ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#31 これからの方針

「…私はアスナ。創世神ステイシアの体を借りてこの世界に来た者です」

「「「「「…………」」」」」

 

天幕でアスナが自己紹介をする。天幕にはユージオを筆頭に、多数の整合騎士が集まり、アスナを見て驚愕の色を浮かべていた。

アスナは自分やキリト達はリアルワールドという世界の住人だと言った。前にカーディナルが言っていた《外の世界》と呼ばれる所だ。

アスナがこの世界に来たのはそのリアルワールドの一部の場所でこの世界。アンダーワールドの支配権をめぐった争いが起こっていると言う。

彼女と相対する敵の目的はアンダーワールドにいるある二人の人間を回収し、然る後に世界全てを破壊することらしい。

その事に衛士長達がざわつくもベルクーリが其れを制する。

 

「まぁ、外の世界の状況というのはどうでもいいな…俺たちだって、この間まで人界の外にあるダークテリトリーが、何万もの大軍勢が侵攻の時を手ぐすね引いて待っていた、なんて事実を真剣に考えてきた者なんかほとんどいなかったくらいだ。

重要なのは…アスナさん、この世界を破壊しようとしているその敵対勢力が欲しがっている人間というのは誰のことなんだ?」

 

そう問うとアスナはアリスとユージオを見つめた。その意味を理解し、アリス達は思わず自分の顔に指を差した。

 

「ぼ、僕…?」「わ、私…?」

 

これには天幕にいた全員が驚愕をしていた。ベルクーリだけが得心した様に呟く。

 

「なるほど…しかし、嬢ちゃんだけじゃなくユージオまでもが…」

 

ベルクーリは驚いた様子を浮かべているとアスナは言う。

 

「もうあまり時間は残っていません…アンダーワールドの消滅を防ぐにはこれしかないんです」

「ちょ、ちょっと待って下さい!?私に…この戦場から逃げ出せと言うのですか!?」

「そうです…私たちと共にリアルワールドへと来てほしいんです」

「…冗談じゃない」

 

話を聞いたアリスが激昂しながら叫ぶ様に言う。

 

「逃げる!?この私が!?この世界とそこに暮らす人々、守備軍の仲間を見捨てて、リアルワールドとやらに逃げろと!?私は人界を守護する整合騎士の一人!人界を守るのが最大にして唯一の使命です!!」

「なおのことだわ。もし敵が…暗黒界ではなく、リアルワールドから来る強奪者たちだとすれば、この世界に住む人々も、大地も、空も…何もかもが消滅させられてしまうのよ!」

「おっと、その点に関しては情報が古いな。アスナさん」

 

そこでベルクーリさんが声をはさんだ。

 

「どうやら、もう来てるぜ。おまえさんの敵とやらは」

「えっ…」

「これで合点がいったってもんだ…光の巫女…そして、それを求める暗黒神ベクタの再臨…お前さんらが言うことが事実なら、ダークテリトリーを指揮している総大将ベクタ神は…間違いなくお前さんらと同じ、リアルワールドから来た人間なんだろうな」

 

アスナはそこでダークテリトリー側のアカウントのロックを忘れていた事を知った。すると静粛を縫うようにレンリが聞いた。

 

「あの、光の巫女って具体的には何なんですか?その、リアルワールドの強奪者たちは、一体どおしてアリス殿達を欲しがっているんです?」

 

その問いに答えたのは先ほど拳闘士と戦い、撤収してきたシェータだった。

 

「右目の封印を破ったから」

「シェータ殿、知っていたのですか!?」

「時折…あることを考えると、右目が痛くなる世界で一番固い物…破壊不能なセントラル・カセドラルを……丸ごと斬り倒したら、楽しいだろうな…って」

「「「「……」」」」」

 

彼女から飛び出したとんでもない暴露に全員が何も言えなくなってしまった。

 

「あー、まぁ。この場にいる者の中には、他にも覚えがある者もいるんじゃねえか?

例えば、禁忌目録を破ろうとしたり、理から外れたことをしようとした場合。赤き光と共に右目に痛みが走ったことがな…そのまま不敬な思考を続ければ、痛みはますます激しくなり。遂には思考を放棄せざるを得なくなっちまう…それでも、思考を保ち続けた場合…」

「右目の赤き光が視界一杯にまで広がり、右目そのもの跡形もなく吹き飛ばす」

 

アリスがありありとその時のことを思い出す。其れはユージオにとっても同じことだった。

 

「私は、最高司祭アドミニストレータへと剣を向けました。その時、一時的に右目を失っていました」

「僕も、ティーゼたちを助けるために禁忌目録を破る必要があって、その時に右目が吹き飛びました」

 

そう言うと全員に沈黙が走った。するとユージオが思い出す様に言った。

 

「こーどはちなないち…」

「え?」

 

そこで徐にアリスの溢した言葉にユージオはハッとなる。

 

「そうだ!こーどはちなないち!カセドラルの頂上でアドミニストレータと戦っていた時、ブレイドが聞いてたやつ!」

「っ!!そういえばブレイドが其れを聞いて、アドミニストレータは笑っていたわ……」

「と言うことは…まさか……っ!!」

 

ラースの中に敵がいるのか?と顔が青ざめてしまった。すると、天幕の入り口の方から声がした。

 

「ーーその心配はない」

「「「「「「っ!」」」」」」

 

全員が天幕入り口に立つ一人の赤いフードを被った男を見た。アスナも同じようにその男を見ると男は言う。

 

「このアンダーワールドのフラクトライト全員にコード871を仕込んだ犯人は今頃お縄になっているだろう」

 

そう言うとアスナは男をじっと見つめるとはぁ、と息を吐いた。

 

「……そんなに詳しいと言うことは…()()でいいのね?」

「そこは君の判断に任せる」

「その言い方は間違いないわね…

 

 

 

ブレイド」

 

アスナがそう言うと赤フードの男は被っていたフードをとると顔を見せた。顔を見たユージオ、アリスは目を大きく見開いて驚愕していた。

 

「どうして此処に…!?」

「そんな…まさか…」

「何だ、二人してそんな幽霊を見るような目をして」

 

フードをとったブレイドはやや不満げにユージオ達を見ていた。そんな中、ブレイドはユージオ達やアスナに向かって言った。

 

「まぁ、色々と聞きたい事があるかもしれないが。其れは後だ。我々に必要なのは迅速な行動。敵がベクタを使っているのなら、できるだけ早く移動した方が良い。だが…」

 

そう言うとブレイドは持っていた紙を指す。

 

「此処と此処、それからこの場所に敵が配置されている。そして、ワールド・エンド・オールターの場所は此処だ…」

「遠いわね…」

 

敵が待ち構えている配置図にそこまでの偵察を行った事実と、すでに潜入していた事実にベルクーリ達はやや唖然となる。

 

「そう、此処からワールド・エンド・オールターまでおよそ一〇〇キロ。此処から連れて行くにも時間ががかる上に、敵がスーパーアカウントを使って襲撃してくる可能性もある」

「…」

 

ブレイドの予想にどうしたものかと考える。するとブレイドが口を開いた。

 

「それに…ダークテリトリーの一部の兵士が戦線離脱を図ろうとしているしな」

「「「「え?」」」」

 

ブレイドの言葉にユージオ達は驚く。するとベルクーリがブレイドを見ながら言った。

 

「なるほど…シャスターの話を持って来たのもお前さんと言うことか」

「えぇ」

「ちょ、ちょっと待って下さい!それって…」

 

アリスがそう言い、ベルクーリを見ると彼はその事情を話した。

 

「あぁ、俺たちが出る前に手紙が届いたんだ。『暗黒騎士団が逃げたら保護してくれ』ってな」

「なっ…!!」

「そんな事が……」

 

ユージオとアリスはそう言い驚くと思わずブレイドを見た。するとブレイドは言い訳のようにも聞こえるがこれまでしていた事を話し出した。

 

「この半年、自分はダークテリトリーの()()()に接触され、色々とダークテリトリーに関する情報を集めて来た。敵も一枚岩じゃない。その上、戦争をしたくないと言うものも中に入ることがわかった。それで、和平の準備を進めようとした所で……」

「ベクタが現れたと……」

「そうだ、あの男がいる限り()()()()()()()は終わらない。だから、和平をするにはベクタを真っ先に倒す必要がある。敵の中で最も脅威なのが奴だ。その為には……」

 

そう言うとブレイドはアスナを見た。

 

「アスナ君。君の力が必要になる」

 

そう言われ、アスナは少し間を置くと答える。

 

「……分かった。私も戦うわ」

「よろしく頼むよ」

 

そう言い、アスナが戦いに加わることに驚きと喜びの声が混ざり合っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

天幕を出たアスナとブレイドはそれぞれ事情を聞き合っていた。

 

「…なるほど、オーシャン・タートルは襲撃を受けたのか……」

 

事情を知り、深刻そうな表情を浮かべるブレイドにアスナは聞いた。

 

「ねぇ…ブレイドは知っていたの?こんな事になるなんて……」

「…いや、自分もキリト君から言われるまで知らなかった……帰ったらあのエセ官僚の眼鏡を叩き割りたい気分だ」

 

それだけでブレイドは表には出さないが随分と怒気を持っているのがわかる。それだけでアスナにとっては十分だった。

 

「しかし、セルフ・イメージの欠損か……」

 

深刻だなと言い、ブレイドはキリトの乗る馬車を見る。STLを作ったと言う事もあり、ブレイドはキリトの今の状況を詳しく理解した様だった。だからこそアスナはブレイドに縋る気持ちで聞いた。

 

「ブレイド…キリト君は…治るの……?」

 

そう問いかけるとブレイドは答える。

 

「治せる方法があるとすれば、キリト君に深く関わっている人物の記憶が必要だ。記憶のデータを使えば、彼の精神的覚醒が出来るかもしれないな……」

 

「っ!じゃあ!!」

「……ただし、それも大勢のな。最低でも四、五人は必要だろう…下手をすれば十人以上いるかもしれない」

「…」

 

ブレイドの予想にアスナは黙り込んでしまう。キリトと深く関わっている人なんて此処では数が少ない。現実世界に行けば何とかなるかも知れないが、現状では無理だった。

そう思っているとブレイドはある話題を切り出した。

 

「しかし…向こうさんもユージオ達を狙っているとは…全く……」

 

そうブツブツと言うブレイドはアスナに話し始める。

 

「アスナ君…君はユージオ君達が敵の手に渡った場合の事を考えた事はあるか?」

「え……?」

 

不意に問われ、答えが詰まってしまうアスナ。考えた事もなかった。今まで色々と忙しくて、そんな余裕すらなかったからだ。アスナは予想を考えているとブレイドが答えた。

 

「もし、ユージオ達が敵の手に渡った場合……おそらく世界大戦が起こる」

「え?」

 

突拍子もない話にアスナは素っ頓狂な顔を浮かべてしまう。しかしブレイドは至って真面目に言う。

 

「考えても見てくれ。この世界では人であるユージオ達は向こうの世界ではただのデータ上の存在でしかない。そこに人権なんてあったもんじゃない。おそらくはデータが複製され、戦闘機や戦車のコンピュータにダウンロードされるだろうな」

「そんな……」

「人間とはそんなものだ。自分たちの作ったものだから使う権利は自分たちにある。言ってしまえばアメリカの奴隷と同じ考え方さ。全く、歴史は繰り返すと言った所かな……」

 

そう言うとブレイドはアスナを見ながら言う。

 

「もし戦争が起これば自分の身を守ることだけで一杯になる。

そうなればキリト君を助ける云々以前の問題となってしまうだろう。だからユージオ達をログアウトさせる事はキリト君を守る事。引いては戦争勃発を防ぐ事にもなるんだ」

 

そう言うブレイドの目はいつに無く鋭利なものだった。

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