みんなベルクーリさん好きすぎやろ。気持ちはわかるけど。
その日、野営地にある二人の人物が戻って来ていた。
「ベルクーリさん!」
「おお、来たか。氷の坊主、それに嬢ちゃん」
「お久しぶりです叔父様」
野営に入って来たユージオとアリスに挨拶をしたベルクーリを見るとユージオ達は訓練をしている兵士たちを見る。
最高司祭を討ち取ったユージオ達は周りの視線や心無い言葉から一旦北の警護のために央都から二人の故郷であるルーリッド村へと向かっていたのだった。しかし、状況が逼迫して来たと言うことでカーディナル達の判断でここに戻って来ていたのだ。
「あれは……」
「俺たちが帝国中からかき集めた兵士と、あの赤の坊主が作った武器だ」
そこには槍を持って団体行動をする兵士と、見たことのない形をした武器に石を詰め込む兵士の姿があった。
「あの武器は何ですか……?」
「あれは、赤の坊主が作った『平衡錘投石機』って奴らしい。使い方はああやって袋のところに石を乗せて、あそこある重りが石を吹き飛ばすって物だ。今から飛んで行くぞ」
「「……」」
するとカゴンッ!と言う音と共に風を切る音がして、投石機に付けられた石が空高く飛んで行っていた。卵ほどの大きさの石はバラバラに飛んで行き、次第に見えなくなっていった。
「アレのおかげで士気は十分高くなった……全く、あの坊主には驚かされてばかりだ」
そう言い、ベルクーリはブレイドが書いていたあの本を思い出す。そこにはあの投石機の設計図や、他にも設計したであろう武器の数々。それに、兵士たちの陣形や必要な武器まで記されていた。
「お陰で、人界中から剣よりも槍・盾の方が優先して必要となって大忙しだ」
「そ,そうだったんですか……」
ベルクーリの話を聞いてユージオは暗くなりつつも若干苦笑をしているとアリスが聞いた。
「叔父様、ではあの動きも……」
「ああ、そうだ。赤の坊主が『密集陣形』って書いてあったものをそのまま見よう見まねでやっているが……思いの外使えた」
だから全員が槍を持っているのかと思った。片手に槍を持ち、盾を持って、腰に短剣を差した彼らはやる気に満ちていた。
後に戦術の基本書と呼ばれる様になるブレイドの書いた行動書には最後にこの様なことも書かれていた。
『下手な攻勢よりも綿密な防衛の方が戦いは有利に推移できる』
彼がなぜこの様な物を書いたのかは定かではないが。少なくとも彼が外の世界から来たのだと後に知り、この疑問は霧散していた。
ともかく、戦いの場であると選定した東の大門の前では多数の兵士が故郷を守る為に集結し、訓練を行っていた。
よりにもよって上級貴族達は一切参加せずに安全な所から見ているものが多かったが……。
「流石にあの“ジュウ”って言う武器はどこにも書いて無かったがな」
そう言い、ベルクーリはボロボロになった武器を思い出す。カーディナルですら初めて見たと言わしめたそれはユージオ達の記憶を頼りにジュウと言う言葉を思い出していた。それは設計図のどこにも書かれておらず、壊れてしまっているのでどうしようもなく、サーベルと共にキリトが掴んで離さないままになっていた。転がっていた金属の筒も全部回収してユージオに預けられていた
「あの赤の坊主が防衛に特化しろって言うなら、俺たちは出来ることをするまでだ」
そう言い残すとベルクーリはその場を後にしていた。僕たちは槍を持って訓練をしている兵士たちを見て自分たちも出来ることをしなければと思っていると次に別の人に声をかけられた。
「お主ら」
「「っ!カーディナルさん……!!」」
そこには小さな賢者が立っており、二人を呼んでいた。
「いきなり呼び戻してすまぬ。何より急用でな」
「いえ、人界の一大事に惰眠を貪るわけには行きません」
「同感です。それより、私たちは何をすれば……」
アリスがそう聞くとカーディナルは答える。
「まずはコッチに来てくれ」
そう言い、カーディナルは二人をある天幕に連れて行った。
「この中に入るのじゃ。話したい事がある」
そう言い、カーディナルの後に続き。中に入るとそこには三つの武器を抱え込んで椅子に座ったままでいるキリトの姿があった。するとカーディナルは二人に状況を話し出した。
「取り敢えず、今のキリトの体は正常じゃ。だが、現状こうなっておる。だから《外》で何かが起こったとしか思えぬ。そしれブレイドは……」
その続きを言おうとしたが、ユージオが目線で『大丈夫です』と訴え、それに気づいたカーディナルはあえて続きを言わなかった。
「カーディナル様、その《外》と言うのは……」
「うむ、お主らにも説明せねばな……」
そう言い、カーディナルは《外》について説明をし始めた。今までカーディナルから詳しい話をして来なかった《外》の世界について話し始めた。
「お主らには詳しく話しておらんかったからな。ここで詳しく話そう……」
そう言うとカーディナルは詳しく話し始めた。
「まず、其奴らだが。お主らの言うとおり外の世界から来た人間じゃ。なぜ、ここにあやつらが来たかは分からぬが。少なくともこの世界を混乱させる為にきたわけではない。二人の目的は違った様だが、最終的に同じ目標へと向かった」
「「……」」
それは最高司祭の討伐だと二人は瞬間的に察した。でなければ二人がこんな風になってまで戦うはずがないからだ。二人は納得をするとカーディナルは話し続けた。
「だが、彼のフラクトライト……魂は別のこちらの世界にある状態じゃ。だが、こうなっているのは向こうの世界でもわかっているはずじゃ。なのに、なぜ助けに来ないのか……」
ここでカーディナルは自身の推測を立てた。
「おそらく、この世界と向こうの世界では流れている時がズレているからだとワシは思っておる」
「「!?」」
「ワシもあの後あやつらが触っていたコンソールを見た。するとそこにはFLAと呼ばれるものが働き、この世界の時間の流れが早くなっていると推測した」
カーディナルの推測に二人は唖然としていた。そんな滑稽な話を信じろと言うが、ここにいる二人があの空間で不明なことをしていた以上その可能性を信じざるを得なかった。
「だから、今我々にできるのは彼の意識が戻ってくるまで、ここを守ることだけじゃ」
「そんな…二人はもう十分戦ったのに……」
ユージオ達はそこで見た激戦を見て思わずそう悲しげに吐露してしまう。
「じゃが、
するとカーディナルが少し含みある言い方でそう言い、二人は引っ掛かっていると天幕に一人の男性が入って来た。
「話は終わったか?最高司祭代理殿」
「叔父様!?」「ベルクーリさん!!」
天幕に入って来たベルクールを見て驚いているとベルクーリは軽く挨拶をするとカーディナルに視線を向けた。
「本当にやるのか?」
「ああ、実際に見てもらった方が早い」
そう言うとベルクーリはやれやれと言った様子で二人に視線を合わせた。
「ーーーフッ!」
カンッ!!
「うおっと!」
「「!?」」
ベルクーリが何かをして、弾き返されていた。その事に驚いているとユージオが聞いた。
「今のって……」
そう聞くとベルクーリが答える。
「首の皮一枚が切れるほどの心意の太刀。それをアイツにぶつけたのさ。そうしたらこの有様よ。それも己の心意でな」
「なっ!」
「!」
ベルクーリのやった事に驚きつつも、キリトが弾き返した事に驚きを隠せなかった。
「当たったとしても頬の皮が1枚切れるかどうかのものを弾き飛ばし、その勢いで心意の太刀を切り返してきた……自我を喪いながらもあんな強力な心意が使えるとは……明らかに異常だ。返してきたってことはコイツの心は死んじゃいねぇ。だから、コイツの心はいずれ帰ってくる」
「…叔父様、まさかこの為に危ないことを……?」
少々アリスは信じられないと言った目でベルクーリを見ると、彼は弁明した。
「いやぁ、ちょいと不思議に思ってな。試してみたらこの有様よ。そんじゃ、二人の天幕はとなりにあるから二人の世話を頼むぞ」
「分かりました」
「有難うございます。叔父様……」
天幕を出て行くベルクーリを見送ると今度はカーディナルが天幕を後にした。
「この後、軍議を行うからそれまでに集まってくれ」
そう言い残すとカーディナルは出て行った。
「ブレイド…どこに行ったんだろう……」
ユージオはそう呟きながらキリトを見る。今の彼の腕の中には”ジュウ”と流星のサーベル。そして……《夜空の剣》があった。あのギガスシダーで作られた黒い剣の名前だ。命名したのはユージオ。理由はなんとなくその黒さが暖かい夜のように見えたから。勝手につけた名前だが、おそらくキリトも頷いてくれるだろう。
するとアリスが気になっていた事をユージオに言う。
「ユージオ。ワラキアさんとはどんな関係だったの……?」
アリスの問いにユージオは今ここにいない彼がどんな人だったのかを語り出した。
「僕をあの村から連れ出してくれた人だよ」
「連れ出した?」
「そう、キリトとおんなじでちょっと違う感じかな。キリトは剣術を、ブレイドは神聖術を、僕に教えてくれた。僕がここまで来てアリスに会えたのも二人のおかげ……」
「そうなんだ……」
そう思いながら二人は天幕でキリトの世話を終えると天幕を出る。ユージオとアリスは軍議の行われる会場に向かって歩いているとドサッと言う音と共に震える声がした。
「ユージオ…先輩……?」
声のした方をユージオ達が見るとそこには赤髪の少女が口に手を当てて震えていた。見覚えあるその子にユージオは思わず名前を言う。
「ティーゼ……?」
『創世日記』49ページより一部抜粋
ステイシア様と旅を続けるヴラッド。彼らはダークテリトリーとの融和をする為にアンダーワールドの旅を続けた。道中過酷な出来事もあったが、ステイシア様のお力と、ヴラッドの持つ思議な力を使い、旅を続けられていた。
ある日、旅を続けていた彼らは濃い霧に囲まれ、視界が完全に遮断されてしまった。そこでヴラッドは近くの洞窟に移動して霧が晴れるまでやり過ごそうと話した。
ステイシア様もそれを了解し、お供とともに洞窟で一晩を過ごすことにした。