ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#38 暗黒の記憶

ユージオ達が果ての祭壇に向けて飛び立った頃。北の遺跡では大規模な戦闘が行われていた。

 

「目標、前方の敵部隊。距離およそ一〇〇。撃てぇ!!」

『『『『『ヒャッハー汚物は消毒だー!!』』』』』

 

ダダダダダッ!

 

ストレア率いるGGO義勇軍は最前列を綺麗な隊列を組んで各々自分の愛する武器を用いて弾丸を放っていた。

 

「クソッ、銃を使う卑怯者に遅れをとるなぁ!!」

「魔法部隊、焼き払え!!」

「全軍、切り裂け!」

 

その横で負けじとALOコンバート組もバカのように突っ込んでくるアメリカ人プレイヤーを迎撃する。その後ろでアスナ達は治療を受けていた。

 

「もう…こんなにボロボロになっちゃって……」

「後は任せてください。みんな、来てくれましたから」

 

リズベットと、シリカに抱き抱えられた状態でアスナは全身の痛みが解けていくのを感じた。

 

「ありがとう…ありがとう……」

 

溢れる涙の向こうで、空から再び、赤い線が流れ込んだ。

 

「敵が来るぞ!迎え撃て!」

「おっしゃまかせろ!!」

「俺たちも負けるな!ログイン直後に吹っ飛ばしてやれ!!」

 

そう意気込む日本人プレイヤー達。その姿を見てアスナは思わず問いかける。

 

「ねぇ、リズ。みんなをここに連れてきてくれたのは…誰なの?」

「そんなの……決まっているじゃない」

「ユイちゃんと牧奈ちゃん達ですよ。みんながこのアンダーワールドの事を一生懸命説明してくれたんです!」

 

そう言われ、納得が言った。ユイとストレアは旧SAOで生まれたトップダウン型AIであり、自分達の子。自分の知らない所で襲撃者達の計画を阻止するべく動いていたのだ。

 

「…ありがとう。ユイちゃん」

 

ありったけの気持ちを込めてアスナは言葉を紡ぐ。すっかり傷は癒え、心身ともに盤石となっていた。

 

「それに、牧奈ちゃんが頑張ってコンバート後のデーターのサルベージの準備も整えてくれたのよ。やっぱ天才の子は天才ねぇ〜」

「牧奈ちゃん……」

 

そう呟くとアスナは再び、現実で頑張っているマキナに感謝していた。

 

 

 

 

 

ここにいるストレア以外は未だ知らない事実だが、マキナはある天才科学者が開発したジェネシスシステム(作成)である。その情熱はSAO(出題)につながり、、フラクトライト(解き方)となってA.L.I.C.E.(答え)へと繋がっていた。

 

全てはまるで答えのある数式のようだった。A.L.I.C.E.は本当の意味で人と同じ存在となった。自ら意思を持って行動し、誰にも縛られず自由な思考を持ち、それに従い行動する。その人物はこれを見て何を思うのだろうか。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ーーーーところで菊岡。少し君に聞きたいことがある」

「はっ!何でございましょうか?」

 

真之が菊岡に問いかける。それを見て菊岡は萎縮しながら真之を見た。

 

「なんで、近代兵器に乗せる予定なのにこの世界はファンタジーなんだね?」

「それは…計画している時に修也くんが提案したからであります」

「ほぅ?」

 

真之が興味深そうに菊岡を見た。すると菊岡は経緯を話した。

 

「修也くんが計画の話をした時に、試験運用するならばという事で持って来た案をほぼ全て採用しています。元々の完成度が高かったですので…」

 

そう言うと真之はどこか愉快そうな目を浮かべながら言った。

 

「なるほど……君も上手く載せられたと言う事か…」

「は…?」

 

真之の呟きに菊岡が疑問に思う。すると彼は菊岡に説明をし出した。

 

「なぁに、君達は()()()()()にまんまと嵌った訳だ」

「「っ!?」」

 

真之の話に菊岡や比嘉が戦慄する。彼がまた何かをしたのかと思っていると真之はどこか懐かしむように話す。

 

「なに、修也は晶彦の実弟で、()()()()()だ。修也は晶彦を最も尊敬をしていた。そして、晶彦の思想を最も理解した一人だ」

「「…」」

「最も、凡人には到底理解出来ないがね……」

 

そう言うと真之はかつて、二人が過ごした日々を思い出しながら呟く。

 

「『異世界を作る』と言う彼の夢はついに世紀の事件を残すきっかけと成った。事件の最後。晶彦は死に、その意思は潰えたと思っていた……」

「っ!まさか……!!」

 

菊岡は信じられないと言った様子で思わず()のいる方を見てしまった。すると真之は正解と言わんばかりに話す。

 

「まぁ、そう言うことだ。晶彦の意思を、修也は継ぎ。この計画を利用した……

 

 

 

『真の異世界』を作るためにな」

 

真之の推測に菊岡達はサーッと血の気が引いた。修也は計画の比較的初期からいたメンバー。菊岡が勧誘し、彼は参加した。その時から、この計画は始まっていたのだろう。決して自分達に真意を悟らせず、自分を誘導して尊敬する人(茅場晶彦)の夢を代行する為に……。

 

「全く、恐ろしい孫よ…まぁ、菊岡の事を簡単に誘導できると思っていたのかも知れんがな」

「……」

 

菊岡はもう言葉が出なかった。全く気づかなかったのだ。自分が無意識に誘導されていたと言う事に。確かにやや放任なところはあったかも知れないが、完全にやられたとしか思えなかった。その事に悔しさが生まれていると真之は懐にしまっていた一枚のA4紙を取り出した。

 

「見てみろ、読んでいるとなかなか面白い物だ」

「…拝見します」

 

そう言い、菊岡は渡された紙を見た。それはある計画書の様だった。それを読んだ菊岡は顔をまた青白くさせ、思わず真之と紙に視線を行き来した。

 

「教官…これは……」

「去年まで、修也が進めていた計画だ・・・修也にとって、そんな計画よりも兄の意思を優先していた様だがな」

「……」

 

菊岡は読んでいた紙をさらにじっくりと詳しく読む。

 

『計画名:最後の審判』

 

そう書かれた計画書は本当に悪魔のような計画だった。要約するとそれは()()()()()だった。今までに開発した義手や、マキナの機体を元に殺戮機械を製作し、人類がいた痕跡を抹消するものだった。

大言壮語の様に聞こえるが、相手はロボット工学の天才であり、()()茅場の実弟。可能なのではと思ってしまった。すると真之は計画書を仕舞いながら話し続けた。

 

「だが、この計画は()()()()()()()()()()()()()。何故だと思う?」

「それは……」

「死銃事件、ひいてはSAO事件だ」

「?」

 

真之の言葉に菊岡はまだ理解できずに首を傾げた。

 

「あの事件に巻き込まれた修也に残った唯一のストッパーは晶彦だった。しかし、修也はSAO事件で兄を大勢の人を救うために殺す選択をした。そこで吹っ切れたんだろうな。修也はこの計画を急速に進めた」

「だ、だったら…」

 

この計画は今も進んでいるんじゃないか。そう言おうとした時、

 

「だが、そんな修也の暴走を止めた事件が起こった」

「…死銃事件」

 

去年の十二月に起こった自分が修也達に依頼した仕事だ。そのことを思い出すと真之は言う。

 

「そうだ。死銃事件の後、修也は詩乃くんと再会した。そこで、また修也は狂気に浸かる一歩までの段階で立ち止まった」

「まさか、詩乃くんと同居させた理由は……」

「そう言うことだ。いやぁ、愛はすべてに打ち克つと言うがその通りだと思ったな」

 

そう言う真之は画面を見ながら最後にこう呟いた。

 

「詩乃くんには色々な意味で感謝しかないさ……」

 

少なくとも修也の抱えていた狂気を一発で抑え込んだその結果に、二人は返し切れない恩があった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「どうやら大勢は決した見てぇだな」

「クラインさん……」

 

コンバートして来た軍勢は量に勝るアメリカ人に対し、質において圧倒的に戦局を優位にしていた。

 

「何とお礼を言ったらいいか……」

「おいおい、水臭ぇよ。おまえさんやキリト達にはこんくらいじゃ返しきれねぇほど借りがあるからな」

「ええ、戦闘が終わったらクラインがいつものくだらないギャグをかませばキリトも目覚めるんじゃない?」

「あーあ、ひでぇな」

 

そう陽気な声が聞こえ、アスナは気持ちが楽になっていた。ここを乗り越えればあとは掃討戦になるだろうと思っていた。希望が生まれた。

 

ーーこのままいけば勝てる。

 

そう思い、剣を持って前線を張ろうと思った時。ふと視界にある人物が目に入った。

 

「ねぇ、クラインさん…あの人…あの黒いポンチョを着て、柱に寄り添い立ってる人、なんだか見覚えがある気がしない……?」

「うん…?黒いポンチョ……あいつか。けど、見覚えつったて…あんなカッパみたいなポンチョを着てたら、顔なんて……」

 

突如、クラインから声が消えた。

 

「ちょっと、どうしたのよ。思い出したの?誰だっけ、あの人?」

「そんなこと…ありえねぇよ…そんな……!?俺は…亡霊を見ているのか…?」

「ぼ、亡霊……?」

 

クラインの怯えるような反応にリズベットも困惑せざるを得なかった。

 

「だ、だってよう…あの黒いカッパ、いや革ポンチョは……ラフコフの…」

 

ラフコフ

それはかつてSAOを恐怖のどん底に陥れた最強の暗殺者ギルド。すると革ポンチョの男はやっとかと言った様子で『友切包丁』を肩に担いだ。

 

「よぅ、久しぶりだな…閃光…」

「あいつは…PoH……!!」

「そんな…!!」

 

しかし、悪夢は始まったばかりであった。次に見えたのは赤く染まった空であった。

 

次々と現れるプレイヤー達にアスナはもう数えるのをやめた。それを見たPoHは現れたアバターに()()()で叫んだ。

 

「同志達よ!呼びかけに応えてくれて感謝する!残念ながら、この場所で先にダイブしていたアメリカの有志達は日本人に駆逐されてしまった!のみならず、ここから移動し破壊の限りを尽くそうとしているのだ!サーバーをハックした日本人は強力な装備をいくらでも作り出せるが、管理者権限を奪われた我々は同志達にそんなデフォルト装備しか与えることはできない!だが、君達の正義と団結心が、必ずや卑怯者の日本人を撃退してくれると信じている!」

『『『『『『『オオオオオオオオぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!』』』』』』』

「さぁ、これからが本当のショー・タイムだ!!」」

 

そう叫ぶとコンバートした総勢一万のコンバートプレイヤーは人界軍に襲いかかった。

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