ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#14 最高司祭

ブレイドの意識が戻り、元老院の建物を出た四人は通路を走っていた。その途中、キリトはブレイドと情報交換をしていた。……と言ってもほとんどキリトがブレイドに話すだけであったが……。

 

「ーーーなるほど、そのカーディナルという人物がアドミニストレータを倒す為にこの短剣を?」

「ああ。二本あるんだが一本をブレイドに持っていて欲しい」

「…なんとか接近してみるか……」

「前に言ってただろ?『前例のない相手は敵に動揺を生む』ってよ」

「よく覚えていたな……」

 

今のブレイドには銃という強い武器がある。少なくともこの世界で銃というのはアドミニストレータですら初めての物だろう。だったら上手く使えばいけるかもしれない。キリトはそう考えていた。

 

通路を走った先も扉を開けたブレイド達は悪趣味な部屋に到着した。そこには悪趣味の金色のベットや色々な物がはみ出した家具。悪徳領主が使っていそうなクサイ部屋だった。ここにさっきの元老長……さっきのピエロ、ブレイドとアリスが言うにはチュデルギンと言う奴が居たと思うと納得できた。

 

「黴臭い匂いがする……」

「悪趣味だ。ブレイドの部屋なんかよりずっと……」

「……キリト、後で覚えておけ」

「ヒェ……」

 

そんなことを言うとブレイドは目を細めてキリト達に忠告する。

 

「…一応こで言っておくが、最高司祭アドミニストレータは長年生きて来たと言う恐ろしさがある。正直、話術で勝てる気がしない」

 

揚げ足を取るのが上手なブレイドでさえもか。

二人の意識は同じで、注意しなければと思っていた。ブレイドは自身の甲冑から改造したマスケット(グラース銃)に金属薬莢に改造した弾丸を装填をするとボルトを閉じていた。

え?グラース銃はマスケットじゃないって?……細かいやつは嫌いだよ。

 

そんなこんなで、部屋に入ったブレイドは記憶を頼りに元老長の部屋の金色のタンスを蹴っ飛ばした。

 

パァン!ガラガラ……

 

蹴っ飛ばされたタンスは中身をぶちまけながら砕け散り、蹴りの威力にキリト達が若干引いているとその後ろから屈まないと進めないほどの大きさの通路が見えた。

 

「おぉ……流石っす、ブレイドさん」

「ってか、さっきもここ通った?」

「あぁ、『馬みたいに這いつくばれ』ってあのピエロにな」

「「うわぁ……」」

 

そりゃ、ブレイドが怒るわけだ。そう思うとキリトを先頭に四人は穴を進んでいった。そして通路を出るとそこには長い階段があった。

 

「これ……何階分あるんだ?」

「元老院だけで三階分ほどあるからな……だが、ここを登ったら最後だ」

 

最後、それはつまりこの先にアドミニストレータがいると言うことだ。全員が気を引き締めた。ブレイドはキリトから受け取った短剣を持つと一番初めに階段を登った。

階段の途中でブレイドが全員の足を止めさせた。

 

「ここから先は一人で行く」

「え……なんで?」

 

ユージオが聞くとブレイドが作戦を伝えた。

 

「暗殺ができるか試す。私が叫んだら飛び出して来てくれ」

 

甲冑がない状態でどうするのだと思いながらも、ブレイドはマスケットと流星のサーベルを持って一人だけで階段を登って行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

キリト達を残して一人階段を登り切ったブレイドは最上階に辿り着く。キリト達と対峙する前と変わらない光景、自分が整合騎士作り変えられた時と変わらない様子であった。

 

「おや、甲冑はどうしたのかしら?それにチュデルギンは?」

 

すると部屋の中央の天蓋の垂れ幕の奥。ベットの上で長い銀色の髪に、こちらを映し出すような鏡の瞳を持つ絶世の美少女が聞いた。最高司祭だ……。自分はスタスタと歩き、彼女に跪く。

 

「申し訳ありません。甲冑は賊の手によって破壊され、元老長様は賊によってお怪我をなされた為、治療と御休憩をなされておられます」

「そう……なかなかあの子達もやったようね……こっちに来なさい。あなたの甲冑を作り直してあげるわ」

「はっ!」

 

そう言い、ブレイドはマスケットを持ったまま最高司祭に近づく。垂れ幕を通り、彼女の姿を見た。その瞬間、渡された短剣を彼女の胸元目掛けて突き刺した。しかし……

 

「(やはり対策は立てていたか……)」

「ふぅん、この剣はあのちびっ子の差金ね……やっぱりモジュールは無くなっていたか……」

 

視線の先には紫色の神名文字の浮かぶ膜に防がれた短剣があった。そのまま勢いで押し込もうとすると神名文字が光り、閃光と共に爆発を起こした。

その衝撃でベットと天蓋が丸ごと吹き飛んだ。受け身を取りながらブレイドは着地をして叫んだ。

 

「来い!失敗だ!!」

 

そう叫ぶと登って来た階段から三人が飛び出して来た。

 

「元気に失敗って言うな!!」

「まぁ、予想通りだね」

「行きましょう……」

 

三人は剣を持って飛び出し、その様子を見た最高司祭はまるで実験動物を見るかのような目だった。そして彼女はアリスを見て言う。

 

「ふーん、敬神モジュールが無くなったわけじゃないし、論理回路にエラーが起きているわけでもないのにねぇ……やっぱりそこにいるイレギュラーユニット達のせいかしら?」

 

そう言うと最高司祭はキリトとブレイドを見る。その気迫にキリトは直剣を握り直した。ブレイドは眉一つ変えずに最高司祭に向かって言う。

 

「ふっ、それは如何だろうか……」

 

そう言うとブレイドはある単語を最高司祭目掛けて言う。

 

「……コード871」

「それは……」

 

最高司祭がそう呟いたブレイドを見た。その目には少しの驚きが混じっているようであった。

 

「貴様が協力者を堕として作り上げた歪んだ愛の一品だ。今頃《外》では地獄を見ているかもな」

 

そう言うと最高司祭は笑い声を上げた。

 

「ふふっ、あはははははは……何処でそれを知ったのかしら?それともアイツと同じ人間なのかしら?」

「似ているようで違うとも言えよう。…全く、せっかくの理想郷を台無しにしてくれたものだ……」

「理想郷ならそこにあるじゃない」

「あぁ、貴様と言う毒がいなければ。そうだったかも知れないな」

 

そう言うブレイドの横でキリトは一体何を話しているとかと若干困惑していた。ユージオ達は最高司祭の言う《外》と言う言葉に引っ掛かりを覚えていた。

 

「さて、無駄話もここまでにしよう。()()()()、支配欲に溺れ自分を失ってしまった哀れな奴よ。一つ、問いたいことがある」

「……何かしら?」

 

ブレイドの哀れんだ目に最高司祭は怪訝な目を浮かべながら聞き返す。

 

「ダークテリトリーの総攻撃に関して貴殿はどのような対策をとられたご様子で……?例えば……

 

 

 

 

 

人を生贄に捧げたとか……?」

 

 

 

 

 

ブレイドは周りの柱を見ながらそう問うと最高司祭は高らかに笑い声を上げた。

 

「ふふふふふふふふ・……あなた、何処まで推測できているのかしら?」

「単純に、今の整合騎士の戦力。市民への対応。現状とその他諸々を加味しての判断だ」

「ふふっ、あなたの事少しみくびっていた様ね……」

「人を見た目で判断するのはあまりよろしくないと思うが?」

 

そうね、と言い最高司祭は心底楽しそうに笑う。キリト達は一体何を言っているのかと疑問に思っていた。

 

「あなたの頭はいったいどんな構造をしているのかしら?どんな事を考えているのかしら?是非、見てみたいわね」

 

最高司祭は笑みを浮かべながらブレイドを見る。キリト達はブレイドを見ると彼は大きく息を吐いて聞いた。

 

「ーーーどのくらい使った?」

「ざっと三百と少し」

「なるほど、量産は?」

「もう直ぐで出来るわ」

「ブレイド、何を聞いている?」

「キリトは知らなくていい事実だ」

 

そう言いキリトを見た。そしてキリトはゾッとした。今の彼の目は何処までも吸い込まれてしまいそうな黒い瞳を持ち、表情はひどく凍っていた。

 

「ふふふ、彼が言わないなら私が教えてあげるわ。私が何を使って、何を作ったのかを……」

 

ゆったりとした動作で手を上げた最高司祭は手に紫に輝く三角柱のクリスタルを持ち、アドミニストレータはその表情に狂った笑みを浮かべた。

 

「リリース・リコレクション!!」

 

高らかに声を上げて唱えたのは武装完全支配術の呪文。神聖術を超える力を引き出すための秘術。

ブレイドが容赦なくマスケットの引き金を引きながら銀髪の少女に接近する。まるで雷鳴のように駆け出したブレイドは並の人では簡単に吹き飛んでしまうような速度でスパイク状の銃剣を少女に突き刺そうとする。しかし、壁にかけられていた黄金の武器がその攻撃を受け止めていた。

 

「傷すらつかないか……」

 

そう呟くと同時に後ろに跳躍し、着地をする。先ほどブレイドのいた場所には数多の黄金の武器が空を舞っていた。その数は三〇。その全てが《記憶解放術》で動き出し、到底人には出来ない所業にこの場にいる最高司祭以外の全員が驚愕をしていた。

 

「これは……」

「おいおい、最高司祭ってとことんチートじゃねえか……!!」

 

黄金剣は徐々に形を形成していき、一つの巨体を作り出した。

 

「これこそ私の求めた力……永遠に戦い続ける純粋なる攻撃力…名前は……そうね、ソード・ゴーレムともしておきましょうか?」

 

視線の先では黄金の剣を体に持つ剣の自動人形が自分達を見る。キリトはブレイドを見ると彼は悲しんだ目でそれを見ていた。それで、キリトは悟ってしまった。知りたくなかったその事実に……。

 

「おい、まさか・……」

「ああ、そうだ。あの剣全てだ。全て()()()だ……」

「……え?」

 

ユージオは信じられない。信じたくないと言う感情で埋まっていた。

 

「う、嘘じゃないの……?」

「こんな状況で嘘をつく必要が何処にある?」

 

ブレイドの無慈悲な答えにユージオは今度こそ絶句してしまった。

 

「ひ、人を……作り替えたのですか……?」

「あぁ、そうだ……」

 

アリスの問いにもこう答え、アリスはソードゴーレムを見る。するとそこには悲痛な叫びが聞こえているようにも感じた。

 

そう、生きているのだ。今も彼らは……生きたまま剣にさせられたのだ。

 

「何処まで……」

 

アリスはギィッ!っと歯を壊す勢いで歯軋りをさせると剣を持った。

 

「何処まで人を!……弄ぶか!アドミニストレータアァァァァァァァ!!!」

 

怒りの咆哮が響き、アリスの刀身は無数の花弁へと変わった。通常よりも眩く光る花弁は限界までアリスの力を引き出していた。

そして剣を振ると先の怒りの何倍もの轟音と衝撃が部屋を駆け抜けた。

 

「散会しろ!攻撃を仕掛ける!!」

 

アリスの攻撃を皮切りにブレイドが指示を出した。

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