ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#6 新しい天職

ゴブリンの騒動があった翌日。ギガスシダーの元では三人の青年が斧を振っていた。

 

「何で、貴族の貴方がここに……」

「仕事はどうした?」

 

その中の二人、キリトとユージオはカゴを開いてパンを切っている赤髪の青年に聞いていた。

 

「何、央都への報告は終わった。此処からは休暇だ、元々此処に来たのも央都の空気が嫌になって逃げて来ただけだ」

「「……」」

 

これには流石に二人とも口を開けて呆然としてしまった。二等爵家ほどの貴族の口から逃げ出してくると言うとは思わなかった。ユージオの話ではワラキア家は新しい武器や農具を作っている事で有名な家らしい。

特にブレイド・ソド・ワラキアは養子であるにも関わらず、歴代のワラキア家の中でも特に優秀な者らしい。まぁ、現実世界でも作る事にめっぽう強いブレイドだから当たり前か。と思っているとブレイドはパンに野菜と肉を挟んだ簡単なサンドイッチを作って二人に渡していた。

 

「二人とも食べるといい。あり合わせで申し訳ないがな」

 

そう言うとキリトとユージオはそれぞれ別々の反応をする。

キリトはブレイドのうまい飯が食えるとウキウキに、ユージオは貴族に料理をさせてしまった事に萎縮してしまった。

取り敢えず二人はサンドイッチを受け取ると各々別の反応で食事をする。それを見てブレイドは少し面白く見ていた。

 

「まぁ、私が此処に泊まるのは()()を見に来た。と言うのもあるがな」

 

そう言ってブレイドはギガスシダーを見る。あたりの神聖力を吸い取ってしまうその巨樹は見るものに強烈な印象を与えていた。

 

「此処は素晴らしい。央都の様に引きずり落とそうとする目もないからな」

 

ここで言っていいのか分からない危ない発言にキリトのみならずユージオも苦笑するしかなかった。

サンドイッチを食べ終えるとブレイドがユージオに確認をする。

 

「さて、ユージオ君。君の天職は刻み手でいいのかな?」

「あ、そ、そうです!」

 

確認を取るとブレイドは何やらゴソゴソとしているキリトを見て聞く。

 

「何をしているんだい?キリト」

「ん?いやぁ、試しにこれでやってみようかと……」

 

そう言い、キリトは立てかけてあった皮袋を取り出す。

 

「っ!キリト、それ、持てるのかい!?」

「斧が軽くなっていたからな」

 

そう言い、皮袋を取るとそこには青い宝珠と薔薇があしらわれた直剣であった。氷の様に透明なその剣はユージオ曰く《青薔薇の剣》と言う物だそうだ。ユージオが何ヶ月もかけて運んだその剣をキリトは軽々と持っていた。

 

「ほぅ……それを使うのかね?」

「ああ、やってみる価値はあるはずだ」

 

そう言うとキリトは剣を構えてソード・スキル。〈ホリゾンタル〉を発動する。

 

ズォン!

 

重々しい音と共にギガスシダーの切り込みに勢いよく入ったその剣は巨樹を大きく揺らし、止まっていた鳥を驚かせていた。

 

「今のって……」

「剣技か…素晴らしいな……」

 

おそらくあの青薔薇の剣は自分の持つこのサーベルと同程度の優先度だろう。それは確認しなくても分かった。

そして、今のキリトの剣技を見て剣を教えてほしいと頼み込むユージオにブレイドは頼もしさを感じていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

あれから数日、キリトがユージオに剣を教え始めてから数日後。剣を振るユージオを見ながらブレイドとキリトは丘の麓で話をしていた。

 

「……なぁ、ブレイド」

「何かね?」

 

ブレイドから言われ、呼び捨てで名前を呼んだキリトはブレイドに聞く。

 

「本当に、覚えていないのか?」

「?」

「ごめん……何でもないや」

 

ブレイドの反応を見てキリトは半ば諦めた様子でユージオを見る。キリトは後で菊岡をぶっ飛ばすと心に決めながら貴族としてのブレイドを見る。今のブレイドはおそらく現実世界での記憶を封じられている。俺がこのアンダーワールドの記憶がないのと同じ様に……。

そう思うとキリトはあることが不思議に思い、ふとブレイドに聞く。

 

「なぁ、あの時何であの洞窟にいたんだ?」

 

そう聞くとブレイドは面白そうな目で答える。

 

「強いて言えば少女に導かれた。と言うべきだろうな。金色の長い髪に深い青色の眼の女の子だったな……」

 

その時、ふとキリトの目にある光景が浮かんだ。

それはギガスシダーの元を走る三人の子供たち。

 

一人は金髪の少女、

 

二人目はアッシュブラウンヘアの少年、

 

そしてもう一人は幼き頃の自分であった。

 

「(これは……)」

 

その時、キリトの頭に声が響く。

 

『キリト、ユージオ……待っているわ。いつまでも。セントラル・カセドラルのてっぺんで……あなたたちをずっと、待ってるから』

 

とても懐かしい記憶の様だ。泣き出してしまいそうになる程心が痛む。その少女は優しくキリトの方を掴んでいた。

 

「どうした……?」

「え?」

 

ブレイドに声をかけられ、キリトはその時涙を流していた事に初めて気づいた。

この心に刻まれた懐かしさに、キリトは思わずユージオを見てしまっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ユージオは飲み込みが早い。キリトに教えられたアインクラッド流と呼ばれる剣技はどこか懐かしさを覚えつつ、自分も少し教えてもらっていた。

初めは負けてばかりであったユージオも、今では並の剣士以上に実力を持っている。それほどまでの彼は急成長を遂げていた。

キリトが師範として教えてから幾分か時が経ったこの日、三人は木の下でギガスシダーの天命を確認していた。

 

「あと少しか……」

「いよいよだな」

「あぁ…(これで、迎えに行けるよ……アリス)」

 

ユージオは片手に青薔薇の剣を持って今まで思っていた気持ちを込めてアインクラッド流を放つ。切り込みの最後の所に勢いよく剣が刺さる。

 

「来るぞ〜、走れ!」

 

ゴゴゴと音を立てて巨樹が倒れる。大きな土煙と風を起こし、ブレイドは目を覆う。

視界が晴れるとそこには倒れたギガスシダーと、転がっているキリトとユージオの姿があった。

 

「うわぁ……」

「すっげ……」

「夢みたいだ……」

 

三人は呆然とすると、次に笑いが込み上げて来てしまった。

 

 

 

 

 

ギガスシダーが倒された事は当然村中に響き渡り、今日は祝賀会が行われていた。

 

「やれやれ、貴族というのも面倒なものだな」

「お疲れさん」

 

ブレイドは貴族という事で色々な事をされていた。その後に、疲れた様子で逃げる様に村の隅で料理を嗜んでいた。

 

「はぁ、あったかい飯が食えるというのが幸せだ……央都にいるよりも良い」

「そうなのか?」

 

キリトがそう言うとブレイドは央都であった事を呟く。

 

「あぁ、()()()()食材に毒草が混ざっていたりとか、()()()()で持っていた剣が刃こぼれをしていたりとかあったからな」

「……」

 

なんとも汚いやり方にキリトは反吐が出そうになった。まさかそこまでするとは……。

その事に腹立たしさを抱きながらブレイドを見ると彼は笑いながら言う。

 

「まぁ、そう言った事には同じ事で()()()をしたけどな」

 

フフフと笑うその姿はとても邪悪だった。あぁ、どの世界行ってもこれは変わらないのか……そう思わずにはいられなかった。

 

この時、ユージオが新しい天職として剣士の道を選ぶ事を決めた。しかし、それに反発したのは村の衛士長の息子であった。まぁ、これは見栄による物だろうと思いながらブレイドが出て『じゃあ、この剣を持て』と言って持っていたサーベルを持たせる。しかし、彼はサーベルを持つことができても、満足に振ることができていなかった。

そこでそのサーベルを今度はユージオに持たせる。すると彼はサーベルを簡単に振る。それを見て村の全員が納得せざるを得なかった。

 

他にも文句が出ていたが、そこはブレイドの威圧で全員を黙らせていた。こういう時貴族というのは無理が通るから楽だと言っていた時は苦笑せずにはいられなかった。

これから二人はブレイドの誘いでザッカリアと呼ばれる街に向かい、その後に央都に向かう事になっている。

その時ブレイドがこっそりと『いい実験体が来た』と言っていた事には若干の恐怖を覚えた。まぁ、ブレイドのことだからそれほど危険な事はしないと思っているが……。

 

「さて、これから色々と忙しくなるぞ。キリト」

「あぁ、臨む所だ」

 

二人は祭りでセルカと踊っているユージオを見ながらそんな事を言っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数日後、ブレイド達三人はブレイドの乗って来た馬の横でに荷造りをしていた。

ここから途中のザッカリアまでブレイドの馬に乗せてもらう事になっていた。キリトとユージオの体格は細いので三人乗っても問題ないと判断しての事だった。

村長が何度もブレイドに頭を下げユージオはセルカにアリスを連れて帰ると約束し、キリトは頭を何度も下げられて困っているブレイドを見ながら内心面白くなっていたりと、少し騒々しい旅立ちとなっていた。

 

「二人とも。そろそろ行くぞ」

「了解」

「分かり……分かった」

 

どうも敬語で話してしまうユージオにブレイドは少し面白く感じてしまったが、そんな二人をブレイドは馬の背に乗せる。

 

「おぉ……」

「た、高いな……」

「しっかり捕まっておくと良い。でなければ振り落とされるぞ」

「りょ、了解」

 

そう言うとブレイドは村長に挨拶をする。

 

「今まで世話になった」

「いえ……その子達を宜しくお願いします」

「責任を持って二人を連れて行くとお約束しますよ。また、いつか」

 

そう言うと手綱を持ってブレイドは馬を走らせる。その光景をルーリッド村の人々は見送った。

 

 

 

 

 

ルーリッド村から出て数日後、街道の途中で馬を走らせているブレイドはキリト達に言う。

 

「私はザッカリアまで君達を送る。その後はザッカリア剣技大会に出ると良いだろう」

「どうしてだ?」

 

後ろでキリトがブレイドに聞く。するとブレイドは小さく微笑むとキリト達に言う。

 

「腕鳴らしさ。ついでにザッカリア剣技大会で優勝すればザッカリア衛兵隊に入れて帝立研修学院の推薦状ももらえる。これほど上手い話もないだろう」

 

そう言うとキリトがさらに聞き返す。

 

「ブレイドが推薦状を書くのではダメなのか?」

 

そう言うとブレイドは少し渋い顔をして答える。

 

「私が推薦状を書いても嫌な顔をされるだけだろうな。央都であまり私は好かれていないんでね」

「え?何でだ?」

 

余り深入りしたくは無いが、何となくいつものノリで聞いてしまった。するとブレイドはこう答える。

 

「色々と作った道具が他の貴族たちには卑しく見える様でね、家にこもっていることが多いから『日陰者』なんて言われているよ」

 

気にしていないし、興味もないがね。

そう言い残すブレイドにキリト達は思わず呆然としてしまった。そこそこ有名な貴族ではあるが、央都でそんな扱いになっているとは思わなかった。

実際ブレイドのワラキア家の作った物は農作物に多大な影響を与えている。下が裕福になれば自分達も裕福になれるはずなのに……。

貴族の視野の狭さにキリトは若干の呆れを滲ませていた。

 

「さ、明日くらいにはザッカリアに到着するだろう。一旦そこでお別れだ」

 

ブレイドはそう言うとさらに馬の速度を上げてザッカリアに向けて飛ばしていた。




近況報告
めちゃくちゃ久しぶりにアニポケXY見てた。あの時リアタイで見てたけど、高校生になって何度見ても飽きないね。色違いのゼルネアス貰ったけ。
もうね、とにかくセレナ最高!!音楽、作画共に最高や!!
七年経っているのにゲッタバンバンの歌詞全部覚えてた。懐かしいな、あの頃が……戻りたい(切実)。

以上、本編とは関係ない作者の話でした。
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