ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#6 討伐

「(まさか本格的に討伐作戦が行われるなんてな……)」

 

赤い装備に身を包んだブレイドが洞窟近くの木の上で隠れて様子を見ていた。

事の発端は今年の年明けに起こったあるギルドが壊滅した事である。ギルドが壊滅するのはたまにある事だったが、今回はその壊滅させたのがプレイヤーによるものだと言う事だ。

 

『笑う棺桶』

 

彼等は殺人者集団である事を自称しているイカれた連中である。話を聞いた当時から彼らを追っているが、アルゴですらなかなか彼らの情報を完全に把握できていなかった。

だがこの前、ついにアルゴが『ラフコフ』に関する情報を掴んだと言う。

自分は一人でアルゴの指定した場所に向かった。

 

「ブレ坊一人なのカ?」

「ああ、後で自分から情報を渡すつもりだ」

「そうカ……ま、取り敢えずこれが情報だ。お代はいらない」

「良いのか?」

「何だか自分に飛び火して来そうだからナ。まだ死にたくないのサ」

 

そう言って渡された紙をブレイドは読んでいた。

 

「総人数三十四人。幹部はポンチョを着たリーダーの《PoH》、刺剣使いの《赤眼のザザ》、毒ナイフ使いの《ジョニー・ブラック》か……」

「奴らの拠点は四十二層の結晶の洞窟ダ。奴らは拠点を作るために二日、三日は動かナイ。狙うなら今ダナ」

「そうですか……この事は「もう伝えてアル」…」

 

アルゴから聞き、ブレイドは軽く頷いた。

 

「そうですか…じゃあ、そろそろ会議でもあるでしょうね」

 

そう言うとちょうどアスナから招集のメッセージが届いた。

 

「おっと、噂をすれば」

「気をつけろヨ。奴らは滅法強い」

「……臨むところだ」

 

そう言い残すとブレイドは席を立ち上がった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……以上で『ラフコフ』討伐会議を終えます。各自できる限りの準備をしておいてください」

 

アスナの号令で各々退散する中、ブレイドはキリトとアスナを捕まえていた。

 

「ちょっと、二人とも来てくれ」

「え?」

「どうした」

 

そして二人を人気のない場所に連れ込むとブレイドは二人に話した。

 

「私は今から結晶の洞窟に向かう」

「なっ!」

「…ブレイドさん。それはいくら何でも危険よ」

 

アスナが驚きながら真剣な眼差しで忠告をしていた。だが、ブレイドは意見を曲げなかった

 

「分かっている。だが、『ラフコフ』は手強い。特にリーダーのPoHは別格だ」

「お前……PoHに会ったことあるのか?」

「ある。それに……実際に戦った」

「「っ!」」

 

ブレイドからの衝撃の発言にキリト達は驚いていた。

 

「巧妙な手で逃げられた。他の幹部も……おそらく似たような実力だろう」

「だったら尚更…「アスナ、敵はどこにでもいると思え」っ!」

 

ブレイドはアスナの目だけを見続けると訳を話した。

 

「おそらく『ラフコフ』は攻略組の中にスパイを放っている……」

「……ブレイド、根拠は?」

 

キリトが恐る恐る聞くとブレイドはこう答えた。

 

「PoHは慎重な性格をしている。第一、自ら殺人者ギルドといういかれた組織を立ち上げている。そんな事をすればほぼ確実に懲罰対象になる事は分かりきっている。だから、自分達がいつ懲罰されるか把握する必要がある」

「……そこでスパイを放ったと?」

「そうだ、SAOの中で実力も高い攻略組が自分達を懲罰すると見込んでいるはずだ。だとすれば攻略組の中にスパイを送り込み、情報を共有させる」

 

ブレイドの言葉にアスナ達が唾を飲み込んで額から汗が流れた。

 

「そんな……」

「ブレイドの考えている事は恐ろしいな……」

 

アスナやキリトは驚愕すると、アスナがブレイドに聞いた。

 

「でも、どうするの?私、予定を決めちゃったよ……?」

「そこは問題ない。ラフコフは恐らく攻略組が懲罰するという事は自前の武器で戦ってくると予測するだろう。だったらいつもとは違う方法で戦えば良い」

 

そう言ってブレイドはストレージからあるアイテムを取り出した。

 

「これは……何だ?」

「『スプラッシュポーション』……精錬スキルで習得できる物だ。まあ、これは使い道がなくてほぼ死にステとなっているがな」

「……どんな物なの?」

 

少なくとも攻略組では見たことがない装備、アスナの疑問にブレイドは淡々と説明をした。

 

「このスプラッシュポーションは投げた先の広範囲でポーションの中身を空間上に広げる。ただし、投げるとポーションの中身の効果が普通に飲む時の半分以下になる」

「あぁ……成程、それは死にステになる訳だ」

 

キリトは納得をしていた。今ブレイドが持っているスプラッシュポーションよりも普通のポーションの方が効率が良いという事だ。スプラッシュポーション二個と通常のポーション一個が同じという事は通常のポーション一個を飲み干した方が効率がいいという事だ。

ポーションを一個作るのにも材料がかかる為こっちの方が効率がいいのは理解できた。

 

「それで、そのスプラッシュポーションをどうやって使うの?」

 

アスナはスプラッシュポーションを理解した上でブレイドに聞いた。

 

「これはあまり知られていない事だが……このポーションは効果を上乗せできる」

「上乗せ?」

「そうだ、簡単に言えば投げた分だけ、効果が倍増するという事だ」

「それ強くないか!?」

 

キリトが驚きながらブレイドに言うもブレイドは首を横に振った。

 

「いや、これを作るのに通常のポーションと同じ材料を必要とする。おまけにスプラッシュポーションは一人六個までしか持てない」

「所有制限があるのか……」

 

キリトが興味深そうにスプラッシュポーションを見ると、思い出したかのようにブレイドに言った。

 

「と言うかブレイド、お前精錬スキルなんてのやってたのかよ……」

「何か?」

「いやぁ…正直あれやるとは思わなくてな……」

 

そう言うとブレイドはスプラッシュポーションをしまった。キリトが苦笑するのもご尤もな話で、精錬スキルはポーションを製作することができるスキルなのだが、正直ポーションを作るよりも買った方が早い為、鍛える人が少ないのだ。

 

「ポーションを作るのは面白いからな。よく作って遊んでいたんだ。おまけにダンジョンで手に入れたものを使えばその分高く売れる」

「へぇ〜」

 

キリトが関心したように頷いているとブレイドはキリト達に聞いた。

 

「さて、ここからが本題だ。私の考えた作戦がある。協力してくれるか?」

 

((コクッ))

 

「分かった……では、作戦を話そう」

 

そうしてブレイドから語られた作戦にキリト達は納得して賛同をした。

 

「……これが考えた作戦だ。協力してくれるか?」

「ああ、協力する」

「私は何をすれば良いの?」

 

アスナも賛同したと認識するとブレイドは二人に頼み事をした。

 

「キリトは信頼できる仲間を数人探してくれ。もちろん、怪しい奴がいたら警戒。アスナは材料集めを頼む。ギルドの倉庫から適当に理由をつけて材料を持ってきてくれ。スプラッシュポーションはスキルを持っていなければ作れないからな」

 

そう言うと彼はフードを被る。

 

「ブレイドはどうするんだ?」

「私は今から偵察に行ってくる」

「大丈夫なのか?」

 

すると余裕げにブレイドは答える。

 

「行って戻ってくるだけだ。戻ってきたらスプラッシュポーションをできるだけ作る。二人とも、頼んだぞ。この事は他言無用で頼む」

「おう!」

「ええ」

 

そう言うとブレイドは目にも止まらぬ速さで街を駆け出した。

 

「しかし、ブレイドはよくあんな作戦を思いついたな……」

 

キリトはそんな事を呟きながらクラインや風林火山のメンバー、エギルに声をかけていた。

 

「(ブレイドさんはよく考えましたね……これなら犠牲者がなくて済みそうです)」

 

アスナもギルドの倉庫からスプラッシュポーションの作成に必要な材料を回収していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

街から飛び出し、結晶の洞窟近くの森に隠れているブレイドは偵察をしていた。

 

「(洞窟に特に異変はなし……か)」

 

偵察を初めて数時間、特に動きのない洞窟を確認していた。

 

「(そろそろキリト達が集めた頃だろう……戻るか)」

 

ブレイドは偵察を終えると足速に街に戻っていった。

街に戻るとアスナから材料を、キリトは協力してくれる人を教えてくれた。

 

「分かった。キリト、その協力してくれる人たちに計画は話したか?」

「ああ、承諾してくれたぞ」

「分かった。それじゃあ、スプラッシュポーションを作る。それを配ってきてくれ」

「ああ、任せろ」

 

そう言うとブレイドとキリトは作ったスプラッシュポーションをクライン達に配るために走り回っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

討伐当日、五十人ほど集まった討伐隊は結晶の洞窟の入り口で立ち止まった。

 

「全員ここで止まってください」

 

アスナの号令で討伐隊が洞窟の前で立ち止まった。

一体何事かと討伐隊が思っているとアスナを筆頭に風林火山のメンバー、エギル、ブレイドやキリトが前に歩き出すとアスナが号令を飛ばした。

 

「全員投擲!」

 

号令と共に洞窟内に麻痺毒の入ったスプラッシュポーションが投げ入れられ、洞窟内に麻痺毒が充満した。

計画にない行動で全員が困惑をしていると洞窟から何人かのプレイヤーが慌てた様子で飛び出してきた。

飛び出してきたプレイヤーは直ちに捕らえられ、牢獄に送られた。

 

「やはり、知られていたか……」

 

ブレイドはスプラッシュポーションを全て投げ切り、麻痺毒の霧が消えたのを確認すると討伐隊は本格的に洞窟内に突入した。

途中、麻痺で動けなくなっていたラフコフのメンバーを捕らえ、討伐隊の緊張は少しだけ解れていた。

しかし、洞窟の奥に入った時。結晶の裏からプレイヤーが飛び出してきた。

 

「かかれぇぇぇぇーーーー!!」

「「うおおぉぉぉおおお!!」」

「ラフコフが来たぞ!!」

「構えろ!」

 

初手のスプラッシュポーションでかなり麻痺をしていると思っていたが案外残っていた事にブレイドは歯噛みをするとパランジャを抜き取り応戦をした。

手始めに目の前に迫る殺人者の武器を破壊し、腕を切り落とし、投擲スキルで麻痺毒のついたピックを突き刺し、地面に叩きつけた。

さらに背後から切り掛かってきた殺人者をパランジャの一振りで両腕を切り取った。

 

「(この感覚……)」

 

ブレイドはパランジャを振り回しながら過去の感覚を思い出していた。

自分がまだアメリカに住んでいた頃、家に襲撃してきた強盗を持っていた薪割り用の斧で殺してしまった。その時の感覚に似ていた。

 

「(いかんな…このままでは……)」

 

ブレイドはパランジャを手に持ち、それを殺人者の腹に刺した。みるみる体力が減っていき、ついに相手はポリゴン片へと姿を変えた。

 

「(もう死ぬか生きるかだ……やるしかない)」

 

ブレイドは完全に混戦と化している戦場をパランジャと共に掛けていた。

 

 

 

 

 

それはまるで戦場をかける雷のようであった。

混戦となった戦場を真鍮色の剣とブレイドがラフコフのメンバーを的確に刺していた。

その目は無機質で、非情で、虚な灰色の目をしていた。

キリトは友人のその姿に畏怖の念を抱いていた。

 

 

 

 

 

それから数時間後、戦闘は終わった。結果はラフィンコフィンの壊滅。

拘束したのは二十名、残りの十四人は今回の戦闘で死亡した。

対して討伐隊の被害はゼロ、この結果になったのは十中八九ブレイドのおかげだろう。彼が戦場を駆け回り、彼らの注意を引いていたからだ。

戦闘が終わり、キリトはブレイドにお礼をしたいと思い彼を探したが、その日ブレイドを見つける事はできなかった。

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