ソードアート・オンライン 赤色の記録   作:Aa_おにぎり

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#45 覚醒

 

 

「血を吸ったのさ」

 

 

 

その返答にブレイドはさらに続きを話す。

 

「このアカウント。《月神ノスフェラトゥ》の能力は《天命操作》。自身の持つ天命を他人に分け与えたり、天命の変換が出来る能力だ」

 

すると徐にブレイドは流星のサーベルを抜いて刀身をこちらに見せつける。

 

「そしてこの能力は様々な事に転用できる。それこそ()()()使()()()()()()()()()()()もな」

「っ!!それじゃあ…今までのは……」

 

若干震えながら話すアスナにブレイドは答える。

 

「ああ、全部天命を使って痛覚を相殺していた」

 

そう話すブレイドにアスナ達は驚愕していたが、ここでクラインがふと思ったことを口にする。

 

「で、でもよぉ…それじゃあいずれHPが底をついちまうじゃねぇか」

 

するとブレイドは流星のサーベルを見せながらこう言う。

 

「確かに()()()()()そうなのだろう。だが……」

 

そう言うとブレイドはサーベルを再び構えながらヴァサゴと対峙する。

 

「このサーベルの能力を持ってすれば。その問題も解決される。

この流星のサーベルは天命のほぼ無い宇宙より飛来した隕石から出来た神器故に()()()()()()()()()()()()()()()()。それには天命も含まれているのさ」

 

するとブレイドはサーベルを下におろすとヴァサゴめがけて言い放つ。

 

「さぁ来い!お前の敵は此処だ!さぁ!早く(ハリー)早く(ハリー)早く(ハリー)!」

 

何処か焦っているようにも思えるが。ブレイドの挑発にヴァサゴは乗っかった。重い一発がブレイドのサーベルに打ち込まれる。戦況は完全に拮抗していた。アスナ達はその戦闘に加わることが出来なかった。それほどまでに二人の戦いは熾烈を極めていた。そんな中、ブレイドは内心焦っていた。

 

「(まだか…まだ、なのか……!!)」

 

その視線の先には地べたで横たわるキリトの姿があった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ここは……」

 

キリトは夢と言うにはあまりにもリアルなものを見ていた。此処はSAO時代、ブレイドが住んでいた二十二層のコテージだった。その寝室で寝ている親友の姿があった。

 

「ブレイド……」

 

ブレイドはベットで寝ていたが、居間のテーブルのランタンがついたまま放置されていたその上には何枚もの紙が置かれていた。その紙を不意に悪いと思いつつも覗き込んだ。書いてあるのはレポートのようだった。

 

『攻略組プレイヤーに関する情報』

 

そう書かれた用紙には実に色々な事が書かれていた。攻略組の戦闘スタイルや、使っている武器。弱点など書いてあることは多岐に渡った。これほどの情報を集めていた事にブレイドらしさを感じているとあるレポートに自分のことが綴られていた。

 

『◯月◯日

キリト襲撃のために雇われたプレイヤーの情報から、相手はPoHと名乗るプレイヤーと推測』

『◇月◇◇日

PoHは非常にキリトに対し執着心を持っている模様。当分の間は危険と判断し、キリトと共に行動する』

 

レポートに書かれていた内容に驚いていると突如持っていたレポートが消え、視界が変わる。

 

 

 

 

 

『ブレイド!』

『キリト…悪い、後を…頼むぞ……』

 

其処にはアバターが消滅していくブレイドの姿があった。思わず走り出しそうになってしまうが。足を鎖のような物で繋がれ、動けなかった。それは、今でも時々トラウマとなって出て来てしまう記憶だった。

そしてその後に、半透明のブレイドが俺と一緒に剣を持ってヒースクリフを倒すと、また景色が変わった。

 

 

 

 

 

『この世に完璧なものは存在しないよ兄さん。たとえそれがVRの世界であっても』

『そうだな……』

 

透明な床、目の前には崩壊していくアインクラッドがあった。視線の先には赤い軽装備の修也と、白衣を着た茅場が立っていた。

 

『お前が日本に戻ってきた時は驚いた…もう帰って来ないと思っていた』

『……ま、爺さんから帰ってきて欲しいって前々から言われてたんだよ』

『成程…孫バカとはあの人の事を指すのだろうな』

『ハハッ、それは違いないね』

 

そんな他愛もない兄弟の会話を、俺は後ろから見ていた。何を見させられているのかと思った。すると茅場が視線を右側に向ける。其処には水晶板の上で座っている俺とアスナが居た。すると二人は俺たちの方へと歩いていき、俺に話しかけていた。

 

『キリト君、最後に聞いて欲しいことがある』

『…何だ?』

『彼のことだ…もし彼が現実世界に帰還していたら…あの子を見ていてくれ』

『何故だ?』

『こんな私を現実世界で慕っていた子だ…現実世界で何があるか分からない。だから見守って欲しい』

 

 

 

『見守って欲しい』

 

 

 

やけにこの言葉が耳に残る中。視界がまた大きく変わった。

 

 

 

 

 

『僕より高位のIDだと!?ふざけるな!!』

『ふざけているのはお前の方だ。須郷伸之』

 

次に見たのは旧ALOで須郷にやられていた時にブレイドに助けられた時の光景だった。ヒースクリフと似て違う甲冑に身を包んだブレイドが剣を持って須郷と対峙した時の光景だった。

 

『キリト、お返ししてやれ』

『良いのか?』

『面白いものを見れただけで十分だ』

 

そう言われ、剣を持って須郷を切り倒した俺はアスナの体を支えていた。そんな様子を見ていたブレイドはすっと影のように消えていた。その後、ブレイドは茅場と楽しげに話し、茅場から世界の種子を受け取っていた。

 

 

 

 

 

次に見たのは今ブレイドが住んでいるマンションだった。そこでパソコンと睨めっこしている修也の姿があった。詩乃の姿が見えないことから恐らく旧ALOの事件から死銃事件までのどこかの日なのだろう。部屋の隅では牧奈が椅子に座って目を閉じており、カタカタとキーボードを叩く音だけが部屋に響いていた。その画面に映る虚な目は何処かあの茅場に通ずるものがあった。キリトはパソコンの画面を見るとそこには『Plan Last Judgement』と書かれた画面が写っていた。流暢な英語で書かれたその計画書を眺めキリトは冷や汗を掻いた。

 

「人類の抹殺…!?」

 

まさに悪魔の計画とも言えるその計画書にキリトはさっきの言葉の意味を理解した。

 

「(茅場は…こうなる事を知っていて…俺にあの言葉を……)」

 

すると牧奈がパチッと目を覚ますと修也に報告していた。

 

『マスター。右前腕部に不具合を確認しました』

『…分かった。自己修復は……』

『不可能と判断しました』

 

牧奈がそう言うと修也は工具箱を取り出し、中から始めてみるような工具を取り出した。そして、牧奈の腕に工具を当てると皮膚のカバーが取れ、中から機械仕掛けの骨格が姿を現した。

 

「っ!?」

 

衝撃的な光景を見たキリトはその中身をよく見てしまっていると牧奈が修也に話しかける。

 

『ーーーマスター…』

『なんだ?』

『まだ、続けるんですか?あの計画を…』

『……』

 

そんな牧奈の問いかけを無視しながら修也はパーツの交換をする。そんな中、牧奈は修也に懸命に話しかける。

 

『これは間違っていると判断します…確かに、マスターは今まで色々あったと思われます。妬みや嫉妬からマスターが殺されかけたこともあります…しかしだからと言ってこの世界からそう言った感情を無くすために人が居た痕跡を全て消すと言うのは間違っていると判断します』

 

そんな牧奈の話に修也は答える。

 

『……まだ、何も始まっていないんだ…憶測を言うんじゃない』

『ですが、マスターが()()()()()()人を憎んでいるのは確かです』

『……』

 

その問いに修也は答えなかった。修也はどんなことをしたのかは分からない。だけど、人をこんなふうに思ってしまうくらいに人の汚い部分を見すぎてしまったのだろう。でなければあんな虚な目をする筈がないからだ。

 

だが、そんな修也でも自分は頼りしている。常に自分を陰から支えてくれる()のような風格があったからだ。すると後ろから声がした。自分と同じ声が……。

 

『また、ブレイドに助けて貰うつもりか?』

 

振り向くと、そこには目元が影で覆われた自分がいた。着ていたのはSAOでもお馴染みの衣装だった。すると自分は語りかける。

 

『今までだってそうだった。困った時に、ブレイドに全てのことを丸投げして自分は何も考えなかった。自分はブレイドに何をした?』

「それは…」

 

その問いかけにキリトは反論できなかった。すると目の前にいたキリトは捲し立てるように言った。

 

『いつもそうだった。窮地に陥ってもブレイドがなんとかしてくれる。ブレイドが守ってくれる。ブレイドが代わりに解決をしてくれる。……自分は楽をしていたんだ。自分では何も出来ないからな』

 

自分の鑑写しが放った言葉は的を得ていた。だからだろうか、不意に自分は膝を地面につける。その無力さを感じて・・・・

 

ーーああ、そうか…自分は…甘えていたのか……。

 

ブレイドという人に…いや、ブレイドの持つその優しさに……。

自分が甘えすぎたから…あんな事を真面目に考えてしまったのか……。人を無かった事にしたい世界を本気で考えてしまったのか。

 

「俺が……ブレイドの心を壊してしまったのか……」

 

だったら、いっその事……。

 

そう思って自分の手を大きく振りかぶった時。俺の手首を小さく華奢な手が掴んだ。

 

「だめですよ。早まった行動は」

 

聞き覚えのあるその声に、キリトは驚く。するとその声の主はキリトの腕をそっと下ろすとキリトの眼前に姿を現した。

 

「牧奈ちゃん……」

 

目の前に現れたのは修也が妹と言っていた。機械の腕を持っていた少女、牧奈だった。すると牧奈は言う。

 

「うーん…細かく言うと君の思っているマキナとは違うんですけどね」

「……?」

 

すると目の前にいる牧奈は話し始める。

 

「私は()()()()()()()()に自分の心の中に作り出した()()()()()()()()()()…まぁ、分かりやすく言うと幻影だね」

「っ……!!」

 

目の前にいる少女の答えに驚きキリト。そんなキリトに牧奈は話す。

 

「私は現実世界にいるマキナとは全く違った生まれ方をした、ある意味()()()()()()と言えば良いわね…まぁ、そんな話は今はどうでもよくて……」

 

すると牧奈はキリトと面と向かうとキリトの目を見ながら話し出す。

 

「ねぇ、キリト君。()()()()()修也に甘えていると感じているの?」

「…」

 

そう言われてしまい、ダンマリしてしまうと牧奈は呆れたようにため息をつくと言った。

 

「はぁ…キリト君。この際、私からはっきり言うけどね……」

 

すると彼女はキリトの耳元で思い切り叫んだ。

 

アンタは人の気持ちを理解できてなさすぎるんだよ!!

「っ!?」

 

いきなりの大声に驚いていると牧奈は説教するようにキリトに指を指す。

 

「全部自分で背負おうとすんな!!

修也に甘えていると思うな!!

人の恋心ぐらい理解しろ!!このドアホがぁ!!

そもそもねぇ、修也がここまでアンタを大事にしているのはなぁ……!!

 

 

 

赤羽修也の念願だったからだよ!!」

「!?!?!?」

 

少女から語られる暴露に再び驚愕する自分。牧奈はそんな自分を見ながら捲し立てる。

 

()()茅場晶彦ですら解決できなかった問題…

 

 

 

それは、『同い年の子と楽しくゲームをする事』

 

 

 

こればかりはどうしようもならなかった…当たり前こそ修也にとっては最大の幸せだった…それこそ、今までの素晴らしい業績を投げ打ってでも望むほどにはね……」

「……」

 

恐らく、修也のことを最も詳しく知っているであろう裏の人格とも言えるべき存在から語られる事実(過去)、それはあまりにも非凡な話だった。

自分が中学生している時に彼は大学に入学していたのだ。普通じゃあ考えられない話だった。学校に通う傍ら世界的企業で新技術を作る日々。俺たちの知らないところでそんなことをしているなんで思っていなかった。そんな過去の中には巧妙な手口で修也を懐柔しようとする汚い奴らもいた。

 

「ーーーとにかく、こんな人生を送って来たんだからあんな事考えるのは当たり前なの。

…それにね、修也はあの世界(アインクラッド)で大きな出会いをした……君のことさ」

「俺が…?」

 

その疑問に少女は頷く。

 

「そう、君は修也にとって初めて同い年で同じ立場で話す事の出来た友人…いや、相棒なのかな?……確かに大学生の時も修也を気にかけてくれる人はいた。だけど、『同じ立場に立って自由に話す事のできる人』ってのは今まで出来なかったんだ」

 

すると少女はため息混じりにキリトに話す。

 

「まぁそんな訳で、茅場が君に贈った『修也を見守って欲しい』ってのは『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()見守ってほしい』って言う意味があんだよ」

 

そのくらい良く考えろと愚痴る少女に、俺は思わず呟いてしまう。

 

「だけど俺は…」

「”だけど”じゃないの。修也にとって貴方はかけがえの無い。変えようのない相棒なの。人生にとってのね」

 

そう言うと少女は自分の後ろの方を指さしながら言う。

 

「分かったなら行くよ。待っている人がいるから」

 

いつの間にか足元の鎖は消えていた。俺は立ち上がると少女に腕を引っ張られる。その先に光る一筋の光の先に一人の青年が待っていた。

 

「ユージオ!!」

「キリト、遅いじゃないか」

 

いつも通り陽気に話しかけるユージオに思わずキリトは聞いてしまう。

 

「…ユージオ……」

「ん?どうしたんだい?」

「俺…このままでいいのかな……?」

 

そう問うとユージオは答える。

キリトの思う問い、これからもブレイドに困った時に助けてもらっていいのか、ブレイドに相談をしてもいいのか。

そんな彼の思う問いにユージオはニコリと笑って答える。

 

「……いいんじゃない?ブレイドが言っていたじゃないか『無理が通れば道理も引っ込む』ってさ。僕をあそこから連れ出してくれたのもキリト達だ。僕も、二人に追いつきたいから頑張った。カセドラルを登ってアリスに出会えた。最高司祭を倒した。

それにブレイドや、他のみんなが外で戦っている。だから……

 

 

 

立って、キリト…僕の親友…

 

 

 

……僕の英雄」

 

それと同時に、俺はユージオに手を引っ張られ、同時に背中からも体をぐいっと押された。

 

「行ってらっしゃい……《黒の剣士》」

「……ああ、行ってくるよ」

 

最後に少女はニコリと笑うと二人を見送っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ぜぁぁぁあああ!!」

「うらぁぁぁ……嗚呼あ!!」

 

ブレイドは徐々に疲れの色が見え始めていた。いくらスーパーアカウントとは言え《天命操作》はじわりじわりとフラクトライトに負担をかけていたのだ。思わずサーベルを落としそうになってしまうが、両手でそれを抑える。

 

「どうしたぁ?!それで終わりかぁ?!」

 

ヴァサゴはどこか余裕そうに友切包丁を手に持って叫ぶ。対峙するブレイドは鼻から血を流し、それを拭っていた。

 

「まださ……」

「へっ…終わりにしてやるよ……」

 

そう言うとヴァサゴは急接近する。普通であれば受け流す筈が今までの疲労から対応が遅れてしまった。

 

「っ!!」

「死ねぇぇぇえええ!!」

 

そしてヴァサゴがブレイドに大きく振りかぶった時、

 

「これは……」「なぁっ…!?」

 

自分を囲うように金色のシールドが放たれ、ヴァサゴの剣を防いでいた。そのことに驚愕する二人。すると金色のシールドはヴァサゴを跳ね飛ばした。その事に驚愕するも、ブレイドは一瞬で口角を上げ、言い放った。

 

『……随分遅いじゃないか…なあ?」

 

後ろにいるその気配に向かって問いかけると、いつもの調子の声が返ってくる。

 

「悪いな…迷惑をかけて……」

「ふんっ…このくらい慣れっこさ……」

 

そう言うとカツカツと地面を踏む音が聞こえ、その姿を見た者は全員が涙していた。

 

「ーーっ…キリト…君……!!」

 

そう言うと黒服の剣士はアスナに振り向くと言った。

 

 

 

「ただいま……アスナ」

 

 

 

待っていたその言葉にアスナは涙する。

 

「おかえり…キリト君」

 

英雄が、帰ってきた。

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