ドンッ!
日も沈みかけのこの時間。扉を蹴破る音が響き、中に数人の人が突入をする。部屋の中では一人の上半身裸の生徒と、ベットに押さえつけられている一人の少女がいた。
「かかれ!」
「なっ、何だ貴様らは!?」
「シュー・ドラ上級修剣士。貴殿には婦女暴行の容疑で連行する」
「何だと!?何の権限を持って……」
「つべこべ言わずに来い!」
黒服の大人達に縛られてズボンを履いたままの青年は連れ出される。部屋の中で一人の少女が部屋に突入した大人によって毛布をかけられていた。その一連の様子を眺めて見ていた生徒達が呟く。
「またかよ……」
「これで六件目だぜ」
そんな事を言いながら喚く生徒を見送ると他の生徒たちは何もなかったかの様にその場を後にする。
騒がしかった廊下は一瞬で静粛に包まれ、とある部屋ではある青年二人がもう一人の青年に聞いていた。
「お前、えげつないなぁ……」
「これは…酷いね……」
「少なくとも君たちにそう言われるのは心外だ」
部屋にいる三人は連れて行かれた青年を窓の外から見ながら言う。
「シュー・ドラ……四等爵家の適男。趣味は幼女と来た」
「うわぁ……」
そら捕まるわ。あっちでもお縄になると言うのに……。
そんな事を思いながらどこかに連れて行かれる元生徒となるであろう人を見届けると、ブレイドが言う。
「いやぁ、実験の時に軍の人と仲良くなっててよかった。なんせ、叩けば埃じゃなくて
「「……(この人鬼や)」」
そう思わざるを得ないほど
今彼が行っているのは《セントリア改造計画》と呼ばれる物だ。腐敗している貴族達を一掃し、新しい体制にしようと言うものだそうだ。何せ叩けば瓦礫が落ちてくる奴らだ。央都の警護をしている憲兵に
元々研究の過程で色々と軍や憲兵と仲良しのワラキア家はそう言ったところに強く、おまけにそう言ったところは正義感が強い。だからそう言った摘発にはウッキウキで参加してくれた。
この学校での摘発はそのデモンストレーションに過ぎないと言う。それを聞いてつくづく愚かだと言うのと、ブレイドおっかないと言う二つの気持ちでごちゃ混ぜになっていた。
「まぁ、この試験もあと少しすれば終わる。そうすれば、後は上が何とかするだろう」
二等爵家という立場はこう言う時に便利だ。
そう呟く彼に、思わず二人は『あんた、貴族を舐めてんの?』と思わざるを得なかった。
数日後、私は部屋で本を読んでいるとマリーがブレイドにあるお願いをした。
「私に剣を教えて欲しい?」
「はい、先輩は神聖術の事は教えてくれるのに、剣術に関してはキリト先輩や、ユージオ先輩に丸投げしているからです」
マリーの指摘は確かに的を得ている。キリトやユージオにマリーの剣を教える代わりに、私は彼女らに神聖術を教える。
キリト達も同意した上での話だったが、不満だっただろうか。
「先輩は上級修剣士になる際に一瞬で試合を終わらせたと聞きました。私はあなたの傍付き剣士です。あなたに神聖術の他に剣を教えてもらう権利があるはずです」
少々禁忌目録に触れそうな言い方ではあるが、ブレイドはそれを聞いて間を置いたのちに少し笑った。
「そうか…
するとマリーはハッとした様子となって顔が青ざめていたが、ブレイドは本を閉じてマリーの頭に手を優しく乗せてポンポンと優しく叩く。
「君がそう言うとは思わなかった……その心意気は良いものだ」
「っ!では……!!」
「キリト達に比べて教えられるものは少ないだろうが……出来る限りは教えよう。ついて来なさい」
こうしてブレイドはそのまま練習用の木刀を持つと部屋を出て修練場まで歩く。赤色の修剣士服は夕焼けに映え、綺麗に見えた。
マリーはブレイドの後ろ姿を見ていつの間にか見とれてしまっていることに気づいた。
「(ハッ!私ったら何を考えていたのでしょう……)」
思わず首を振って思っていた頃を忘れようとした。そして修練場に着くとそこでウンベールの声が響いた
「剣を振り回すばかりが戦いではないぞ、平民!!」
マリーがビクッとし、咄嗟にブレイドが彼女を庇う。
視線の先には剣を持ったユージオと、対峙するウンベールとライオス。それだけで何が起こったのか分かってしまった。
「今の話は聞かせてもらったよ。君達……」
私は修練場の入り口で、馬鹿どもを睨み付けながら言った。
「今の話が聞かせてもらったよ。君達」
修練場に、冷ややかな空気が包む。僕はその声の主を見て背筋が凍ってしまった。修練場の入り口に赤い修練服を着て、マリーと共にいたブレイドが立っていた。
その目はウンベール達に向いており。冷ややかな、静かなる怒りであった。その目にウンベール達も恐れ慄いていた。運が悪いとした言いようがなかった二人はまるでウサギであった。するとブレイドが一言叫んだ。
「出て行けっ!」
いままでにないほど大きく、張りのある声で叫ぶと。ウンベール達は恐ろしさのあまり、一目散に逃げ出した。一瞬でいなくなったウンベール達を見てブレイドはふぅと一息ついた。
「いかんな、ついカッとなってしまったな……」
「ブ、ブレイド……?」
咄嗟に声かけをするとブレイドはユージオを見てため息を吐いた。
「すまん、驚かせてしまったな」
「う、ううん。大丈夫だからーーーそれより、マリーが驚いちゃっているよ」
そう言うとブレイドはマリーを見て、ハッとしてしまった。一連の声で呆然としてしまっているマリーに声をかけると意識が戻ってきたマリーに剣を教えようとしていた。初手から衝撃を受けたマリーはブレイドの指南を受けて持っていた木刀をブレイドに当てていた。
随分と大雑把な教え方だなぁ、なんて思いながら二人を見ているとブレイドが僕を見た。咄嗟に嫌な予感がした僕は修練場から出ようとするとブレイドに腕を掴まれた。
「ユージオくん」
「な、何でしょうか……」
錆びたブリキ人形のようにギギギと振り向くとブレイドは僕に言った。
「少し付き合え。マリーに剣を見せる」
「僕もうクタクタだよ」
「何、部屋までなら送ってやる」
こうして、ユージオはマリーのためにブレイドの稽古相手をさせられることになってしまった。
修練場で、ユージオがブレイドの手解きを受けた数日後。不穏な匂いがプンプンする学園の食堂で、ブレイドは珍しく一人で食事を取っていた。
「(……嫌な予感がする)」
ブレイドはそんな事を思っていた。修練場でウンベールが言っていた言葉が妙に引っかかっていた。
「(こう言う時はろくなことが起きない……)」
そう思いながらブレイドは食事を取り合えるとそれを片付けて部屋に戻る。今日の講義は終わっていたので、後は暇つぶしでもしようかと考えていた。
外では雨が降り、嫌な雲が広がっていた。
「嫌な天気だ。こう言う時は部屋で静かに本を読むに限る」
そう思いながら私は部屋に戻ってマリーが部屋を片付けている中、横で本を読んでいた。
その日、私は久しぶりに夢を見ていた。だが、その夢は少々不思議な夢だった。
そこには木造の大きな屋敷にの一室で一人本を読んでいる私がいた。夢中で本を読んでいた私はふと声をかけられていた。
『何を読んでいるんだ、修也?』
修也?私の名前はブレイドではないか。違う誰かではないかと思うも、私はその声の主を見て、嬉しそうに笑いながら言った。
『兄さん!』
そう言うと私は本を置いて、その男に飛びかかった。
『いつ帰ったの?』
『ついさっきだ』
黒髪の青年に飛び交った私は顔を埋めているとその青年が優しく頭を撫でた。その手の温かさに私は強い懐かしさを覚えた。
これは事実なのか?そう思わずにはいられないほど、その手は暖かかった。
『また、身長が伸びたか?』
『そうかな?』
優しく微笑むと、その痩せたもやしのような青年は私に聞いた。
『今日は、どんな事をする?』
『ゲーム!この前のリベンジ!』
『そうか。……じゃあ、この前のリベンジマッチと行くか』
『待ってて、準備して来る!』
そう言った私は家の中に戻って中からゲーム機を取り出していた。
「(あぁ、これは……)」
記憶なのか。
それも自分の……
その時、ブレイドは唐突に起こされた。
「ブレイド先輩!」
「……?」
おっと、寝てしまっていたのか。視線の先には必死めいた様子のマリーがおり、只事ではないと理解した。
「……何があった?」
「た、大変ですっ!キリト先輩とユージオ先輩が・・・・!!」
慌てた様子でチグハグに答えるマリーの話を纏めるとこうだった。
ーーキリトとユージオがライオスとウンベールを斬ってライオスが死んだ。
殺人はれっきとした禁忌目録違反だ。許される事では無い。しかし彼らがそれをしたと言う事は何かした理由あっての事なのだろう。そう思ってからの行動は早かった。
「マリー、君はロニエ達と一緒にいなさい」
「わ、分かりました!」
ブレイドは部屋を出ると彼からいる場所を探しに向かった。
「寝たか……」
俺は軟禁部屋のような場所でふと一息を吐く。
ライオスが死んだ。
俺とユージオはロニエ達を守る為に、敵を殺した。
その事実に俺は手が震えていた。すると部屋の前に誰か来た気配を感じた。こういう時、彼ならどうしていただろうか……。
「キリト……私だ」
「っ!ブレイド!」
音を気にして小声で言うと視線の先にはブレイドの赤い目が見えた。
「何が起こったか手短に話せ」
「あ、あぁ……」
そう言われ、キリトは事の次第を話した。
ロニエとティーぜが襲われていたからやむ終えず交戦をした。
その時に自分はカッとなってしまってウンベールの手首を切ってしまった事。ユージオがライオスを斬り殺してしまった事。
それとユージオの右目が吹き飛んでしまった事。
全てを話し終えるとブレイドは少し間を置いてこう答えた。
「…事情はよく分かった。こちらで何かできないか模索をしてみる。……と言ってもできる事は皆無に等しいが……」
悔しそうにブレイドは言うとキリトはそれだけでホッとしていた。今までまともに話を聞いてくれる相手が居なかったので、ホッとしていた。
だからキリトはブレイドに言う。
「俺たちの事で心配してくれてありがとう」
そう言うとブレイドは何か思いついた様子でキリトたちに行った。
「キリト…どこでも私は追いかけるぞ。……先に待っていてくれ」
そう言われ、キリトは少し微笑んで返す。
「ああ、その先で待っているさ」
いつになったらあの痴女殴りに行けるかな……