「死守して!!アンダーワールドの人だけは…!!何としても…!!」
アスナはそう言い、アスナは地形操作を行うも。一時凌ぎに過ぎず、数万のプレイヤーは人界軍を押し込んでいた。
「う、うわぁぁぁああ!!」「た、助けてくれ!!」
一人、また一人と日本人プレイヤーがやられて行く。アスナ達も必死にレイピアを振るも、二カ国からやってきた大群は各々怒りを持ちながら襲い掛かってきた。
もはや交戦と呼べるものはなく、一方的な殺戮だった。二千人が組んだ陣形は瞬く間に侵食され、薄くなって行く。
アスナはこの時、思ってしまった。
ーー誰か、助けて。
絶望的な戦況の中で、比較的健闘を続けている部隊の一つが、ALOにおいてシルフ領の領主を務める女性プレイヤー、サクヤ率いる緑の剣士隊だった。重装プレイヤーの突進攻撃の対策に練り上げた戦法がここで生きていたのだ。混戦の中でも、軽装の剣士達が目まぐるしく動きながら互いにカバーすることで、敵に目標を定めさせず、倒されるのをどうにか防いでいた。
「ーーーよし、我々が突破口を作るぞ!竜胆隊、鈴蘭隊、戦線を右に押し上げろ!」
右翼方面で戦闘中のサラマンダー部隊と合流できれば、突進攻撃で戦線に穴を開けることができるかもしれない。そう考えての行動だった。
「行くぞ!《シンクロ・ソードスキル》用意!!カウント、5、4、3……」
その時、持ち場の左側で悲痛な叫び声が聞こえた。
「ーーみんな、諦めないで。少しでも時間を稼いで!!」
サクヤその指示を飛ばし、攻撃を仕掛けていた。
急激に減少する日本人プレイヤーのうちの一人。《スリーピング・ナイツ》の三代目リーダー、シウネーは状況を把握していた。父が韓国人の彼女はログインしてきた人の話している内容を部分的に理解していた。この中で韓国語を話せるのは自分だけ。
ーーぶつからなきゃ伝わらない。
かつての団長の言葉を思い出しながらシウネーは大声で指示を出す。
「みんな、お願い!一回だけでいいから、ブレイクポイントを作って!!」
「…分かった!テッチ、タルケン、ノリ!シンクロソードスキルで大技をぶちかますぞ!!」
「「「了解!!」」」
「カウント!…2、1……」
完璧に合わさった高威力の単発攻撃は大地を揺るがすほどの大爆発を起こし、周囲を一掃した。怯んだところをシウネーはリーダー格らしき韓国人に近づき、振り下ろされた長剣を左手で抑える。
「聞いて!貴方達は騙されています!このサーバーは日本企業の物であるし、私たちは正規の接続者です!」
「嘘をつくな!?見たぞお前たちはさっき、俺たちと同じ色の鎧を着ていたプレイヤーたちを皆殺しにしていただろう!!」
「あれはあなたたちと同じように、偽の情報でダイブしたアメリカ人プレイヤーたちです!日本企業の妨害をさせられているのは、あなたたちなのよ!?もう一度よく考えて…!その怒りは、憎しみは…本当にあなたたちのものなのか…あの男の言葉に扇動されたものでないと本当に言えるの!?」
一瞬の静粛が周囲を包む。シウネーに気圧され、辺りが黙り込む。しばしの間の後シウネーが話しかけた韓国人が聞き返した。
「その話は、本当なのか?」
「…ええ」
「…俺の名はムーンフェイズ。そっちは?」
「私は…シウネーと言います」
「そうか…シウネーさん。俺も、この話は妙だと思っていたんだ」
ムーンフェイズと名乗った男はそう言い、周囲の動揺を生んだ。同時に周囲の韓国人プレイヤーから怒りの声が上がる。しかしムーンフェイズは剣を振り、当たりを黙らせると一歩前に出た。
「シウネーさん。あんたの話を証明する手段はあるか?」
「っ……!!」
このアンダーワールドは政府の支援を受けたVR世界であると言うこと、どう証明すればいいかと思った時。
「ーーーだったらなんでサーバーを落とさない?」
横に現れた女性プレイヤーに視線が行った。彼女は片手にMG42を持っていた。シウネーは見たことあるプレイヤーに名前をつぶやいた。
「ストレアさん…」
シウネーはそう言い、ストレアは一旦シウネーを見るとすた度ムーンフェイズに視線を戻し、話しかけた。
「さっきの男がここの世界が不正アクセスされたと言ったんなら。究極を言えばサーバーを落として通信を切ればいい。なのに何でそれをしないのか……よく考えて頂戴」
ストレアの話にムーンフェイズは「確かに…」と呟く。サーバーを落とせば不正アクセスも収まる。しかし何故それをしないのか。データの保存はバックアップをとってあるはずだから復帰すればいい。流暢な韓国語でそう言われ、納得し始めている周囲の韓国人達。しかし、後ろでポンチョを着た男が近づいてきた。
「おい、何日本人と話しているんだ?」
そう言うとヴァサゴはムーンフェイズに包丁のような投擲武器を投げ、彼を背中から刺していた。そして、彼らを扇動するPoHは叫ぶ。
「裏切り者はこの戦場にはいらない!お前たち!汚い日本人に騙されるなよ?ここが日本のサーバーで、お前たちが正規の接続者だって言うのなら、なんでお前らだけがそんな高級装備だけを持っているんだ?チートで好き勝手に作り出したに決まってるぜ!」
「そ、そうだ!そうに決まっている!!」「俺たちを騙そうとしていたんだな!!」
そんな怒りの声を上げる中、一部の韓国人達は思考を巡らしていた。
「でも、確かに変だよな?」「ああ、確かに不正アクセスを受けているなら通信を切って仕舞えばいいもんな…」
困惑する韓国人達にPoHは畳み掛ける。
「貴様らは日本人の嘘に屈すると言うのか?あぁ?このサーバーにバックハップはねぇんだ。だからサーバーを下手に落とせねぇんだよ」
そう言うと韓国人達は納得の表情を浮かべ、怒りの色をあらわにした。それを見たストレアは残弾少ないMG42を持った。
「チッ、撤退だ!シウネー!」
「は、はい!!」
そう言うとストレアは引き金を引き、接近してきた韓国人をミンチにすると逃げ出した。十人ほどが毎分1200発の弾丸をもろに受け取り、悶え苦しみながらポリゴンへと成っていた。
ーーーそして、虐殺が再開してしまった。
「…やめて……」
狂気に駆られたコンバートプレイヤーたちは、次々とコンバート軍とアンダーワールド人を無差別に殺していく。
「…やめ、て……!」
なんとかアンダーワールド人を守ろうと奮起するコンバート軍を嘲笑うかのように斬り刻み、もう動かなくなった体にまで執拗に攻撃を加え続ける。
「…もう…やめて……」
絶望と哀しみで心が折れてしまい、アスナは掠れた声で言う。そして赤鎧が殺意に満ちた罵り声と共にアスナに剣を振ろうとした時。
「ストォォォップ!!」
黒ポンチョの声が通り、一斉に攻撃がやむ。黒ポンチョは周りに次々に話を伝達していくとアスナの近くにいた赤鎧にも届き、アスナの髪を引っ張った。どうやら生き残った日本人プレイヤーを一箇所に集めるようだ。
そして、一箇所に集められた場所は地獄絵図だった。皆武器を破壊、もしくは奪われ、装備もボロボロで、至る所に傷が出来上がっていた。GGO義勇軍は弾丸を使い切り、全滅させられてしまったようで、ストレアの姿もなかった。
アスナは一通り回し、全員の顔を覚えようとした。そしてそこでボロボロになったリズを抱えた。
「あたし…あたしが…みんなを……」
「違う…違うよ……リズ…!!」
アスナは涙まじりの声で小さく叫んだ。啜り泣く声が聞こえ、その方を向くとシリカが横になり、エギルは地面に倒れたまま動かなかった。その体には多くの槍や剣が刺さっており、見ているだけで痛々しかった。その近くにはトレードマークのバンダナを傷口に当て、肩から右腕を無くしたクラインが倒れていた。すると赤鎧が道を開け、黒ポンチョが姿を現した。すると男は明日奈達に向けて話した。
「武器を捨てて投降しろ。そうすれば、お前らも、後ろの連中も殺しはしない」
「ふざけるな!?この期に及んで、我らが命を惜しむとでも…!」
「駄目ぇ!その人の言うことを聞いて!?」
「っ…何を言うておる、アスナ?!あやつの言うことなど…信じられるわけがないだろう!?」
「お願い!?それでも、今は従うしか…貴女たちの命をこれ以上失わせたくないの…!お願い……生きて…屈辱を味わおうとも、生き延びて下さい…それが…それが私たちの…たった一つの……」
アスナの悲痛な懇願に、ソルティーナ達も剣を落とした。それを見て、韓国人達は勝利にわき、声を上げる。そんな中、黒ポンチョはアスナに近づき顔を見せた。
「よう……久しぶりだな、閃光」
「……本当に貴方だったのね…PoH」
「おっと…懐かしい名を言ってくれるな。覚えてくれてて嬉しいぜ」
そう言い、姿を現したヴァサゴを見て、アスナは睨み、ヴァサゴに聞いた。
「…これは…復讐のつもりなの!?ラフィン・コフィンを壊滅させた、私たち攻略組への……!」
「フッ…フフフフフッ、フハハハハハハハハハッ!!……バッッカァじゃねーの!?」
「っ!?」
いきなり笑ったヴァサゴにアスナ達はギョッとした。するとヴァサゴは自信満々に言った。
「優等生面の閃光様に教えてやるよ!ラフィン・コフィンの隠れアジトを、てめぇら攻略組様に密告したのは……この俺様なんだぜ?」
「なっ…!?」
驚愕するアスナやSAO生還者達。なぜそんな事をしたのかと聞く。するとヴァサゴは言った。
「そんなん…決まってるだろう?俺はな……お前ら、攻略組とかいう自分たちが正しい事をしていると思い込んでる連中を、人殺しにしてやりたかったんだよ。お偉い勇者面して、最前線でふんぞり返っている攻略組様たちをよぉ!!」
「それが……狙いだったの…!!私たちや…キリト君にPK行為を背負わせるために…あんなことを…!?」
「イエース、と言いたいが。実際はそうじゃねぇ。俺の標的は昔から一人だけだ」
そう口にした途端、ヴァサゴは怒りの声をあげながら叫んだ。
「あいつさ!いっつもいっつもブラッキーとお前の横に居た赤い雷鳴さ!!いっつもいっつも俺の計画の邪魔をしやがって!!黒の剣士を追い詰めよう!!俺は怒ってんだよ……!!あの生意気なクソガキにな!!俺の楽しみを全部潰してきたあのクソガキをな!!」
「ブレイドさんを……!!」
「ああ、そうさ。俺は赤ずきんと同程度に赤い雷鳴を恨んでんだ。隠れアジトの時もあいつが全員殺しちまった。ありゃぁ過去に殺しをした顔だった。それが余計に腹立つんだよ。『汚れ仕事は自分に』って気分でよぉ!!黒の剣士の後ろに隠れやがって!!」
地団駄を踏んで怒るヴァサゴにアスナ達は怒る。あの討伐以降、ブレイドが攻略組に復帰するまでどのくらい思い悩んでいたのかと言う事を。できるだけ被害を減らすために努力を惜しまなかった事を。それらを知っているからこそ、アスナ達は怒っていた。
「貴方…そのことでどれだけブレイドさんが悩んだと思っているのよ……!!」
「ほぅ?そりゃあいい事を聞いたぜ。スカってするもんだ」
そう言うとヴァサゴは馬車を見ながら叫んだ。
「だからよぅ、ここにあのクソガキを呼ぶんだよ。どうせいるんだろう?黒の剣士が?」
「っ……」
お見通しと言わんばかりにヴァサゴは馬車の一つを見ていた。