ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#17 選択の失敗

「しまった……!!!」

 

ユージオは剣で刺されたブレイドを見て思わず叫ぶ。その後ろでキリトが思わずブレイドに向かって走り出す。

 

アドミニストレーターは勝ちを確信した。一番厄介な相手を始末できたと。

 

後ろに後退りするブレイドを見ながらこの後のことを考えようと思っていた。今までの経験からまずこの青年はブレイドに気が向くだろうと思っていた。

 

そしてキリトがブレイドにより添おうと……

 

 

 

 

 

しなかった。

 

 

 

 

 

「……は?」

 

キリトはブレイドの横を走り抜け、自分に近づく。その時、キリトは走り去る間際に左手でブレイドのサーベルを抜いていた。

 

「……あとは俺が行く」

「あぁ……任せた……()()()()……見せてくれ……お前の()()()を……」

 

そう言うとブレイドはキリトを見ながら崩れる。キリトはそんなブレイドを気にもせずアドミニストレーターに近づく。二本の剣を持ちながら突貫してくるブレイドにアドミニストレーターは反応が遅れてしまった。

 

「あぁぁぁぁああぁぁぁあぁ!!!」

 

雄叫びと共に剣はアドミニストレーターの胸元に突き刺さる。その瞬間、ブレイドから抜き取ったサーベルが灯り、アドミニストレーターから()()を吸収する。

 

しかし、私はそんな事気にもできなかった。

 

 

 

視線の先にあの男を見たからだ。

 

ーーやぁ、待っていたよ

 

 

 

相変わらず彼は腹が立つほど優しい目をしていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ブレイド!」

「キリト……」

 

アドミニストレーターを倒したキリトはそのままブレイドに近づく。彼の持っていたマスケットは銃身が張り裂けてボロボロになっており、体の至る所が傷だらけだった。サーベルは転がり、目は閉じており、どうやら見えない様子だった。ブレイドは近づいたキリトに向かって言う。

 

「キリト……そこにコンソロールがある筈だ……そこから外と連絡ができる……ふぅ」

「あ、ああ……今すぐ開く!!」

 

慌ててキリトが離れるとブレイドはユージオを呼ぶ。

 

「ユージオ……居るか?」

「ここに居るよ!」

 

呼ばれたユージオはブレイドに近づくとブレイドは懐からある物を出す。

 

「これを…カーディナルさんに……渡してくれ……」

「これは……?」

 

ブレイドが手渡したのは黄金色の三角柱の結晶体だ。敬神モジュールとは色が違う何かだった。

 

「《管理者権限》……後はあの人が分かってくれるだろう……それとユージオ」

「な、何……?」

「私の部屋に……戦い方を書いた本がある……それを使ってくれ」

「え?う、うん……わ、分かった……」

 

困惑するユージオが想像でき、ブレイドは少し面白く思うと息を吐いた。

 

「ふぅ……」

 

大きく息を吐いたブレイドは後悔をしていた。

 

「(やってしまったな……今になって後悔するとは……)」

 

ブレイドは自身のSTLに取り付けたあるデバイスを思い出しながら思っていた。

 

「(今思えば愚かな選択だったか……)」

 

兄のいる場所に行きたいと言う安直な思いから無許可で取り付けたデバイスだが、今となって後悔していた。

 

「(詩乃が知ったら怒られるだろうな……)」

 

ブレイドは今進んでいるであろうシステムを思いながら激しい後悔と共に意識が遠のく。

 

「(今となってはもう遅いか……)」

 

そう思うと同時に意識は完全にブラックアウトした。

 

 

 

 

 

「くそっ、早く出てくれ……!!」

 

システムコンソロールから外にいる筈の菊岡に連絡を取る。明らかにブレイドの様子がおかしい。そう思って外に繋いで状況を聞きたいと思っているが、繋がる気配はなかなかなかった。

そしてようやく繋がったかと思えば、聞こえてくるのは普通の日本人ではまず聞かない。自動小銃の発砲音だった。中には拳銃の音も聞こえ、銃撃戦が行われているのかと思っていた。

 

『菊岡二佐、破られました!もう限界です!!メインコンは放置して、耐圧隔壁を閉鎖します!』

『閣下、隠れてください!!危険です!!』

『何を言うか!!元傭兵を舐めるなぁぁあ!!』

 

中には藤吉さんの声が聞こえ、キリトは困惑していた。

 

『まだ耐えるんだ!後二分、耐えてくれ。今ここを奪われるわけにはいかん!!』

「何が…起こっているんだ……」

 

普通の日常ではあり得ない音に困惑をしていると比嘉の声が聞こえた。

 

『菊さん!中から呼び出しっす!っ!これは……桐ヶ谷君っす!』

『何!?そこにキリト君がいるのか……!』

「っ!……」

 

今すぐにでも怒鳴りたい気持ちだったが、それよりも重要なことがあった。

 

「ブレイドが……ブレイドをすぐにログアウトしてくれ!!早く!!じゃないとアイツが死んじまう!!」

『何だって……!?』

「様子がおかしいんだ!急いでくれ!!」

 

キリトがそう言うと菊岡は確認を取ったのかこう答える。

 

『分かった……ブレイド君のことはこっちでやる!それと君に頼みがっ!ぐぅ……!!』

「どうした!何があった!!」

 

菊岡の今までに無い声にキリトは叫ぶ。すると菊岡は指示を出した。

 

『すまないが、時間がないから手短に伝えるぞ……!いいか、キリト君!アリスという名の少女と、ユージオという少年を探して保護してくれ!そして……』

「探すも何も、今ここにいる!!それよりブレイドを……」

『なんだって!?』

『これは奇跡っす!』

 

キリトは苛立ち始めていると菊岡は指示を書き換えた。

 

『よし…この通信が切れ次第、FLAを1000倍に戻すから、二人を連れてワールドエンドオールターを目指してくれ!』

「目指してくれって……いきなりそんなことを言われても……!?」

『時間がないんだ!いいか!オールターは東の大門から出て、ずっと南へ……』

『マズイ!?』

 

部下の声が通り、全員が驚く。

 

『奴ら、電気室へ侵入しようとしています!!』

『何っ!?』

『ヤバいッスよ、菊さん!?もし奴らが主電源ラインを切断したら、サージが起きる!ライトキューブクラスターは保護されてますが、サブコンの桐ヶ谷君と赤羽君のSTLに過電流が流れ込んで……このままじゃフラクトライトが焼かれちまいます!?』

『っ……!?ここのロック作業は僕がやる!比嘉君は神代博士と、明日奈君、詩乃君を連れてアッパーシャフトに退避……そして、二人を保護するんだ!!』

「明日奈……?」

 

明日奈、それに詩乃がそこにいるのか?一体何が起こっているんだ……?そんな困惑をしていると比嘉が叫んでいた。

 

『……駄目だ!?電源切れます!スクリューが止まります!?』

 

そんな言葉が聞こえてきたと思った瞬間だった……頭上から気配を感じた時にはもう既に遅かった……胸の内が何かに焼かれるような感覚に襲われ、キリトの体が不意に宙へと浮いた。

 

「!?!?!?」

「キリト!!」

 

ユージオのそう叫ぶ声が最後に響いた。

 

 

 

 

 

「キリト!しっかりしろ!おい!」

 

何が起こったのか分からなかった。ただ、キリトが飛んだ後、キリトはブレイドと同じ様に倒れたまま意識が戻らなかった。

カーディナルさんがキリトに近づき、キリトを診ていた。その後ろで、アリスが意識が戻ったのか、声を上げた。

 

「ん…あ……」

「アリス!」

「ユー…ジオ……?」

「っ!その言い方……!!」

「……久しぶり、ユージオ」

 

そう言い笑みを浮かべた彼女に、ユージオはアリスの呼び方に記憶が戻ったのだと理解した。こんな奇跡に自分は涙を出さずには居られず、ポトポトと溢れてしまっていた。

 

「もぅ、泣き虫なんだから……」

「良かった…良かった……本当に……」

 

ユージオが涙を拭うと最上階に聞こ覚えのある声が聞こえた。

 

「おいおい、来て見たと思えば……」

「貴女は……」「叔父様……」

 

そこには青い服に身を包んだ初老の男性が居た。彼はベルクーリさん。整合騎士の騎士長であり、僕が85階で戦った相手だ。

アリスも驚いた様子でベルクーリさんを見ており、ベルクーリさんはそんな僕たちを見てフッと笑っていた。

 

「無事な様だな。嬢ちゃん、それに氷の坊主」

「はい……」

「心配すんな。今は戦うつもりはない」

 

確かベルクーリさんはチュデルギンによって凍結されていた筈。なのにこうして動けている事に疑問を持っていると、ベルクーリさんはそれを見透かしたかの様に言った。

 

「途中で術が解けてまさかと思ってな。ここまで登ろうとしたが、昇降版がなくて立ち往生してたら爆発音がして、ここに至るわけだ」

 

ベルクーリさんがそう言い、ユージオ達はあらかたの話を聞き終えると戦わないと言った意味が分かった。

 

「…さて、嬢ちゃん達には全部説明してもらおうか。チュデルギンと最高司祭陛下がどうなったのか。あの坊主の横にいる赤い坊主ともう一人の事。…それと俺たちの記憶について、な……」

「……分かりました」

 

そう言い、ユージオとアリスは今までの事を全て話した。

まず倒れている赤色の服を着た青年は二等爵家のブレイド・ソド・ワラキアである事。キリトの近くにいるのはカーディナルと言うかつて追われたもう一人の最高司祭である事。そのカーディナルさんの手によって最高司祭は倒された事。

その最高司祭が整合騎士達の記憶や人界の民を犠牲にして作り上げたソード・ゴーレムの事。それをブレイドが倒した事。

元老院がチュデルギン以外は全員が作り替えられてしまったと言う事。

 

その全てを話し終えた時、ベルクーリさんは目を閉じて

 

「……そうか」

 

とだけ呟いていた。記憶が戻り、何を思ったのだろうか。多分、弔っていたのかもしれない。その後、少し質問をしあった後、ベルクーリさんはブレイドを見て一言つぶやく。

 

「しかし…彼があのブレイドなのか……」

「知っていたのですか?彼のことを?」

 

アリスがそう問うと、ベルクーリは『あぁ、噂で聞いている』と言い、彼の事を話した。

 

「彼は偉大な人だ。新しい農耕具を作ったり、肥料ってのを作って農作物の量が増えたって話だ。その功績から一等爵家に上がるって話があったくらいな……」

「そうなのですか……ユージオ、知っていましたか?」

 

整合騎士の口調で話仕掛けるアリスにユージオは少し戸惑いながらもこう答えた。

 

「え?あ、うーん…確かに、ルーリッド村にその肥料ってのが来てから確かに麦の取れる量は増えたよ。おかげで税も増えたって文句もあったけど……」

「そうですか……」

 

ユージオの話を聞いて納得をしたアリスは改めてブレイドを見る。今彼はキリトと共に横になっており、息をしているのかもよく分からなかった。ただ、分かることは彼らは死力を尽くしてあの最高司祭達を倒したのだと分かった。

 

「はは…こりゃ恐ろしいな……」

 

そう思うと取り敢えず二人のためにベルクーリは部屋を貸すと、他の整合騎士達を一箇所に集めて説明をする事とした。

ユージオとベルクーリが部屋のベットとソファーにキリトとブレイドを置くと八十五階の大広間に整合騎士全員を集めて話をした。

 

そこでカーディナルに関して懐疑的な意見もあった。それもそうだろう。追われたとはいえあの最高司祭の一人……彼女が何を言おうとそれは言い訳にしか聞こえないからだ。

 

しかし、そこはベルクーリとアリスの裁量で宥めることができた。

特に騎士としての才能に長けたアリスが共に戦った仲だといえば、誰もが納得をせざるを得なかった。そして、騎士達の記憶が戻ったのはそのアドミニストレータを倒した彼らであるとアリスが言うと全員の反応は同じだった。

 

ーーありがとう

 

そう言うとそこでユージオがカーディナルにブレイドから託された物を渡した。それは、黄金色に輝く三角柱……ブレイドがアドミニストレータから奪い取った《管理者権限》であった。

 

「カーディナル様、これを…」

「これは……っ!!」

「ブレイドから託された物です」

「何と言うことか…彼奴も大概飛んでおるなぁ……。だが、こんな物は要らぬ厄災を産む。だから……」

 

要らぬ。そう言おうとした時、ベルクーリが言った。

 

「いや、それはカーディナル……いや、()()()()()()殿に持ってもらった方がいいだろう」

「しかし……」

 

その続きを言おうとしたが、カーディナルはそれを飲み込んでユージオからその三角柱を受け取った。

他の整合騎士達もその様子を眺めるとベルクーリが聞いた。

 

「……さて、最高司祭代理殿。我々は何をすれば?」

 

ベルクーリがそう聞き、カーディナルは多数の整合騎士の視線を集めながら指示を出していった。

 

来るダークテリトリーの侵攻に備えて……

 

 

 

 

 

「……あれ?」

 

部屋に戻ったユージオはそこで驚くべき光景を目にしていた。

 

 

 

ベットとソファーで横になっていた二人のうち、ソファーの方。

 

 

 

そこに居るはずだったブレイドの姿が忽然と消えてしまっていたのだ。

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