あと、UAが四万超えました!読んでくださってありがとうございます!
「……本当に残って良かったのかよ、女」
「名前、さっきも言った…三度目」
人界軍が去り、残された拳闘士部隊…アメリカ人たちが包囲する中、部隊の戦闘に立つイスカーンとシェータがそんな会話を交わしていた。
何度も名前を呼ばないイスカーンに、無表情のまま注意するシェータ…その反応にやれやれといった様子で、イスカーンは言い直した。
「あぁ……いいのか、シェータ?生きて戻れるかどうかなんて分かんねぇぞ?」
「貴方を斬るのは私…あんな奴等にはあげない」
「へっ、言ってろ」
運命とは奇妙なものだ。本来的であるはずの整合騎士と赤の軍隊相手に戦うのだから。だが、そこに不満はなかった。
ーーこんな死に方も良いな。
そう思うとイスカーンは叫んだ。
「よーし!てめぇら、気合入れろ!!円陣を組め!全周囲を防御!寄ってくるアホどもを、片っ端からぶちのめしてやれぇぇぇ!!!」
馬を借りたアスナは窪地を走る。回している時間も惜しく、アスナは手綱を操り馬を窪地に飛び込ませる。それに続き、人界軍も従軍し、先を急ごうとした時。
「っ!?前方から敵!!増援が…!!」
空から降り注いだ赤い雨は再び鎧を形成し、周りを完全に囲まれてしまった。このままでは一網打尽にされてしまうと思った時。上空を飛んでいたレンリが敵陣に向かって突っ込んでいた。
「行けない!レンリ様は捨て身の攻撃を!!」
行けない。それはダメ!!そう思った時だった。まるで宇宙まで届く蒼穹の如く、彼方から白く輝く星が降った。
「あれは……」
降りてくる人物は身の丈ほどある大きな弓を持ち、右手を握ると煌めく矢を出した。
誰もが足を止め、空を見た。そして空に浮かぶ人は弓を弾き、矢を放つ。光矢は空中で消えたかと思うと次の瞬間、弧を描いて着弾する。
「連射できない!?……上等よ、その方がしっくりくるわ」
そう言いながらその少女は群青色のブーツで地面に降り立つ。
「お待たせ、アスナ」
そう言うとアスナはシノンに抱きついた。
「ーーーーシノのん!!」
そう言ってアスナは抱きつくとアスナの背中を摩った。
「ごめんなさい。ログインに遅れたみたいで…」
「ううん…むしろ丁度良かった……」
そう言うと詩乃はアスナに聞いた。
「アスナ、ブレイドはどこにいるか分かる?」
「あっ…ごめんシノのん。居たことは居たんだけど……」
そう言うとアスナはブレイドは先に偵察をすると言っていなくなってしまった事を伝えるとシノンは半ば呆れたようにため息を吐いた。
「はぁ…何してんのよ、ブレイドは……」
「ご、ごめんシノのん」
「別に、アスナのせいじゃないわ。私を置いてどっかに行ったブレイドが悪いんだから…見つけた時はたっぷり叱ってやるんだから……」
「アハハ…」
そう言い、少し場が和やかになるとシノンが言った。
「あっ、そうだ。キリトは……どうだった?」
「……こっちに来て」
そう言うとアスナはシノンを案内した。今のキリトがどうなっているのか直接見たいと言うのと、何となくキリトに合うべきだと直感が語っていた。そして荷馬車に向かうとその中の一つにキリトは座っていた。シノンはその痛々しい見た目に心を痛めつつも、持っている武器を見て少し驚いた様子を見せた。
「これは…小銃!?」
「うん…ブレイドが作ったって言ってたよ」
そう言われ、シノンは徐にキリトの持っていた銃を触る。そして、キリトを顔を見て話しかけた。
「キリト…必ず…必ずブレイドに私渡しに行くから……少しの間、借りさせて」
そう言うとキリトは今まで手放さなかった銃にこめていた力を抜く。そしてシノンは銃を受け取ると。
「……ありがとう」
そう言い、シノンは横にあった箱に乱雑に入っていた空薬莢を手に取ると一発ずつ弾倉に装填した。そんな中、シノンはブレイドの作った小銃を見ると思った。
「(Gew98を作るなんて、いかにもブレイドらしいわね……)」
どんな世界に行っても物を作る気持ちは変わらないのかと思いながらシノンは五発の薬莢を入れ、最後に六発目の薬莢を抑え、ボルトを押し込んで無理矢理薬室に入れた。
馬車を後にしたシノンは小銃を担いでアスナに提案をした。
「ここから南の方向に遺跡っぽい所があったわ。まずはそこまで移動しましょう」
「うん、そうだね」
「じゃあ、先に遺跡まで飛んで地形を確認してくるわ。だから……」
そう言おうとした時、アスナがシノンの肩を掴んで聞き返した。
「ちょっと待って、シノン……今、飛ぶって言った!?」
「えっ…うん、そう言ったけど……」
困惑しつつもシノンはそう答えるとアスナはシノンにあるお願いをした。
「それって…空を自由自在に飛べるってことなの……?」
「…うん。ソルスアカウントの固有アカウント能力らしいわ。聞いた話だと、制限時間とかもないって……」
そう言うとすかさずアスナは言った。
「シノン、お願い!ベルクーリさんを助けて!!」
そう言うとアスナは詳しい話をし、シノンにアリス追跡を依頼したのだった。
「ーー分かったわ。それまで頑張って。アスナ」
「うん、シノノンも気を付けて」
そう言うと太陽神ソルスの能力『無制限飛行』を発動させたシノンは、すぐさまアリス救出へと飛び立った。
ほぼ同じ頃、生々しく激戦の跡が残る東の大門跡。そこでは一人の亜人がたたずみ、懸命に土を掘っていた。
彼はオークの族長リルピリンである。
彼は必死に土を掘るとついに目的のものであった銀入りの指輪を見つけた。それは皇帝ベクタの命令で死詛蟲の生贄となった姫騎士レンジュの遺品であった。しかし、それ以外は全てあの忌々しい死詛蟲によって全て神聖力に変えられてしまった。
なぜオーク三千人は生贄となったのか。その理由はただ一つ。
人族より醜かったからだ。
ただそれだけの理由で仲間達は生贄となってしまった。その事実に嗚咽が漏れそうになった。
その時、後ろでズドンと大きな音を立てて何かが落ちて来た。
「痛ぁ…」
そう言いながら少女は後頭部を摩りながら辺りを見た。そしてそこでリルピリンを見た。
「えっと……あなたは…」
「っ…!?見るなぁ!おでを…おでを見るなぁ!?」
「えっ…」
慌てて顔を隠したリルピリンに少女はキョトンとした表情を見せた。しかし彼女はリルピリンを見て話しかけた。
「あの…こんにちは?それともおはよう、かな?」
そう話しかける少女にリルピリンは疑問を口にする。
「…なぜだ…なぜおでを見て逃げない…?なぜ悲鳴を上げない…?お前は人族なんだろう!人族のくせに…なんで…!」
「なぜって…だって、あなた人間でしょ?」
当然のように答えた少女の言葉にリルピリンは目を見開く。
「なぁ…!お、おでが…人間だと…!何を馬鹿なことを言っているんだ!この顔を見れば、分かるだろうがぁ!?おではオークだ!お前らイウムが人豚だと罵るオークだ!?」
「…でも、人間だよね?だって、こうして私たち、話ができてるじゃない…それ以外に何が必要なの?」
「何って……」
そこでリルピリンは思う。人とは何だ。言葉ならゴブリンや、ジャイアント、オーガだって操る。しかしそれらは生まれた時から亜人として人と区別されてきたのだ。息が荒くなりつつ、立ち尽くすリルピリンに少女は再び辺りを見回すと聞いた。
「…ここはどこ?と言うか、貴方の名前は?」
「お…おではリルピリン」
「リルピリン、素敵な名前ね。あ、私はリーファよろしく」
そう言うとリーファはリルピリンに手を出す。その事にリルピリンは何度目かの驚愕をする。何かの罠なのかと思ってしまうほどに。
「お前…人界軍の騎士だな?なら、お前を捕虜にする!皇帝のところに連れて行く!」
「…皇帝って言うのは、暗黒神ベクタのことよね?」
「…そ、そうだ」
そこでリーファは一考する。このままいけば皇帝ベクタに会えるかもしれない。だったら下手なことはしない方がいいだろう。
「…分かった。なら、捕虜としてでいいから、私を連れて行って」
この女は何を考えているのだろうか。そう思いつつ自分は少女に縄を巻こうとした。その時だった。真っ暗な霧の中から一本の腕がリーファの髪を無造作に掴んでいた。
「匂う…匂うわ!…なんて甘い、天命の香り!!」
ディー・アイ・エルはアリスの攻撃で瀕死だった状態の時、運良くリーファを見つけたのだった。
「素晴らしい獲物を捕まえたわね!良い働きよ、豚。ご褒美として、あんたに楽しいものを見せてあげるわ!!」
そう言うとディーはリーファを釣り上げるとその装備を剥ぎ取る。下着までも取られ、眩しいほどに白い肌が見える。
「どう、女の体を見るのは初めてでしょう?豚には目に毒かしらね?でも、面白いのはこれからよ!!」
そう言うとディーは指を動かすとまるで骨を失ったかのようにうねうねと動き、リーファの体に巻き付く。
「ぐっ、ああぁぁあぁぁあぁぁ!!」
血を流し、もがくリーファ。それを見てディーは心底愉快そうに呪文を唱える。
「システム・コール!トランスファ・ヒューマンユニット・デュアリビティ・ライト・トゥ・セルフ!!」
「ああっ!?ぐぅぅぅ…ああああああぁぁ!?」
「かはぁ!?凄いわ…凄いわァァ!?なんて、濃くて甘い味なのかしら!!」
「な、何をしている?!その娘はおでの捕虜だ!おでが皇帝の元へと連れて行く!」
「黙れっ!豚めがっ!」
リルピリンの抗議にディーは答える。
「忘れたかっ!私の意思は皇帝の意思!私の命令は皇帝の命令なのよ!!」
「っ!!」
皇帝。忌々しい単語が頭に響く。そんな中、ディーはリーファから天命を吸い取り続け、徐々に白い髪を取り戻し始める。そしてここでリーファの能力が発動してしまった。
「これは…なんという僥倖!湧いてきた…また新たな天命が更に溢れてきたぁ!!」
そう、彼女はログインした地神テラリアは無限天命回復能力を持っており、ここでその能力が発動してしまった。
「もっと!もっとよ!もっと私によこしなさい!!」
「うっ、うわぁぁぁぁあぁああ!!」
リーファはまだこの世界を知らないが故に誰が敵で誰が味方なのかわからない。だから、この場を耐え凌ごうとしていた。
「…やめろ……!」
「…っ!?やめろぉぉぉ!!」
「うん…?」
リーファがずっと苦しみ続ける姿を、眼前で見せつけられ・・・反論できずにいたリルピリンが、遂に限界を超え、叫んだ…彼がいきなり叫んだことで、愉快な気持ちになっていたディーは、ようやく我に返った。
「…今の言葉は何?この私に命令してるの?…豚であるお前如きがぁ!?」
「っ!?」
「言った筈よ、豚ぁ!この捕虜はもう私のよ!どれだけ天命を吸おうと、この場で縊り殺そうと、お前は関係ないでしょう?フッフッフッフッ…う~ん、でも、そうね…見つけたのはお前なんだし、少しくらいは譲歩すべきかしらね……なら、今すぐそこで裸になってみせなさい!」
「…っ!…何を、言っている…?」
一瞬苛立ちを見せつつ、何かを思い付いたディーは歪な笑みを浮かべ、とんでもない命令をリルピリンへとしてきた。意味や意図が分からないのが半分、言っていることが正気かと疑う半分・・・リルピリンは驚くことしかできなかった。
「私ね…始めて見た時から、お前がその大仰な鎧とマントを着ていると吐き気がするのよねぇ…豚のくせに!まるで人みたいじゃない…そこで素っ裸になって、そこで四つん這いになってフガフガ鳴いてみせたら、この娘を返してあげるかもよ?」
そこで自分が右の視界が不意に赤く染まる。そこから針を刺すような痛みが頭をつらぬく。
ーー豚のくせに
ーー人みたいに
そこでちリーファをディーの声が合わさる。
ーー人間でしょ?
ーーそれ以外に何が必要なの?
この娘をディーに殺させはしない。だからこそ、自分はマントの留め金をつかんだ。そしてマントを外すと次に鎧に手をかける。その時、リーファが叫んだ。
「駄目!」
「っ!?」
「私は…大丈夫だから…!そんなことは…止めて…!」
「ほ~ら!どうしたのよ、豚ぁ!手が止まってるわよ!さっさと脱ぎなさいよ!!それとも、人族の裸に興奮しちゃったのかしらぁ!?」
「おでは…おでは…!?』
今の状態にあっても自分のことを心配してくれる彼女と、更ならる侮辱の言葉を飛ばす悪魔……どちらのために動くべきか、それが最後の引き金となった。ズボンへと掛けていた手は、抵抗することなく納めていた剣を握っていた。
「おでは…人間だぁぁ!!」
右目の封印…コード871で右目が吹き飛びながら、リルピリンは心のままに叫び、剣を抜いた!自分の命令に背く訳がないと高を括っていたディーは不意を突かれ、回避が遅れる…リルピリンの剣がディーの左足を掠め切った。
「ぐぅぅ…!」
「…はぁ…?……このぉ…臭い豚がぁァァァァァァァ!?」
右目が爆ぜたこともあり、斬った反動で地面に倒れ込んでしまったリルピリン…対し、見下していたリルピリンに傷を負わされたことで、一瞬呆けていたディーは、その怒りを一気に爆発させた。
拘束していたリーファを後方へと放り捨て、倒れているリルピリンへと襲い掛かる!
「よくもぉ…この私に傷をぉぉ!?この下等生物がぁぁ!ふん!ふぅん!!」
「がぁ…ぐぅぅ?!」
何度も何度もリルピリンの頭をかかとで蹴り潰し、怒りを込めるかのようにその頭へと足をねじ込ませる。
「私の命令に従っていれば、いい思いができたものぉぉ!!」
術師としての冷静さなど全く見受けられず、ただ怒り任せにリルピリンへと暴行を加えるディー…その怒りに応えるかのように、右腕は長き暗黒爪に、失われていた左腕は負の心意により、肥大した細胞の塊のような巨腕へと変貌を遂げた。
「切り刻んで!?粉々にして!?藁と混ぜて!?猪の餌に…え?」
その瞬間、自分の腕が何者かに捕まれ、全く動けなくなった。
「何だこれは!!」
そう思った瞬間、リーファが動いた。瞬時に片手剣『ヴァーデゥラス・アニマ』を抜いてその両腕を切り落とす。
「人族が…豚を助けて…人を斬る?」
すると不意に
「『違う(よ)。人を助けるために、悪を切るの』」
そう聞こえた瞬間、ディーは体と両足を赤黒い触手のような何かにガッチリ掴まれる。そして今まで吸収した天命がいきなりゴッソリを持っていかれた。
「なっ…」
ディーは何も答えられずにリーファの斬撃で跡形もなく消滅した。