ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#40 凄腕

ブレイド達が突っ込んだ先にはボス部屋の前の空間があった。そこには狼が掘り込まれた重厚な扉があった。

ここでアスナとユナが全員にバフを張り直した。攻撃特化のブレイドの代わりにフレイヤがおそろしいほどHPが増えるバフをかけてくれた。

たった数単語でこれほどのバフがかけられるとは……是非とも教えて欲しいと思ってしまった。

そして、バフがかかった事を確認すると一斉に扉を開けて中に突入をしたが、そこで見たのは……

 

「スッゲェ……宝の山だぜ!」

「総額何ユルド……?」

 

そこには金銀財宝が山のように積まれており、思わずストレージ欄の空き容量を確認してしまった。

そして全員が金銀財宝に目を奪われているとズシンッ!と思い音が聞こえ、それがどんどん近づいてきた。

 

「――小虫が飛んでおる」

 

重低音の声が聞こえる。

 

「ぶんぶん煩わしい羽音が聞こえるぞ。どれ、悪さをする前に、一つ潰してくれようか」

 

部屋の奥から霜の巨人が現れた。しかし並の巨人ではない。三層のフロアボスも十分に大きかったが、それを遥かに超す巨大さだ。恐らく翅が使えない現状では膝までしか剣を届かせられないだろう。

そしてボスはウルズの居場所を教えればここの財宝をいくらでもくれてくれるらしい。まあ、どっちみち戦闘になる事は確実なので無視をしていた。

しかしボスがフレイヤが花嫁だと言ったことに憤慨しており。これ事実知ったら号泣するのでは?と思ってしまった。

そんなこんなで話を終えた一向はいよいよボス戦へと突入した。

 

「来るぞ!全員序盤はユイの指示に従って避け続けろ!」

 

そう叫ぶと同時にスリュムの岩のような右拳が思いき振り落とされた。

 

 

 

 

 

ユイの指示のもと、攻撃パターンを把握し、ある程度把握したブレイド達は動いていた。

前衛にキリト、クライン、リズ、リーファ。中衛にノーチラス、シリカ、ブレイド。後衛にはアスナ、シノン、ユナ、フレイヤの順で配置した。

遠距離で戦えるもので後ろを固めたジョブ的な配置で各自できる事をしていた。

スリュムが攻撃をしている途中でソードスキルと魔法を叩き込み。攻撃を中断させ、残ったメンツで追加攻撃。を十回ほど繰り返すと一本目のHPバーを減らすことに成功した。

 

「パターンが変わるぞ!みんな気を付けろ!」

 

キリトがそう叫び、スリュムが大きく息を吸うと口から氷のブレス攻撃をし、アスナ達のバフを貫通して前衛と中衛を凍り付かせていた。咄嗟に後ろに飛び退いたブレイドはギリギリのところで攻撃を避けていた。

 

「アスナ!」

「分かった!」

 

即座にユナとアスナが回復魔法の準備をすると広範囲に衝撃波を伝えるストンプをした。弾き飛ばされた者たちのHPバーが一気に真っ赤に染まる。

回復を一瞬で終え前に飛んだブレイドが指示を出す。

 

「シノン、三十秒頼めるか?」

「もちろん」

 

そしてヘイトを買ったブレイドは部屋を駆け回り、それを見たスリュムが雑魚モンスターを召喚・・・した直後にユナとシノンが全てを倒していた。

 

「騎士様」

 

ブレイドが走り回り、立ち止まるとフレイヤが声をかけた。

 

「このままではスリュムを倒す事は叶いません。やはり我が一族の秘宝を。あれを取り戻せば私も真の力を取り戻します。そうすればスリュムも退けられるでしょう」

「……分かった」

 

ブレイドは予想通りの展開にクラインに合唱をするとキリト達に事情を説明した

 

「キリト!こっちは奴を倒せる物を探す!なんとか持ち堪えろ!」

「りょ、了解!」

 

ブレイドは財宝の山の中からそのものを探すために久しぶりに雷装剣のソードスキルを使用した。使ったのは《迅雷》。雷系八割、打撃系二割のこの攻撃が財宝の山に刺さり、山の中から光る紫色の光を見つけた。

 

「あれだな……」

 

ブレイドは他の財宝に目もくれずに光を求めてかき分けると一つのものを取り出した。

それは金色の金槌であった。金槌を手に取ったブレイドはそれを思い切りフレイヤに投げつけた。

 

「フレイヤ!」

 

ぐるぐると回転しながら金槌はすっぽりとフレイヤの手に収まった。

さて、面白いことが起こるなと思いながらブレイドは戦場に再び戻ると雷鳴のような音と共に、キリトとクラインの悲鳴が聞こえた。

 

「「オッサンじゃん!!」」

 

そこにはさっき渡した金槌を持ったおっさんが何かを叫んでいた。表示を見ると《Freyja》の名前があった場所は《Thor》と名前が変わっていた。

ブレイドが合掌したのはこの事であり、後で詳しい話をしてやろうと思っていた。

フレイヤではなくトールであったことに憤慨したスリュムは武器を持ち、トールの持つ巨大なハンマーと戦いを始めた。

 

「全員、ラッシュをかけろ!ここが正念場だ!!」

「「「「「「お、おう!!」」」」」」

 

一斉に全員がソードスキルや魔法を発動し、スリュムに攻撃を仕掛ける。よっぽど頭に来ていたのだろうか、スリュムはこちらの攻撃を機にもせずにトールに意識を向けていた。

そして全員の攻撃をモロにくらいHPバーがどんどん減少し、そして……

 

「ヌゥン!地の底に帰るが良い、巨人の王!」

 

トールのハンマーがスリュムの脳天を撃ち落とし、スリュムは轟音と共に倒れた。

 

「ふ、ふふ……。今は勝ち誇るが良い、小虫共よ。だが、アース神族を信ずることは勧めぬぞ……。彼奴らこそ、真の――」

 

スリュムの捨て台詞の途中でトールがスリュムの身体を踏み抜き、スリュムは粉々に砕け散った。

 

「さて、お主らの手助けがあって余は宝を取り返し、恥辱を雪ぐことができた。ーーどれ、褒美をやらんとな」

 

トールからのサブクエスト報酬のようだった。トールはハンマーの柄に指をやると、小さな光を自分に投げて寄越した。

 

「《雷槌ミョルニル》じゃ。正しき戦に使うが良い。アルブヘイムの住人達よ、さらばだ!」

 

そう言うとトールは雷になって消えてしまった。当然、フレイヤのHPMPの欄も消えてしまっていた。

 

「……ふぅ、なあブレイド。もしかしてこのことだったのか?」

「そうだ、クラインには少し申し訳ないがな」

「知っていたなら教えてくれよ……」

 

クラインが文句を言うとブレイドがキリトに言った。

 

「キリト、まだクエスト完遂じゃないぞ」

「?」

「ウルズからエクスカリバーを抜いてくれって……」

「……あ!」

 

キリトが思い出し、ユイに聞いた。

 

「ユイ、マップに変化は?」

「台座の後ろに階段が生成されています!」

「じゃあ、そこだな。みんな行くぞ」

 

そう言うと全員で階段を降りて行った。キリトが三段飛ばしで螺旋階段を降りており、見るからに浮き足立っていた。

階段を降り切ると玄室のような部屋に辿り着き、中央には立方体の氷があり其処には……

 

「《聖剣エクスキャリバー》……」

「これが……」

 

キリトが長剣を手に持った。しかし、キリトの様子が少し変だった。

 

「……まさか」

 

一種の疑念が浮かんだが、キリトに向かって全員が声援を送っていた。

 

「がんばれ、キリトくん!」

「ほら、もうちょっと!」

「根性見せなさい!」

「パパ、頑張って!」

 

そしてキリトが精一杯力を込めた時。

 

「うわっ!」

 

勢いよく台座から剣が抜け、その反動でキリトがこちらにすっ飛んできた。すかさず、キリトを抱えると次にまた問題が起きた。

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

 

 

 

 

 

どこからともなく嫌な音が聞こえ、足元全体にひび割れが入った。

何が起こったのが全員が把握した。

 

 

 

 

 

このスリュムヘイムが崩壊し始めたのだ。

 

 

 

 

 

クラインがジャンプで上がろうとでもしたのか力を籠めて飛び上がり、凄い音を立てて着地した。その振動によってかは分からないが崩壊が一気に進み、自分らが乗っていた部分が完全に崩れ落ちる。

 

 

 

「クラインの、馬鹿野郎があああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

ブレイドがそう叫びながら地面に思い切り落ち始めた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

床が崩れた所までは覚えている。そっからの記憶が曖昧だった。しかし次に覚えているのは自分がブレイドにお姫様抱っこをされていたことだろう。

そしてブレイドが信じられないような事をしていた。

崩落するスリュムヘイムの氷の上を猿のように飛んでいたのだ。

 

「しっかり捕まっていろ。このままキリト達のいる所まで飛ぶ」

「わ、分かった」

 

そして、ブレイドがいとも簡単に氷の上を飛び、キリト達が今いるトンキーまで飛んでいた。おそらく落下中のキリト達を見つけて助けに来てくれたのだろうと思いながらブレイドに抱えられて無事にトンキーの背中に足をつけていた。

 

「「「「「ブレイド(さん)すげぇ……」」」」」

 

今までの様子をバッチリ見ていたキリト達からそんな声が漏れていた。

しかし、トンキーに乗り込む時、キリトがエクスカリバーを手放していたのをブレイドは見逃さなかった。

さりげなくシノンに目線を向けるとシノンは小さく頷き、目測で弓を構えた。

 

「ーー大体二百メートルくらいか……」

「「「「「?」」」」」

 

弓を構え、スペルを唱えると弦を弾いて弓を放った。矢から光の紐が伸び、落ちていくエクスカリバーに向かって行く。

 

「いくらなんでも……」

 

キリトがシノンの行動の意味を理解し、思わずそう呟いてしまうが。矢はエクスカリバーに命中した。

そして、シノンが思い切り紐を引っ張るとエクスカリバーは引き寄せられ、シノンが両手で剣を持った。

 

「うわっ、重っ」

 

「「「「「「シ…シ……

 

 

 

 

 

シノンさんマジカッケェーー!!!」」」」」」

 

全員が同じ事を呟き、シノンはポカンとしているキリトに剣を渡した。

 

「そんな顔しないでも上げるわよ」

「え!本当か!?」

「ええ、でも忘れないでね。この剣があるのはここにいる全員のおかげなんだから」

「勿論!!」

 

場がほんわかした空気となるも、キリト達は景色の変貌に思わず目を奪われた。

さっきまで氷の平原が広がっていた場所は緑が生い茂り、中央の空洞は大きな湖となってその周囲には大量の象水母が飛び回っていた。

景色をじっと見ていると突然声が聞こえた。

 

「見事に成し遂げてくれましたね」

 

それはクエストの依頼主のウルズである。

そしてウルズの横にはウルズと似たように綺麗な女性が立っていた。名をベルザンティといい、ベルザンティがキリトにお礼を言うと今度は鎧兜を被った人が出てきてスクルドと名乗り、大きく手を振りかざすと大量の報酬アイテムがキリトのストレージに入りきらずトンキーの背に溢れていた。

気のせいだろうか、少しトンキーが苦しそうな様子を浮かべたような気がした。後で気づいたが、トンキーに重量オーバーの十人乗っていた。それに気づいて、また今度目一杯慰めようと思うのであった。

そしてウルズから再度エクスカリバーを受け取り、ウルズ達が消えかけた時、クラインが前に飛び出した。

 

「スクルドさん!連絡先をぉぉお!!」

 

思わずツッコミたくなる発言だが末妹のスクルドがくるりとクラインの方を向くとクラインに光の球を渡し、クラインに手にすっぽりと入った。

そして完全に三人が消え、微風と沈黙が続いた。

 

「ーーー…今日ばかりはクラインを尊敬できる気がする……」

「ブレイドに同感ね……」

 

リズベットとブレイドに全員が頭を上下させた。

 

「……あのさ、この後忘年会とかどう?」

 

キリトの提案に全員が同じ事を言った。

 

「「「「「「賛成!」」」」」」

 

こうして今日参加した全員が忘年会をする事になった。

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