十月某日、フリューゲルはSBCグロッケンの脇道に入った小さな店に来ていた。
今日は注文してから二ヶ月が経ってようやく完成したと連絡のあったある物を受け取りに来ていた。
「店主、完成したと聞いたぞ」
「ん?おお、お前さんか。こっちだ」
そう言って店主……ガンスミスが手招きをしてフリューゲルを店の奥に招き入れた。
「これが頼まれていたものだ。これで十分か?」
そう言ってガンスミスが被せていた布を剥がしてフリューゲルに見せた。
それは一見すればただの金属製の赤い箱だった。だが、箱の片方にはメカめかしい器具が取り付けられ、箱の横にはポケットのような物や何かを引っ掛ける器具がついていた。
それを見たフリューゲルは
「十分だ」
そう言い、フリューゲルはその箱を背中に背負った。
すると背中から何かがはまる音がし、箱は背中にガッチリと固定されていた。
ここまで来ればわかる人もいるだろう……
そう、フリューゲルは陸戦用ガ○ダムのコンテナを模しているのだ。
Mag−Fed 20mmライフルの20mm弾薬は重く、大量に運べないことからフリューゲルはコンテナを使って携帯できる弾薬の数を増やそうとしていたのだ。
しかし、コンテナを装備すると移動速度が落ちてしまうという欠点があるものの、STRを鍛え上げて来たフリューゲルはその問題をゴリ押しで解決してしまったのだ。
フリューゲルはコンテナの確認を終えるとガンスミスに言われた値段を置くとさっさと店を後にしていた。
新しい装備を使いたくて店を足早に出たフリューゲルは早速借りている宿屋に向かい、部屋の中で購入済みの20mm弾薬の入った箱型弾倉を入れ、試しにコンテナを装備したまま立って見たりしていた。そかしフリューゲルはベットにコンテナを置くと弾倉を取り出していた。
「ま、今日は使わないからこのまま片付けよう……」
そう言い20mm弾倉を片付け、次にフリューゲルはベルトリンクされた弾薬をコンテナに詰めていた。
弾は7.62×54mmR弾。ロシア帝国やソ連がよく小銃などに使っていた弾薬で高いエネルギー保持率を有している優秀な実包である。
開発から百年以上経っているのにも関わらず未だ軍で使われていることからその優秀さは伺える。いや、この場合関わりがないと言うべきか……。
そしてフリューゲルは立て掛けてある銃を手に持つ。
今使っている銃は《RP-46軽機関銃》。パンマガジンが特徴で有名なDP28軽機関銃の改良型で、パンマガジンとベルトリンク式の両方が使えるように設計されている。なお、フリューゲルが使うにあたってこの軽機関銃はカスタムされ、ピカティニーレールやグリップが追加で装着されている。
サブとして《イングラムM10》と《H&K HK45》を装備しており、どちらも同じ.45ACP弾を使用している。
「さて……そろそろ行くか」
フリューゲルはRP-46を手に取ると部屋を出て荒野に向かった。
ダダダダダダダダダッ!
ドォォン!ドォォン!
荒野で爆発音と銃声が響く。
「くそっ!なんだアイツは!?」
「とにかく撃ちまくれ!やられるぞ!」
7人のスコードロンがアサルトライフル片手に、グレネードを投げて出来た土煙に向かって銃を破茶滅茶に撃っていた。
土煙に撃っていると仲間の一人が撃たれた。
「ガァッ!」
「っ!後ろ!?」
咄嗟に背後に銃を向けるとそこには急接近してくる赤いロボットの姿があった。
「は、早すぎる……!!」
「う、撃てぇ!」
そう言い、銃を夢中で放つも赤いロボットには当たらず。ロボットはジグザグに動いて弾を避けていた。
「あ、当たらないぞ!?」
「近づけさせるな!ある分だけ撃て!!」
恐怖と驚愕の顔で埋まっている表情を見たフリューゲルは
「まだまだ行けるはずだ……」
そう呟いて、更に速度を上げて急接近をした。
「まず一人……」
「ギャッ!」
持っていたRP-46で一人を持っていき、残りの五人は今倒した仲間を盾にしながらRP-46で全滅させた。
《DEAD》の赤いマークが浮かび、フリューゲルはRP-46片手に荒野の岩山の上に登っていた。
「夕焼けか……」
日の落ちる太陽を眺めながらフリューゲルは黄昏ていた。
「なかなかなものだ……」
フリューゲルが黄昏ていると不意に背後から殺気を感じ、岩陰に滑り込む。
チュンッ!
先ほどまでいた場所に弾丸が刺さる。次に隠れている岩に弾丸が刺さり、ボロボロと崩れ始めていた。
「さて、どうしたものか……」
今出れば恐らく撃たれるだろう。岩に刺さる弾丸の大きさからおそらく50口径弾……自分の使う20mm弾よりは小さいが、対人には50口径でも十分な威力がある。
チュンッ!ガラガラ……
「……」
岩の影から鏡を使って覗き、弾道予測線を辿って岩山の上の森から発砲炎を見つけると岩から極力出ないようにして一気に崖を下った。
「っ…逃げられた……」
岩山の森に隠れている空色の髪をした女性プレイヤーは悔しがっていた。
理由は簡単でさっきまで狙っていたプレイヤーが居なくなってしまったからだった。
そのプレイヤーは『赤い悪魔』と呼ばれ、レアアバターを使用して戦場を駆け回っているとコアなプレイヤーからは有名である。
何故、コアなプレイヤーなのかと言うとそれは彼が一度もBoBに参加していないからだった。
正直、彼がもしBoBに出れば優勝するだろうと言われているほどの実力があると言う。
そんな相手をもし、自分が倒せたら強くなれるだろうと言う思いで赤い悪魔を追跡していた。
初めての会敵は八月、自分の所属するスコードロンが狙っていたPvE専門のスコードロンが護衛として彼を雇っていたのだ。
放たれた弾丸の破片が仲間達を襲い、自分以外全員が彼によってやられた。私も、まだヘカートⅡを入手したばかりだったので腕もそれほどなかった為にその時は仕留めることができなかった。
実際、そのプレイヤーはとても強かった。
さっきの荒野で五つものスコードロンを全滅させ、更に自分の放った.50BMG弾を軽々と退けていたのだ。
確実に強い
荒野の戦闘中に撃つこともできたがそれでは意味がないと思い、あえて彼が戦闘をしていない時を狙って戦いを挑んだ。
だが、結果として逃げられてしまった。岩陰から後ろの崖下に下ってしまい、悪魔を逃してしまった。
仕方なく銃を持って帰ろうとした時、気配を感じた。
咄嗟にサブウェポンのグロック18Cを取り出すも蹴り上げられ、代わりにRP-46のフラッシュサプレッサーが向けられた。
「チェックメイト」
「…そうね、負けたわ……」
ピンク色のモノアイに全身の真っ赤な塗装をした金属板。
明らかにロボットのような見た目のプレイヤー……さっきまでスコープで覗いていた赤い悪魔だった……。
崖下に降りたフリューゲルは廃坑道を走り、山の反対側に出るとクライミングの要領で崖を岩から岩へと移動していた。
そして気配を殺して極力草木を揺らさないように目的の人物を捜すと、森の中にいた狙撃手を見つけた。
空色の髪の少女は片手に対物ライフルの《ウルティマラティオ ヘカートⅡ》を構えていた。
ここで近づいたことに気づき、グロック18Cを構えるも蹴り上げ、ヘカートⅡを向けられない距離まで近づいた。
「……どうやってここまでこんな短時間で来たの?」
「崖下の廃坑道を通って来た。後は崖を登って来た」
「登った……?」
「ロッククライミングの要領でな」
「!?」
そう言うと少女は驚愕していた。銃を持って崖を登ろうとは普通思わないからである。出来たとしても相当のSTGが要求されるからだ。
フリューゲルは驚愕する少女を前に銃口を下げた。
「……っ!?」
いきなりの事に少女が疑問に思っているとフリューゲルはある提案をした。
「さっきの君の狙撃の腕は素晴らしかった……どうだ?数日だけ組んでみるのは」
「はぁ……?」
フリューゲルの提案に少女は疑問に思っているとフリューゲルは詳しく話した。
「こっちが前衛、君が後衛をする。君も私の実力を把握できるし、報酬も出る。損はないと思うが……」
「……」
フリューゲルの提案に少女は一考すると……
「いいわ、貴方の提案。乗ってあげる」
そう言うとフリューゲルはウィンドウを動かして《分隊申請》と言うタブを押した。
「え?何これ……」
「二人組で組む時に最適だ。これを使えばフレンド登録をせずともマップ上で位置を共有できる。ただし、分隊メンバーが同じ小隊のメンバーに打つとペナルティが課せられる。最大四人まで登録が可能だ」
「へぇ…よく知っているわね……」
自分が作ったゲームだから当然だ。とは言わなかった。運営がゲームをやっていると聞いたらチートでも使っていると疑わられるからだ。
だから下手に言う事はできない。
「まあ、色々と触っていれば分かる」
そう言い少女……プレイヤー名〈Sinon〉が小隊メンバーに追加された。
「それじゃあ、よろしく頼むよ。冥界の女神どの」
「ええ、宜しく。赤い悪魔さん」
そう言うとフリューゲルとシノンはお互いの二つ名を言うと握手した。
シノンと小隊を組んだ数日後、GGOからログアウトした修也は神保町の古本屋街に来ていた。
ここの古本屋街は青森にいた頃の本屋に似た雰囲気の店があり、よくここに来ていた。
そして今日もいい感じの古本を探そうと思ったのだが……
「臨時…休業……」
店に貼られた紙を見て愕然としてしまった。
『店長の体調がすぐれないので数日間お休みさせていただきます。宜しく』
シャッターが閉まり、休業と書かれた紙を見て修也は肩を落とす。宜しくじゃないわ!!
「はぁ…仕方がない、近くの図書館に行くか……」
修也は携帯で近くの図書館を検索してナビでその図書館に入った。
図書館に入り、本を探す。
「(あ、これ結構珍しい物だな……)」
そう言って本を手に取って読んでいた時、本棚の横で目一杯背伸びをしている少女がいた。
どうやら本棚の一番上に手が届かないようで何度もチャレンジをしていた。その様子を見て修也はその少女の代わりに本を取ってあげた。
「これで良かったかい?」
「あ、有難うございます……」
眼鏡をかけた少女はまさに文学少女を体現したような雰囲気と見た目を持っており、手には他の本も持っていた。
その少女を見た修也は本をその少女に渡すと次の本を求めて別の場所に向かって行った。
似ている
私ーー朝田詩乃はそう感じた。
今日、図書館で本を借りに来た私は読みたかった本が本棚の上にあり、手を伸ばしても届かなかった所に手を貸してもらった青年の顔を見た時にそう思ってしまった。
忘れもしない6年前の事。郵便局で強盗に出会った時に強盗の持っていた黒星・五四式を奪って撃ってしまった時。
郵便局にいた少し大人びた男の人が持っていた銃を持って行って、強盗に向かって撃っていた。
そして強盗はその人に撃たれてピクリとも動かなくなってしまった。
そして銃を分解して私をお母さんの元に連れて行き
「お母さんを守っておきなさい」
と言うとお母さんに何か伝えて警察の事情聴取を受けていた。
私はその人にお礼をしたいと少し経った時に警察にお願いしたが、その人はもう居ないと言われた。
だが、その人が全部責任を負ってくれたおかげで私は平穏に過ごすことが出来た。
そして私はあの人に会ってあの時のことを謝りたいと思い、母や祖父母にお願いして人が多く集まる東京に出てきた。
東京での生活は大変だったが、私はあの人に会いたい一心でここまでやって来れた。
そして今しがたその人を見つけた。五年前と変わらない金属的な目と鋭い顎、少し吊り目な所も変わっていなかった。ただ、あの時よりも表情が緩くなっている気もした。
私は咄嗟に彼の去って行った方を探し、図書館を探し回っていた。