ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#33 混戦の混乱

「渋いな…」

 

エギルはそう呟く。今、自分たちはいるのは首都アルンの大広場。そこでリズベットは大勢の人にアンダーワールドの話。そこに一緒に出向いて欲しいと話した。

ただ、複数のプレイヤーがある論文を見て懐疑的な目を向けていた。

 

「まさかあんな論文がこんなに早く広まっていたなんて…」

 

それはあのアスクレーの出したペインアブソーバーに関する論文だった。そこに書かれていた内容に広間に集まったプレイヤー達はそこは本当に安全なのかと心配の声を上げていたのだ。いくらアバターがあるとはいえ現実と同じ痛みを感じるのであれば嫌がるのは当然と言った所だろう。

 

「やっぱり駄目なのかなぁ……」

「仕方ないか……」

「すぐに飲み込める訳でもねぇだろうしな」

 

そう言い、三人は渋い顔を浮かべていると広場に集まった一人のプレイヤーが悲鳴を上げる様に叫んだ。

 

「ヤ、ヤベェッ!!」

「「「「「?」」」」」

 

全員がそのプレイヤーに目を向けるとネットの画面を見せながら叫んだ。

 

「じっ、GGOの奴らが先に『出兵』とかほざいて先に行きやがったぞ!!」

「「「「「「何ぃっ!!」」」」」

「嘘じゃないだろうな??」

「だったらこれ見ろよ!!」

 

そう言って見せたのは大量の兵士が銃を掲げ、『不正アクセスを許すな!!日本の意地を見せつけろ!!』のスローガンを掲げた写真だった。それを見たプレイヤーの多くはゲーマー特有の対抗心に火がついた。

 

「ぬぉぉぉおお!!エセ兵士に遅れをとるなぁ!!」

「俺たちも行くぞぉぉぉおお!!」

「向かった先はファンタジーの世界なんだったか?」

「何っ!?ファンタジー世界に銃を入れるな!!ファンタジーを守るんだ!!」

「何処だぁ、俺たちぁ何処に行けばいい!?」

 

興奮するプレイヤー達。それを見たリズベット達は一瞬呆然とするも、我に帰ると元気よく叫んだ。

 

「皆んなでファンタジーを守るわよ!!」

『『『『うおぉぉぉぉぉぉおおおおお!!』』』』

 

バカを全力で楽しむ、実に日本人らしい光景があった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

あれは何だ。

 

拳闘士団長イスカーンは呆気にとられた表情で東を見ていた。現れたのは深紅の雨。その先には暗赤色の鎧に身を固め、長剣や戦斧、長槍で武装した兵士たちだった。

初めはベクタが増援を送ったのかと思った。しかし、それは違う様だった。

 

彼らは命令もなしに徐に武器を構え、此方によって来る。その時、イスカーンはベクタに憤りを覚えた。

 

ーーあんなに増援が来るならもっと早く欲しかった。

ーーもっと早ければ仲間がむざむざ死ぬ様な事はなかった。それじゃあまるで自分達が囮の様じゃ…

 

その時、イスカーンは思った。皇帝は自らの軍団に倒させるために自分達にあんな無茶な命令をしたのかと。

だったら、今までの行動が辻褄に合う。皇帝はジャイアントやゴブリンが死んでも眉一つ変えなかった。

つまり、皇帝ベクタにとって自分たちは最初から捨石だったのか。イスカーンはそこで矛盾を見た。皇帝ベクタは絶対的な強者。だから従わなければならない。

 

しかしーーー

 

そう思った時、右眼にかつてないほど強い痛みが走る。思わず手のひらで右目を覆うと深紅の軍勢にシャスターが叫んだ。

 

「剣を抜け!向かってくる暗黒騎士を迎え撃て!!あれは仲間じゃない!!」

「っ!?」

 

シャスターの指示に動揺した彼の部下達だったが、彼らはシャスターのいつに無く焦った様子にただ事じゃないと確信し、武器を持った。そして、接近してくる暗黒騎士は同じ見た目をした暗黒騎士目掛けて武器を振るった。

 

「何っ!?」

 

仲間じゃないのか!?イスカーンは驚愕した。同じ騎士のはずなのに、殺し合っている。その事にイスカーンは動揺していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「Charge ahead‼︎」

「Give’n hell‼︎」

「(英語!?)」

 

アスナは暗黒騎士から聞こえる言葉を聞き、驚愕する。彼らは英語を喋り、無作為に武器を振る。困惑する整合騎士達。そんな中、アスナは持っていたレイピアを持って唱える。

 

「システム・コール!クリエイト・フィールド・オブジェクト!」

 

アスナがそう唱えるとレイピアが七色に光る。昨日の様に谷を作るわけにはいかない。だったら・・・

 

アスナは槍の様に鋭い岩をイメージする。エフェクトサウンドが聞こえるとアメリカ人と暗黒騎士の間の地面が動き、アメリカ人が吹き飛ばされる。大量の血肉を撒き散らし、アメリカ人は消える。

しかすアスナはそんなことを気にしていられなかった。ゴリゴリとフラクトライトが削れる生々しい感覚。

 

だが、倒れるわけにはいかない。

 

そう思い、術を続けようとした時。

 

「無茶しないで」

 

ユージオが自分の右手を押さえた。

 

「そうよ、あとは私たちに任せて」

 

アリスもそう言い、アスナを見た。

 

「でも…あの赤い兵士たちは…きっとリアルワールドの…私の世界からやってきた敵…話が通じるかどうか」

「…だとして闇雲に血を求め、剣を振るやつなんか……」

「何万人いようと我達の敵じゃない」

 

そう言うとベルクーリさんが言った。

 

「ああ、そうだ。少しは俺たちにも出番をくれよ」

「皆さん……ありがとう」

 

そう言うとベルクーリは指示を飛ばす。

 

「よーし……全軍、密集陣形を取れ!一点突破するぞ!!」

 

 

 

 

 

「Damn‼︎」

 

アスナは斬っていた。ログインして来た無数の命を無作為に殺すための化け物を《バーサクヒーラー》の名を遺憾なく発揮していた。今までに十人は殺しただろう。だが、

 

「(数が多すぎる…)」

 

相手の物量に押しつぶされそうだった。剣で切られると痛みを感じ、思わず倒れてしまった。

 

「っ…あ…ッ!!」

 

思わず剣を落としてしまい、その周りをアメリカ人が囲んだ。

その時、突然アメリカ人の頭が吹き飛び、体も粉々に砕ける。

 

「へっ…柔な連中だ」

 

そう言い、アスナの前に立ったのはあさ黒い肌を持つ逞しい青年だった。

それはさっきまで剣を交えていた拳闘士だった。するとその拳闘士はアスナを見ると言った。

 

「…取引だ」

「…取引?」

「そうだ、あの岩山や谷を作ったのはお前だろ?あの地割れに橋をかけろ。そしたら反対の四千人の仲間が駆けつける。この赤い鎧の軍団を潰すまで共闘すんだよ」

 

そんなことが出来るのかと思ったが、アスナは彼の右目が閉じている事に気づき、それが証拠だと確信した。だからこそ、

 

「分かりました。橋をかけます」

 

そう言い、谷の上を地形操作で真ん中に頑丈な橋をかけた。すると橋の奥から大きな音と共に拳闘士が作りかけの橋を渡って飛んできていた。

 

「お前ら!変なこと言ってる騎士だけを倒せ!いいな!!」

 

そう言うと拳闘士は得意の拳でアメリカ人を倒して行った。

 

 

 

 

 

ほぼ同時刻、アリスはかつてないほど敵を斬っていた。ならず者の集まりの彼らは本当にリアルワールドの人間なら。

 

向こうの神の国ではないのだろう。

もうこんなのは戦争ではない。

 

「どけぇぇぇぇ!!」

 

そう言い。剣を振り、神聖術を放つ。その時だった。

 

「危ない!!」

 

ユージオの叫びと共に一匹の黒い飛龍がアリスを足で掴み、持ち上げた。咄嗟にアリスは武装完全支配術を使おうとしたが、視界が真っ暗になり、アリスの意識を奪った。

 

「アリス!アリスーーー!!」

 

ユージオはその時、かつて連れ去られてしまった時のことを思い出してしまった。そのせいで連れていかれるアリスを見てユージオは感情的になり、視界が狭まった。ユージオは飛竜に乗り込むとアリスを追いかけた。

 

「ユージオ!?無謀だ!!」

「あぁ、クソッ!」

 

ベルクーリの静止も聞かずにユージオは行手を阻む騎士を切り倒す。ベルクーリも追いかけたいが前の騎士が邪魔だと思った時。

 

「リリース・リコレクション!」

 

記憶開放術により翼を得た双刃がプレイヤーたちを容易く斬り裂き騎士の足元を切り裂いた。

 

「行って下さい、団長!」

「すまん、レンリ」

 

そう言い、ベルクーリは掛け出す。それを見たシャスターはリピアを見る。

 

「リピア、仲間を引き連れて南に行け」

「はっ!閣下は?」

「俺は光の巫女を追う」

 

そう言うとシャスターは己の飛竜に乗ると飛び立っていった。指揮を任されたリピアは残っている暗黒騎士全員に指示を出し、後退を命令した。

 

 

 

 

 

ダークテリトリー軍と共闘中のアスナは無数の騎士を制しているイスカーンに聞かれた。

 

「…このまま南に抜けたとして、その後はどうするんだ?あんだけの数、いくら俺たちでも殲滅は難しいぜ」

「……敵陣を南に抜け、そのまま一気前進。敵から距離を取ってください。私がもう一度渓谷を作って隔離します」

 

そう言い、移動しようとした時だった。怪我をした衛士が報告をした。

 

「整合騎士レンリ様よりであります!アリス様が敵総大将に連れ去られ、南に逃げたと!!」

「なっ……」

 

アスナは絶句した恐れていた事態が起ころうとしていたからだ。不意にブレイドの話した言葉が脳裏に浮かぶ。

 

「現在、整合騎士団長閣下とユージオ、暗黒将軍が追いかけているとのことであります」

「暗黒将軍…!?」

 

イスカーンが若干の驚きの後、納得した様子を浮かべた。そして気になることがあり、アスナに聞いた。

 

「おい!光の巫女っていうのは、その連れ去られた騎士アリスのことなのか!?皇帝はどうしてそこまで…俺たち暗黒族を犠牲にしてまで、その光の巫女とやらに執着するんだ!?巫女が皇帝の手に落ちたら、一体何が起こんだよ!?」

「…もしそうなったら…この世界が滅びます」

「っ!?」

「暗黒神ベクタが光の巫女アリスを手に入れて、果ての祭壇に到った時、この世界は人界、ダークテリトリー関係なく、無に還るんです」

 

衝撃的な話にイスカーンは今までに亡くなった仲間を思い出していた。ベクタが自分たちを駒のように見ていたのも自分たちは消えることを知ったからだ。

だからこそ、彼は理解できたそして思った。自分たちがすべきことは何なのかを……

 

「飛竜も永遠には飛べない…連続飛行は、半日が限界……」

 

シェータはそう言うとイスカーンと拳を合わせる。

 

「なら、あんたが気合で追っかけるしかねぇな」

「追っかけるって…貴方はダークテリトリー側の人でしょ?どうして、そこまでこっちのことを……」

「もう皇帝には義理はねぇし、あっちが俺たち見限ったっていうのなら、こっちだって奴を見限るだけの話さ。皇帝ベクタは、俺たち暗黒十侯の前で確かに言ったんだ。

自分の望みは、光の巫女だけだってな…巫女を搔っ攫った時点で皇帝の目的は達せられたってことだろう?

つまり、後は俺たちが何をしようが、どうしようと…例え、巫女を取り戻そうとしている人界軍に加勢しようが、こっちの自由…そうだろうが!」

「っ!?」

 

そう告げたイスカーンの雰囲気に怒気が混じり始めた。その悔しさを込めるかの如く、彼は拳を力強く握った。

 

「俺は…俺たちは、皇帝に直接逆らえねぇ。

どんなにクソッたれな命令をされても、それに従うことしかできねぇ…あんたらと再び闘えと言われたら、闘うしかなくなる…だから、俺たち拳闘士部隊は、ここであの赤鎧どもの侵攻を防ぐ!あんたらと人界軍は皇帝を追っかけてくれ…そんで、皇帝を…あのくそったれ野郎を……野郎に教えてやってくれ!

 

 

 

俺たちは…てめぇの人形じゃねぇてな!!」

 

 

 

大声でそう言うとイスカーン達拳闘士は拳を合わせて構え、指示を出した。

 

「よぉーし、お前らぁ!!その突破口をなんともしても保持しろぉぉ!……ふぅ…あんたたちは、あの隙間から脱出しろ。流石の俺たちでも、そう長くは持たねぇ」

「…ありがとう」

「私も、ここに残る……」

「分かりました……殿をお願いします」

 

そう言うとアスナは馬の手綱を握り走らせた。

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