ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#13 城の崩壊

次に意識が戻った時、自分は何故か片手でパランジャを持っていた。

 

「(え?なんで剣を……っ!?)」

 

本来両手剣であるはずのパランジャを片手で持っている事に疑問を持ったが、その理由はすぐに分かった。もう片方を別のプレイヤーが持っていたのだ。

 

「(キリト……)」

「っ!?」

 

キリトはパランジャを持つ自分の手に驚きを表していた。

 

「ブレイド……?」

「(気付いたか?)」

「なっ!何でここに!?」

「(さあ、私にもサッパリだ)」

 

よく見れば自分の姿も幽霊のように透けており、動かせるのも片手と両脚だけだった。

 

「(私は片手しか動かせないが……行けるか?)」

「…ああ、十分だ」

「キリト君。何を話しているのだね?」

 

そう語りかけてくるのは残り数ドットとなったヒースクリフだった。そんなヒースクリフにキリトは不敵な笑みを浮かべた。

 

「どうやら俺には守護霊が憑いたみたいだぞ」

「ほう……それは君がブレイド君の両手剣を片手で持っている理由かな?」

「ふんっ、だと良いな!!」

 

キリトとブレイドはお互いにパランジャを持ってヒースクリフに接近する。その光景にヒースクリフは小さく笑みを浮かべると、その剣を受け入れるようにパランジャはヒースクリフの心臓を貫いた。

 

「面白いものを見させてもらったよ…ブレイド……」

 

彼は最後にそう言い残すとヒースクリフはポリゴン片へと変わり、アナウンスが流れた。

 

『緊急アナウンスをお知らせします。アインクラッド標準時、十一月七日14:55分ゲームはクリアされました。繰り返します……』

 

ゲームクリアのアナウンスはアインクラッド中に流れ、生き残ったプレイヤーはログアウトをして行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

修也は夕焼けの中、崩落してゆく鋼鉄の城を眺めていた。するとそこに声をかける人間が一人いた。

 

「絶景だろう?」

 

振り返ると、そこには白衣姿の茅場の姿があった。

 

「何だ……兄さんだったか……。夢が叶った気分はどうですか?」

「満足……とは行かないが夢が叶った時の充実感はあるな。……しかし、最後のアレには驚かされたぞ」

 

無論、あの亡霊の時の話だろう。どれだけ理屈を重ねても到底わからないような難問だ。

 

「そうだね……自分でもいまだに不思議でならないよ」

「VR技術はいまだ未知の部分がある、と言う事か……」

 

崩壊していく鉄の城の様はどこか潔かった。

 

「本来死んだはずのプレイヤーが、死後の行動に干渉する事は出来ない。…けど、さっきのはそんな定理を覆す事だった……」

「まだまだ私のシステムが完全ではなかった。と言う事だな」

 

そう答える茅場に修也は言う。

 

「この世に完璧なものは存在しないよ兄さん。たとえそれがVRの世界であっても」

「…そうだな……」

 

修也の横で茅場が城を眺めていると不意に茅場は修也に聞いた。

 

「お前が日本に戻ってきた時は驚いた……もう帰って来ないと思っていた」

「……まぁ、爺さんから帰ってきて欲しいって前々から言われてたんだよ」

 

それを聞き、茅場は納得した。

 

「成程……孫バカとはあの人の事を指すのだろうな」

「ハハッ、それは違いないね」

 

城の崩壊が四割ほどまで進んだ頃。茅場はこの場所に招待した人がいると言い、視線を横に向けた。

 

「キリト達か……」

「挨拶に行かなくて良いのか?」

「……まあ、最後の挨拶をしておきますかね」

「まだ死ぬと決まったわけじゃないがな」

 

茅場は若干苦笑しながら修也と共に水晶の床を歩いていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「よぅ、キリト」

「っ!その声……ブレイド!」

 

ブレイドの挨拶にキリト達が驚いていた。

 

「幸せそうだな」

「無事……だったのか?」

 

さっきとは違い、しっかりした輪郭を持つアバター姿のブレイドにキリトは驚いていた。

 

「それはまだ分からないさ」

「…どう言う事?」

「システム上の私がどのように反映されているのか、それがまだ分からない。何せ、こんな事は初めてのことだろうからね」

 

アスナの疑問にブレイドはそう言って崩れる城を眺めながらキリトと少し離れた位置に腰をかけていた。

その間、キリトはブレイドの後にやって来た茅場にログアウト状況の確認や、この世界を作った理由などを聞き終え、最後に茅場はキリトにある事を話した。

 

「キリト君、最後に聞いて欲しいことがある」

「……何だ?」

「彼のことだ」

 

そう言い茅場が指差した先にいるブレイドを見つめた。

 

「もし彼が現実世界に帰還していたら……あの子を見ていてくれ」

「……何故だ?」

「こんな私を現実世界で慕っていた子だ……現実世界で何があるか分からない。だから見守って欲しい」

「……」

 

その時の茅場の目は家族を心配するような暖かい眼差しだった。

よく見ればブレイドと今の茅場はよく似ており、兄弟と言われれば納得できそうだ。

だが、ブレイドと茅場のつながりはキリトだけが知っている秘密であり、それはアスナにすら伝えていなかった。

キリトは茅場の願いを聞き当たり前だと言わんばかりの視線を送ると茅場は満足したようにその場を後にしようとした。

 

「ああ、忘れていたよ。キリト君、アスナ君……ゲームクリアおめでとう」

「それはあいつに言う事じゃないのか?」

 

そう言い、キリト達は目線を崩壊していく城を眺めるブレイドに向けると、茅場はそんな彼を見てキリトに答える。

 

「彼の行き先は私でも分からない。分からないのにそんな事を言うわけには行かないだろう?」

「…そうか……」

 

キリトは若干落胆した様子でいたが、どこか彼が生きているのではと思う気持ちもあった。

 

「さて、私はそろそろ行くよ」

 

そう言い茅場は風のように消えてしまった。

その場に残ったのはキリト、アスナ。そして、ブレイドの三人だった。

 

「…あ!そういえばブレイドの名前。聞いていなかったな」

 

キリトが話題を切り出すと、それに続くようにアスナも慌てて口を開いた。

 

「そ、そうだったね。消える前に聞いとかないと……」

 

しかし、そんな二人にブレイドは問いかけた。

 

「…良いのか?死んでいるかもしれないと言うのに……」

「死んでいても墓参りに行きたいのさ」

 

キリト達はブレイドを見ながらそう言うと、ブレイドは納得した上で現実世界の名前を名乗った。

 

「そうか……」

 

キリト達の相変わらずな所だと思いながら彼は自分の二年間隠してきた本名を名乗った。

 

「私は修也。赤羽修也だ」

 

名前を聞き、キリト達は彼の名前を覚えておくように胸に刻みながら復唱する。

 

「赤羽……」

「修也……」

 

よし覚えたといった様子で二人はブレイドの本名を記憶すると、ブレイドはそのまま二人に聞く。

 

「それが私の名前だ。ついでに二人の名前を聞いても良いか?」

「ああ、もちろんだ。俺は桐ヶ谷和人」

「私は結城明日奈」

「桐ヶ谷に結城か……また彼方で会えたら会おう」

 

そんなブレイドの軽い言葉にキリト達はやや力のこもった口調で言う。

 

「ああ、また向こうでな」

「絶対会いましょう!」

 

そう言うと三人は白い光に包まれ始め、いよいよログアウトが始まった。

 

「(いよいよか……)」

 

ブレイドはログアウトを緊張しながら考えていた。

 

「(今思うと思い残しをしてしまったようだな…)」

 

こう言うのを走馬灯の言うのだろうか、後悔先に立たずとは良く言ったものだ。

 

「(キリトやアスナに会う……それが出来るだろうか……)」

 

白い光に包まれる中で、意識が遠のく感覚がブレイドに緊張を与えていた。

 

「(できたら…嬉しいのかもな……)」

 

ブレイドはそう思いながら意識を手放した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

次に目が覚めた時、真っ白な景色が広がっていた。視界が徐々に戻り、それが白い天井だと理解した。

 

「ぅ……ぁ……」

 

なかなか力の入らない腕と上半身を持ち上げてナーヴギアを取り、次に聴覚が戻ってきた。

ガリガリの骨のように細くなった腕を見ながら修也は苦笑していた。

 

「(戻れたのか……)」

 

すると不意に目から涙が溢れて来て嗚咽も漏らしていた。

 

「(そうか……戻れたのか……)っ……うっ…うぅ………!!」

 

来ている病院着が濡れるのも気にせずに嗚咽を溢していると病院内が騒がしくなり、看護師と医師が慌てて部屋に入って来た。

それから健康状態やその他諸々の確認をされ、体が全体的に衰弱をしていると判断された。最初に水を飲まされ、乾き切っていた喉を潤していた。

 

「赤羽さん。声は聞こえていますか?」

「……」コクッ

 

看護師の指示通りに健康診断をされて、ひと段落した頃。

病室に家族と祖父が飛んできた。

 

「修也!!」

 

最後に見た時と変わらない見た目の母が泣きながら抱きついて来た。後ろにいた父も祖父も自分の無事に安心と喜びを表していた。

 

「よかった…無事でよかった……」

「…母さん……」

 

枯れ枝のように細い腕を回して背中を摩っていると部屋にもう一人少女が入って来た。

 

「マスター、お帰りなさい」

 

少女は修也の事をマスターと呼ぶと修也はどこか嬉しそうに返事をする。

 

「…ああ……戻ったぞ」

「ふふっ、マスターなら戻って来ると思ってましたよ」

「…そうか……」

 

そうして一向に離す気配のない母を慰めると両親達は先に戻り、少女だけが病室に残っていた。

 

「マスター」

「…何だマキナ?」

 

マキナと呼ばれた少女は修也を見ると嬉しそうにしていた。

 

「今飛び込んだらマスター死にます?」

 

感情的で、そこいらの少女とも劣らぬ様相のマキナは問いかけると、ブレイドも当たり前のように答える。

 

「…当たり前だ……。この体を見ろ」

「それもそうですね。じゃあ、今日は我慢します」

「と言うか常に我慢しろ。あんなのされたら身が持たん」

 

修也は呆れながらマキナを見ると疑問に思った。

 

「ん?今日は帰らないのか?」

「ええ、お父様が無理を言って私だけ残ってもらえるようにしてもらいました」

「……はぁ…何しているんだか……」

 

多分、特権なんだろうなと簡単に予測できた。それだけの権力を持っている人間だし。

 

「まあ、お父様はマスターが知っている時よりも偉くなりましたから。これくらい簡単なことです」

「そうなのか?」

「ええ」

 

それほどにまで社会情勢は大きく変わっていると言う事だろうと、彼は容易に推察できた。

 

「……まあ、詳しい話はまた後で聞くから。今日は休ませてくれ」

「はい、マスターも明日からのリハビリ頑張ってくださいね。常に進化したパワーアップマキナがついていますから」

「…あぁ…」

 

少しばかり疲れた様子で修也はマキナに少し微笑むとマキナは修也の表情に嬉しそうにすると病室の椅子に座って修也のことを見ていた。

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