ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#42 年越し

ダイシーカフェを後にした修也は詩乃と共に実家に帰っていた。

詩乃はまだ数回しか来ていない修也の実家に緊張をしていた。修也は詩乃をエスコートしながら玄関に入ると

 

「帰ったよ、父さん」

「ああ、修也。こっちだ」

「お久しぶり、詩乃さん」

「あ、お、お久しぶりです」

 

少し慌てて挨拶をした詩乃に由美子は小さく微笑むと詩乃を連れて何処かに連れていった。恐らくは母の私室で、振袖の試着だろう。

そんな予測をしながら修也は父親の方を振り返ると父が話してきた。

 

「修也、今日はもう帰るのか?」

「いや、今日は泊まろうと思っているよ。母さんが燃えていたから」

「そうか、じゃあ今年は家族が増えるわけだな」

「まだ結婚するってわけじゃ……」

 

修也が苦笑しながら言うも、藤吉は爆弾発言をした。

 

「義親父にはもう言ったぞ」

「早すぎるよ…そんな事したら祖父さん、絶対赤飯持ってきますよ……」

「まあ、義親父は明日からここに来る予定だがな」

「ちなみに聞くけど。ここに来る理由は?」

「孫の彼女を見に来たいとさ」

「はぁ、何してんだか……」

 

修也は頭を抱えながらソファーに座ると母と詩乃が奥の部屋で何か興奮しているような声が聞こえた。

母は元モデル。スタイル抜群でデザイナーとの関係も多く、恐らくは母が詩乃のために注文した洋服などを着せ替え人形のように着させているのだろう。容易に何が起こっているのかが想像でき、ため息をついた。

 

「はぁ…後で母さんを呼びに行かないと……」

「そうだな……」

 

二人して奥から聞こえてくるバタバタした声を聞いてどうなっているのかを想像していた。

 

 

 

 

 

修也のお母さんに連れ込まれたのは洋服部屋で、化粧台に座らされた私は由美子さんから化粧をされて、その後に洋服をたくさん着せられた。

 

「詩乃ちゃんは何着ても似合うから羨ましいわぁ」

「い、いえ、そんな事ありませんよ」

「あ、これもやっぱり似合うわねぇ。良いわぁ、わざわざ頼んだ甲斐があったわ」

 

半分興奮状態で次から次へと服を持ってきて詩乃の写真を撮っていた。どうやら知り合いのデザイナーに様子を送るそうだ。

そしてどっさりと積まれた洋服を見て、どれも高そうだなと思いながら眺めていた。

二回ほどこの家にはお邪魔させて貰っているが、修也の両親がすごいお金持ちだと言うのはよく分かった。

修也の父、藤吉さんは国会議員をしており、母の由美子さんは元モデルをしていたらしく、とても綺麗だった。

どうせならと私も赤羽家の年越しに参加する事になり、その事を自分の祖父母に連絡すると向こうも了解をしてくれていた。

そして今現在、私は修也の母の由美子さんに着せ替え人形にさせられていた。

修也達はどうしているのだろうかと思っていると修也が由美子さんを呼びにきていた。

 

「母さん、父さんが呼んでいたよ」

「あら、もうそんな時間?じゃあ、詩乃ちゃん。また後でお願いね」

「あ、はい。分かりました」

「あまり疲れさせないでよ?」

「ええ、分かっているわ」

 

そう言って軽い足取りでリビングに戻るのを確認すると修也は詩乃を連れて家を案内した。

 

「今までゆっくりと出来なかったから……家を案内するよ」

「あ、うん……お願い」

 

初めてきた時は修也の両親は大慌てで色々とテンパっており、まともに話すことができておらず、その後も詩乃のスタイルに目をつけた由美子さんが私を着せ替え人形にしていた為、家の紹介をして貰っていなかった。

修也の両親は修也が彼女を作っていた事にすごく驚いていてそれはもう色々と凄かったのは覚えていた。

まだ彼女となっただけなのにいつの間にか祝杯をあげたりしており、修也が必死に説明をしていた。その時の顔は少し面白かったのはここだけの話だった。

修也に連れられて家の中庭を二人は歩いていた。

 

「ここは家の中で一番好きな場所なんだ」

「そうなのね」

 

そこには蕾のままの椿や薔薇。さらには桜や柿、梅の木など様々な花が植えられていた。

そんな中庭の隅にある金属製のベンチに修也と私は腰をかけた。

 

「ここは植えてある庭の花が全部見えるんだ。家族ではここを『小さな花の御所』と呼んでいる」

「そうなのね……」

 

煉瓦が敷き詰められた小道の横に咲く草木、確かにここは一年中花を見ることができそうだった。

 

「静かで風が吹き、季節毎にそれぞれの花の匂いがする。その中で本を読むのが好きだった」

「そうなの……」

 

詩乃は不意にここで本を読む事を想像していた。

確かにここは良いかもしれない。そんな事を呟くと詩乃は思わず修也を見ると修也は懐かしそうに中庭を眺めていた。

 

「……さて、戻ろうか。母さん達が夕食の準備をしているだろうし」

「そうね」

 

二人はベンチから立ち上がると家に戻り、詩乃は由美子に呼ばれて夕食の手伝いをしていた。

修也は藤吉とリビングで何かを話し、談笑をしていた。

 

 

 

 

 

夕食後、詩乃は修也に案内されて修也の部屋に来ていた。

 

「ここが私の部屋。隣が物置だ今日寝るのはここの和室だ」

「ここが修也の部屋……」

 

置いてある者は少なく。殺風景な部屋は今住んでいるマンションの部屋とは大違いだった。

 

「修也はここで寝るの?」

「そうしようかと思っていたが……今日は詩乃の隣で寝るか……」

 

修也の計らいに詩乃は少しだけ頬を赤くすると修也が思い出したように詩乃に言った。

 

「ああ、そういえば明日。祖父が詩乃に会いに来るって言ってたな」

「え?なんで?」

「理由はわからないけど、とにかく来るんだってさ」

「修也のお祖父さんか……」

「あぁ、因みにイメージとは違うと思うから気をつけてね」

「どう言う事?」

「…あの人は色々とぶっ飛んでいるから……」

 

修也の言っている事に詩乃は若干緊張をしてしまっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日、修也の家に一人の来客がやって来た。

 

 

「修也!元気にしとったか!?」

 

 

耳をつんざきそうなほど大きな声で挨拶をした老人が玄関で出迎えた修也を見ていた。

 

「祖父さん、お久しぶりです。お元気そうでなによりです」

「はっ!はっ!はっ!まだまだ若いもんにも負けんよ!」

 

下手をすればそこら辺の若者より威勢がいいのではないかと思ってしまうほどの張りのある声は詩乃にもよく響いていた。

 

「は、初めまして……」

「ん、おお!君か!修也の彼女と言うのは。私は秋元真之と言う。宜しく」

 

そう言い、詩乃に手を出すと、詩乃は真之の手を握り、その手の皮の硬さに驚いた。

真之は靴を脱いで玄関に上がるとカバンを片手に居間に入った。

修也と詩乃はそのまま二階に戻っていった。

 

「今日は案外早いな、義親父さん」

「愛孫に彼女が出来たんだ。喜ばない筈がなかろう」

 

そう言い居間のソファーに座り込むと由美子がお茶を出した。

 

「長旅、お疲れ様です。お父さん」

「すまんな由美子」

 

そう言いお茶の飲むと真之が顔を顰めながら言った。

 

「また親戚から修也の縁談の話があった」

「またですか?」

「ああ、しかも今回は面倒な方法でな」

 

年相応の重圧感を醸し出しながら真之は文句を言うように呟いた。

 

「見合い相手は結城明日奈と言う修也と同い年の少女だ」

「また面倒事を……」

「どれだけ修也に迷惑をかける気なのでしょう……」

「全くだ。恩を仇で返すとはこの事だな。向こうは善意のつもりなんだろうが、こっちはありがた迷惑だ」

 

居間にいる三人が静かに憤慨していると修也が詩乃と共に階段を降りて一階に来ていた。

 

「父さん、ちょっと詩乃と出かけてくる」

「ああ、分かった」

「気をつけてね」

「行って来ます」

 

詩乃が最後にそう言い残し、玄関の扉が閉まる音がすると真之が詩乃の感想を言った。

 

「良い子じゃあないか。修也が好きになったのもわかる」

「ええ、詩乃ちゃんは本当にいい子ですよ」

「初々しいと思ったな」

「あれはそのまま結婚する感じだな」

「義親父もそう思ったか?」

 

三人がさっきの二人を思い出すとさっきまでの雰囲気は消え、息子の将来を楽しみにする温かいものに変わっていた。

 

「このまま婚約すれば修也に無駄な縁談が来なくなるな」

「そうなると、良いですね」

「なるだろう。まぁ、その前に今度の結城明日奈嬢の縁談をどうしようか……」

「お断りは…難しいか……」

「そうね……」

「「「はぁ……」」」

 

思わず三人がため息をついてしまい、どうしようか模索をしていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

自分が勝手に縁談に巻き込まれている事も露知らず、修也と詩乃は東京は上野のアメ横に来ていた。年の瀬も近いここでは正月料理に使う食材を扱っている店がほとんどであった。

 

「修也、お正月はどうするの?」

「そうだな…詩乃が望むなら何か作ろうかとも思ったが……」

 

そんな事を話しながら店で商品を買う駐車場に戻り、バイクに跨った。

 

「行けるか?」

「勿論」

 

そしてエンジンをかけ、二人は寄り道をしながら帰宅の途についた。

 

 

 

 

 

そして時間は飛んで十二月三一日、修也達は上野にある寺院に来ていた。

 

「今年ももう終わるのね」

「そうだな」

 

初詣に来た修也達は人の多さに驚きながら賽銭を投げる準備をしていた。

 

「しかし、こうも人が多いと移動だけで大変だな……」

「そうね、順番はいつくらいになるかしら?」

 

そう言いながら二人は順序よく歩くと時刻は午後二三時五〇分となった。

そして、修也達が順番となった時、時刻は午前〇時を示した。

賽銭を投げ、二礼二拍一礼をし、修也と詩乃は手を合わせた。

 

「「……」」

 

互いに願い事をした二人は寺院を後にした。帰り道、詩乃が修也に聞いた。

 

「修也はどんなお願い事したの?」

「それは言えない。縁が逃げる気がするから」

「それもそうね。じゃあ、このまま帰りましょ」

「そうだな、父さん達に新年に挨拶をしないといけないしな」

 

二人は足早に寺院を後にすると家に戻って行った。

 

 

 

 

 

家に戻り、朝起きた詩乃は母に連れられ洋服部屋へ、自分はなぜか袴を着せられていた。

 

「なんでこれを……?」

「義親父が持ってきたんだ」

「うむ、似合っているじゃないか」

 

真之が袴姿の修也を見て感嘆の声を漏らしていると母が詩乃を連れで洋服部屋から出てきた。

 

「おお!」

「似合っているじゃ無いか」

 

そこには向日葵柄の振袖を着た詩乃がいた。見た事無い柄だったのでおそらくこれも特注品だろう。

ひまわりの花言葉は『あなただけを見つめる』

母の計らいに気づいて修也は詩乃の振袖姿を見ていた。

 

「すごい、綺麗だよ」

「あ、ありがとう……」

 

一瞬だけ二人が固まった後、母が二人を庭に出すとちょうど咲き始めている梅の木の下で二人を立たせていた。

呼んでいたのだろう。外には大きなカメラを持ったカメラマンが二人を待っていた。

どうやら母の仕事の知り合いのカメラマンだそうだ。

 

「二人とも似合うわよ」

「ええ、すごいいい写真が撮れそう!!」

 

半分興奮気味でカメラを構えられ、シャッターが切られていた。そしてこの時撮った写真は今でも額縁に入れられて飾られていた。

 

 

 

 

 

写真を撮り終え、少しの間だけ庭をゆっくりと二人は歩いていた。

 

「詩乃」

「何?」

 

詩乃の疑問に修也が詩乃に小さな赤い箱を渡した。

 

「これって……」

「中を開けてみてほしい」

 

渡された赤い革製の箱を開けるとそこにはが中央にダイヤモンドが埋め込まれた指輪が収まっていた。

 

「私からの気持ちとして受け取ってほしい」

「いいの?」

 

私いきなりだなぁ、と言う気持ちだったが、修也は頷いた。

 

「ああ、詩乃と居るおかげで私は毎日が充実している。そのお礼だよ」

「ありがとう……大事にする」

 

そう言うと修也が箱から指輪を取り出して詩乃の左手薬指に指輪を付けると詩乃が修也に抱きついていた。

 

「私からのお返し。これからもよろしくね」

「ああ、宜しく」

 

後日、詩乃がつけている指輪で一騒動起こるのだが、ここでは割愛をさせてもらう。

こうして婚約をする事になった二人は庭から戻ると両親達がニヤニヤしながら見ていて上手く行った事に喜びをあらわにすると、そのまま父の呼んだ車に乗せられてマンションに帰宅する事になった。




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