ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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プロジェクト・アリシゼーション
#1 変態との遭遇


六月中旬 GGO内 とある廃墟

 

月夜のよく光るその場所で、赤いボディーにモノアイを光らせてスコープを除く影があった。

その赤い影は小さく息を吐くと持っていた銃の引き金を引いた。

 

「ふぅ……」ドォン!!

 

発射された20mm弾は弱いビルの鉄骨を吹き飛ばし、隠れていた敵をビルごと崩壊させた。

DEADの文字が浮かび、フリューゲルは移動を開始する。

 

「(これで残りは二人…シノンともう一人か……)」

 

今回行われている第四回BoB、その決勝戦でフリューゲルはこれで十人キルを達成していた。今回でシノンと戦う事を約束したフリューゲルは本気で取り組んでいた。

普段はカップルなんで言われているフリューゲル達だが、今回は敵同士だ。

 

「そろそろか……」

 

フリューゲルはサテライトスキャンを確認すると驚きの事実を目にする。

 

「シノンが…いない……?」

 

そう、先までいたシノンのアイコンが無くなり、ここには二人しかいいない事を知る。

 

「『サトライザー』…これで確定したな……」

 

第一回で無双したやつだ。見覚えある名前に舌打ちをせざるを得なかった。せっかくのチャンスを無駄にしやがってと。そう思ったのも束の間、フリューゲルのいた屋上に弾丸が飛んでくる。

 

「もうここまで……」

 

フリューゲルは銃を持って屋上から屋上へと、移動を開始した。

シノンをやるには気配を殺して接近知るしか方法はない。そうと知っているから、近接戦になることを想定して開けた場所に誘導する為であった。

 

「早い…だが、STR値はこっちが……上だ…!!」

 

少し距離のある道を飛んで移動する。向かうはこの先の広場。そこだったら強襲されることは無いはずだからだ。

 

「……来ているな」

 

直感的にそう感じるとフリューゲルは予定地点の広場に到着する。広場の中央でフリューゲルはヒートホークを起動して敵を待ち構える。この際中は拳銃以外使えないだろう。

そう判断してヒートホークと拳銃以外全てをストレージに入れるという思い切った行動を取った。

 

「……」

 

いい知れぬ緊張が最高潮に達した時、フリューゲルは確実に首を狙ってくる気配に勘付き、ヒートホークを当てる。

 

ジジッ!

 

金属の擦れる音と共に、彼は姿を現した。

 

『素晴らしい……』

「……」

 

視線の先にいたそのプレイヤーはコンバットナイフを持って面白そうに自分を見ていた。それがとても気持ち悪く、鳥肌が立ちそうであった。

咄嗟に拳銃を取ると相手も同じようにM27を取って引き金を引く。

 

パンパンパンパンパンッ!!

 

同じ9mm拳銃弾の音が響き、普段のGGOでは珍しい接近戦が行われていた。

片手にヒートホーク、もう片方にH&K HK45を持ってサトライザーを相手にする。

 

「……(行くか)」

 

フリューゲルは物陰から飛び出すとサトライザーに接近する。サトライザーも銃を放つが、ヒートホークで拳銃弾を真っ二つに切る。キリトの真似だが、意外といける事に若干驚いた。

そのままヒートホークで相手の眉間目掛けて斧を振ると拳銃で押さえつけられる。

 

『これ程とは…君の魂はさぞ美しいのだろうな……』

『何変態みたいなこと言っていやがる・・・・!』

 

お前がいうな!という声が聞こえてきそうなことであるが、今はそんなことも気にしていられなかった。

 

『アメリカ人はとっととママの元に帰れ!』

『ほう、知っていたのかね?』

『ああ、アンタのせいでアメリカサーバーと日本サーバーが完全に別れたってこともな!』

『随分と物知りがいたものだ』

 

サトライザーはそう呟くと拳銃を犠牲に、一旦身を引く。拳銃はヒートホークの斬撃に耐えきれずに破壊。相手の残り武器はコンバットナイフだけとなった。

 

『さて、ザクのプレイヤー。もっと輝いてくれ。君の魂をもっと魅せてくれ』

『変態は黙って帰れ!』

 

ギィィンッ!!パンパンッ!

 

そう叫んで拳銃を引くと数発がサトライザーに当たり、相手の体力をごっそりと減らす。

 

「(ここで畳み掛ける……!!)」

 

急接近したフリューゲルはヒートホークを両手に持ってサトライザーに接近する。高いSTR値を使って地面を勢い良く蹴る。

しかしサトライザーは動きを突如止めて小さくほくそ笑む。

 

『非常に面白かった。これはまたの機会に楽しませてもらう』

 

そう呟き、サトライザーはポーチから球体状のものを取り出す。それに気づいたフリューゲルは咄嗟に逃げようとした。

 

「(グレネード……!!)」

『もう遅い……今回は引き分けだ』

 

その瞬間。閃光と爆炎が辺りを包み込んだ。

 

 

 

 

 

第四回BoB優勝者《Satlizer》《Flugel》同時優勝

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日、修也のマンションでは修也がいつに無く荒れた状態でエナジードリンクを飲んでいた。

 

ドンッ!「やられた……!!」

「そうね……」

 

対する詩乃も同じ様に缶ジュースを飲んでいた。

 

「まさか特玉を持ち出すとは……」

 

特玉、又の名を『超小型戦術核兵器』と言う。その名の通り小型の核兵器で、絶大な威力を与えるとともに、放射線による追加ダメージを与える代物だ。見た目はゴムボールほどの大きさな事から特玉と言われていた。

しかし、核兵器という事で起動した自身も確実に死ぬので、本当に最後の自爆装置である。ようはALOの自爆魔法の様なものだ。

 

「あれは仕方ないわよ。接近戦だったし……」

「おまけにサトライザーだったからな……」

「第一回BoBで無双した?」

「ああ、あの動きは間違いない」

 

確信した表情で言うと、詩乃は疑問に思ったように口にする。

 

「どうやって日本に入ったんだろう……」

「調べてみたが違法な事はなかった。…つまり、日本に来ているという事だ……」

「いつまで居るのかしらね」

「なるべく早めに帰ってもらいたいものだ」

 

修也はそう思いながら上を向く。自棄酒の様な気分でエナジードリンクをがぶ飲みしている修也は試合後、憂さ晴らしの為に徹夜で狩りをしまくっていた。

詩乃はそんな修也にエナジードリンクを取ってお茶を差し出す。

 

「今度キリト達を誘ってやらない?」

「…そうだな。誘って見るか。ついでに次のBoBに出てもらうか……」

「わぁ、すっごいツヨソー」

 

詩乃がそんな事を呟きながら部屋の隅に置かれた荷物を見る。

 

「数日は会えなくなるからね…」

「すまない。用事が入ってな……」

「ううん、大丈夫。気にしていないから……」

 

そう、彼は来月の初旬に修也は数日間出かける事になっていた。何でも、バイト先の人から呼ばれたという。私もついて行こうといったが、修也から『難しい』と言われて少し悲しかった。

だけど、その分だけ埋め合わせをするという約束で納得をしていた。その為私達は夏休み中に何処に行こうかと考えて、今度富士山の麓のキャンプ場に行く事とかを話していた。

 

「修也も気を付けてね」

「ああ、そこまで危ない事は無いけどな」

 

バイト先については詳しくは知らない。なんでも修也が作ったというマキナを使うバイトだとか……。

それ以上の事は詳しく話して貰っていないのでよく分からない。

取り敢えず今日は土曜日。学校も無いのでこのあとはGGOにログインするつもりである。

 

「マキナちゃん達は先に行ったわよ?」

「そうか…じゃあ、そろそろ行くか……」

 

マキナとストレアは現在、GGOで狩りをしているだろう。

現在、雲豹は所属するスコードロン『バルカ小隊』の移動拠点となっている。

稲妻と銃弾のマークのあしらわれたマークの雲豹はマキナが管理するという事で今車内には抜け殻と化しているフリューゲルとシノンのアバターがいるはずだ。

あの二人ならそうそうやられる事は無いと思うが……。

取り敢えず戦車の上からストレアがヒャッハーしてMG42を撃っているのだけは想像できた。少なくとも和人達が知れば謎に説教されそうではある。

ともかく。二人はBoBの翌日だが、GGOに潜ってPvPをする事を決めたのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

GGOに入った二人は雲豹の車内で目覚める。

 

「おはよう御座います。マスター」

 

マキナがそう言い、フリューゲルを見る。シノンも同様に目を覚まし、周りを見る。

 

「ここは……」

「大陸北部の街です。補給がてらストレアが寄り道をしています」

「そう……」

 

フリューゲルの妹とも言える存在のマキナにシノンはそっと呟く。マキナは自分よりも修也と共にいた時間は長いという事で、たまにアドバイスをもらっている仲で、悪い事にはなっていなかった。その事にフリューゲルは内心ホッとしていた。

 

「さ、外に出よう。こっちも弾を買ってくる」

「了解」

 

そう言い、車を降りた二人は街を歩いて弾薬ショップで弾薬を購入する。

モンスターを倒しても弾薬は出るのだが。ランダムなので使えない場合があり、そう言った弾薬はある程度溜まったところで一気に売却をしていた。

二人は必要な物資を購入していると射撃場である噂を聞いていた。

 

『なぁ、聞いたか?』

『なんだ?』

『ここ最近、やばいスコードロンが居るんだ』

 

そんな二人の会話にフリューゲルは耳を傾けていた。もしかすると、例のサトライザーが居るかも知れないからだ。

 

『どんな奴だよ』

『ボッチのスコードロンを皆殺しにするんだ。まるで狩りをしている様にな』

『ホーン』

『だから、お前も気をつけた方がいいぜ』

『なるほどな……』

 

噂を聞いたフリューゲルは店を出て雲豹に戻る。105mmライフル砲の付いた砲塔が前を向き、存在感を強めている。

 

「襲われる事は無いか……」

「どうしたの?」

「いや、独り言だ」

 

弾薬ケースをオブジェクト化してフリューゲルは車に乗り込む。車には既にストレアがおり、MG42の弾薬である7.92mmモーゼル弾を数えていた。

 

「あ、おかえりマスター」

 

ストレアがそう言うとフリューゲルは乗り込みながら言う。

 

「ああ、すぐに出るぞ。クエストを選んできた」

「了解〜!」

「マスター。燃料も満タンです」

「大丈夫よ、フリューゲル」

 

全員の確認を取ったフリューゲルはマキナに指示を出す。

 

「よし、出してくれ。マップに行き先を表示してある」

「了解です」

 

マキナが運転席に座り、雲豹は走り出した。

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