ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#5 二つ名

シリカに四十七層についての説明をするためにシリカの部屋の扉をノックした。

 

「私です。ブレイドです」

「はーい、今開けます」

 

そう言って扉が開くとシリカはキリトとブレイドを部屋に中に入れた。

 

「こんな時間にすまないね」

「いえ、大丈夫です。……それでどうしたんですか?」

 

シリカが聞くとブレイドは尋ねた訳を話す。

 

「明日向かう四十七層に関する話だ。ここで話しても良かったかな?」

「あ、はい。お願いします!」

 

そう言うとブレイドは部屋の椅子に座り、キリトがミラージュ・スフィアを展開して四十七層に関する説明をした。

 

 

 

そして説明が『思い出の丘』らへんの話になった時。

突如ブレイドが立ち上がり、一気に扉を開けた。扉の前には誰も居なかったが、階段からドタバタと落っこちる音が聞こえた。

 

「ふむ…逃げたか……」

「十分痛い思いしていそうだな……」

 

少なくとも現実世界なら病院送りになっていてもおかしくなさそうな奴だと苦笑する。

 

「い、今のって……?」

 

するとシリカが不安げに聞いてきた。

 

「聞かれていたようだ」

「えっ!?ド、ドア越しには話は聞かれないんじゃ……」

 

システムに穴があるのかと思っているとブレイドは話す。

 

「『聞き耳』スキルというのがあってだな。まぁ、そんなスキルを持つ奴は碌な奴じゃない、とだけ言っておくよ。キリト、私は外で見張っている。後の説明を頼むぞ」

 

そう言い残してブレイドは部屋の外に出て見回りをしていたが、その後人の気配を感じることはなかった。

 

「どうだった?」

 

シリカへの説明を終えて部屋から出て来たキリトがブレイドにそう聞いた。

 

「あれ以降は誰も来なかった」

「そうか……」

 

ブレイドはキリトの様子にある事聞いた。

 

「キリト、目的は何だ?」

「ああ、そう言えば言い忘れていたな……ちょっと部屋に戻って話そう」

 

そう言ってキリトは部屋に戻るとブレイドに今日ここに来た理由をブレイドに話した。

 

「……成程、事情はよく理解した」

 

そう言うとブレイドはキリトにあるアイテムを渡す。

 

「これは……」

「念の為だ。私がこう言う時に愛用する小道具だ。これを使うといい」

「なるほど、ありがたく使わせて貰うよ」

 

そう言ってアイテムを受け取ったキリトはそれをしまうとさっさとベットに横になってしまった。

ブレイドは月を眺めながらさっきキリトに話した事を思い出していた。

 

「(つい言ってしまったな……)」

 

キリトに話した事。それはこの世界にいる人からすれば恨まれても仕方ないことかもしれない。だから今まで誰にも話さず、このまま墓まで持って行こうと思っていたが……

 

「(キリトはどんな事を思ったのだろうか……)」

 

そんな事を思いながらブレイドは月を眺め続けていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌朝、シリカ達は三十五層から四十七層に移動すると目の前に広がる光景にシリカは感嘆の声を漏らしていた。

 

「ここが『フローリア』ですか?」

「ああ、別名『フラワーガーデン』って言われているんだ」

「こんな景色だからここはカップルの聖地とも言われている」

 

ブレイドの言葉にシリカが辺りを見回すと確かに男女二人組が多く見られた。

 

「さて、目が痛くなるからさっさと『思い出の丘』に行こうか」

「それはご尤もだ」

 

そうして三人は一直線に『思い出の丘』に向けて歩き始め、あっという間に『思い出の丘』の入り口に到着した。

 

「さて、気を引き締めていこうか」

「ああ」

 

そう言って三人は躊躇なくダンジョンの中に入って行った。

 

 

 

 

 

「いやああぁぁーーー!!」

 

ダンジョン内で早速シリカが触手系植物モンスターに足を絡め取られていた。

 

「見ないでぇ〜〜!!」

「いや、見てない!見てないから!!」

「キリト、それは見ていると言っているのと同じだぞ……」

 

ブレイドはそう言いながら『パランジャ』を振って触手を切り落とした。

 

「キリト!」

「ハァッ!!」

 

ブレイドの声にキリトが片手剣を思い切り振り下ろし、モンスターはポリゴン片と化した。

地面にストンと座り込んだシリカは思わずキリトに聞いていた。

 

「……見ました?」

「……み、見てな」ゴホッ!

「本当は?」

「ちょっとだけミマシタ……」

 

ブレイドに腹パンされてキリトは正直に答えた。

 

「うぅ……//」

 

シリカは赤面したまま半分自棄になって短剣を振り回していた。

そんな戦闘を四、五回ほど繰り返した頃にはシリカも戦闘に慣れて最初のようなことは無くなっていた。

途中、シリカが切り出したキリトの妹の話で話題になったり、話に夢中になってまたシリカがモンスターに捕まったりと色々とあったが、無事に三人は『思い出の丘』の到着した

 

「思ったより早く着いたな」

「そうだな。さ、用事を済ませようか」

「はい」

 

そう言い、シリカが小走りで丘の上に向かい、そこに咲く花を見つけた。

 

「ほぅ…《プネウマの花》と言うのか……」

 

ブレイドはアイテムの名前を確認するとシリカがストレージにしまい、元来た道を戻り始めた。

 

「〜♪」

 

ウキウキで歩いているシリカを横目にブレイドはキリトと目線を合わせた。

 

「シリカそこで止まって」

「え?」

「いいからいいから」

 

ブレイドはシリカの肩を掴んでその場に立ち止まらせるとキリトが叫んだ。

 

「出でこいよ。そこにいるのは分かっているんだ」

 

そう言うと茂みから一人のプレイヤーが出て来た。

 

「ロ、ロザリアさん!?」

「隠蔽スキルで隠れていたけど…まさか見破るなんて、レア度の高い装備をしているから腕が立つと思っていたけど……」

 

ロザリアはそう言うと笑みを浮かべてシリカに手を差し出した。

 

「その様子だと、どうやら花は手に入れたようね。おめでとう、シリカちゃん!じゃ、さっそくだけど、その花を渡してちょうだい」

「…!?な…何を言っているの……」

 

シリカが信じられないと言った表情を浮かべたが、キリトが進み出て口を開いた。

 

「そうはいかないな、ロザリアさん。いや、オレンジギルド『タイタンズハンド』のリーダー、とでも言った方がいいのかな?」

「で、でも、ロザリアさんは、グリーン……」

 

するとブレイドが話す。

 

「オレンジギルドと言っても、全員がオレンジってわけじゃない。獲物を見つけるためにグリーンのメンバーがパーティの中に紛れ込んで、仲間のいるところに誘導……そして、獲物を狩る。昨夜、自分たちの会話を聞いていたのも、あいつの仲間だろう」

「じゃ、じゃあ……この二週間、一緒のパーティにいたのは……」

 

するとロザリア小馬鹿にするように話す。

 

「そうよ。戦力を確認して、お金を貯めてたの。まぁ、今回のあたしたちの狙いはあんた。あんたが途中で抜けた時には正直困ったけど……まさか、レアアイテムの蘇生アイテムを取りに行くなんて聞いたからね……そんなお得な儲け話、逃すわけにはいかないからねぇ。それにしても、そこまで分かっていながらこの子に付き合うなんて、あんたら馬鹿なの?」

 

ロザリアは馬鹿にした口調でキリトに話しかけていた。 

 

「いいや、俺もあんたを探してたんだよ、ロザリアさん」

「……どういうことかしら?」

 

するとキリトはだんだんと顔が般若の様相を隠し見せていく。

 

「あんた、十日前に『シルバーフラグス』って言うギルドを襲ったな?メンバー四人が殺され、リーダーだけが生き残った」

「……ああ、あの貧乏ギルドね。それがどうしたの?」

 

そこで思い出したロザリアは悪びれた様子もなく聞き返した。

 

「リーダーだった男はな、朝から晩まで最前線の転移門の前で泣きながら、仇討ちをしてくれる奴らを探してたんだ。そいつはあんたらを殺さずに、牢獄へと送ってくれと、毎日毎日、必死にプレイヤーに頼んでいたんだ。あんたらにその人の気持ちが分かるか……?」

「解らないわよ」

 

ロザリアの返答にキリトやブレイドは一瞬だけ眉を顰めた。

 

「マジになって、馬ッ鹿じゃないの?この世界で死んだから、現実でも死ぬなんて証拠ないし。そんなんで現実に戻って罪になる訳ないじゃん」

 

ロザリアがそう言った時、笑い声が聞こえた。

 

「ふっ、ふはははは……」

「ブ、ブレイド?」

「ブレイドさん?」

 

普段笑わないブレイドが笑った事実にキリトは計り知れない恐怖を覚えた。

 

「ははは……いやぁ、すまない。思わず笑ってしまったよ」

「な、何によ……」

 

普段笑わないブレイドにシリカも少しばかりの恐怖が芽生えていた。

 

「いや、お前がそれほど低脳な女だとはね」

「てっ、低脳ですって!?」

 

ロザリアは顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。だが、ブレイドはそんな彼女を馬鹿にするように淡々と答えた。

 

「だってそうじゃないか、貴方方は盗みや殺人を行っている。子供でもやっては行けない事だとわかる事じゃないか。そう言うのは普通、親から学んでいる事じゃないのか?」

 

ブレイドが簡単に煽るとロザリアは顔を赤くしていた。なるほど、これほどの煽りでも傷つくプライドとは何とも情けない。

 

「っーーーー!!!!アンタたち!!このクズを八つ裂きにしろ!!苦しめてから殺せ!!!」 

 

そう言い、ロザリアがそう叫ぶとオレンジカーソルのプレイヤーが十数人ほど出てきた。

 

「こ、こんなに……!」

「ざっと十数人ってとこか…」

「これなら……」

 

ブレイドとキリトはシリカを守るように前後に分かれて立っていた。

 

「さて、かかってくると良い。格下相手にしか威張れない小さな脳みそを回転させてね」

「っ!舐めるなぁ!!!!」

 

あからさまな煽りである事はわかるはずなのだが……。ブレイドの言った通り、こいつらは脳みそが小さいのだろうか?

そんなことを考えながらキリトは複数のプレイヤーから斬られていた。

 

「はぁ…はぁ……」

「ふむ、ダメージ総量は700程か……頑張った方じゃないか。伊達に略奪をして来ただけはある」

「何故だ!なぜHPが減らない!?」

「そんなこと、教える必要もない。その小さなお頭で考えてみるんだな。何、考える時間はこれからたっぷりある」

 

そう言うとブレイドとキリトはほぼ同タイミングで持っていたピックを犯罪者達に投擲スキルで投げた。

投げられたピックは犯罪者達に刺さると一気に地面に倒れてしまった。

 

「こ、これは……」

「麻痺毒。それもキツいやつだ。しばらくは動けないだろう」

 

そう話すと一人のプレイヤーがブレイドを見て思い出したのか赤が青ざめていた。

 

「っ!思い出した……!その特徴的な赤い装備……まさか赤い雷鳴……!!」

「ほう、知っていたのか。なかなか博識なやつが居たものだ」

 

そう言い、ブレイドは倒れたプレイヤー達を一箇所にまとめると縄で三人一組で縛っていた。

 

「さて、あちらも終わったようだな」

 

そう言ってブレイドはロザリアの首元に剣を添えているキリトを見ながら犯罪者達が使っていた武器を回収していた。

 

「さて、貴方たちののボスは降伏したみたいだ。このまま牢屋に送ってあげるさ」

 

そう言うブレイドの表情はとても邪悪に満ちた恐ろしい笑みをしており、犯罪者たちはその顔に恐怖していた。

キリトが展開した回廊結晶に犯罪者たちを放り込んだ後、二人してシリカに謝っていた。

 

「すまない、君に迷惑をかけてしまって」

「い、いえ…」

「これ、慰謝料だと思ってくれ。こんなもので済まないが……」

 

そう言ってブレイドとキリトはシリカにアイテムトレードでさっき回収した盗賊集団の武器を全てシリカに渡していた。

 

「これは……」

「街で売れば結構な額になるだろう」

「え、でも申し訳ないですよ…こんなに一杯……助けられたのは私ですし……」

 

そう言ってシリカが返そうとしたが。ブレイドがそれを止めていた。

 

「良いんだ、自分たちは君の友人を見れれば……それで十分だ」

「そうだな。俺も君の友人を見てみたい」

「あっ!はい!分かりました!」

「じゃあ、街に戻ろうか……」

「…はい」

 

そして一行は街に戻り、宿屋の部屋に入るとシリカは早速手に入れた《プネウマの花》を使ってフェザーリドラのピナを蘇らせていた。ピナは不思議そうに二人を眺めるとキリトの肩に乗っかり二人にお辞儀していた。

 

「お礼?」

「そうかもな」

 

その姿にキリト達は微笑していた。

 

 

 

 

 

ピナの復活を見届けたブレイド達は転移門の前に立っていた。

 

「それじゃ、また会いましょう」

「キリトさん。ブレイドさん。色々有難うございました」

「こっちも面白いものを見させてもらいましたよ」

 

そう言うとシリカとキリト達は別れを言った。

 

「キリト」

「ああ、行くか……」

「自分達の仕事場に……」

「「転移!」」

 

二人はそう唱えると現在本拠地にしている五十層に向かった。

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