砂漠地帯から廃墟都市に向かったフリューゲルはそこでバギーを借りるとそのまま南下し、山岳地帯の一角に来ていた。
「確かシノンたちのいる場所がさっき見た時には森林地帯だったな……」
道中で何人かと交戦し、キル数は13人、ほぼ半数を倒したフリューゲルは山岳地帯にいた敵を高所から狙撃して敵を倒していた。
この
山岳地帯でスコープを構えると森林地帯にあった鉄橋に見た事ある顔が見えた。
「(あれはシノンとキリト……何を見ているんだ?)」
そう思い、鉄橋を見るとそこには骸骨マスクをした幽霊のようなプレイヤーが青い服を着たプレイヤーに拳銃をむけ、手で十字架を切っていた。
「まずいっ!」
直感的にそう感じたフリューゲルは引き金を引こうとしたが……。先にシノンのへカートだろう、弾丸をボロマントが避けていた。
「避けた…ならば……!!」
ドォンッ!!
避けて注意がシノン達に行った隙に炸裂弾を放ち、
自分の予想が当たって入れば……。そんな願いをしながら放たれた20mm炸裂弾は順調にペイルライダーを炸裂弾でズタズタにしていた。
それを見たボロマントは悔しげに銃を強く握っていた。
「(ビンゴ……)」
ドォン!!
「(当たらないだろうが……)」
念の為と思い二発目を放つも、それは炸裂弾の破片でダメージを負っただけで倒す事は叶わなかった。
ボロマントは慌てて橋から降りていた。
橋から降りて見えなくなる寸前、フリューゲルは興味深い物を目にした。
「ほう……」
それを見たフリューゲルは再度スコープで鉄橋を眺めると近くの岩場で思い切り手を振っている黒い男の娘とその横でため息をついている少女を見た。
「はぁ…何やってんだか……」
フリューゲルはため息を吐きながら岩山を降りるとちょうど《サテライト・スキャン》の時間となり、さっきのプレイヤーが誰なのかを確認するためにマップを開いたが……
「名前が…ない……?」
そこには橋や、その周辺にシノンとキリト以外何も映っていない地図があった。
すでに半数以上がやられており、自分を入れてあと10人程度と言ったところだった。
「残るは《銃士X》と《ステルベン》……か」
フリューゲルは名前を呟くと岩山を降りて隠し止めていたバギーに乗り込んだ。
「フリューゲル!」
バギーを走らせて鉄橋に向かったフリューゲルは橋の前で手を振っているキリトの頭をとりあえず軽く殴った。
「バカじゃあるまいし……」
ゴンッ!「いてっ」
キリトにゲンコツをしたところでフリューゲルはキリトに聞いた。
「私はこれから都市部に戻る。あそこに死銃がいる可能性があるからな」
そう言うとキリトがバギーに近寄って来ながら言う。
「俺も乗せてくれ。シノン……悪い、ここで別れよう。極力あのぼろマントには近づかないようにしてくれ。約束通り、次に会った時は全力で君と戦う。さっきは話を聞いてくれてありがとう」
キリトはそう言うとフリューゲルの乗ってきたバギーに乗り込もうとした。そしてフリューゲルがバギーのエンジンを吹かした時。
「ちょっと!待ちなさいよ!」
大声が響き、反射的に声のした方を向いていた。そこではシノンはヘカート片手にそっぽをむいていた。
「……私も行くわ」
「え……?」
「だって、あんた達《死銃》と戦うつもりなんでしょ?
あいつ、相当強いよ。あんたたちがあいつに負けたら、戦えないじゃない。あんまり気が乗らないけど、一時共闘して、先にあいつをBoB本戦から叩き出した方が確実だわ」
シノンの提案にフリューゲルが答えた。
「それは危険だ。もし本当に《死銃》が命を奪うのであれば……
君も命を賭ける必要がある」
「っ……」
思わず息を呑んだ。その時のフリューゲルは今までにない程重い感情を乗せてシノンに聞いていた。
組んでいた時とは違う。重く、ずっしりとした口調だった。だがシノンは……
「……行くわ。経験者は多い方がいいと思う」
そう言うとフリューゲルは少し間を置くと小さく頷いた。
「…分かった。では乗るといい……」
そう言われ、ホッとしているとフリューゲルは何か呟いた。
「だがその前に……キリト?」
「ああ」
二人して森を見た。
「?」
ヴォンッ!
「!?」
キリトは光剣を、フリューゲルが見た事無い片手斧を取り出すと何本もの赤い弾道予測戦が浮かんできた。
「まずはこいつの相手だ」
「シノン、援護よろしく」
そう言うと何本もの銃弾の雨が降り注いだ。キリトが左側で、フリューゲルが右側でそれぞれ武器を振ると弾道予測戦に従って見える弾丸を切ったり弾いたりしていた。
敵の使用する銃は《ノリンコ・CQ》。かの有名なM16の劣化コピー品である。そのため命中制度は低く、バラバラに飛んでいた。装弾数は30発、一人当たり約15発の弾丸を、しかも当たるものだけ弾くとなると数は少なかった。弾丸を弾くのを見て、相手は信じられないと言った様子だった。
「シノン」
「……了解」
バギーの上にへカートを置いたシノンがその古代中国の武将のような格好をしたプレイヤーに向かって弾丸を放った。
「うっそぉ……」
その言葉を残してプレイヤーは思い切り吹き飛び、Deadの文字が浮かんだ。
「……ねえ」
「ん?」
「なんか、狭くない?」
「そりゃそうだろう」
廃墟都市に移動中の三人、特に後ろにすわっているシノンとキリトはフリューゲルのあるものが気になっていた。
「「その背中の箱は何ですか?」」
そう、二人はフリューゲルは背中に付いている赤い箱を指差した。
フリューゲルもフリューゲルでこんなことになるとは予想外で思わず苦笑していた。
「仕方ないだろう。こっちは二人乗せるつもりが無かったんだ。街に着くまで我慢しろ。それとこの箱はまだ秘密だ」
そう言うとフリューゲルはバギーの速度を上げて街に入った。都市部の入り口でフリューゲル達はバギーを乗り捨てると街の一角でマップを見ていた。
「候補の《銃士X》はここ。《ステルベン》は…いないか……」
「じゃあ、俺は《銃士X》を見てくる。恐らく狙いはここの《リココ》だ」
「キリト、スタジアムの右側から。シノンは反対側のビルから狙撃」
「え?ふ、フリューゲルは?」
「私は正面から行く。それからキリト、敵は「どこにでもいると思え。だろ?」そうだ。じゃあ、私は行ってくる」
そう言うとフリューゲルはRP-46を構えるとキリトと共にスタジアムに走り始めた。
そしてシノンは崩壊したビルに移動して入ろうとした時、いきなり倒れてしまった。
何が起こったのか分からなかった。視界の端でうっすら見えたのは青白く光り、そこからスパークが走っていた事だった。
ーー電磁スタン弾
それを理解した時、シノンは驚愕してしまった。なぜなら、何もない空間から突如真っ黒な亡霊が現れたのだ。
「(ーーメタマテリアル光歪曲迷彩!!)」
光そのものを滑らせ、自身を不可視化させる究極の迷彩能力。一部の超高レベルネームドモンスターだけが持つだけの技のはず。
新たに追加されたのかと思ってしまった。
バサリとダークグレーの布地が翻り、頭部を完全に多くフードに、ボロボロの長いマント。完全に姿を現した襲撃者をシノンはただ呆然と眺めていた。
ーーーーーー死銃
私は何もできずに死銃が呟くのを聞いていた。
「……キリト、ブレイド。これで、ハッキリする。お前らが、本物か、偽物か……さあ、見せてみろ。あの時の、戦いの、続きを……」
そう言うと一つの銃を取り出して、コッキングをした。その銃を見て思わず握ったMP7を落としてしまった。
黒星・五四式ーー
六年前の郵便局。私が罪を着せてしまった戒めの、トラウマとなった銃。
私が撃ち殺してしまった。あの男が持っていた銃。
ああ、この世界のどこかにいたんだ。私に復讐するために、本当の罪を教える為に……。
もはや世界が灰色に見えた。ただ漆黒の闇の中に、二つの眼と一つの銃口があるだけであった。すぐ動かなければ殺されると頭ではわかっているのに、彼女は動く事ができなかった。
その時だ。重々しい声が辺りに響いた。
「見つけたぞ。ラフィン・コフィンの亡霊ーー!!」
それと同時に連続した銃声が聞こえ、私の前と死銃の間に赤いロボットが立ち塞がった。何度も見た事のある赤いアバターは今は太陽よりも輝かしく見えた。私は安堵の声が思わず出てしまった。
「フ…リューゲル……」
「すまない、遅れた様だな」
フリューゲルはRPー46片手に死銃に向かって話しかける。
「さっきの弾丸の味は如何だったかな?……赤目のザザ」
「赤い雷鳴、お前は、覚えて、いたんだな」
「ええ、毒ピックを突き刺したことだけは覚えているぞ。じゃ、お前とはまた後でだ」
そう言うと何かが投げ込まれ、そこから大量の煙が吐き出された。
シノンは誰かに抱えられると聞き覚えのある声がした。
「大丈夫か?フリューゲル」
「遅い、予定じゃあ五分のはずだぞ」
「そんな速度で走れるか!お前じゃねえんだ」
街を走りながらフリューゲルとキリトは軽口で文句を言っているとフリューゲルはキリトに言った。
「キリト、この先まで走るぞ」
「どうするんだ?このままだとアイツも追ってくるぞ」
「なに、問題ない。そこを右だ」
そう言うと開けた道路に飛び出し、そこに【Rent a buggy and house】と書かれた場所があった。そこには傷の無い二台のバギーと金属馬がいた。
「これに乗る。キリト、お前は後衛を頼む」
「了解。シノンは?」
「後ろから金属馬を撃ってもらう」
「了解」
お姫様抱っこで抱えられているシノンをヘカートⅡとMP7を持って走っていたことに彼女は驚いていた。
背中のコンテナの影響で速度は落ちているはずなのに、走れること自体だ奇跡だと言えた。
「さ、行くぞ。もうすぐそばまで来ている」
そう言うとフリューゲルはバギーにシノンを乗せるとキリトが後ろからバギーを走らせ、フリューゲル達を追いかけた。
痺れが薄れて、スタン弾を引っこ抜いたシノンはヘカートを持った。
「それで、あの金属馬を撃ってくれ」
「わ、分かったわ……」
シノンはヘカートを持ち、照準を合わせる。キリトと違い、動かない的を射抜くのは簡単だ。
そのまま引き金を引いて……
ガチッ
「…え?なんで……?」
引き金に力が入らなかった。安全装置は常に外している。今すぐにでも撃てるはずなのだ。しかし、引き金に力が入らなかったのだ。
するとフリューゲルに弾道予測線が当たる。
「っ!シノン、捕まってろ!」
「う、うん……」
シノンがフリューゲルの体に捕まるとフリューゲルは腰からイングラムM10を片手に持って後ろに放っていた。
ダダダダダッ!!
イングラムM10の弾は何発か死銃と金属馬に当たるが、大した効果にはならず、照準をずらし、足を遅らせることくらいしかならなかった。
「(やはりヘカートで撃った方が確実だ。だが……)」
フリューゲルはさっきのシノンの怯えている様子を思い出すも、やはり撃ってもらわないと状況の打開は無理だった。
シノンは少し足の遅くなった金属馬を見てホッとしていた。