ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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最近、『極東事変』と言う漫画にハマってる作者。
全然読んでいる人が居ないからここで布教させて貰います。本当に読んでて面白かった。
使っている武器とかもちゃんとしてたし、絵もちょっと好み。


#27 光の巫女

渓谷の東側の最奥。そこに居るのは皇帝ベクタの乗る豪華な馬車だった。その中にいる皇帝ベクタは戦況を聞いていた。

 

「どうやら向こうは投石をしているらしいな」

「ケッ、見てるだけってのもつまらねぇな」

 

そう、愚痴をこぼしていると暗黒術師ギルド総長のディー・アイ・エルにベクタは指示を飛ばす。

 

「《ミニオン》を出せ。コマンドは《七百メル飛行》、《地上に降下》、《無制限殲滅》だ」

「はっ」

 

そう言い残すとディーは馬車から降りて、ミニオンを飛ばすための準備を始めた。

 

 

 

 

 

その様子を眺める暗黒騎士団団長シャスター。彼は内心、愚かだと思っていた。ぬらりと光る皮膚に、異形の頭部。剣のように鋭い翼を持ち、ごつごつの盛り上がった無骨な筋肉を持つ怪物であるミニオン。シャスターや他の暗黒騎士もこの怪物を嫌っていた。

 

 

百害あって一利なし。

 

 

この怪物にぴったりな言葉だ。醜い体に、吐いた毒は土を汚し、敵味方ともに殺戮をする。まさに汚い爆弾(ダーティー・ボム)だ。そして、シャスターは確信していた。ベルクーリがそんな怪物の対策をしていない筈がないと…あの男は人界最強、自分よりも長い時を過ごして来たが故に経験も豊富。ぽっと出の怪物など一瞬で蹴散らされてしまうのは目に見えていた。だから自分は()()()部下達を前に出さなかった。

 

 

 

ディー・アイ・エルを殺せ。

 

 

 

それが()との取引だった。戦時中のリピアの安全確保の代わりに彼はディー・アイ・エルの抹殺を依頼して来たのだ。

帝城で準備をしている間にいきなり現れ。目元が見えず、見たことない格好をし、いかにも怪しい格好をしていたが、武器を何も持っていなかった事から取り敢えず話だけを聞き、利害が一致したからその依頼を受けていた。すると彼は自らを『調停者』と名乗り、己の望みを話し出した。

 

彼の望みはこの戦争の早期終結。そして、人界との融和だそうだ。荒唐無稽の様に聞こえる話だが、そんなのを真面目に考えているからこそ自分に話しかけて来たという。もし、そんな事が有れば其れは其れで素晴らしいと考えたこともあった。試しにそのプランを聴いてみると意外にも実現ができそうな内容で、興味が湧いた。彼の依頼を密かに受けると彼は去り際にこう言い残した。

 

『彼女は危険人物だ。アンダーワールドの秩序を乱す者だ。では、よろしく頼みますよ』

 

そう言うとその男は消えてしまった。あれ以来彼の姿を見たことはないが、何処となく()()()()()様な感覚がしてならなかった。

 

「(さて…どうしたものか……)」

 

シャスターは依頼をどう来なそうか考えを巡らせていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ーーー来たか」

 

ベルクーリは近づいてくる気配を感じた。投石部隊や罠、各部隊の奮戦のお陰で攻撃第一派は持ち堪えられそうだ。おまけに敵の指揮官を何人か倒したと言う報告も上がっている。結果としては上々だと思っていた。そこでベルクーリは常に空からの攻撃を警戒し、ついに現れた。これは暗黒騎士の乗る飛龍ではなく、もっと禍々しいもの・・・すると視界の先に八百体の『ミニオン』が迫って来ていた。其れを確認したベルクーリは落ち着いた様子で剣を持って構える。

 

「ーーーー斬ッッ!!」

 

振り下ろせば、前方の上空に無数の白い光条が立体的な格子を描いて瞬いた。続いて奇怪な断末魔の悲鳴が大合唱のように響き渡り、ミニオンのどす黒い血の雨が敵第一陣へと降り注ぐ。彼らは突如降り注いだそれがミニオンの血であると理解した。ミニオンの血には弱い毒性が含まれており、病を呼ぶと言われている。だからこそ、戦いの最中にあって無防備にその血を受けた事で、混乱が生じた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『くるるる…』

「大丈夫よ、心配しないで」

 

アリスは自分の飛竜である雨縁に囁く。その手は若干震えていた。無理もない、自分の与えられた役割である術式に使用する神聖力は眼下で起こっている戦闘で転がる無数の魔物の死体も含まれているからだ。味方や敵、双方の命が失われていく。其処で自分は実感した。感じる神聖力は全て皆平等に温かいのだ。それぞれの温もりを持っており、どちらの軍の者なのか判別は不可能だった。

 

我々はなぜ戦っているのだろうか。

 

こんなにも同じ神聖力を持ち、ただ生まれて来た場所が山脈の中か外かの違いなだけなのに、なぜ戦うのか。

 

『戦いに正義は存在しない。あるのは生か死か、その二択しか存在しない』

 

ユージオがブレイドに教わった言葉だそうだ。話された時は分からなかったが、今ならその理由がよく分かる。この温かみは自分がルーリッド村に戻ったあの時と同じだ。セルカに泣かれながら抱きつかれ、ユージオと三人で食事をした時なんかはさっきのことの様に思い出せる。其れと同じ温かみを、自分は感じていた。

 

「(こんな時、キリト達なら…)」

 

そんな疑問を浮かべていると雨縁が嬉しそうに声を上げた。

 

『ぐるるる!』

「?」

 

なんだろうと思っていると雨縁に青い服に身を纏ったユージオが飛び乗って来たのだ。

 

「きゃっ!!」

「おっと、ごめん。驚いちゃったかな…」

「あ、当たり前よ!!」

 

少し叱り声で言うとユージオはショボンとしていた。あぁ、いつも通りだと思うと私はユージオに聞いた。

 

「其れで、何でここに?」

「あ、あぁ…押されていた戦線は元に戻ったし、またここに戻って戦況を見ておこうって思って……」

 

そう言うと少し照れくさそうに頭を掻いてユージオは私の後ろに乗っかる。そんな彼に仕方ないと思ってしまうも、私はユージオに言う。

 

「じゃあ、私の神聖術。間近で見てよね」

「うん…頑張ってね」

 

そう言われ、少し気持ちが上がってしまったが。平常心を取り戻すと息を整えて術式を唱える。神聖力は十分、あとは発動するだけだ。ユージオがいる事で緊張しつつも、落ち着いて神聖術を発動する。

 

「咲け、花たち!エンハンス・アーマメント!!」

 

金木犀の剣の武装完全支配術を発動し、刀身が無数の小球に変化する。山吹色の群れを操りながら、私はその一言を言い放つ。

 

「…バースト・エレメント……!!」

 

その瞬間、銀球は無数の光素から光と熱を膨大に生み出し、渓谷内の視界を真白にする。その直後、夜空を赤く染める大きな爆炎が広がった。

 

この攻撃で、亜人部隊の九割、オーガの弩弓兵の七割、暗術部隊の三割が損耗する結果となった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

雨縁の上で、私はユージオを見ると。ユージオは『格好良かった』と言い、自分を褒めてくれた。その事に嬉しく思いながら地上に戻ると、其処ではファナティオさんが僕たちを待ってくれていた。

 

「……見事な心意でした。アリス」

「…はい」

 

聞けば相手の攻撃部隊は撤退を開始、残った主戦力は暗黒騎士団と拳闘士団らしく、現在は治癒士が治療などで大忙しだと言う。

すると、ファナティオさんが僕を見ると真剣な眼差しで言った。

 

「其れで…お疲れのところ悪いけど、団長と最高司祭代理がユージオを呼んでいたわ。其れも早急にと」

「わ、分かりました!」

 

そう言い、行こうとした所で僕は軽くアリスに腕を掴まれた。

 

「……何処にいくの?」

「ちょっとベクルーリさんやカーディナルさんに呼ばれたから行ってくるだけだよ」

「ふーん?」

 

やや怪しげに言うアリスは掴んでいた手を離すと僕を見送った。残ったアリスはファナティオにこう言われる、

 

「…初々しくて良いわね」

 

 

 

 

 

ベルクーリさんに呼ばれて司令所のある天幕に入ると其処では多くの指揮官を務めていた整合騎士達が集まっており、その中にはあのレンリも含まれていたが。全員が全員渋い顔をして机の上を見ていた。

 

「ユージオ剣士。只今参りました」

 

僕はこの戦いの前にもらった階級を言いながら天幕に入るとベルクーリさんが手招きをした。

 

「休憩もなしに済まない。幾分急用でな」

「いえ、僕は大丈夫です」

「まっ、無理すんなよ」

 

そう言うとベルクーリさんは机の上に置かれたある紙を見せながらことの事情を話し出した。

 

「先ほど、補給部隊からの連絡でキリト剣士の持っていたはずのサーベルが無くなった」

「えっ、其れって…」

 

大問題じゃないかと言おうとした所、ベルクーリさんが続けた。

 

「しかし、サーベルの代わりにキリト剣士の膝にこの紙が置かれていた。そしてここには『暗黒神現る』の文字が書かれていた」

 

そう言うと紙を返してベルクーリさんは僕に文字の書かれた紙を見せた。其処には確かにペンで書いた様子の文字が書かれており、その字体に僕は見覚えがあった。僕は思わずその字体を見て呟いてしまった。

 

「ブレイドのだ…」

 

そう言うとベルクーリさんはやはりと言った様子で紙を机の上に置いた。そして、推測を語り出した。

 

「あの赤の坊主と関わりの深かった青の坊主ですら、こいつを本人のものだと思った…と言うことはこれは本人が書いたと見てまず間違いないだろう…で、推測出来る事が二つ。

 

一つは赤の坊主が生きていて、何処かにいる事。

二つ目は皇帝ベクタが現れた事だ」

 

ベクタと言う言葉に天幕に入る全員が騒めく。そう、あのベクタである。創世記などに出てくる悪の化身で、空想の生き物と思われている人だ。

大体の指揮官はベクタが現れたと言う事実に驚きと驚愕していたが、僕や一部の人は違った。

 

「何で、ブレイドの手紙が今更…」

「そう、問題は其処じゃ」

「カーディナルさん……」

 

ユージオの疑問にカーディナルが寄って来て同じ様に疑問を感じていた。

 

「わしも、権限を使って捜索をしたが、彼の痕跡は見当たらなかった。お主、あれを書いたのがブレイドだと思うか?」

「はい、あの書き方はブレイドしか見たことないですから」

「はぁ、何処だ何をしているのかと思えば…とんでもないものを持って来よって…」

 

若干愚痴るように頭を抱えるカーディナルさん。其れは僕も思ったが、こう言う時は大体裏で何かしているので深く詮索しない方が良いのは過去の経験から知っていた。と言うか、其れの巻き添えを食らった事があるから身に染みて分かっていた。

そう思っていると不意に僕はベルクーリさんから甘酸っぱい匂いを感じた。

 

「(なんか甘酸っぱいな…)っ!もしかして…」

 

ユージオはその時ふとキリト達と遊びでやっていた事を思い出した。其れは自分たちがザッカリアに行く途中、焚き火を囲んでいた時の話だった。

 

『蜜柑汁を紙に塗って乾かした後に火で炙ると塗った部分に文字か浮かぶんだ。だから密書を送る時とかに使えるんだ』

 

実際やってもらって面白いと思っていた事だった。その時の記憶を思い出し、ユージオは紙を手に取ると聞いた。

 

「ベルクーリさん、この紙。借りて良いですか?」

「ああ、いいぞ」

 

そう言われ、少し離れた所にあった蝋燭の火で紙を少し炙ると小さな文字が真っ白な裏面に浮かび上がった。

 

 

 

『アリスを守れ』

 

 

 

この一言だけが書かれてあった。




『創世日記』134ページより
ヴラッドは歪な怪物となっていた。森の中で胸元に陣の様なものが浮かび上がり、息も絶え絶えにぐったりした様子で、血だらけだった。その反対側にはヴラッドの返り血を浴びた様子のステイシア様が泣きながらヴラッドの胸元に純白の剣を刺そうとしていた。

『すまぬ、今はこれしか出来ぬ』
『……』

そしてステイシア様は剣を思い切り刺した。胸元を貫かれ、血を流しすぎたヴラッドは最後にステイシア様を眺めると笑みを浮かべて死んで行った。
ここ数日、人界で起こっていた民の血が吸われる事件の発端はヴラッドだったのだ。彼は暗黒神ベクタの罠にハマり、呪われ、人ならざるものに造り替えられてしまったのだ。その事にステイシア様やソルントゥムは深い悲しみを負われてしまった。
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