図書館で詩乃はさっき出会った人を探していると。共用の机の所に何冊か本を積んでその人は椅子に座って本を読んでいた。
私は少し離れた席に座って本を読むふりをして彼を見ていた。
確認をしたかったからだ。
もしあの人だったら私は……
どうすれば良いのだろうか……
第一名前も知らない人にいきなり声をかけても不審がられるだけだ。
どうしたものかと過去の記憶を鮮明に思い出そうとしながら私は頭を抱えていた。
結局、話すことが出来ずに二時間が経ってしまった。その間も彼は本を持って来て、パソコンを開いて何かを打ち込んでいた。どうやら本は何かの専門書のようで、コンピューター系の本の様だった。
そしてパソコンを打ち終えるとその人は持って来た本のうち、何冊かを借りていくと図書館を出て行った。
それに怪しまれぬように後を追って外を出た。
街を歩くその人は本の入った袋を肩に担いで駅のほうまで歩いていた。
そして彼を追っていると突然、彼が見えなくなった。どこへ行ったのだろうと予測していると突然後ろから声をかけられた。
「君かな?私の後ろをつけていたのは」
「ふぇっ!?」
思わず変な声が出てしまい、後ろを振り向くとそこにはさっき図書館で会った人がいた。
「君、名前は?」
「え、あ、あ、朝田詩乃です……」
噛み噛みになりながら何とか答えると、呆れた様子で青年は溢す。
「朝田詩乃ね……詩乃さん、ここじゃあ何だから近くの店に行こうか」
「え?あ、はい……」
そう言うと近くのカフェに二人で入ると目の前にいる人は適当にコーヒーを頼んでいた。
私も釣られて紅茶を注文すると目の前にいる人は早速さっきの事を聞いて来た。
「さて、図書館から私の後ろをついて来たのは君かね?」
「あ、そ、そうで…す…すみません……」
そう言うとその人は小さくため息をついた。
「はぁ……なんでついて来たんだ?」
「あ、えっと……」
私はそう聞かれて咄嗟にこう答えてしまった。
「さっきのお礼がしたくて……」
「あぁ…成程」
そう言うとその人は納得した上でどこかホッとした様子を浮かべた。
「君に敵意がない事は分かったよ……おっと、自己紹介がまだだったかな?」
そう言うとその人は名前を名乗った。
「私は赤羽修也。こう言う字を書く」
そう言って修也さんは図書カードを見せた。名前を知った私も彼と同じように図書カードを見せた。
「私も、こう言う名前です」
「成程…詩乃ってこう言う字なのか……」
そう言い、修也さんは頼んだコーヒーを飲み、一呼吸置いた。
「ふぅ……さて、これも何かの縁だろう。連絡先を交換でもしようか」
「え?良いんですか……?」
私が驚いていると修也さんは訳を話した。
「別に良いさ。君とは趣味が合いそうだしな」
そう言いメールアプリを開いて、私は修也さんと連絡先を交換していた。
連絡先を交換しと私と修也さんは席を立つと会計を済ませた。その時、修也さんは自分の分まで会計をしようとしていたので慌てて止めてしまった。
「あ、わ、私のは自分で払いますよ」
「問題ない、こんな時に女性に払わせるわけには行かないさ」
「で、でも……」
「問題ないさ」
そう言って会計を済ませていた。そんなやりとりに話を聞いて居た店員もちょっとときめいて居た気がした。
そして店を出ると修也さんは私の家の住所を聞いて来た。
「君、住んでいる場所は?」
「え?ゆ、湯島です……」
「そうか……なら送っていこう」
「え?」
初対面の人とは思えない接し方に彼女は困惑も混ざった驚きをしていた。
「さ、乗り給え。湯島なら帰り道の途中だ。ついでに送って行ってやる」
そう言うと修也さんはバイクにしまってあったもう一つのヘルメットを私に渡すと修也さんのバイクの後ろに乗った。
「じゃあ、出すけど良いかい?」
「あ、は、はい。大丈夫です」
ブロロロロ……
大きなバイクが走り出し、私は成り行きで修也さんに家まで送ってもらう事になった。
「すごい……」
そもそもバイクに乗る事自体久しぶりで、その新鮮な感覚から思わず口に出してしまった。
するとその声に気づいたのか、修也さんが聞いて来た。
『バイクに乗るのは初めてかい?』
「あ、いえ、すごい久しぶりで……」
『成程』
そう言って懐かしい感覚を楽しんでいるとあっという間に湯島のマンションの前に到着してしまった。バイクを降りた私は修也さんにお礼を言った。
「送ってくれて、有難うございました」
「こっちも帰る途中だったんだ。じゃ、またいつか」
「はい」
ブロロロロロ……
そう言うと修也さんのバイクを見えなくなるまで見送ると私はマンションに戻り、アミュスフィアを手に取る。
さっきの感覚を思い出しながら私は修也さんの顔を思い出していた。
「(また…会えるかな……)」
そんな事を思いながら私は彼方の世界に向かうための言葉を唱えた。
「リンク・スタート」
今日はペアで組んでいるシノンと会う予定である。先程図書館でずっと自分のことを見ていた朝田詩乃という少女の顔を見て何か思い出そうとしていた。
「どこかで会ったことある気がするんだがな……」
そんな事を呟きながら修也は今住んでいるマンションに帰宅した。実を言うと帰り道ではなく、寄り道しただけなので詩乃相手には嘘をついて居たのだ。
そして時計を見て夕食まで時間があるので修也はGGOで一戦する事にした。
自分の部屋に入り、持参したアミュスフィアを使い電源を接続した。
「リンク・スタート」
そうしてベットで寝ている感覚から椅子に座っている感覚に変わり、フリューゲルは目を覚ました。
宿屋を出てシノンと合流したフリューゲルは早速荒野に飛び出して廃墟都市を走り回っていた。
「あなた、どうしてそんなに当たるの?」
二人で行動している最中、そんな事を聞かれた。
確かに今の二人の行動はとても単純で、フリューゲルが突っ込んで敵を撹乱し、シノンが背後から撃つ。
単純だがその撹乱する際にフリューゲルは最小弾薬数で敵を撃ち抜き、相手を殲滅していた。
今日倒した人数はざっと二十人、今頃グロッケンでは大騒ぎになっているだろう。
そんな事を思いながらフリューゲルはシノンに近づく。
「なぜ当たるか…そうだな、強いて言えば……常に落ち着いて全体を見通すからだな」
「全体を……?」
彼女の問にフリューゲルは頷く。
「そうだ、スナイパーの君なら分かると思うが全体を見通して作戦を考えるのはスコードロンも生き残る確率が高いという事だ」
「成程……」
「そういう時に興奮した状態で全体を見るのは難しい。だから常に落ち着いて全体を見る」
「でも、そんな事できるの?」
思わずシノンはフリューゲルに聞くとフリューゲルは答えた。
「そう簡単に出来るわけじゃない……。君には君のやり方があるはずだ。それを見つけて練習すれば君も出来るようになるはずだ」
そう言うとフリューゲルは持ってきた《AKM》を持ち、街に残ったプレイヤーの掃討にかかった。
AKMはかの有名なAKー47の改良型で、フリューゲルのはそれを更にカスタムした代物だった。
具体的に言えばAKMにスコープを取り付け、マガジンがツインドラムマガジンに変更された……控えめに言って頭のおかしい弾薬を装填しているのだ。
まあ、元々AK−47やその派生系であるAKMに使われている弾薬はショップの中でも安い部類に入り、大量に購入できることから初心者には人気だ。
そして自分が気になったのはフリューゲルがどれくらいの種類の銃を持っているかだった。
少なくとも確認した中では名前の分からない狙撃銃一つとこの前使っていたRPー46、今使っているAKMに腰に下げているイングラムM10にH&K HK45。一体どれだけ銃を持っているのだろうかと気になってしまった。
シノンはそんな事を思いながらフリューゲルの向かう先にいるプレイヤーに向けて照準を合わせていた。
結局この後合計で五つのスコードロン、人数にして三十人のプレイヤーを潰し、フリューゲル達はお互いに報酬を等割してその日は別れたのだった。
ログアウトした時には丁度夕食の時間となり、修也は冷蔵庫と棚から適当に飲料ゼリーと薬剤を何錠も取り出すとその二つを一気に飲み込んで胃の中に収めた。
「食事は最低限の栄養があれば十分。母さんには怒られるがな……」
苦笑しながら修也は薬剤を閉まっているとマキナが出てきて薬瓶ばかりの台所を見て怒っていた。
「あ!またマスター薬だけで済ませてる!行けませんよ、しっかり食事をしてください!!」
「栄養は十分だと思うが?」
「薬じゃダメですよ!これ以上マトモな食事をしないなら、母上に来てもらいますよ!」
「分かっているさ」
そう言い修也は適当に受け流すと自室に戻ってパソコンを開いていた。
見ているのは前回のBoBの結果と映像だ。
修也は十二月に行われる予定の第三回BoBに出場しようかどうか悩んでいた。
実際BoBに参加するにあたってザスマンに参加しようか悩んでいる事を伝えると。
『ああ、別にそんなの聞かなくって良いだろう。俺たちザスカーは自由な企業だ。自由にゲームに参加してもいいし、ゲームで何をしたって構わない。ただし、運営の力を使ってチートをするのは信用に関わってくるからそれはしない事が条件だ』
そう言ってザスマンはむしろ聞いてくることがおかしいと言った様子で聞き返し、修也は若干拍子抜けといった様子であった。
そして、修也は三回目のBoBに参加するかどうかを悩んでいた。
「成程…これなら何とかなりそうだな……ん?」
映像と結果を見ていると下の方に見たことある名前が写っていた。
「シノン…順位は二十二位……」
あまり芳しくない結果だがシノンを映した映像を漁っていると、どうも戦闘中に横槍を入れられた形でやられているのが分かった。
「そうか…PvPだからこんな事もあるのか……」
修也は映像を眺めながらそんな事を呟いた。
そして第三回BoBの景品にも興味があった。
「ザスマン、光学銃をモデルガンで作ったんだな……」
聞けばフルメタル製だというモデルガンに修也は興味があった。
数ヶ月前にザスカーの全員に社員の証としてザスマンが配った名前付き金色のプラズマグレネードのBB弾専用ボトルが送られてきた。
その時のツテを使っているのだろう、修也はそのモデルガンが欲しいと思っていた。
「売れれば賞金よりも高く売れそうだな……」
そんな気はないのだが。修也はこの時、BoBに参加する事を決意するのだった。