ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#25 開戦の火蓋

「それじゃ……キリトのことを頼むね」

「「「はいっ!!」」」

 

僕はそう言い、ティーゼ達に挨拶に来ていた。昨晩、ティーゼに失恋をさせてしまった僕だったが、ティーゼはどこか吹っ切れた様子を浮かべながら僕を見ていた。横ではアリスが不思議そうな目をしながら僕とティーゼを見ていた。僕も今までの間に何かあったのかと思いつつも、僕は意識を東に向けていた。

 

 

 

 

 

主戦場となる渓谷。そこにはブレイドが残してくれた本のおかげで強力な防御陣地が完成していた。

 

東の大門の前には複数の部隊が立ち並び、第一陣中央をファナティオさんが、右翼はエルドリエさんが、左翼はデュバルソードさんがそれぞれ指揮官を勤めていた。

第二陣にはベルクーリさんや他の整合騎士がおり、その後ろには学生などの志願兵で構成された部隊が待ち構え、最も奥の場所に投石機の部隊がいた。そしてキリトはそこにいてティーゼ達が護衛をしていた。

そして自分はアリスの飛竜に乗って空から戦況を眺めていた。これから始まる戦いの為に・・・・

 

「ユージオ、大丈夫?」

「あ、あぁ。大丈夫……」

「……無理はしないでよ?」

「分かっているよ」

 

アリスと短い会話をし、僕は眼下に広がる景色を見ていた。

 

「(僕に出来るだろうか……)」

 

そんな若干の不安がユージオの脳裏を横切る。自分に課せられた任務は飛竜に乗って苦戦している場所に援護に向かう事。この為にアリスの飛竜から安全に降りられるように風素の練習を繰り返していた。そして与えられた任務から自分は恐らく休む暇すらないだろう。下手をすれば死んでしまうかもしれない。この戦いは一瞬の油断が生死を分ける。気を抜いてなぞ居られない。

 

「(キリト、ブレイド……)」

 

思わず心の中で僕は親友達の名前を呟いてしまっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「始まるか……」

 

後方部隊のとある天幕の前で一人の赤いフードを被った男が東の大門を眺めながら呟く。彼は赤を基調とした軽装備と服で、体を覆う赤いマントが特徴的で、顔は暗くてよく見えなかった。

すると遠くで拡声魔法か何かを使い老練な男性らしき声がし、武装した兵士や前方に居る若い兵士達。その中にはさっきまで彼を守っていた少女達も居た。少女達が外に出たのを見た私は天幕の中に入り、その中にいた一人の黒髪の青年を見る。青年は虚な目で自分を見て、両手には二本の剣と一丁の銃を抱えていた。私はそのうちの一つを抜き取ろうと手を出す。すると青年が若干の抵抗を示した。ある意味で予想通りの反応に私は一息吐くと青年に向かって言った。

 

「ーーー彼が帰って来たら返すつもりだ。だから、一時的に私に貸してくれ…キリト君」

「……」

 

目の前にいる青年。キリトは薄い反応を示すと剣に込めていた力をスッと抜いた。私はキリトから流星のサーベルを借りると腰に差し、彼の膝の上に一枚の紙切れを残して天幕を後にする。外では大門が紫色に光だし、『FINAL LOAD TEST』訳せば『最終負荷実験』と言う単語が浮かび上がって天命が急激に減っていた。それを見た私は一言呟く。

 

「やれやれ、比嘉君も酷い事をするもんだ。いや、この場合は叔父や爺さんが関わっているのかな?…兎も角、向こうで頑張れよ」

 

そう呟くと男は何処かに消えてしまった。

 

 

 

 

 

東の大門が崩壊し、向こうから砂塵・・・ダークテリトリーの部隊が攻め込んできた。

 

「第一陣、第一部隊。総員構え!修道士隊、治癒術式の詠唱を開始!」

 

ファナティオさんの指示の元、衛士達が槍や盾を片手に姿勢を取る。この数ヶ月で鍛え上げられた衛士達は突撃してくるダークテリトリー軍に息を呑んだ。ゴブリンの小刻みな足音、オーガの間のある大きな足音。大槌を叩きつけるようなジャイアントの進む音。

今にも逃げ出してしまいたいほどの緊張が場を駆け抜ける。しかし、彼らが逃げないのはその先に立つ三人の整合騎士がいたからだった。

 

右翼には《熾焔弓》デュソルバート・シンセシス・セブン。

中央には第一陣を指揮する《天穿剣》ファナティオ・シンセシス・ツー。

左翼には《雙翼刃》レンリ・シンセシス・トゥエニセブン。

 

三人の整合騎士は逃げも隠れもせず、只ひたすらにダークテリトリー軍を待ち構えていた。彼らに守りたいと思える者は居ない。それらは全て最高司祭によって黄金の剣に変えられてしまったからだ。記憶を返され、それぞれの大切な人の記憶が戻った彼らの拠り所は記憶を返される所以の二人の青年にあった。自身の記憶を呼び戻し、最後に夢を見せてくれた二人にあった。

そんな三人は前を進んでくるダークテリトリー軍を見ていた。

 

「(そろそろか……)」

 

ファナティオそう感じると、奥の方から悲鳴に近い声が聞こえて来た。

 

『ナンダッ!?』

『ウワァァァァアアッ!!』

『ワナダッ!』

 

何かが突き刺さる音や壊れる音、ダークテリトリー軍の悲鳴が聞こえて来て罠が上手くいったのだと理解した。そこでファナティオは指示を出す。

 

「投石開始!上から降ってくる石に気をつけろ!」

 

そう叫ぶと後方にいた投石部隊が一斉に投石を開始した。放たれた石が前方のダークテリトリー軍に落下し、接近してくるゴブリン達は降って来た石によってズタズタにされた。その様子を見てある者はその流れる血に嫌悪感を抱き、またある者は倒されていくゴブリン達を見て戦意が高揚していた。

 

現実世界でも中世は槍や剣よりも投石が最も強い戦法だったと言われている。拳ほどの大きさの石でも投げれば甲冑を潰すほどの威力があったと言われており、現代でもデモなどが起こった際に機動隊が最も警戒するのがコンクリートやレンガなどを投げられる事だと言う*1。投石は投石具などを使えば簡単な訓練をするだけで強力な武器となり、筋力もそれほど要らないことから後方から安全に攻撃できると言うメリットがあった*2。戦国時代に兵士が陣笠を頭に被っていたのも降ってくる石を見えなくする為だと言われている。それほどまでに簡単に殺傷できる武器の為、投石部隊は徴兵した中でも比較的高齢な者達で構成されていた。

投石部隊は若い者には負けんと言わんばかりに投石をし、前線に石を送り続けた。しかし、物量で押してくるダークテリトリー軍に徐々に押され始め、遂に第一陣の前まで辿り着こうとしていた。

 

デュバルソードは《熾焔弓》を構え、詠唱を唱える。ファナティオは《天穿剣》を片手で強く握り、両足を大きく開いて目標を捉えた。目標は突き進んでくるジャイアント族。あの投石にも耐えうるその巨体は血を流しながら前進していた。ジャイアント族は味方ですら内心見下すほど誇り高き種族。よってその長を倒せば動揺も大きくなるだろうと予測していた。

 

「エンハンス・アーマメント!貫けーーー光よ!」

 

その瞬間、空気を切り裂く音がし、ソルスの力を圧縮した眩い熱戦が戦場を貫いた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

上空で戦況を見ていた僕は背中に何か冷たいものが走った気がした。これは嫌な事が起こる前兆だと言うことだと理解し、アリスの飛竜から前線全体を見回す。するとファナティオさんの目の前にジャイアントが突撃して、今にも殺す勢いだった。

すぐさま僕は飛竜から飛び降りてジャイアントを殺す準備をした。しかし…

 

「(間に合わない…!!)」

 

そう思い、少し苦手だが神聖術を唱えようとした時、ファナティオさんの前に一人が飛び出した。それは僕がカセドラルで対峙した四旋剣の一人、ダギアさんだった。彼女はジャイアントの鎚の攻撃を真正面から受け、持っていた剣が壊れ、身体中に骨折と内出血を起こした。

 

「ダギアッ!!」

「ファナティオ様、今の内に……」

 

そう言うダギアにまた鎚が振られる。ダギアはもうダメかと思った。最後に憧れでもあり主君でもある副騎士団長を守れた事に誇りを持っている。と思っていた。その時、

 

「はああぁぁぁぁぁ!!」ザシュッ!!

 

空から青い服に身を纏った青年が飛び降りでジャイアントの真上から直剣を刺した。そのジャイアントは鎚を落として少し後ろに下がった。その間に僕は重傷のダギアさんを見た。

 

「(思っているより酷い怪我だ…)早くダギアさんを後ろに!治療を受けさせてください!」

 

咄嗟の判断で人を呼ぶ。その間ファナティオさんは重傷のダギアさんに声をかけていた。

 

「ダギア!」

「ファナティオ様…ご無事の、ようで…」

「喋るな!すぐに治療を受けるからな!」

 

息があるようで安心していると前方からまた声がして来た。

 

「…ロス、コロス、コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスーーーーー!!!」

 

呪詛のように同じ事を言うジャイアントに、僕は思わず後退りしてしまう。これ程の圧を感じたのは初めてだった。するとジャイアントは僕を気にも止めずファナティオさん目掛けて突撃する。

 

「お前の、相手は…僕だ…!!」

 

そう言うと青薔薇の剣を持って僕はジャイアントの背中に打撃を入れて注意を引こうとする。しかし相手の固い体に阻まれ、致命傷を与えられなかった。

 

「(どうする、どうすれば…)」

 

そう考える僕は息を呑んで足を踏み込んだ。

 

「(やって見るか…)」

 

ユージオはジャイアントの後ろから足元、体で言うところの腱を狙った。そこを切られれば歩くことができないと昔ブレイドから教わった事がある。それを見様見真似でやってみる事にした。

 

「うおぉぉぉぉぉおおお!!!」ザッザッ!

 

足元の後ろから《ホリゾンタル》を使って両足の腱を切るとジャイアントは歩く速度が少し遅くなり顔をこちらに向けた。

 

「コノヤロウ、オレサマノジャマヲシヤガッテ……コロシテヤルゥ!!」

「やっとこっちを見たか、デカブツめ……」

 

そう言うと僕は剣を片手にジャイアントの攻撃を退けた。

 

「(ファナティオさん、今の内にっ!!)」

 

ユージオはジャイアントの後ろにいるファナティオさんに意思を届けた。

 

 

 

 

 

ユージオがジャイアントの攻撃を受け止めている。だが、体が動かなかった。いや、ダギアに大怪我を負わせてしまった事に罪を覚えてしまったのだろう。罪悪感からか、足が竦んでしまった。そんなダギアを救ったのは年端もいかぬ若者だ。情けないと思ってしまった。

しかし、なぜだろうか。ジャイアントの攻撃を防ぐユージオを見て奮い立つ自分もいた。

 

「(私は…部下を傷つけた…自分のせいだ…だからこそ……)」

 

どことなく心が洗われていく様な感覚になったファナティオは《天穿剣》を握って後ろを向くジャイアントに剣を振った。

 

「…地の底に帰れ」

 

そう言うと共にジャイアントの首元を斬った。首が宙に舞い、ジャイアント達の前に飛ぶ。首を刎ね飛ばされたジャイアントは血を流しながら倒れる。その光景に全員が静粛に包まれた。そんな中、ファナティオは光る剣を掲げながら叫んだ。

 

「第一中央部隊、前進しろ!!敵を押し戻せ!!」

*1
作者が機動隊員の人に聞いて知った。

*2
ヨボヨボ爺さんが投げても初速140km/hくらい出る




『創世日記』131ページより抜粋
ヴラッドはステイシア様からある少女を紹介された。少女はソルントゥムと言い、ステイシア様は周りからの当たりにも負けずに暮らしているヴラッドと共に暮らすよう提案なされた。
ヴラッドとソルントゥムは互いに意気投合し、人界のとある場所で暮らし始めた。ステイシア様もその様子をご覧になり、二人の生活を喜ばれていた。そして、二人はそのまま幸せに暮らすものかと思われていた。
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