ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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間話#30 特殊な料理

五月の初め

 

和人達、俗称キリト・ファミリーは修也のマンションに集っていた。

 

「んで、今日の飯は何だ?」

 

少々嬉しげにテーブルに座る和人。

それを軽く明日奈が宥めていると、部屋のアイランドキッチンで修也は圧力鍋で煮立てていた。

 

「まぁ待て」

 

火加減を調整し、鍋の蓋を開けると濛々と湯気が立ち込める。

今日は土曜日、だが詩乃はマナー教室に行っているので夜まで帰ってこない。なので昼に修也のご招待を受けて和人達は修也のマンションに転がり込んだ。

 

「今日は特別な飯だ」

「ほぉほぉ…」

 

特別な飯と聞き、興味津々な和人。明日奈達も少し修也の作る特別な料理と聞いて期待値は上がっていた。

 

「ただ、食う前に一つ書いて欲しいものがある」

「書く?」

「これだ」

 

首を傾げる里香に修也は四人の前に一枚の白い紙を置いた。

 

「『誓約書』…?」

 

紙に印字された三文字に珪子は首を傾げると、修也は言う。

 

「私からの約束は二つ、『今日出た飯は完食しろ』『返品禁止』それだけだ」

「はぁ…?」

 

修也の言うことに四人は首を傾げる。

 

「なんかヤバいもの食べさせる気?」

 

困惑する明日奈に里香が訝しむ目を向けると、和人は聞く。

 

「シュールストレミングとかか?」

「阿呆、あんな災害級の缶詰出せるか」

 

有名な激臭兵器の名を出した事に修也は突っ込むと、四人に誓約書にサインをすれば今日の飯を食べられると言う。

 

「なんか変なもの食べさせる気じゃ無いでしょうね」

「まずかったら承知しねぇぞ」

「珍しい食材を使った料理だ。味は保証する」

 

そういい昨日作って食べたら美味かったと言い、修也の言葉を信じて四人は恐る恐る誓約書にサインをした。

 

「判子は?」

「逆に今持っているのか?」

「無い」

 

和人とそんな会話をした後に修也は四枚の誓約書を回収するとそれをやや憐れんだ様子で牧奈が回収していく。

 

「さて、今回のメニューだが…」

「何だ何だ?」

 

修也は和人達に今晩のメニューを言う。

 

「ラーメンだ」

 

修也のメニュー発表に鸚鵡返しで返す。

 

「ラーメン…」

「ラーメン?」

「ラーメンですか」

「修也のラーメン…」

 

四人は予想外のメニューに安堵していると、修也は早速準備を再開する。

 

「食べやすいように醤油ラーメンだ。アレルギーとかは居ないな?」

「アレルギー無いです!」

「大丈夫だ」

 

和人達にアレルギー確認をすると、彼は沸騰した鍋に麺を突っ込んでタイマーをセットする。

その間、人数分の白い丼を湯で温めて一度シンクに流した後、作ったであろうスープを入れる。

ネギの青い部分や生姜、そして時折日本酒の香りがする中で明日奈が呟く。

 

「なんか変な匂いがしない?」

「え?」

「そうかしら?」

「そんな匂いしますかね?」

 

しかし明日奈以外はわからない様子で首を傾げていると、修也は茹で上がった麺を引き上げて湯切りをすると菜箸で麺をスープを混ぜて上からトッピングを行う。

 

ネギに醤油煮の手羽先に、ネギの焦がし油をトッピングして四人分のラーメンが出来上がると里香達も手伝いながらテーブルに四杯の丼が置かれる。

 

「さぁ、食べてみてくれ」

「「「「いただきまーす」」」」

 

手を合わせて箸を手に取る。

 

「「「「ズズーッ」」」」

 

そしてラーメンを一斉に啜り出す四人。

そして次に蓮華にスープを入れて口に入れて飲む。

修也の作ったラーメンを一口食べた和人達に修也は聞く。

 

「どうだ?」

「美味い!」

 

和人がそう言うと明日奈達も満足げな様子でラーメンの感想を口々に言う。

 

「このスープは鳥使っているの?」

「この手羽先?これも良く味が染みてるわぁ〜」

「ちょっと肉の部分は食べずらいですかね…?でも美味しいです」

 

好印象な感想を前に修也も満足げな様子でキッチンで片付けを始める。

 

「そうかそうか…」

 

その表情は面白そうな雰囲気だった。

 

「これ、何の肉使っているの?」

 

トッピングの手羽先の材料を聞かれた修也は答える。

 

「あぁ、それは牛蛙の足だ」

「「「ぶっ」」」

 

直後、和人達の箸が止まった。そして三人は箸を落とした。

 

「なっ…?!」

「嘘でしょ?」

 

思わず箸を落とす珪子と里香。今自分たちが食べていた食材を知らされ、途端に戦慄する。

そして和人達の箸が止まったのをみて修也は実にイイ笑みを浮かべた。

 

「そうだ、今日の飯は牛蛙ラーメンだ」

「おいウッソでしょアンタァ?!」

 

目の前の料理を知り、和人達はそれぞれの反応を示す。

 

「なんてもの出してんのよ?!」

「う、うげぇ…」

 

珪子と里香は顔を青ざめながら珪子は吐く姿勢を取ろうとする。

 

「おいおい、部屋で吐くなよ…」

「ちょっとアンタァっ!!」

 

里香は修也に近づいて詰め寄った。

 

「だが誓約書にサインをしただろう?」

「クッ…」

 

左様、四人はこのラーメンが出てくる前に誓約書を書かされており。それによると必ず完食しなければならない。

 

「それに最初、君たちも美味い美味いと食っていたじゃないか」

「言われたら食べられなくなるでしょうが!!」

「怒るのそっちですか?!」

 

里香の怒りの方向に珪子は驚いていると、和人はやや興奮気味に蛙ラーメンを見る。

 

「すげぇ、蛙ってこんな美味いのか!」

「散々臭み抜きをして食べやすくしておいた」

「買ったのか?」

 

和人が二日間学校を休んでいたのはこれが理由だったかと納得しながら牛蛙の足の肉を食べる。

 

「いや、色々な蛙のいる場所に行って捕まえてきた」

「だからあんた、昨日は休んでいたの?」

「そうだ!」

 

自信満々に答えた修也に里香は呆れてため息を漏らす。

 

「どんな所に情熱注いでんのよ…」

「前に和人が食べたがっているとユイさんから聞いてね」

「おぉ、マジか!」

 

ナイスだユイと叫んで和人は蛙ラーメンを楽しむ。

 

「しかし、本当に鶏肉みたいで美味いな」

「苦労して釣った甲斐があるな」

 

和人が喜んで食べている様に満足げな修也。そしてその横で天を仰いでいる明日奈。

 

「か、蛙…食べちゃった…」

「あっ、明日奈さん?」

 

そんな明日奈に和人が異常を感じで心配そうに声をかけると、彼女は顔を青くしたまま笑う。

 

「ハハハ…蛙、食べちゃった…」

「明日奈はんっ?!」

 

蛙を食べたショックで壊れ始めた明日奈に和人が声をかけて軽く揺らし始め、修也もその具合に流石に顔を軽く青くした。

 

「明日奈が…」

「壊れちゃいましたよ…?!」

 

そうして壊れた明日奈はそのまま気を失うように倒れ込んでしまい、明日奈の残ったぶんのラーメンは和人がスープまでしっかりと飲むことで終了していた。

 

和人からは『美味しかったからまたやってくれ!』と言われたが、里香達からは『全力でお断りさせていただきます!!』とのお堅い決意を表明しながら顔色悪い明日奈を介抱しながら帰っていった。

 

なおその日の夕方、明日奈からVRに呼び出しを受け。そこでとんでも無いお仕置きを喰らう羽目になってしまった。これは酷い。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「結局、みんなにあれ食べさせたの…」

 

マナー講座から帰ってきた詩乃はやや顔を引き攣らせながら修也を見る。

そんな詩乃に彼は頷きながら湯呑みでほうじ茶を飲む。

 

「あぁ、皆美味そうに食っていた」

 

そう言い修也の顔を見て詩乃は聞く。

 

「その後当てようか?材料を伝えて和人以外全員吹き出した」

「大当たり」

 

少しニッと笑って修也は片手にコオロギを混ぜたスナック菓子を食べる。

 

「明日奈はその後に倒れ込んでしまったがな」

「飛んだ二次被害出てるじゃないの…」

 

呆れたようにため息を吐いた詩乃は自分の食べさせられたあの蛙ラーメンを思い返す。

 

放課後から出かけると言って消えていった翌日の朝に、新鮮な大量の牛蛙の死体を詰め込んだビニール袋を持って帰ってきた修也に、猫のようにビビり散らかした詩乃は、その後にキッチンでウッキウキで蛙の解体をし始める修也を、まるで化け物を見ているような目で見ていた。

 

どうやら蛙が出る場所をバイクで巡りながら夜中中走り回って大量に捕まえて来たらしい。

 

「解体手伝わせたのは忘れないわよ」

 

そしてその後、解体した蛙を生贄に臭み消しの為に大量の日本酒と生姜。ネギの青い部分を投入して死ぬほど換気をしながら煮込み、捨てる部分の牛蛙の皮や内臓を冷凍庫に入れて凍らせていた。

本当は牛蛙の皮も食べられるらしいが、なんか変な病気になられても困るので詩乃が全力で説得をして修也を諦めさせた。

 

「あぁ、あれは非常に助かったよ」

 

そう言い、嫌がりながらも蛙の解体に手伝ってくれた詩乃に感謝をしながら修也は詩乃を見る。

そして死ぬほど煮込まれて完成した牛蛙のスープで作った牛蛙ラーメンは和人達が食べる前日に試作で作って二人で食べた。

 

材料はなかなかグロテスクで抵抗があったが、肉の食感は鶏の胸肉を食べているようなさっぱりした味わいで、醤油で煮込まれたおかげでそれほど臭くなかったのが唯一の救いだろうか。

 

「今度からは現地で捌いてから帰るべきだな」

 

修也は内臓と皮を捨てる時の苦労を思い返して反省をする。

捕まえた蛙の数は数えていないが、

 

「またやる気なの?」

「あぁ、和人がまた食いたいと言っていたからな」

 

そう言い次回もやる気満々な雰囲気の修也に詩乃は呟く。

 

「私はもう勘弁よ」

「あぁ大丈夫だ。今度は和人を誘って二人きりで行くつもりだ」

 

そして釣った蛙をその場で捌いて食して帰ってくると言い、爬虫類食に目覚めた自分の彼氏と和人に詩乃は戦慄しながらお茶を飲んだ。

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