ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#19 新学期

「今日の授業はここまで、課題ファイル20と21を出すから来週までにアップロードしておくように。以上」

 

教師が資料を持って教室を後にする中、修也は一人教科書をまとめると鞄の中にしまった。

 

「さてと、行きましょうかね」

 

昼休みとなり、食堂に足を運んだ修也は窓を眺める二人の女子の近くに座る。

 

「何しているんですか。お二人さん」

「しゅ、修也さん……」

「ビックリしたぁ」

「元気そうだな」

 

修也はうどん定食を持って席に座るとリズベットとシリカ改め、篠崎里香と綾野珪子は窓の外を眺めていた。

それに釣られて修也も外を覗くとそこでは和人と明日奈がイチャイチャしていた。

 

「(成程……)」

 

すべてを悟った修也は里香が歯軋りさせながら外を見ていたことに納得をすると昼食を取り始めながら二人を眺めていた。

 

「こんな事なら停戦協定なんかするんじゃなかったわ!」

「もう、リズ……里香さんが言い出したんじゃないですか」

「こればかりは仕方ない部分もあるだろう」

 

うどんを啜りながら修也は外を眺めるとそこでは和人達バカップルが幸せそうに何かを食べていた。

 

「(何故だろう…不意に捌きたくなる気分は……)」

 

修也は理由のわからない苛立ちをしながら食器を片付けた。

 

 

 

 

 

放課後、修也は一旦家に帰りバイクに乗って御徒町にある《ダイシー・カフェ》という店に来ていた。

一人の同伴者を連れて……

 

「マスター。ここですか?」

「ああ、そうだ。さ、行くぞ」

「はい、()()

 

そう言って扉を押すとそこでは先程まで会っていた里香と珪子。そしてエギルもとい、このダイシーカフェの店長のアンドリュー・ギルバート・ミルズが準備をしていた。

 

「エギル。手伝いに来ましたよ」

「おお、修也か」

「やっと来たわね」

「修也さん。そちらの子が……」

「ああ、妹だ」

 

そう言うと、彼女は一歩前に出て挨拶をする。

 

「初めまして。赤羽牧奈といいます。いつも兄上がお世話になっています」

 

牧奈が挨拶をすると里香達は驚いた様子を浮かべた。

 

「凄い良い子ね。流石は修也の妹と言ったところかしら?」

 

里香の言葉に修也は苦笑しながら準備の手伝いをしていた。

 

「エギル、こっちで勝手に作っても良いか?」

「不味いものじゃなければ十分だ」

 

台所でエギルと修也が料理を作っていた。あらかた料理を作り終えたところで時間が余っていたので修也はエギルの許可を取って料理になりそうなものを作っていた。

 

「ホー、シーザーサラダか」

「見た感じ野菜料理が少なく感じたんだ。今日は女性も来るみたいだから少しくらいは野菜をな」

「そうだな、ジャンキーばかりと言うのも重いか……」

 

そんな調子でサラダを作り、それを表に持っていき、ほとんど全員が集まった時、主役の和人達が店にやって来た。

そしてオフ会が和人の音頭の元始まった。

 

 

 

 

 

「エギル、ピニャ・コラーダを出せるかい?」

「まぁ、出せるには出せるが……今日バイクじゃないのか?」

「一杯だけだから問題ない。それを頼むよ」

 

カウンターの隅で隠れるように食事を楽しんでいる修也はエギルにノンアルコールカクテルを注文していた。

店ではマキナが明日奈たちに可愛がられており、また別の場所では男達が固まって馬鹿騒ぎをしていた。

 

「ほいよ。ピニャ・コラーダだ」

 

エギルが慣れた手つきでグラスを修也の前に置くとキリトが座ってエギルに注文をした。

 

「マスター。バーボン、ロックで」

「お前は何言っているんだ?」

 

思わず声に出てしまうほどに適当な注文にエギルは氷の入った烏龍茶を出していた。

キリトは烏龍茶が出てきたことにホッとした様子でいるとキリトのさらに隣にスーツに趣味の悪いネクタイを下げ、額にバンダナをつけた長身の男が座っていた。

 

「エギル、俺には本物をくれ」

 

男ーークラインは出てきたタンブラーを持ってスツールごと回転させ、女性陣が固まっているテーブルを見てだらしない顔で見つめていた。

 

「おいおい、良いのかよ。このあと会社に戻るんだろう?」

「無理言って半休にさせてもらったよ」

 

きっちりしていると思いながら修也はグラスを傾けていると和人が話しかけてきた。

 

「なあ、例のアレ。どうなっているんだ?」

「ん?ああ、少し待ってろ。確認をする」

 

そう言って修也は持って来た鞄からパソコンを取り出して、キーボードを触ると和人とエギルに見せた。

 

「稼働中のサーバーはおよそ三百、ミラーサーバーが五十……ダウンロードに至っては十万超えてるじゃねえか」

「あの人はすごいよ……本当に」

 

そう呟やき修也は今も増え続けているダウンロードの数を見ていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ここで須郷の後のことを話したいと思う。彼は警察に連行された後。黙秘に次ぐ黙秘、否定に注ぐ否定で抵抗をしていたようだが部下の一人が自白をしたのを知るとあっさりと全てのことを話したと言う。

 

幸いにも囚われていた三百人近いプレイヤーは後遺症も無く、無事に復帰できたと言う事だった。

 

だが、SAO事件で世間的にVR技術は衰退しかけていたのに、須郷の引き起こしたALO事件によって業界は大ダメージを受けた。

最終的にレクト・プログレスは解散、レクト本社も彰三氏や経営陣が一新されたことでなんとか会社としての体裁を保てたという。

もちろんALOも運営が中止され、他のVR作品も社会的批判に喧しく、これらも中止は免れないだろうと思われていた。

 

 

 

 

 

その状況を力技で根こそぎひっくり返してしまったのがーー茅場が修也に渡した『世界の種子』だった。

 

あの事件後、修也が調べた結果それは少し大きなサーバーさえあれば誰でも仮想世界を作れると言う優れものであった。安全を確認した自分は、これをどうしようかと和人とエギルに相談してこの世界の種子を世界中のサーバーにアップロードし、誰でも自由に使えるようにしたのだ。

これは茅場晶彦が望む事だと確信をしている。あの人は幼い頃からの夢である『異世界に行く』と言う果てしない夢がある。決して終わりの見えないその夢は彼を電脳化させるまでに至ったのだ。ならばあの人の夢を終わらせるわけにはいかないと思い、自分とエギルのツテを使って世界中にこの情報を公開させた。

 

このまま死に絶えるはずだったアルヴヘイム・オンラインもいくつかのベンチャー企業が共同出資して作られた会社によってタダ同然でレクトからデータを受け取っていた。

さらに、この世界の種子にはコンバートと呼ばれるひとつのVRゲームで作ったデータを他のゲームに移動させることができるシステムがある。

さらに世界の種子は生活の場にも足を広げ始め、さまざまなカテゴリーのサーバーが誕生していた。

 

「さて、二次会の予定は?」

「午後十一時にイグドラル・シティに集合だ」

「そうか、了解……それで、あっちの準備はどうだ?」

 

和人が声を顰めて修也に聞く。修也は小さく笑みを浮かべた。

 

「問題ない。サーバーまるまる一個使う容量だったが……なにせ『伝説の城』だ。ぜひ自分のサーバーを使って欲しいと色んな連絡があったよ」

 

修也は疲れた様子だったが、どこか嬉しそうになっていた。

実はこの作業をした時にアルヴへイム・オンラインの会社に勧誘されたのだが、お断りさせてもらっていた。

理由としては簡単で、すでにザ・シードを使って自分とアメリカにいた時の友人で作った会社でゲーム管理者をしているからだ。

これ以上予定を増やされては敵わないからだった。

 

 

 

 

 

マキナを連れて店を後にすると修也はマキナをバイクの後ろの席に乗せて家に戻り始めた。

 

「どうだったマキナ」

「楽しかったです。マスター」

「いい勉強になったか?」

「はい、家に帰ったらマスターが遊んでいる間に最適化しようと思います」

 

「そうか……」

 

修也はバイクを走らせながらマキナを作った時のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

《次世代トップダウン型試作人工知能モデルNo.001 マキナ》

それが彼女の本当の名前。名前の通り彼女は人工知能だ。だが、トップダウン型では珍しく感情を持つ電子生命体として誕生し、修也がアメリカにいた時、アメリカに留学しに来ていた茅場晶彦の力を借りて作った自分の分身だ。

基本システムは兄が、彼女の体を作ったのは自分だった。

一生で最初で最後の兄と一緒に作った命だった。

 

彼女を作った後、兄は先に日本に帰ってしまい、自分はアメリカの学校を卒業した後に彼女を連れて日本に帰った。

それから自分がSAOに囚われた後。彼女は毎日自分を最適化させ、自分が帰ってくるのを待っていたと言う。

そして最適化していく中、彼女は感情を手に入れ、目まぐるしい進化を遂げていた。それはまさに一つの命として……人と同じように感情を持ち、表情を持ち、自分がSAOから帰った時は機械であるにも関わらず泣いて喜んでいた。涙は出ていなかったがそれでもそれを感じさせるくらいに彼女は進化していたのだ。

 

彼女の成長具合に驚きつつも自分は彼女の体を進化させてより人間らしくするために主に顔の部品を変えて表情を表せるようにした。

いまだに涙を出すことはできないが感情を表現できるようになった彼女を私は一人の人として、自分の妹として見るようにしていた。

そして学校に通うようにしてからは自分はマキナを連れて父の所有するマンションで二人きりで生活するようになっていた。

 

基本的にマキナが家の掃除をしてくれる為、家で基本的にする事は減っていた。

家事をこなすマキナに対して、自分は彼女の体のパーツ更新と言う形で彼女の最適化の手伝いをしていた。

今の所、体のパーツの交換率は半分にも満たないがマキナにはそれが嬉しいようだった。

常に情報の海を見ている彼女だが、そんな彼女でも明日奈達との会話は最適化させるにはいい経験だったようだ。

 

「(いい刺激になったようだな…これからもお世話になるか……)」

 

ブレイドがそう思いながらバイクを走らせる後ろでマキナは修也を見て悩ましい気持ちを抱いていた。

 

「(マスターは私に優しい……でも、私はマスターがそれで幸せになっているとは思えない……私はどうしたら良いんでしょうか……)」

 

マキナも修也と晶彦によって作られた命である事は理解していたが晶彦の強い要望で修也を兄のように慕うように設定されていた。

それには理由があったのだが、それを詳しく知ったのはもう少し後のことだった……。

 

「(マスターを本当の意味で幸せにしてくれるのは誰なんでしょうか……?少なくとも叔父様や私ではマスターの飢えを潤す事はできなかった……)」

 

悔しそうにマキナは心の中で思っているとバイクが今住んでいるマンションに到着し、バイクを降りた二人はエレベーターに乗り込み部屋に到着した。

 

「じゃあ、マキナ。私は今から二次会に行く。しばらく休んでいてくれ」

「分かりました」

 

マキナは椅子型の充電器に座ると搭載されたバッテリーに充電が開始され、自分もスリープモードに入り、最適化が行われ始めていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

予定時間の五分前に入ったブレイドは多くのプレイヤーが空を眺めていた。

そして時間が午後十一時を示した時。

 

 

 

ゴーンゴーンゴーンゴーン!!

 

 

 

鐘の音と共にそれは姿を現した。

 

 

 

かつてある男が自身の全力をかけて作った鋼鉄の城。

 

 

 

ある男が夢見た鉄の城は再びその姿を現し、一斉に妖精達が城に向かって飛び始めた。

 

 

 

「兄さん……あなたの作った世界は今も、これからも生き続けますよ……」

 

ブレイドは剣を片手に一斉に飛んでいく妖精達に混ざって鋼鉄の城に向かって飛んでいくのだった……。

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