「これなら行けるか……」
ブレイドはコンソロールを動かしてキリト達のいる場所への回路を開いていた。
そしてキリト達のいる場所に向かう時、ブレイドの体に異変が起こった。
「これは……」
自分の持っていた装備や両手剣が光に包まれ、別のものに変形をした。
「この装備は……」
見覚えのある格好になった自分の防備と武器に苦笑してしまうと誰かの意思を感じた。
「これで行けという事ですかね……?」
ブレイドは剣と盾を持つとこじ開けた回路に入って行った。
「ブレイド……?」
「じゃなかったらどうする?」
「ブレイドさん!?」
「よう、間に合ったかな?」
落ちてきたブレイドの姿はアスナやキリトがSAOの時に色々と世話になったヒースクリフに似たような甲冑を着ていたからだ。
「その格好って……」
「さあ?誰かが私の武装を変えたようだぞ?」
そう言うとどこからか須郷の叫び声が聞こえた。
「僕より高位のIDだと!?ふざけるな!!」
「ふざけているのはお前の方だ。須郷伸之」
そう言うと須郷は自分のシステムに介入してきたブレイドに対し騒いでいた。これがコイツの本性かと心の中で残念に思うとブレイドは須郷に向かって言った。
「お前は世界の王でも何でもない。仮初の玉座に座る仮初の王にすぎない。仮初の王相手に鍍金の勇者だけで十分だろう?」
「このガキっ「ガキはあんたの方だ、須郷」……!!」
須郷はブレイドの殺気に何も言えなかった。今のブレイドは本当の魔王のように須郷を睨みつけており、それは誰よりもとても恐ろしかった。
「須郷……お前の間違いは私をガキだと思ってベラベラと喋ったことだ」
「な、何だと!?」
「グロージェン・マイクロ・エレクトロニクス社」
「な、それは……っ!?」
その会社を聞いて須郷はたちまち顔が青くなる。
「あんたなら知っているだろう…………そうだ、貴様がこのシステムを売ろうとしている米国の会社だ」
「お前、何故それを知って……」
「色々調べさせてもらった。今頃外じゃあ面白い事になっているんじゃないか?」
「っ!まさか……!!」
須郷が慌ててログアウトボタンを押そうとしたが……。
「管理者権限『ピロー』にてプレイヤー名『オベイロン』のログアウト機能を剥奪」
「っ!?」
ログアウトというこの世界唯一の脱出路を塞がれ、須郷は狂気じみた様子で叫んだ。
「こうなったらお前をズタズタにしてやる……システムコマンド!オブジェクトID『エクスキャリバー』をジェネレート!!」
しかしシステムの反応はなかった。ブレイドは須郷の慌てた様子が滑稽で微笑しながらコマンドを言う。
「システムコマンド、オブジェクト『エクスキャリバー』をジェネレート。管理者権限をプレイヤー名『キリト』に譲渡」
そう言うとキリトが驚きながらシステムコマンドを受け取っていた。ブレイドの手には金色の片手剣が浮かび上がり、手に取っていた。
「キリト、お返ししてやれ」
「…良いのか?」
「面白いものを見れただけで十分だ」
そう言うとブレイドはキリトにエクスキャリバーを渡し、壁のほうに向かって歩いていた。キリトは受け取った管理者権限を受け取ると須郷に向かって叫んだ。
「システムコマンド、ID『オベイロン』をレベル1に」
「っ!?」
「逃げるなよ。あの男は、茅場晶彦はどんな場面でも臆する事はなかったぞ」
「茅場!?アンタか!またアンタが邪魔をするのか!?」
すると須郷は喚き始めた。
「何で死んでまで邪魔をする!!アンタはいつもそうだよ……いつもいつも!!何でも悟ったかのような顔しやがって!!……僕の欲しいものを端からさらって!!」
喚く須郷を見てブレイドはコイツがどのような生き方をしていたのかがよく分かった気がした。
キリトが須郷のペイソン・アブソーバーをレベルゼロにし、須郷のエクスキャリバーを投げた。須郷の攻撃は全てキリトに防がれるとキリトが須郷の頬を掠った。
「イタッ!」
頬を掠っただけで須郷は悲鳴をあげていた。だが、キリトは容赦なく剣を須郷の手首に振った。須郷は剣を持っていた手ごとキリトによって切られ、悲鳴を上げていた。
「アアアアァァァァ!!手が……僕の手がああぁぁぁ!!」
純粋な痛みが須郷を遅い、今にも気絶しそうだった。だが、キリトはそんなことも気にせずに力任せに剣を振っていた。
「グボアァァァ!!」
「アスナが受けた苦しみはこんなもんじゃないだろう……!!」
上半身を下半身が真っ二つにされた須郷は顔の原型が完全に崩壊していた。キリトは須郷の金色の髪を乱雑に掴むと上半身を上に放り投げ、大剣を両手で握って突きの姿勢を構えた。
ザシュッ!
「ギャアアアアアアア!!」
不快な悲鳴が響き渡り、須郷の体は白い灰に変わった。
キリトはアスナを縛っていた鎖を剣で簡単に切ると剣を落として力なく崩れるアスナを抱きしめた。
「ーー信じてた…ううん、信じてる……これまでも、これからも。君は私のヒーロー……いつでも、助けに来てくれるって……」
「……そうなる様に、頑張るよ」
そう言うとアスナの体が光に包まれる。恐らくログアウトの順番が来たのだろう。後でブレイドに感謝をしなければいけいない。
「現実世界は多分、夜だ。でも、すぐに君の病室に行くよ」
「うん、待ってる。最初に会うのはキリト君が良いもの」
アスナは透き通った声で囁いた。
「外の世界は色々と変わっていてびっくりするぞ」
「ふふ、いっぱいいろんなところに行って、色んな事をしようね」
「ああ。ーーきっと」
そう言うとアスナは光の粒子となって消えていった。重さがなくなるまでキリトはアスナを抱きしめていた。重みがなくなりキリトは暗闇の中に残るとここでブレイドの姿が見えない事に気がついた。
「そう言えばブレイドは……?」
するとキリトは眩い光に包まれて強制的にログアウトをされた。
「(後でアスナの病院に行かないと……)」
キリトは強制ログアウトがブレイドの仕業だと思いながら光に包まれて行った。
「驚いた。管理者権限を渡すとはな」
「キリトの方が恨みが篭っている。そっちの方がよっぽど効果的だと思っただけさ。ま、結局兄さんがくれた装備は使わなかったけど……」
「それはもうどうでも良い……あのデータはもう必要ない」
世界樹の一角で二人が話していた。一人はこの世界に似合わない白衣を来て、もう一人は赤い軽装備に両手剣を身につけた人だった。
「成程、恨みがこもった一撃の方が普通の攻撃よりも苦痛を与えられる……何とも科学的ではないな」
「僕はそう言う類は結構信じるタイプだからね」
そして二人はキリトをログアウトさせたのを確認した。
「……で、兄さん。僕は何をすれば良いの?」
「これだ」
そう言って取り出したのは透明な卵型の結晶で、中には小さな光が灯っていた。
「これは……」
「『世界の種子』だ。私の仕事をしてもらった報酬だ。この後これをどうしようと文句は言わない」
「成程……」
「じゃあ、私はそろそろ行くとしよう」
世界の種子を受け取ったブレイドは茅場を見送ろうとした。すると茅場は思い出した様にブレイドに言う。
「ああ、そうだ言い忘れていたよ。修也」
「なんだい兄さん?」
そこで茅場は生きていた修也にこの言葉を贈った。
「ゲームクリアおめでとう」
直接言われ、ブレイドは少し間を置いた後に苦笑する。
「……もう二ヶ月も経っているよ」
「生存判定を貰っただけ儲け物じゃないか」
そう言われ、ブレイドは納得した様子だった。
「それもそうだね……じゃあ。またいつか会いましょう、兄さん」
そう言うと茅場は虚空に消え、自分もログアウトボタンを押した。
今頃、リークした情報を元に警察が関係者を捕まえに行っているだろう。だが、須郷かその仲間がキリトを狙って襲うかもしれない。
警戒をしながらブレイドはアミュスフィアを取る準備をした。
ログアウトした時、時間は午後九時を回っていた。
修也は目を覚ましているであろうアスナの病院に見舞いに行くために途中で連絡をしながらバイクを走らせた。一時間ほどしてアスナの入院している病院の前に到着する。
深夜だが裏口の関係者用駐車場は空いており、守衛に顔パスで通らせてもらうとバイクを駐車場の中に入れた。
そして修也の予想は的中した。
駐車場でコートを着て片手にナイフを持った男が黒い服を着た少年に襲い掛かっていた。
咄嗟に持っていたガスガンを適当に撃つ。
パンッ!!
『Hands up!(手を上げろ)』
咄嗟に英語で叫ぶとコートの男もとい須郷伸之は目を真っ赤にさせていた。手に拳銃を持っている事に和人のみならず須郷も驚いていた。
その瞬間を逃さず修也は須郷の顔面に一髪パンチを喰らわす。グローブをつけていたのもあり、須郷のメガネは粉砕して思い切り吹き飛んだ。
パリンッ!「ガアッ!」
『和人!走れ!』
「あ、あぁ……!!」
和人は右腕を引き摺りながら病院内に歩いていった。恐らく修也であると気づいたのだろう。安心した様子だった。
修也はメルメットとジャケットを着た状態で顔の判別は不可能だし、声もヘルメットの影響で少し篭った声になっていた。
「キリト君に復讐する前にお前を消してからになりそうだ」
『偽りの王が堕ちたものだ……私を消せると良いな』
「屑がぁっ!俺を舐めるなぁ!!」
メガネを壊された須郷は情緒不安定にナイフを持って簡単に突っ込んでくる。
その単純な動きに修也は軽々と避けると須郷の脇腹を左足で蹴り上げる。
「ゴフッ!」
体が曲がり、弱った所で須郷の右腕に手刀をすかさず入れるとナイフをそこで落とした。
そのナイフを掠め取り自分は須郷に馬乗りになり、首筋にナイフを当てた。
『形成逆転。サバイバルナイフでも生身の人を殺すのは簡単だ』
「ヒィッ!」
ナイフの刃のない部分を押し当てると須郷は悲鳴を上げた。
『寝ておくと良い……起きた頃には独房だろうがな』
ゴッ!!
ナイフを押し当てた状態で須郷の頭を思い切り地面に叩きつけると須郷は血を流して顔が崩壊し、おまけに失禁した状態で気絶していた。
『あーあ、こりゃ面倒な事になったな……』
すると駐車場に一台の黒いセダンが入ってきて、そこから黒服の男たちが出てきた。
『来たか……じゃあ、後はお任せしてもよろしいですか?』
そう言うと黒服の男たちは頷くと須郷に手錠をかけて車に乗せると車を走らせて行った。
『なんとやわな奴だろうか」
ヘルメットを脱ぎながら修也はそう呟く。幸いどこにも傷はなく、そのまま明日奈達のいる病室へと向かった。
コンコンコンッ「入っても良いか?」
『ああブレイドか、どうぞ』
和人の返事が聞こえてきて扉を開けると部屋のベットでは明日奈がナーヴギアを外して立っており、和人と手を繋いでいた。
「初めまして、結城明日奈さん」
「ええ、初めまして。赤羽修也さん」
明日奈と現実世界で挨拶をした修也は明日奈と和人が手をずっと握っている事に気づき、すぐに部屋を出ようとした。
「じゃあ、挨拶も済んだ事だし。私はそろそろお暇させてもらうよ」
「ええ、それじゃあ……」
そう言うと修也は部屋を出ようとする時、和人が聞いてきた。
「あ、そう言えば修也の歳。聞きたかったんだ」
「……歳は十七だ。和人、人の年齢を聞くときは気をつけろよ」
「え!同い歳……」
「それじゃあな」
そう言い残すと修也は病室を後にして出て行った。病院の外に出て部屋のあった場所を見返すとそこでは黒色と白色が交わっている様な感覚があった。