ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#39 待ち人

キリト達が先行する中、入り口で待っているシノン達は談笑していた。

 

「へぇ〜、じゃあブレイドさんとは昔に知り合っていたんですね」

「ええ、昔助けてもらったの」

「流石だなぁ……」

 

始めはどう話始めようか困っていたユナとノーチラスだったが、お互いにブレイドの話で共通したネタで話が盛り上がっていた。

 

「ブレイドさんには色々と助けられたからね、エーくん」

「ああ、あの人にはお世話になった」

「そうなの?」

「ええ、ブレイドさんにはあの世界で自分の代わりにユナを守ってくれたんです」

「私が能力を使って敵のヘイトを集めて……その全部を倒してくれたんです」

「そうなのね……」

 

ユナとノーチラスの話を聞いてシノンはどこか誇らしげな気持ちになるとユナが更に話を続けた。

 

「それで、その後エーくんと一緒にすごい怒られちゃったんです……」

「え?どうして?」

「『実践経験が浅いのにダンジョンに潜るなっ!』……って怒られました。それでその後ブレイドさんに説得されて元々置いたギルドを脱退して前線から離れたんです」

 

ノーチラスはそう言いながらKoBに残ると言った自分に圏内でボコボコに殴られた事を思い出していた。

あの時、自分は殴られた時とブレイドの表情を見て恐怖で動けなくなってしまった。

それを見たブレイドが『君は恐怖を乗り越えることが出来ていない。そんな状態で前線に赴いても大事な人を悲しませるだけだ』と言われてノーチラスを無理やりKoBから脱退させていた。副団長のアスナにも話を通していたのかすんなりと脱退することができ、ユナと共に下層で生活をする事になった。

だが、後々KoBを脱退した事にブレイドに感謝をしていた。そして、ブレイド達はゲームをクリアし、二人は現実世界に帰還をした。

 

「でも、俺はブレイドさんには感謝していますよ」

「なんか一つ年下なのに、私たちよりもずっと年上な雰囲気をしているんですよね〜」

 

ユナ達がブレイドの話をしていると遠くからリーファの声がうっすらと聞こえてきた。

 

「あ、来たみたいですね」

「じゃあ、行くか」

 

二人はお互いに武器を取って近づいて来る象水母を見ていた。その後ろでシノンが二人をじっと見て考えていた。

 

「(私も、修也とあんな感じになれるのかしら……?)」

 

シノンはそんな事を思いながらトンキーに乗り込んだ。

 

 

 

 

 

トンキーに乗って数分後、リーファから事情を聞いたシノン達は城の前に到着をした。

 

「さて、これで全員だな。リーファから話は聞いたか?」

「ええ」

「はい!」

「すぐに行きましょう」

 

後発の三人がキリト達と合流すると一斉に全員がスリュムヘイムに突入をした。

 

 

 

 

 

十人を等分した五人パーティー二つはスリュムヘイムを走っていた。

ウルズの言う通り中ボスも半分ほどが不在。大した戦闘もせずに一階層のボスへと辿り着いた。

そこにいたのは単眼巨人。馬鹿高い攻撃力と高い対物耐性が売りのフロアボスだ。

作戦は至って簡単だった。

 

「「ーーーーーーーーーー!」」

 

『高速詠唱』でブレイドとユナが詠唱している間、キリト達が敵のヘイトを買う作戦だった。

 

「そっちの金色の奴!物理耐性やばいよ!」

「そのための二人だろう!!」

 

キリト達が敵の周りをクルクル動きながらダメージを蓄積しているとキリトが気配に気づいた。

 

「来るぞ!避けろ!!」

「「ーーーーーーーーーー!!」」

 

詠唱を唱え終えたユナとブレイドは持っている杖から魔法を放った。

火柱が回廊を包み、単眼巨人を丸焼きにしていた。

 

「まるで巨人のフランベだな」

「何ですかその不味そうな料理……」

 

思わずその酷さに全員が苦笑していた。

剣を捨てて魔法に全振りした成果が出たと言えば聞こえはいいのだろう。

そんなこんなで第一層をクリアしたキリト達はそのまま第二層に向かって走る。

やはりここも敵を見上げることが少なく、キリト達が前衛をしている影響で後方にいるブレイド、シノン、ユナ、ノーチラスは只々走っているだけだった。

 

「こうも暇だな……」

「ま、たまにはこう言うのもいいんじゃない?私の練習の時にダンジョン周回しててゆっくり出来なかったし」

「それもそうか」

「これ終わったらどうする?」

「どうしようか。何か作るか?」

「前に作ってくれたシェパーズパイがいい」

「分かった。これが終わったらすぐ作ろう」

 

シノンとそんな会話をしている横で、ユナとノーチラスも似たような話をしていた。音楽妖精と影妖精の二人と猫妖精の二人は第二層を楽しい会話で終わりそうになっていた。しかし、キリトの合図で一気に現実に引き戻された。

 

「みんな、警戒。第二層のフロアボスだ」

 

 

 

 

 

第二層のボスは二頭の巨大な斧を持った牛頭巨人だった。物理耐性が異常に高い金色のミノタウロスと、魔法耐性が異常に高い黒いミノタウロスがコンビを組んでいた。

攻撃力も高いのだが、何よりうざったいのはそのコンビネーションだ。物理耐性が低い黒ミノタウロスのHPが下がったり、集中攻撃を浴びたりすると金ミノタウロスが庇いに来るのだ。そして金ミノタウロスに物理攻撃はほとんど通らない。

ミノタウロスがそれぞれ自分の特性を活かして文字通り肉壁をするせいで全員がなかなか決め手を刺さずにいた。後方でユナがバフと回復、ブレイドが攻撃をしているが相手の瞑想で大量に回復をされて思わず舌打ちをしていた。

 

「さて、どうしたものか……」

「どうします?このペースだと180秒ほどでMPが底をつきます」

「こっちは100秒くらいだ……」

 

するとブレイドにある思いつきが浮かんだ。かなり博打な作戦だが、価値はあると判断した。

 

「先に金ミノタウロスを倒す!各々使えるソード・スキルを使え!!」

「「了解!」」

「まかせろ!」

「分かった!」

「シリカ、アイズと共にピナの泡攻撃を」

「任せてください!」

 

ブレイドの合図と共に全員が各々構えた。

 

「二…一…Now!」

「ピナ、『バブルブレス』!」

 

シリカの命令通りにピナが泡を出し、それが金牛の鼻先で弾ける、魔法耐性の低い牛は一瞬だけ幻覚魔法に囚われ、動きを止めた。

 

「GO!GO!GO!」

 

ブレイドのネイティブな声と共にユナとアスナ以外の全員が武器を持って色とりどりのライト・エフェクトを眩く迸らせた。

ピナの攻撃で大技を潰されて、一瞬だけスタンした金ミノタウロスに正面から自分とキリト、右にクライン、左にリーファ、さらにその後ろからシノンとリズベット、ノーチラスが一斉に突撃した。

 

「「うおぉぉぉぉおおお!!」」

 

キリトは片手剣八連撃ソードスキル『ハウリング・オクターブ』、ブレイドは両手剣スキル『スッコピード』でそれぞれ攻撃をする。息の合う二人はほぼ同時に金ミノタウロスにダメージを与え、さらにシノンのソードスキルも相まって一気にダメージが入った。

 

「うぉおお……!!」

 

キリトが四発目のソードスキル《ヴォーパル・ストライク》を終えて硬直する。先程から一気に減り続けている金ミノのHPバー。キリトが硬直をした間に自分がソードスキル《アストラル・ヘル》で引導を渡した。

 

「いいタイミングだったぜ。ブレイド」

「そっちもな。キリト」

 

息を吐きながらキリトの手を取ると思い出したように黒いミノタウロスが雄叫びを上げるも、仲間がいないことに気づき、焦ったように見えた。

 

「……おーし、牛野郎。ちょっとそこで正座」

 

ちなみに言うがここのパーティーは殆どが脳筋プレイヤーである。この後のことは誰でも簡単に予想がついた。

 

 

 

 

 

「まずいよ…もう二時間ないかも……」

 

リーファがウルズから受け取ったメダルを見ながらつぶやく。ユイの情報では第三層は二層の七割ほどの大きさで、ボス層に至っては殆どがボス部屋で埋まっているそうだ。

チンタラしているわけにもいかず、ブレイド達は第三層を走っていた。

 

「そこのレバーです!」

「了解」

「次の道は少し狭いです」

「分かったわ」

 

ユイがマップを見ながら案内をする。若干チートじみたことではあるが時間がないと言うことで全員が黙認する形で先頭を一回もすることなくボス部屋にたどり着いてしまった。

 

「ムカデ型モンスターか……」

「なにあれ!」

「気、気持ち悪いですぅ……」

 

嫌悪感を示す女性陣を横目に男性陣は各々剣を持つ。

 

「気持ち悪いからさっさと終わらせるぞ」

「おう」

「時間ないしな!」

「急ぎましょう」

 

そして一斉に男性陣が駆け出してソードスキルと魔法を発動する。モンスターは攻撃力こそとても高いが防御力はそれほどでもなく、特に問題もなく一瞬で肩をつけていた。

 

「案外あっさり終わったな」

「そりゃオメエさんが突撃したからな!」

 

クラインがブレイドにツッコミをしながら一行が第四層に到着をした。ユイの情報通り一本道しかなく、そこを降りて行ったのだがここで思わずを止まってしまう事態が起こった。

 

「――助けて…………くだ、さい……」

 

課金をしたのではないかと言うほど綺麗な女性プレイヤーが氷でできた檻に捕まっていたのだ。

氷の枷で手足を繋がれた彼女は弱々しい声で語りかけてきた。クラインがふらりと牢獄に近寄るのを、キリトがバンダナを掴んで引き留める。

 

「罠だ」

 

キリトの警戒は当然だ。ALOではこんな場合はほとんどのケースで罠だからだ。いかに運営の性根がひん曲がっているかが分かるだろう。

ユイも、このNPCのHPバーが有効化されているという、更なる不安要素を上げる。HPバーが搭載されているということはお助けキャラ――こんな美女が?――護衛対象――か、敵である。それに、サブクエストまで受けている余裕はない。要するに手を触れないのが安牌だ。

クライン以外の全員が罠だと言って避けようとしている中。不意に自分は名前を聞いた。

 

「失礼、お名前をお伺いしても?」

「……フレイヤと申します」

「おい!ブレイド」

「まあ待て」

 

キリトを抑えると自分はさらにフレイヤに話を聞いた。カーディナル・システムの性質を考えながらブレイドは考察をしていた。

 

「あなたはなぜこんな所に?」

「私はスリュムに盗まれた我が一族の家宝を取り返しにこの城へ忍び込んだのですが、三番目の門番に捕まってしまい……」

 

話を聞いたブレイドは話を合致させるとキリト達に言った。

 

「キリト、これは出しても大丈夫だ」

「……本気で言っているのか?」

「少なくとも罠ではないのは確かだ。これ以上言うとネタバレになるだろうから言わないがな」

「ブレイドもああ言っているしよぅ。良いだろう?」

 

キリトにクラインが説得し、ブレイドはパランジャを使い檻を切り倒した。

 

「――ありがとうございます。妖精の剣士様」

 

そしてウィンドウが表示され、ブレイドがそれを押すとパーティーに一つ枠が追加され、HPとMPが表示された。

 

「もし違ったら後で説教ね」

「大丈夫だろう…多分……」

 

まあ、今後の展開に任せると思いながらブレイド一向は先に歩き出した。

 

「ここから先はボス部屋だ。序盤は攻撃パターンを知るために防御中心だ。反撃のタイミングはこっちから指示をする。なにが起こるかわからないから注意してくれ」

 

全員の顔が引き締まり、キリトが声を上げた。

 

「ラストバトルだ!全開でぶっ飛ばすぞ!!」

「「「「「「「おー!」」」」」」」

 

全員が声を上げて一斉にボス部屋の突入をした。




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