ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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エクスカリバー編+α
#37 聖剣入手


二〇二五年 十二月二十八日

冬休み中の修也は詩乃と共に本屋に出向いていた。

 

「この作家の新作…出ていたんだな……」

「そう見たいね」

 

スニーカーにトレンチコートを着た修也は詩乃と一緒に本屋でカゴの中に本を入れていた。

 

「本当にいいの?欲しいの入れて」

「少し遅いクリスマスプレゼントだと思ってくれ。君の好みが分からなかったからな」

「そう言って当日は化粧品セットくれたのに?」

「君の肌に合うか分からないだろう?」

 

そう言って修也は詩乃の手を取りながら言うとカゴを持ったままレジに向かい、本を買っていた。その金額を見て詩乃が驚愕していたが、修也は簡単に電子マネーで払っていた。

 

「さて、本も買ったし、あとは家に帰りますか……」

「そうね」

 

すると修也の携帯に連絡が来た。

 

「ん?和人からか……」

 

そう言い届いたメールを見ると修也は少しだけ口角を上げた。同じメールだろう、詩乃が携帯を見て修也を見た。

 

「行くか?」

「勿論」

 

そう言うと修也と詩乃はそのまま寄り道もせずに家に帰ると早速アミュスフィアを取り出した。

 

「「リンク・スタート!」」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

集合場所であるイグドラル・シティ大通りにある《リズベット武具店》に入った。

そこにはすでに何人か来ており、奥の工房からリズが出てきた。

 

「あら、ブレイドも来たの?」

「ああ、キリトに呼ばれてな」

 

そう言いながら持っていた剣をリズに渡すと店の椅子に座って呼び出した相手を待っていた。

 

「リズの作ってくれた二倍の射程が欲しいわね」

 

シノンが店の中でそんな事を言うと奥で弦の張り替えをしていたリズが苦笑をする。

 

「あのねぇ、普通弓は槍以上魔法以下の距離で使う武器なんだよ?百メートル離れたとこから狙おうなんて、シノンくらいよ」

 

本拠であるGGOでは二千メートル級の狙撃をポンポンしている彼女にとっては今の距離は短いだろう。それでも新規アカウントでたった数日でここまで育ったシノンにブレイドは関心をしていた。

 

「(今度光弓シェキナーを探してもいいかもな……)」

 

修也はシノンの欲しがっている武器を思い浮かべながら店でキリト達の会話を聞いていた。

 

「そう言えばキリト、今日は何人呼んだんだ?」

「ん?取り敢えず俺、アスナ、リーファ、クライン、シリカ、リズベット、ブレイド、シノン、ユナにノーチラスかな」

「どうやってヨツンヘイムまで行くんだ?」

 

するとキリトは渋い様子で腕を組んだ。

 

「うーん、問題はそこなんだよなぁ……」

「前に言っていたトンキーは?」

「あれ七人乗りなんだよ……」

「おい、今日は十人来るぞ……」

「キリの字……」

 

思わずブレイドとクラインがジト目でキリトを見るとキリトは頭を抱えて考えていた。

 

「誰か象クラゲのテイムできるか?」

「どうだろう、難しいんじゃないか?」

「どうするんだよ」

 

三人で今後のことで頭を抱えていると部屋の扉が勢いよく開いた。

 

「「「たっだいまー!」」」

「お邪魔します」

 

入り口からポーション類の買い出しに行っていたリーファ、アスナとユイとユナとノーチラスが入って来た。

どうやらポーションを持ったまま帰って来たようでリーファとアスナがカゴを持って来ていた。そして、入って来た四人が机に物を並べていた。

 

「買い物ついでにユイと情報収集して来たわ」

「はい。どうやらまだあの空中ダンジョンまで到達したプレイヤーまたはパーティーは存在しないようです、パパ」

「へぇ……じゃあなんで《エクスキャリバー》のある場所が解ったんだろう?」

 

するとその訳をユイは答えた。

 

「それがどうやら、私たちが発見したトンキーさんのクエストとは別種のクエストが見つかったようなのです。そのクエストの報酬としてNPCが提示してきたのがエクスキャリバーだった、ということらしいです」

「しかもそのクエスト、お使い系や護衛系じゃなくてスローター系みたいだよ。おかげで今、ヨツンヘイムはPOPの取り合いで殺伐としてるんだってー」

 

アスナの言葉に集まっている皆は唇を曲げる。

スローター系とは、その名の通り《〇〇というモンスターを〇匹以上倒せ》や《〇〇というモンスターが落とすアイテムを〇個集めろ》といった種類のクエストであり、指定された種類のモンスターを片っ端から狩りまくることになる為、同じクエを受けているパーティーが狭いエリアで重なると、まぁ場がかなりギスギスした雰囲気になってしまうのだ。

 

「妙だな……」

「そうですね」

 

ブレイドとノーチラスの呟きに全員が耳を傾けた。

 

「《聖剣エクスキャリバー》は普段は強い邪神が多くいるダンジョンの奥に隠されているはずだ。それをNPCが報酬として提示するのか?」

「言われてみればそうですね」

「ダンジョンまでの移動手段が報酬、っていうならわからなくもないけど……」

「……ま、行ってみれば解るわよ、きっと」

「よーっし!全武器フル回復ぅ!」

「「「「「「「「お疲れぇ!!」」」」」」」」

 

リズへの労いの言葉をかけると、皆はそれぞれの愛剣、愛刀、愛弓を受け取って新品同様となったそれを改めて確認した。

そしてここでキリトが問題提示をした。

 

「さて、ここで一つ問題が。トンキーには俺を除いて六人までしか乗ることができない。そしてここにいるのは十人。つまり三人はトンキーに乗れないということだ」

「ど、どうするんですか?」

「単純にトンキーに二往復して貰えばいいだろう」

 

シリカの問いにブレイドが答えるとキリトが頷いた。

 

「そう、そこでこの中から人員を選ぶとして、トンキーを操る俺かリーファ、この中で一番魔法を育てているブレイドかユナが確実だな」

 

「そうね、基本的にここにいるのはほとんどが剣の方が強いし」

 

アスナもキリトと共にメンバーを考えていた。

ブレイドはフレンドメンバーがどうせ剣しか使わない脳筋思想だと予測してから。ユナは四十層で音楽でモンスターのヘイトを買った経験から魔法を育てていた。

前にもキリト達がダンジョンに潜ったことがあるらしく、その時に、恐ろしいほど物理耐性のあるモンスターが居たらしい。その経験から今回は魔法を強めた人は絶対必要なのだという。

 

「……で、編成は?」

「俺、アスナ、リーファ、クライン、リズベット、シリカ、ブレイドかなぁ……」

「じゃあ、ユナ、ノーチラス、シノンが第二便か……」

 

ブレイドの呟きにシノンが不満そうにしつつも編成に文句はなさそうだった。

 

全員の準備が完了した所で、パーティーのリーダーであるキリトがぐるりと皆を見回し、エホンと咳払いをしてから言った。

 

「みんな、今日は急な呼び出しに応じてくれてありがとう!このお礼はいつか必ず、精神的に!それじゃ、いっちょ頑張ろう!」

「「「「「「「「おー!」」」」」」」」

 

こうして彼らは伝説武器《聖剣エクスキャリバー》をゲットする為に邪神が蠢めくヨツンヘイムへと旅立ったのだった。

 

 

 

 

 

一行は央都アルンのマップにも表示されないような細い路地を進み、やがて目的地である円形の木戸へと辿り着いた。

キリトを先頭に十人が一列になってトンネルに入り、最後尾のクラインが扉を閉めると木戸は再施錠された。

一行はアスナを先頭に階段を降り始めたが、二割ほど降りきった所でリズが思わず呟いた。

 

「あ〜…一体何段あるの、これ……」

「大体アインクラッドの迷宮区タワー丸々一個分ぐらいだったはず……」

 

リーファがそう答えると、ここに初めてくる面子の殆どがうへぇという表情を浮かべた。彼女の隣を走るキリトはつい苦笑して、このトンネルのありがたさを力説し始めた。

 

「あのなぁ、ノーマルのルートでヨツンヘイム行こうと思ったら、まずはアルンから東西南北何キロも離れた階段ダンジョンまで移動して、モンスターと戦いながら奥に行って、最後に守護者を倒してようやく到着できるんだぞ? ワンパーティーなら最速二時間かかるとこ、ここを通れば五分で着くんだぞ! 俺なら通行料一回千ユルドを取ってここを通らしてやる商売を始めるね」

「それはトンキーがいないとできない事なのでは……?」

 

ブレイドが呆れながらキリトに言うとキリトは咳払いをしてなかった事にすると、しかつめらしい顔を作って言った。

 

「まぁ、そういう訳だから、文句を言わずに一段一段感謝の心を込めながら降りたまえ、諸君」

「あんたが造った訳じゃないでしょ」

 

キリトの前を走るシノンがクール極まる突っ込みを入れる。キリトはそれを聞くと少し悪い笑みを浮かべる。

 

「御指摘ありがとう」

 

そして礼を言うと同時に彼の目の前で揺れている水色の尻尾を思いっきりぎゅっと握った。

 

「フギャア!!!?」

 

その途端、シノンはものすごい悲鳴と共に飛び上がった。ケットシー特有の三角耳と尻尾は人間には存在しない器官だが、どういう訳か感覚があるのだ。その為、慣れてないプレイヤーがいきなり強く握られたりすると、とても変な感じがするのだ。

キリトが尻尾から手を離した時、

 

ゴンッ!「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

と言う重い音と共にキリトがゴムボールのように吹っ飛び、階段の下に思い切り転がって行った。

なにが起こったのかと思うとキリトの横にいたブレイドが拳を強く握っていた事に気がついた。

 

「「「「……」」」」

「…反論はあるか?」

「「「「「いいえ全く!!」」」」」

 

ブレイドに全員が同じ反応をするとそのまま一行は階段を駆け降りて行った。

この時、シノンに手を出した時の代償がどうなるかをよく知った一同であった。

 

 

 

 

 

数分後、階段下で伸びていたキリトを叩き起こすと一向はヨツンへイムに到着した。

 

「うわぁ……」

「すごい……」

 

ヨツンヘイムを初めて見るシリカとシノンの2人が思わず声を上げた。小竜のピナさえもシリカの頭の上で盛んに翼をぱたぱた動かしている。

皆の眼下に広がるのは、分厚い雪と氷に覆われた常夜の世界だ。照明は氷の天蓋から伸びてる水晶の柱が地上の光を届けるのみ。

視界を真下から正面に戻すと、地上のアルヴヘイムに屹立する世界樹の根に包まれるように薄青い氷塊が天蓋から鋭く突き出している逆ピラミッド型のダンジョンが見える。あの場所に、《聖剣エクスキャリバー》が封印されているのだ。

一通りの状況確認を終えると、アスナとユナの二人が右手をかざして凍結耐性の支援魔法を皆にかける。それを確認すると、リーファは右手の指を唇に当てて高く口笛を吹き鳴らした。

 

数秒後、風の音に混じって

 

くおぉぉぉー……ん

 

という啼き声が遠くからブレイド達の元に届いた。目を凝らすと、遠くから白い影が上昇してくるのが見える。

 

「トンキーさーーーん!」

 

アスナの肩からユイが精一杯の声で呼びかけると、トンキーはもう一度大きく啼くと、急上昇して目の前に現れていた。

初対面の面々はあまりの巨体に思わず後ずさる。

 

「へーきへーき、こいつらこう見えて草食だから」

「でも、こないだ地上から持ってきたお魚上げたら、一口でぺろっと食べたよ」

「へ、へぇ……」

 

クライン達がもう一歩下がるが、狭い場所ではそれ以上後ろに下がる事はできない。トンキーは一行を順に眺めると、長い鼻を伸ばしてクラインの髪をわしっと撫でた。

 

「うびょるほ!?」

「おいおい……ほら、みんな何立ち尽くしてんだ。背中に乗れって言ってるぞ」

「そ……そう言ってもよぉキリト、オレ、アメ車と空飛ぶ象には乗るなっつうのが爺ちゃんの遺言でよ?」

「こないだダイシーカフェで爺ちゃんの手作りっつって干し柿くれただろ?美味かったからまたください!」

 

それから、キリト達のパーティーはトンキーの背中へと乗り込んだ。

 

「じゃあ、シノンたちは後で迎えに行くから」

「ええ、分かったわ」

「待っていますね」

 

シノンとユナがそう言い返すとブレイド達はリーファに合図を送った。

 

「リーファ、出してくれ」

「よぉーしトンキー、ダンジョンの入り口までお願い!」

 

ダーナラの首のすぐ後ろに座ったリーファが叫ぶと、二体は長い鼻を持ち上げてもうひと啼きし、八枚の翼を羽ばたかせてダンジョンに向けて飛行していくのだった。

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