現れたブレイドは腰にサーベルを添え、赤を基調とした軽装備を身に纏い、姿はALOの姿をそのまま映した様だった。
「ブレイドさん…」
アスナがそう呼びかけるとブレイドはアスナを見ながら言う。
「待っていなさい。少しの間、お相手をしなければならない相手がいるのでな」
そう言うとブレイドはキリトの右腕を首に回し、それを支えにして体を持ち上げる。ついでに夜空の剣も持つとロニエ達に剣と共に彼の体を託した。
「キリト君を宜しく頼むよ」
「は、はいっ!」
「先輩っ!」
マリーが思わず声をかけるも、ブレイドは少し間を開けて答えた。
「……すまない、詳しい話は後にして欲しい。今は、目の前の敵に集中したい」
「は…はいっ!」
そう言うとブレイドはヴァサゴを見る。ヴァサゴはブレイドを見ると怒りや憎悪を向けていた。
「おめぇがぁ!このクソ野郎ガァ!!いつも俺様の邪魔しやがってぇ!!」
激昂するヴァサゴにブレイドはサーベルを抜くとヴァサゴに突き出した。
「…借り物の体だが暫し相手をさせてもらおうか……マイナーな悪魔とやら?」
「チッ!正義のヒーロー気取ってんじゃねぇよ!!」
直後にヴァサゴが最初からソードスキルを発動する。ブレイドはヴァサゴの技を軽くあしらうとヴァサゴを蹴りで突き飛ばした。ヴァサゴを突き飛ばしたブレイドは先ほどの言葉を思い出していた。
「正義のヒーローか…本当にそう言えるのだろうかね……」
「ぜりゃあぁぁぁあ!!」
ゴォン!カァン!
ヴァサゴが怒気を交えて放つ一発一発をブレイドは簡単にあしらう。地面に刺さり、一瞬止まった瞬間。
「ふんっ!」ゴキッ!
「グハァッ!!」
ブレイドから突き出された手がヴァサゴの左肩を脱臼させる。後ろに倒れたところをブレイドのサーベルが胸元を狙った。咄嗟に転がり、距離を取るとヴァサゴは脱臼した肩を元に戻し、乾いた笑い声を上げる。
「フッ…フハハハハ!!痛ぇじゃねえか……つまらねぇ。お前はいつも全て見通す様な目をしやがってよぉ。気色悪りぃんだよ」
「……」
その時だった。わずかにブレイドが怒気を込めてソードスキル〈スター・Q・プロミネンス〉を繰り出した。ヴァサゴはそれに僅かな勝機を見た。
「ブレイドさん!!」
相手の策に乗るなと言う意味を込めて叫ぶと、ブレイドはヴァサゴと一旦距離を取ると構えた。
「問題ない…」
そう言い、ブレイドはサーベルを持つとヴァサゴに話しかける。
「……君の事はよく調べたさ」
「あぁ?」
「途中参加な上に、プレイヤー名がPoHなんてものを使っている時点でまともじゃないと思っていたがね……」
「へっ、それがどうしたんだよ」
そう言うとブレイドは哀れんだ目で話しかける。
「……『寂しい人生を送ってきたんだな』と思ったまでだ」
「っ!!テメェ……!!」
ヴァサゴは何かがブチギレて憤慨した様子で友切包丁を持って突進する。
ゴィィン!「おっと…これは不味かったかな?悪魔君」
「この…青二才がァァァァァァアア!!」
ヴァサゴは魔剣を振るい、その顔に殺意を宿らせていた。今までで一番憤慨した様子のヴァサゴにアスナ達は驚愕していた。あの言葉にどんな意味が込められていたのかはわからないが、ヴァサゴを憤慨させる何かがあったのだろうと思っていた。
すると、そこでクラインがある違和感を感じた。
「あれ……?おい、可笑しくねぇか?」
「「「「?」」」」
クラインの呟きにアスナ達は耳を傾ける。するとクラインは残った腕を赤い兵士達に向けながら呟く。
「何であいつらログアウトしねぇんだ?」
そう言われ、思わず赤鎧を見る。すると赤鎧のアバターを持つ人たちが呻き声や泣き声を出し続けて倒れたままだった。一部の人間、さっきの隕石の攻撃で生き残った一部の人間などは立ったまま混乱していただけだった。
普通ならこれほどの攻撃を喰らった場合はログアウトする筈なのに……。
ーー何かやったのか?
そう思いながらアスナ達はブレイドを見た。こう言う変な事をする時は大体ブレイドが何かやった時だと言うのを彼らは今までの経験から思っていた。するとブレイドは怒り狂ったヴァサゴを蹴り飛ばすとこちらに飛んできた。
「……何をやったの?」
その問いかけにヴァサゴの一筋を弾き飛ばしたブレイドは答える。
「なに、ダークテリトリー側のプレイヤーのログアウト条件を弄っただけさ」
「どう言うふうに弄ったんだよ」
クラインがそう言うとブレイドは少し面白そうにしながら答える。
「ダークテリトリー側の今日の0時からログインしたアカウントは体力が
そう言うとアスナ達は動揺の色を見せた。
「そんなっ…!!」
「おいおいおい…マジかよ……!!」
するとアスナがハッとした様子で溢した。
「まさか…!!さっきまで居なかったのって……」
アスナの溢した言葉にブレイドは答えた。
「あぁ、ログインしてきたアメリカ人、中韓プレイヤー全員にそれを適用させるためさ。……面白い考えだと思わないかね?」
その後の微かな笑い声が狂気的にしか思えない。そこで、アスナ達は全員が同じ事を思った。
こいつ『悪魔』だ。いや、悪魔より酷いかもしれない。
そんな事を思っているとは思っていないのだろうか、ブレイドはヴァサゴの剣技を受け流すとヴァサゴが剣を再び交ぜ合わせながら言う。
「ほらどうした!?かかって来いよ!さっき見てぇによ!」
魔剣がブレイドをサーベルごと押す中、ブレイドはヴァサゴの目を見ながら言う。
「生憎と自分は待ち人が居るんでな。ま、要するに私は時間稼ぎ要員といったところだ……」
「はぁ?」
するとブレイドはヴァサゴに諭すように言う。
「まぁ、貴方が幾ら生い立ちから日本人を憎んでいるとはいえ、日本人を殺させるのはお門違いという物だ。憎むだけなら勝手に憎んでいればいい。そこに害は存在しないのだから…だがね……」
するとブレイドはヴァサゴの剣を押し返し始めるとそのまま突き飛ばしながら言った。
「私は、
アスナはそれを聞いて困惑した。
「……えっ?!」
ブレイドがそう言ったその時だった。戦場に突然、オレンジ色の光りと爆発音が包んだ。
「「「うわぁぁぁあああ!!」」」
爆発に巻き込まれ、赤い兵士が吹っ飛ぶ。軽く十メートルは越えただろうか。吹っ飛んだ兵士は地面にグシャリという嫌な音と蛙を潰したような声をあげて地面に叩きつけられる。本来ならここで体力消費でログアウトする筈だが、さっきの改竄のせいでログアウトされず、ただただ痛みだけが残ると言う地獄を作っていた。
「予定通りだ」
するとブレイドはニヤリと笑うと、後ろに飛んでヴァサゴとさらに距離を取る。いきなりの爆発にさらに混乱を極める中韓プレイヤー達。すると戦場の北側から急接近してくる
すると戦場の上空に新たな赤い光を見た。現れたのは飛竜に乗った赤い兵士だった、その数は二十人ほど。
「っ!危ない!!」
そんなアスナの叫び声に反応するかのように接近してくる影は片手に持っていた細長い何かを持つと直後に光球を放つ。
ドンドンドンッ!
三発の光球が飛竜に乗った赤鎧達にそれぞれ当たると直後に七色の爆発が起こり、飛竜に乗っていた赤鎧達が吹き飛んで落下していく。
『散会しろ!!飛ばされるぞ!!』
そう叫んだプレイヤーの真上に飛竜に乗っていたプレイヤーが落下してきた。
指示をするも、その影はさらに速度を上げて接近してくる。その影から見えた血のような赤い目に、血に飢えや獣のような吸血鬼のようなその目に、飛竜に乗っていた一人が恐怖で叫ぶ。
『あっ、ああぁあああーーー!!!』
接近する直前、目の前のプレイヤーは持っていた小銃を大きく横に振りかぶり、付けていた銃剣によって飛竜に乗った中韓プレイヤーを頭から横一線に吹っ飛ばされた。流石にこれはダメージが一瞬で百万を超え、ログアウト判定となり、飛竜が堕とされた。
『こ、このっ!!』
懸命に武器を振るも、相手の持つ銃によって撃ち抜かれて爆発する。その爆発に巻き込まれる形で二人ほど一緒に燃える。そして聞こえる悶絶の声。
『追え!追え!』
残った三人はその赤い影を追って上昇する。しかし……
『と、止まらない!!』
『あいつ、何処まで登る気だ!?』
延々と上昇し続ける赤い影は飛竜を引き離すとはるか上空まで登り詰める。そして高度はついに一万を超えたあたりまで上がった。
息をするだけで肺が凍りそうになるほどの気温の中、その影は小銃を構えると拡声魔法で地上に呼びかける。
「この言葉の意味のわかる者は、衝撃に備えろ」
そう言うと影は小銃を構えると唱える。
「我に求めよ。
さらば汝に諸々の国を嗣業として与え地の果てを汝の物として与えん。
汝、黒鉄の杖をもて彼らを打ち破り、陶工の器物のごとくに打ち砕かんと。
されば汝ら諸々の王よさとかれ、地の審判人よ教えを受けよ。
恐れをもて主につかえ、おののきをもて喜べ。
子に接吻せよ。
恐らくは彼は怒りを放ち、汝ら途に滅びん。
その怒りは速やかに燃ゆベければ。
全て彼により頼む者は幸いなり」
唱え終えると小銃全体に虹色の光が浮かび上がり、銃口からは光と魔法陣が溢れていた。
「神を軽蔑する愚者共よ。その神罰を受けがいい……」
それと同時に引き金が引かれる。放たれた弾丸は赤い魔法陣を介して巨大な真っ赤に染まる砲弾と化し、虹色の光を放ちながら地上に降り注ぐ。
阿鼻叫喚
まさに目の前で起こっていることを指すのだろう。上空から降り注いだ数多の光に中韓プレイヤー達は絶望と恐怖の声で埋まり、一部はさっきの隕石攻撃のダメージを相まってほぼ一瞬で消滅したが、生き残った者は地獄の痛みを味わっていた。体の一部を灼かれ、腹に光線が貫通しようともそれに耐えるしかない。回復術なんて知らない為、ただただ地面に血を流し続けていた。今まで散々やられていたとはいえ、目の前の状況には同情せざるを得ない部分も出て来ていた。
すると爆炎の中から一人の人物が降りてくる。その者は第二次大戦下のドイツ人将校の様な服装を見に纏い、背中から蝙蝠の翼のようなものを生やして、ゆっくりと地面に降り立つとこちらに歩いて来た。
その人物の顔を見てアスナ達は困惑する。
「えっ……!?」
「ブ、ブレイド!?」
「先輩が…二人……!?」
そこにいたのはブレイドだった。
全く同じ顔、同じ背格好の二人が顔をお互いに向き合って相対する。すると軽装備の、軍服を着ていない方のブレイドが下げていた流星のサーベルを軍服を着ている方のブレイドに渡した。
「役目は果たしたぞ。修也」
そう言い、サーベルを受け取りながら軍服を着たブレイドが言う。
「……ありがとう」
そう言うと軽装備のブレイドの方がスーッと空間に文字通り溶けていく。その時、一瞬だけアスナは今までブレイドとして接していた人の
「団…長……?」
一瞬だけ写った白衣に身を纏った人は軍服を着た
残ったブレイドはアスナ達を見るとサーベルを腰に下げてから右手を出しながら唱えた。
「システム・コール。トランスファー・ヒューマンユニット・デュラビティ、ライト・トゥ・フレット」
それと同時に負傷していた全員が一斉に全回復され、傷が癒える。クラインの切れた腕も服ごと綺麗に元通りとなり、全員が回復していた。
「ブレイド…お前……」
クラインが思わず聞きそうになるが、その前にブレイドが制止した。
「クライン、詳しくはまた今度話す。それよりも今は……」
そう言うとブレイドはキリトに近づくと片手にピンポン球程の大きさの赤色の光球を取り出すとキリトの額に当てた。
「頼む…これで起きてくれよ……」
そう言うとブレイドはキリトの額に光球を押し込んだ。スゥッと光球が溶けるように入っていくとブレイドはキリトを再びロニエ達に預けると中韓プレイヤー達に拡声魔法を通して叫んだ。
「ーーーよく聞け!この世界に不正アクセスする犯罪者共!!」
補足:ブレイド登場シーン時には脳内に『Young Girl's War』を流してください。