GGOを始めて二ヶ月ほど、修也は毎日のようにGGOにログインしてゲームをプレイしていた。
GGO最大の都市、SBCグロッケンは着陸した宇宙巡洋艦を中心にかつての巨大都市の上に建設されたと言う設定の為、街自体がとても入り組んでおり、道を覚えていなければ確実に道に迷ってしまう構造になっていた。
その為大きい道沿いなどには人混みや店があるのだが、逆に細い道や抜け道は余程の人じゃない限り知らない店などもあった。
「今度の会議でナビ機能でも入れようか話すか……?」
そんな事を呟きながらフリューゲルは借りた宿で今の愛銃であるモシン・ナガンにスコープを取り付けていた。
「もうちょっと別の銃が欲しいな……」
そう呟いてフリューゲルはモシン・ナガンを握る。今使っている銃のメインはこれだが、いずれ別のものが欲しいと思っていた。モシン・ナガンは確かに精度が良くて使いやすいのだが、しっくり来ないのだ。それに、ザクが木目の小銃を使っているのも見た目がちょっとアレと言うニッチな理由もあった。
「……ダンジョンに潜るか」
フリューゲルはそう思うと銃片手に必要なものを持つとSBCグロッケン地下の遺跡ダンジョンに潜る事を決心した。
ダンジョンに潜って数十分、モシン・ナガンを使ってダンジョンに潜っていると不意に足元に違和感を感じた。
パキッ!
「え?」
ガラガラ……
「うおっ!」
地面に空いた穴に吸い込まれるようにフリューゲルは落ちていった。
穴におちたフリューゲルは埃を払いながら立ち上がると目の前に巨大なボスが現れた。どうやらここは廃墟となった地下貯水槽のようで、開けた場所に高い柱が何本も立っており、その柱の間に巨大なボスらしきクリーチャーがいた。
少なくともプログラム時には見た事ないボスで、このダンジョンを作ったやつに小一時間ほど問い詰めたい気分だったが。そんなことも言っていられず、フリューゲルはモシン・ナガンを片手にマップを走り回り、マップ端の窪みに滑り込むとモシン・ナガンを構えた。
「弾薬は……あまり心許ないな」
残弾数を確認したフリューゲルは少しだけ苦い表情を浮かべるとモシン・ナガンを構えた。
一応、近接専用の拳銃として《H&K HK45》を持っているが、今回はすぐに帰る予定だったのでマガジン一個分しか持ってきていなかった。
その為、フリューゲルは小銃だけでこのボスを相手にしなけれなからなかった。
「これは死に戻り覚悟だな……」
ランダムで装備が消える事を覚悟してフリューゲルは武器を構える。
「後で、じっくり聞くとするか……」
フリューゲルはそう呟きながら銃を構え、モンスターに放った。
パンッ! カチャ!
パンッ! カチャ!
パンッ! カチャ!
パンッ! カチャ!
パンッ! カチャ!
五発撃ち終え、クリップを差し込んで、弾薬を押して、レーバーを引いて、弾薬を込めて、引き金を引く。
その作業を繰り返していると五時間が経過していた。その間にボスはガスや打撃など多種多様の攻撃を繰り返していたが、逃げ込んだ窪みに攻撃が来ることがなく、ダメージに怯える事なく小銃を撃っていた。
「これで終わりか…時間が掛かったな……」
最後のクリップを差し込みながらそう呟いてクリップを弾く。そして全弾装填し、残るは拳銃用弾薬しかなかった。
パンッ! カチャ!
パンッ! カチャ!
パンッ! カチャ!
パンッ! カチャ!
パンッ! カチャ!
ライフル弾が底を尽きたところでボスは悲鳴をあげて倒れた。
そしてボスモンスターから巨大な銃がドロップし、フリューゲルはそれを手に取った。
《Mag−Fed 20mmライフル》
アイコンを読んだフリューゲルは思わず二度見をしてしまった。
《Mag−Fed 20mmライフル》は対物ライフルの一つである。20×102mm弾を使用し、不発弾や分厚いガラスを貫通させる威力を持っている。
トップティア帯の銃であることにまず間違いないだろう。その分必要とされるステータスは多いが、威力は折り紙付きである。
……と言うかバルカン砲と同じ弾薬を使っているから貫通力が高いのは当たり前なのだ。
フリューゲルはその狙撃銃を手に取るとずっしりとした重みが手に伝わった。
「重いな…さすがは59kg……」
59kgと言う重さ、そして全長もとても長い。この《Mag−Fed 20mmライフル》は全長2.5mもあり、正直ネタ武器と言った方がいいかもしれない。
そんな事を思いながらフリューゲルは《Mag−Fed 20mmライフル》……通称アンツィオ20mmライフルを手に取り、フリューゲルはどこか嬉しそうになっていた。
売れば物凄い値段になるがフリューゲルはこの重さが気に入り、売ると言う選択肢はどこかにすっ飛んでいた。
「(これ良いな……丁度良い重さだ)」
馬鹿火力の代名詞のような銃を手に取ったフリューゲルは満足げな表情(見ても分からない)を浮かべると、取り敢えずドロップした武器をしまいダンジョンを後にした。
あの後、ログアウトした修也はあのダンジョンについて言及し、そこで話を聞いて納得した修也はアンツィオ20mm対物ライフルを売ることなく自分の狙撃銃に決め、その他必要な武器や装備を整えてPvPやPvEを繰り返す毎日をしていた。
そんな日が続いた八月の半ば、修也はあるゲームデータを見てため息を吐いた。
「これは酷い……」
それはつい先日行われたPvPのトーナメント大会『バレットオブ・バレッツ』通称BoBの第一回大会の結果だった。
「アメリカサーバーから入ったプレイヤーが半数も持っていっている……」
三十人のプレイヤーの内、十五人が一人のアメリカサーバーから入ったプレイヤーに倒されていた。いわば無双状態だったのだ。
いま、ザスマンや他の仲間達が会議を開いて本格的に日本サーバーとアメリカサーバーを完全に分けるかどうかの会議が行われていた。
「やはり日本人とアメリカ人では銃に対する感覚が違うようだな……」
そう呟きながら修也は圧倒的強さを見せつけたプレイヤーを見ていた。
「プレイヤー名は『サトライザー』…か、この動きは軍人か……?」
大会のリプレイ動画を見ながら修也はゼリー飲料で軽く栄養補給をしながら勝手に話の進む会議を眺めていた。
結局、会議で特に話す事なく、二つのサーバーを完全に分ける方針で決まったのを傍観するだけだった。
そっから数日間はサーバーの完全分断の仕事で二日ほどログインできない状況が続いていたが、細かい所は他の人に任せて自分はGGOにログインをした。
「よう、『赤い悪魔』。今日、組んでくれねえか?」
ログインをして行きつけの銃器メーカーに向かったフリューゲルはいきなりそう声をかけられた。
赤い悪魔というのは今の自分の二つ名だ。こんな名前がついた理由としてはまず見た目が主な原因で、次にこの世界のギルドであるスコードロン。それもかなりの実力者の集団を一人で倒した事にあった。
その圧倒的な強さから『赤い悪魔』という二つ名がつけられていた。一部ではその見た目から『赤い彗星』とも言われているらしい……。
まあ、元ネタがそうなのだから当たり前と言えばそうなのだが……。
と、そんな事を考えながら依頼内容を聞いていた。基本的に自分は金を稼ぐ為にMod専門のスコードロンと組む事が多いが、たまにPvP専門のスコードロンと組んでいる。
「俺たちの狩りを狙ってくる奴らが居るんだ。報酬は割増すからそいつらから狩りの邪魔をさせないでくれ」
「……良いだろう。時間を聞こうか」
「直ぐに出る。来てくれ」
そう言ってそのプレイヤーはフリューゲルを連れてスコードロンと合流をすると砂漠に向けて歩き出していた。
首都SBCグロッケンから出て二時間ほど、フリューゲルは砂漠の山に埋まっている撃沈した戦艦の残骸の影にギリーを被りながら隠れていた。
「(そろそろだな……)」
フリューゲルはカーボン色に塗装されたアンツィオ20mm対物ライフルを構えながらスコープを覗いていた。
視線の端にはモンスター狩りをしている今日組んだスコードロンのメンバーが光学銃を手にモンスターを狩っていた。
「……見つけた」
フリューゲルは砂漠の先にある廃墟を見てそこに隠れているプレイヤーを見つけた。
「成程…彼らが邪魔をしている奴等か……」
スコープ越しに談笑している相手スコードロンを確認をすると引き金を引いた。
「スゥ…ハァ……」
ドォン!
距離はおよそ2000m、スコープ越しに弾が着弾するまで大体十秒ほどの時間がかかる。ゲーム設定で銃の初心者用に設定されている《弾道予測線》は実は引き金を直ぐに引けば相手に線が見えない状態で相手を撃ち抜くことができる。
但しこの技はスコープ越しに距離、風向き、落下運動を計算して撃たないといけない為、これをやる人は殆どいない……と言うかできる人がとても少ない為、このシステムの穴の使用率は滅法少なかった。
フリューゲルが隠れながら放った20×102mmの弾丸はプレイヤーメイドで炸裂弾仕様となっており、相手スコードロンの中央に飛んでいくと空中で炸裂し、周囲にいたプレイヤー達にダメージを負わせていた。
「二人逝ったか……」カランッ!
ボルトを引きながら次弾を装填すると先程と同じ方法で引き金を引いた。
警戒している上空でまた炸裂弾が弾け、今度は場所とさっき負ったダメージからか三人を持って行った。
ドォン! カランッ!
見えた限りで残っているのは一人今度は《着弾予想円》を使って確実に狙いに行った時……。
ザンッ!
自分のいた場所の近くに土柱が立った。発射された位置からおそらく相手スコードロンの奥から……距離にしておよそ2500mくらいだ。
そんな距離からこんな至近距離に届くとは思わず、驚いていると今度は目の前に弾道予測線が飛んで来た。慌てて後ろに下がるとそこにまた土煙が立った。土煙の大きさから恐らく対物ライフル……。それもなかなかの腕だ。だが……
フリューゲルはギリーを被りながら砂丘の裾野に一旦下がるとまた廃墟に向けて銃を向けた。
「悪いが、こっちも仕事なのでね…ま、完全にできたとは言わないがな……」
そうして廃墟に残った残りの一人を着弾予想円に入れる。呼吸は落ち着いており、円はとても小さく、相手の体を
ドォン!
放たれた弾丸は壁を貫通し、敵プレイヤーを吹き飛ばしていた。
「残りのあのスナイパーは……」
そう言ってスコープから探すもスナイパーの姿は見つからなかった。
取り敢えず仕事は終わったと認識し。フリューゲルは組んだスコードロンの仲間から報酬を受け取り、街に戻り必要な備品を購入していた。
Mag−Fed 20mmライフルって4500mでも有効射程なんだと言う、正直本当なのか信じられん……。
と言うかバレットM82でもまあまあデカいのにそれがオモチャに見えるって……。