートルへの切符を菊岡に求めていた。

 

「……」

 

彼に割り当てられた制御室の席でモニタリングをして修也はアンダーワールドを見ていた。

 

「(やはりおかしいな)」

 

そこで感じた違和感に修也はやや目を細める。

現在、六月二八日二三時十三分。和人が金森淳に襲われた情報はまだ修也の元に入って来ていなかったし。そもそも携帯も繋がらない海の上にいた。

 

「(宗教が生まれるのは予想できたが、ここまで従順なのはおかしい)」

 

基本的にアンダーワールドは現実世界と何ら変わらぬ空間を作り出すために何もかも制約に縛られていない。世界の種子を根源としたこの世界ではペインアブソーバーすら機能していない。

修也はこの空間を箱庭と呼んでおり、事実。この世界設定などもほとんど自分が考案していた。

 

「(一度も反乱が起こっていないと言うのは変だ)」

 

人類の歴史を見ても分かる通り、宗教というのは基本的に堕落しやすい物であり。それに反感を覚えた民衆が農具などを片手に暴動なんかを起こすのが常だ。しかしこの世界の住人はそのような素振りすら見せた事が無かった。

 

「調べてみるか……」

 

そこで席を立った彼は菊岡に言う。

 

「菊岡さん。ちょっとお願いしてもいいですか?」

「ん?何だい?」

 

そこで修也は菊岡に聞いた。

 

「一度で構いません。アンダーワールドに入る許可をください」

「なるほど、そう来たか……」

 

菊岡は修也の要望を聞いて少し考えた。

 

「うーん、どうしようかな……」

「すぐに戻りますよ」

 

修也はそう言うと、菊岡は少し考えた後に軽く頷く。

 

「よし、三十分。中で見た記憶とかは全て消去すると言う条件なら許そう。記憶を残すと体に負担がかかるからね」

「ありがとうございます」

「いいよいいよ、僕も上司の息子に機嫌を損ねられたら恐ろしいからね」

 

菊岡はそう答えると、修也は少し悪い笑みを見せて聞く。

 

「それはどっちですか?父ですか祖父ですか?」

「どっちもだよ」

 

菊岡が自衛官であることを知っていると暗示的に伝えると、彼は参ったなと言った様子で修也を見ていた。

 

「とりあえず、どのSTLを使えばいいですか?」

 

そう聞くと菊岡は茶目っ気に修也に言った。

 

「実を言うと君用にSTLは用意しているのさ」

「…本当に入れたり尽くせりですね」

「君ほど信頼している人はいないからね」

 

そう言うと菊岡は修也に部屋の鍵を渡す。

 

「第一STL室にある二号機の鍵だ。元々実験用に色々と改装が施されているから。自由に使ってくれ」

「分かりました。お借りします」

 

そう言うと修也は制御室を後にしていた。

 

 

 

 

 

そして制御室を出た修也は、一旦自分の部屋に戻るとスーツケースの中からある小さめの赤いプラ箱を取り出した。ポケットに入るサイズのそれを修也は手に取るとそのまま次にSTL二号機に足を運んだ。




今回はアンダーワルドに修也が入る前日譚と、アリス達と触れる前の修也のNPCに対する価値観をメインに書こうと思っています。
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