ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#7 記憶

『ラフコフ』討伐を終えた自分は自身の家であるアルゲードの宿屋にいた。

そこでブレイドは目を閉じて過去の記憶を思い出していた。

 

 

 

 

 

現実世界の赤羽修也の家庭環境は特殊だった。

 

父親は国会議員、母はモデルとして名を馳せるそこそこの有名人だった。

周りの親戚も優秀な人が多く、公務員や大企業の重役など様々だった。

そんな親戚の中でも特に自分は優秀とされ、幼い頃に英才教育の為にアメリカに飛ばされた。

そして、アメリカに留学をした自分はアメリカの教育を受けて育っていた。

 

 

 

 

 

12歳の時の冬。雪が降る中、家にいた自分は誘拐犯に襲われた。狙いは身代金と考えられている。

考えられていると言うのは誘拐犯が片方は死亡、もう片方は捕まらなかったからだ。

その時、家にいた護衛兼シッターがその強盗に容赦なく射殺されていた。

その様子を目の前で見た自分は錯乱したのだろう、銃を持つ強盗相手に家にあった薪割り用の斧で入ってきた強盗の一人の頭をかち割ったのだ。

強盗犯は二人いたが、片方は頭から斧が刺さった仲間を見て逃亡していた。

この事件の後。日本から飛んできた母と、この時初めて出会った祖父が自分を日本に連れて帰った。

その時、両親や祖父はただ泣きながら謝っていたことだけは覚えている。

正直ここら辺の話はいまだに実感が湧かず、夢ではないのかと思ってしまう時が多々あった。

 

 

 

 

 

そして日本に帰った後、自分は祖父の家がある青森のある街で暮らし始めた。

通っていた中学校からは帰国子女という事で周りからは珍しがられ、学校終わりによく色々な場所に連れ出された。

だが、それがとても楽しかった。アメリカでは味合わなかった年相応の楽しさと言うものがそこにあった。

特に好きだったのが街にあった本屋だった。こじんまりとした佇まいで、意外にもいろんなジャンルの本があり、毎日通っていたと言っていいだろう。その本屋に通うのが日課になっていた13歳の時、二度目の事件に巻き込まれた。

 

 

 

 

 

その年の九月、祖父の頼みで荷物の受け取りのために郵便局に来ていた自分はそこで強盗にあった。

アメリカでは馴染みのあった拳銃は日本人には刺激が強かったのだろう。悲鳴を上げることもできずに怯えている職員や客。黒星・五四式を片手に銃口を突きつける強盗は手が震えていた。

その時の自分は警察がいつ来るのだろうかと言う気持ちで、そこに恐怖心はなかった。だが、強盗の黒星・五四式を客にいた少女が奪った事には流石に肝が冷え、咄嗟に少女の手にある拳銃を抜き取ろうとしたが……

 

パァン!

 

少女は引き金を引いてしまい、一発だけ弾丸が放たれてしまった。

だが、その後直ぐにスライドを力強く握った為に少女が二発目を放つ事はなく、少女から少し無理やり拳銃を抜き取り、強盗に向けて拳銃を構えた。

強盗はまだ息があり、隠していたナイフで少女を殺そうとしていた為、咄嗟にナイフを持っていた右腕を撃ち抜き、次に残っていた左腕と両脚を撃ち抜いた。

それから警察がやって来て事情を話すと正当防衛が認められると言われ、祖父が飛んで来ると自分はそのまま祖父の自宅に戻って行った。

 

 

 

 

 

それからは忙しかった。日本でも事件に巻き込まれた事からほとぼりが冷めるまでまた、アメリカに飛ばされた。

祖父達は猛反対だったらしいが、親戚が何から何まで既に決めてしまっていたらしい。

今度は前よりも警備が厳重なマンションで暮らしていた。

そして、またもやアメリカの学校に通う事になり16歳の時にやっと日本に帰って来た……そんな矢先に自分はSAOに関わる事件に巻き込まれた。

 

「今考えたら忙しい事この上ないな……」

 

ブレイドはそうつぶやくと乾いた笑いと共にさっきの剣の感触を思い出していた。

 

「(あの時、私は何人を斬ったのだろうか……)」

 

その感触は夢中になって斧を振った時と似ていた気がした。

 

「これで、私は殺戮者…だが、相手も同数以上の人を殺して来た……その中にはこれで報われる人もいるんだろう……。だが……」

 

ここから始まる負の連鎖はどこまで続くのだろうか……

 

ブレイドはそんなことを考えていた。ゲームがクリアされた後もSAOは良い方にも悪い方にも動くだろう。茅場晶彦はゲームクリア後はどうするのだろうか。

そんなことをいつの間にか考えていた。

結局この日は寝付くことなくずっとそんな事を考えていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

あの日からブレイドは攻略組に来なくなった。

無理もないだろう……。あんな事があったのだ。ブレイドも心身ともに疲れたのだろう……そんな事を考えていた。アスナも同じ事を考え、ブレイドに積極的に攻略組に参加を強制させるような事はしなかった。

 

だが、七十三層になってそうも言っていられなくなってくる状況が来た。

今回のボス戦で死者が出かけたのだ。流石に他の攻略組メンバーからも彼を連れて来てほしいと言う声が高まり、俺とアスナは彼を攻略組に参加させる事を決めたのだった。

 

 

 

 

 

ブレイドを探すと言ってもこれは困難な話だ。探索ログを使っても彼の姿は移動しており、後を追うのは至難の業だった。探索ログを追ってもブレイドはそこに居らず、次の場所に移動していた。そんなことの繰り返しであった。メッセージの返信もなく、直接会うしか方法はなかった。

 

「流石は…赤い雷鳴だな……」

「そうね…追いかけるだけでこんなに疲れるなんて……」

 

キリトとアスナは四十八層のリンダースで息を切らしていた。かれこれ数時間彼を追っているが一向に見つかる気配はなかった。

 

「ちょっと、リズの店があるからそこで休憩しましょ……」

「そうだな…あぁ、疲れたぁ〜」

 

そう言ってキリトはクタクタになった体に鞭を打ってリズベット武具店に足を踏み入れた。

 

「いらっしゃ……ってアスナ!?」

「リズ〜、お邪魔するわね〜」

 

アスナはそう言って店の椅子に座り込むとキリトも同様に隣の席に座っていた。

 

「で?そんなに疲れて何があったのよ」

 

リズベットはこう声をかけるとキリトは事情を説明していた。

 

「いやあ、ブレイド探し回ってたら…全然見つからなくって……リズベット。あいつの居場所分からないか?」

 

キリトにそう言われ、リズベットは

 

「ああ、あの人ならそろそろ来るんじゃない?」

「「え?」」

 

思わずキリトとアスナはリズベットの方を見て変な声が出てしまった。するとリズベットはその理由を話した。

 

「さっき連絡があったのよ。剣を研いで欲しいって。だからそろそろ……」

 

カランカラン

 

そう言うと店にワインレッドやローズピンクの色の装備と服を着た特徴的なプレイヤーが入ってきた。

 

「いらっしゃいブレイドさん」

「ああ、今日も頼むよ……おや、キリト達じゃないか。こんな所で会うとはな」

 

ブレイドは呑気にキリト達に話しかけ、パランジャをリズベットに渡した。

 

「じゃあ、ちょっと待ってて。キリト達、何か話したい事があるみたいだし」

「そうか」

 

そしてリズベットがパランジャを持って店の奥の工房に入るとブレイドはキリト達の方を向いた。まさかこんなに苦労した後にあっさり見つかるとは思わなんだ。

 

「で、私に何か用かい?」

「あ、ああ……ブレイドに攻略組に帰ってきて欲しいと思ってな……」

 

そう言うとキリトはブレイドにその理由を話すとブレイドは驚いた様子を見せていた。

 

「もう七十四層についたのか……少し遊びすぎてたようだ。分かった、次回の攻略では私も参加しよう」

「本当か!?」

 

あっさり受け入れた事にキリト達は拍子抜けと言った様子だったが、嬉しそうでもあった。

 

「ああ、最前線がそんなに進んでいたとは思わなくてな。サボっていた私も悪かったよ」

 

そんな事はないと思っていた。少なくともキリトはブレイドの表情がどこか苦い物を食べたような微妙な表情を浮かべていたように見えた。

普段からあまり感情を表に出さないブレイドがこんな表情になるとは……あれから二ヶ月、彼はあの時の事を引きずっているのかと思うと心が痛かった。

すると工房からリズベットがパランジャを持って戻って来た。

 

「お待たせ。仕上がりはバッチリよ」

「ああ、感謝する」

 

そう言ってブレイドはリズベットにコルを渡すとリズベットがブレイドに聞いた。

 

「そういえば前から聞きたかったんだ。ブレイドさんってどうして『赤い雷鳴』なんて言われているの?」

「ああ、それは……「この人の闘い方がおかしいからよ」……」

 

ブレイドとリズベットの間にアスナが入って来た。

 

「おかしい……?」

「ええ、そうよ。ブレイドさんは五十五層の時のボス攻略の時に馬鹿みたいな事をしていたんだから」

「どんな事したの?」

 

そう聞くとアスナはやや呆れた様子で話し出す。

 

「ボスは四足歩行の狼みたいなモンスターだったんだけど、そのモンスターの足の爪の攻撃を剣で受け止めたのよ」

「どうやって……?」

「両手の刃を持って野球のバントみたいにしていた。その後は剣を思い切り振ってボスの爪を砕いた」

「砕いた!?」

 

リズベットが驚くのも無理はない、ボスの攻撃武器を破壊するのはそれこそキリトの持つエリュシデータや、自分が打ったダークリパルサーくらいのレベルじゃないとほぼ不可能に近いからだ。

 

「しかもその時ブレイドさんは今の剣を持っていなかった」

「嘘でしょ!?」

「嘘だと願いたいさ。で、その時爪を砕いて、ボスに攻撃をしていた時。ものすごい高速で移動して、ボスの死角から攻撃をする時の音が雷が落ちた時のようだったから『赤い雷鳴』なんて言われているんだ」

 

キリトがそう話すとリズベットは呆れた目でブレイドを見ていた。

 

「へぇ〜、キリトもなかなかの規格外だと思っていたけど……あなたも大概なのね」

「本当、ブレイドさんには色々勝てない気がします」

「……」

 

店にいた三人になんとも言えない奇妙な目で見られたブレイドはパランジャを腰につけると店を後にしようとした。

 

「……こうなるんだったら攻略組に参加しないほうがよかったか?」

「「「!?」」」

「冗談だ。私だって現実世界に戻りたいさ」

 

じゃあ、また攻略会議でと言い残してブレイドは店を後にした。

三人は現実世界に戻りたいと言ったブレイドの気持ちと同じ思いを抱いていた。

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