非公開にした「もう一つの学園都市」から文章を流用してます。
世界樹を介した魔法世界と麻帆良学園都市の狭間にて、狩衣を着た一人の少女が壁に寄りかかって歩いていた。目的地は自分の祖父のいる場所だ。
「ハァ……ハァ……」
「このかさん!」
魔力を使い果たして息を切らし、今にも気を失ってしまいそうな近衛木乃香を幼馴染の雪広あやかが抱き止めた。
「いいんちょ……ウチな、きょういちくんの傷……ちゃんと治したんよ。これで……きょういちくんがあの悪い人、やっつけてくれるよ。アスナもせっちゃんもネギ君も……みんな、もう大丈夫やよ」
「分かっています。今はゆっくり休んでください……」
このかに肩を貸して彼女の祖父であり麻帆良学園の長、近右衛門の元へと向かう。その途中にあやかは空を見上げて世界樹を基点に生じた空間の歪みを見る。
歪んだ空間の向こう側……魔法世界の墓守り人の宮殿に想いを寄せる幼馴染が今も黒幕と戦っているもう一人の幼馴染を助ける為に向かっているはずだ。
「京一さん……」
あやかには祈る事しかできない。他に何ができるわけでもない。彼女が介入できるような領域ではないのだから。
そうしてこのかと共に近右衛門の元へと辿り着くと見知ったクラスメイト達の多くがそこに集まっていた。
真祖バアルを撤退に追い込んだ事でこの場での戦闘は終結を迎えた。アーウェルンクスはネギと和解したフェイトを除いて全滅。バアルが召喚した化け物達も多くが停止。後々どうにか処理する必要はあるだろうが、暫くは大丈夫だろう。
しかし根本的な問題は全く解決していない。全ての元凶をここで討たねば魔法世界どころか太陽系全体が微睡みの夢の中へと沈むのだ。
3-Aのクラスメイト達はそんなラスボスとの戦いに臨んだ友人達への心配でいっぱいだった。
「あのラスボスってネギ君のちょー強いお父さんの身体乗っ取ってんでしょ?しかもアスナ以外がトドメ刺したら今度はその人が乗っ取られるって」
「ネギ君だってフェイトと戦ったばっかりなのに……」
そんな彼女達の不安を吹き飛ばすかの如く、木乃香は確信し切ったような表情ながらも笑顔で断言する。
「大丈夫やよ。だってきょういちくんがおるもん」
強がりなどではない。本気でそう信じている笑顔で言い切られた仲間達は何も言えなくなる。しかし彼女達の目に光が灯り始め、何処か安堵したかのような表情に変わっていく。
「そう…だよね。京一君が負けるわけないもん!」
「だよねだよね!むしろ京一ならラスボスも瞬殺しちゃったりして!」
「いやいや!それじゃ京一君乗っ取られちゃうよ!?」
まき絵、裕奈、アキラが漫才染みたやり取りをしている傍らで千雨が空間の歪みを見て、ポツリと呟く。
「信じるしかねーよな。京一達があのラスボスやっつけるのをよ」
そこに素早い動きでその場に降り立つ者がいた。
木乃香の父、近衛詠春だ。見れば彼もズタボロだ。気もほとんど残っていない状態で虚空瞬動を駆使してここに来たのだろう。近右衛門は傷だらけの身体に鞭打ちつつも立ち上がり、結果を問う。
「お父様!」
「婿殿、真祖バアルは……」
「すみません、逃げられてしまいました……。十蔵さんが追ってはいるのですが……」
芳しくない答えに近右衛門の顔が少しばかり苦虫を噛み潰したようなものになる。いや、あの吸血鬼の真祖を相手に重傷者が出ようとも死者が出なかっただけ上出来なくらいなのだが、それでも大き過ぎる不安要素が残ってしまった。
傷だらけの近右衛門と詠春の会話に割り込む吸血鬼がいた。
「……それは退けた、と言うんだよ。四対一と言えど吸血鬼の真祖……それも『貴族』を相手に……。むしろ良くやったものだ。奴はアーウェルンクス共などとは比べ物にならんからな」
「エヴァンジェリン……」
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
彼女もアーウェルンクスや麻帆良に出現したバアルの召喚魔への対処を終えたのだろう。エヴァンジェリンは歪む空間の先に視線を向け、少しだけ愉快そうに述べる。
「まさかぼーやが私の
「バアルに関してはもう今は仕方があるまい。それよりもヨルダじゃ。頼むぞ…!最早お主だけが頼りじゃ……京一…!」
「ヨルダァァーーー!!」
雷速で迫るネギの剛拳を紙一重で躱し、そのまま膝蹴りをネギの鳩尾に叩き込み、肘打ちを頬に減り込ませて吹き飛ばす。見事にカウンターの餌食となったネギは牽制で無詠唱の魔法の射手を1019本程飛ばすがその全てが気合いで弾かれてしまう。
その気合いの壁を作った一瞬を使い、『巨神ころし』をその手に顕現させ、気合いの防壁が消えた瞬間を狙って投擲。しかしそれは無詠唱の雷の斧で縦に両断されて消し飛ぶ。
雷速で動こうが、そのスピードを活かして間髪入れずに魔法を叩き込もうが、ナギ=ヨルダの前には無力同然だった。
(雷天双壮でもまるで通じない……!)
明日菜の……『黄昏の姫御子』の力でヨルダの本体である小惑星アガルタからの魔力供給を絶って尚、この力。ナギ・スプリングフィールドを依代にしたからこそと言えるだろう。少なくとも大戦時の依代では明日菜がいるこの状況下でヨルダには勝ち目が無かったはずだ。
愕然とするネギ。その隙をナギ=ヨルダは見逃さない。一瞬にも満たない時間で距離を詰め、ネギの首を掴み、締め上げつつもその腹にモロに拳を減り込ませる。
「カハッ……!」
あまりの痛みに意識が飛びそうになる。中身は別人でも父親の手でこんなにも容赦なく殴られている事実に心が折れそうだ。組手でも稽古でもなく、正真正銘の死闘で。
身体ではなく心の痛みでジワリと涙まで出てくる。
「オイ、父親の身体でその息子を痛め付けるのは悪趣味が過ぎるぞ」
青筋を立てながらそう言って仕掛けたのは甚兵衛だった。彼の特殊能力、『イレカエ』を駆使してネギを回収。そしてまた『イレカエ』を使い、背後に現れ、そこに気を取られた瞬間、またも『イレカエ』でナギ=ヨルダの真横でありながらも死角に位置する場所で剛腕一撃。
だがナギ=ヨルダは甚兵衛の死角からの一撃を見もせずに完璧に受け止め、次の瞬間には合気の如く、引き寄せ受け流す。そしてフラついた隙に顔面に膝蹴りを叩き込んで後方へ吹き飛ばす。
それでも彼らは諦めない。明日菜、ラカン、刹那の剣士三人が甚兵衛を吹き飛ばした直後を狙って一斉に斬りかかる。
しかしヨルダはナギの身体スペックを使い、三人の包囲網を一瞬で抜け出し、刹那に魔法の射手、ラカンにフルパワーの蹴りをそれぞれ叩き込んで吹き飛ばした。
多対一でありながらも優勢を保っているのはナギ=ヨルダだ。ヨルダは明日菜の腹を蹴っ飛ばして無理矢理距離を空け、片腕を明日菜に向ける。
「うっ…」
「我が末裔、『黄昏の姫御子』よ……。お前はもう必要ない」
そう言い切って明日菜に向けて雷の暴風を解き放った。完全魔法無効化能力を持つ明日菜はハマノツルギを振るって魔法を掻き消そうとするが、消えたそばから魔法が放出され続け、明日菜は消し続けなければならず、その場から動けない。
「う…!ああ……!!くぅ…!」
雷の暴風をハマノツルギで受け止めつつも掻き消し続ける明日菜。しかしその砲台の勢いは留まる事を知らない。完全魔法無効化能力を以ってしても押し切られてしまうのではないかと思える莫大な魔力。押し切られても明日菜はなんて事ないが、ネギや刹那、甚兵衛などは余波だけでも一溜りもない。
背後に回り込んだラカンの顔に裏拳。一瞬怯むもののラカンはそのままヨルダに拳を連続で叩き込み続ける。ナギ=ヨルダは雷の暴風を明日菜に向け続けつつも、片腕でラカンとの殴り合いを繰り広げている。
魔法の射手で吹き飛ばされ、未だその痛みに悶える刹那はどうにか立ち上がろうとしながらナギ=ヨルダを睨む。
「つ、強い……!どのアーウェルンクスよりも……!」
刹那はこれまで死闘を繰り広げたヨルダの駒、アーウェルンクスシリーズとの戦いを思い返すがやはり今のナギ=ヨルダ程の力を持つ者はいなかった。
(これがサウザンドマスター……これが僕の父さん……!いや、違う……!今はもう、そこに父さんはいない……ここにいるのは『始まりの魔法使い』ヨルダ・バオト……!)
ネギも痛みに耐えながら現状を打破すべく、必死に頭を働かせる。ここで勝てなければ人類は終わる。例えナギを救えずとも勝たねばならない。
そんな時だった。上空から誰もが知る声が響いたのは。
「明日菜!!」
真上から叩き込まれた闇の吹雪がナギ=ヨルダの雷の暴風を押し潰した。ナギ=ヨルダはラカンを弾き飛ばし、手から放つ魔法を止めてその犯人に視線を向ける。そのおかげで明日菜は迫っていた雷の暴風を消し切る事ができた。
上空から凄まじい勢いで降り立ち、ナギ=ヨルダの前に一人の青年が立ちはだかる。目の前に立つお互いに対し、メンチを切り合いつつも、後から来た青年は後ろで消耗した仲間達にもしっかりと意識を向けていた。
「やっと来たか……」
ラカンの呆れたような一声が全てを理解させた。刹那の眼には誰よりも頼りになる背中が見えていた。
「京一……!」
赤羽京一がここに到着した。それだけで明日菜も刹那もネギも顔が綻んだ。
「明日菜も刹那も大丈夫みてぇだな」
チラリと明日菜と刹那に視線を向けてからまたナギ=ヨルダに注視する。甚兵衛が半分呆れたような声を上げる。
「オイオイ嬢ちゃん達だけか?おっさん達の心配はしてくれねぇの?」
「どーせアンタら不死身だろ」
「オイオイ、俺は別に不死者じゃねーぜ?」
「アンタは不死人顔負けの不死身だろーが筋肉バカ」
こんな状況でふざけ半分の軽口を叩くラカンをスルーして甚兵衛は京一にコンディションを問う。
「バアルにやられた傷は大丈夫なのか?こっちでも見えてたぞ」
「ああ。このかに傷は全治させて貰った。気も回復したし、疲れも吹っ飛んだ。魔力は……ま、大丈夫だろ」
「っ!そうだ京一!このかお嬢様は!?」
「無事だよ、ジジイの元で休んでる。俺の治療で魔力がスッカラカンになっちまったからな。……尤も、ここで勝たなきゃこのかの献身も無駄になっちまう」
そして最後の戦いに臨む前にネギに最終確認を取る。
「ネギ!
「は、ハイ!でも使う暇は……」
「なら良い。そんじゃま、さっさとお前の親父から追い出すか」
明日菜は全てを背負ってここに立つ幼馴染を心配して質問する。
「京一、勝てるの?」
「勝つ。魔法世界も地球も……世界全部丸ごと守り通す。絶対だ。つーか心配するならナギさんが死なねーかとか俺が乗っ取られねーかとか、その辺にしてくれよ」
徐に目の前のナギに右掌を向けるとナギもまた無言で右掌を京一に向ける。そして迸る莫大な魔力の嵐。両者同時に無詠唱で極大呪文を発動する。
「「千の雷!!!」」
ぶつかり合う二つの千雷は墓守り人の宮殿を溶かしかねない程の熱量を放つ。京一は周囲にいた仲間達に距離を取らせるべく、風の魔法で少しばかりネギ達を後方に押し出した。
ネギだけは太陰道でちゃっかり千の雷の余波を吸収して己の力にしていたが。
上空へ飛び出す二人の強者。拳がぶつかり合う度に強い衝撃が空間を揺るがし、漏れ出る魔力は宮殿に亀裂を走らせる。殴り合いによって互いに叩き込まれる衝撃はダンプカーの比ではない。
その上で魔法と格闘を織り交ぜた高速戦闘を繰り広げる京一とナギ。そんな二人の激戦を見て刹那は戦慄する。
「なんて戦いだ……!次元が違う……!」
「あいつらは特殊な技法なんざ一切使っちゃいねえ。精々咸卦法くらいのもんだ。とにかく魔力といい、気といい、素のステータスが完全にバケモノのそれなんだよ。1300年以上生きてるが普通の人間であそこまで行ってるような奴らなんか他に見た事ねぇよ……。特に京一なんかバアルと戦ってのほぼ連戦だろ?あいつら本当に人間なのか?」
不死者である甚兵衛から見ても京一とナギは規格外の一言だった。というかドン引きしている。
「ガキの頃から俺様と互角にやり合えたナギがあのラスボスと融合しちまってるからな……。奴の力はもう20年前の大戦時とは比べ物にならねえ。あの
甚兵衛やラカンの評価は概ね正しいだろう。いや、素の実力ならばラカンもあの場には立てるだろう。しかしラカンは魔法世界人だ。ヨルダの被造物たる彼はヨルダ戦において絶対的不利を背負っている為にどうしてもヨルダには勝てない。むしろナギ=ヨルダとここまでやり合えていたのがおかしい。
「ま、なんとかなんだろ。なんつってもあの野郎はこの俺様に剣をブッ刺した程の男だ!」
保証の仕方が大分ズレている気がしないでもないが、それだけ京一の強さを認めているという事だ。全てを託すに足ると。
そしてその直後京一はナギの右頬に会心の一撃を見事に叩き込んだ。
「ぶほっ……やるじゃねーか小僧」
「サウザンドマスターの力がこの程度なわけねー……。依代が力を出させちゃくれねぇか?」
「え……」
「ナギ……まだ本気じゃないの?」
刹那と明日菜は京一が放った衝撃的過ぎる言葉に固まる。一方でラカンはその言葉に違和感を感じた。というか京一が来る前後辺りから片腕だけとは言え、ラカンとの殴り合いが成立していた。むしろこれはヨルダの力が弱まっているのではないか?
(ヨルダが弱体化して、ナギの野郎が少しずつ奴の支配に抵抗してんのか?)
優秀な頭脳を持つネギが真っ先に真相に辿り着く。
「あ……共鳴り!バアルがあんな事をして人が減ったから、ヨルダの力も削がれていってるのか!だから父さんも抵抗を……」
この状況を生み出した要素にいくつも心当たりがある。ヨルダの能力、目的、最大のイレギュラーである真祖バアル。これだけ条件が揃っているのなら確かにヨルダが弱体化しているのも頷ける。
「おのれ……どいつもこいつも何処までも邪魔をするか」
ヨルダはナギの手を使いすくそばに幾重にも積み重なった魔法陣を展開し、ヨルダの魔素から編み出されたドス黒い泥のようなものを出す。そこから一人の人間が這い出るかのように召喚された。
「まさかまだ使徒がいんのか!?」
「依代に邪魔されてのタイマンじゃ京一に勝てねーから、出し惜しみは無しってか。いやこういう時の為の切り札か?」
甚兵衛の推測は当たっていた。呼び出されたヨルダの使徒はこれまで倒したアーウェルンクスや他の使徒とは比較にならない存在だった。正に切り札と言える。
新たに現れたヨルダの使徒は女性だった。その手には一本の長剣が握られており、その魔力を込められた剣を一振りすれば斬空閃にも似た魔力の鎌鼬がネギ達に向けられる。
だがその剣閃が届く前に京一が黒棒を用いてそれを弾いた。その目は一切笑っていない。
「あ、ああ……」
ネギの声が掠れていく。その場に現れた人物を見て誰よりもショックを受けているのは間違いなく彼だろう。見ればラカンも珍しく表情を固めており、静かに凄まじい怒気を発していた。
「下衆が……」
「こんなのって……」
明日菜もまたヨルダへの怒りを募らせる。ネギへの仕打ちだけじゃない。彼女は明日菜にとっても心から慕う相手だったからだ。
ナギ・スプリングフィールドの隣に現れたヨルダの使徒……その名をアリカ・アナルキア・エンテオフュシア。
ウェスペルタティア王国最後の女王にしてナギの妻。そしてネギ・スプリングフィールドの母親である。
「お母さん……」
刹那は激昂して刀を構える。
「ヨルダ!貴様はどこまで!!」
京一は静かながらも怒りを隠し切れない声で想いをぶつける。何を言っても無意味だと知りながらもそれでも言わずにはいられない。
「……前から思ってたけど、人の苦しみを消したいとか主張してんのに言ってる事とやってる事が全然違えんだよお前。ババアや明日菜への仕打ちだったり、戦争起こして死者や難民を万単位で出したりよォ。お前が人を苦しめてんじゃねーか」
世界……そして人類の未来を懸けた戦いは最終局面を迎えた。京一はナギ……いや、その中に宿るヨルダへと中指を突き立てる。
「ぶっ飛ばしてやるよ、この老害ババア」
京一の宣言と共に魔法界における最強夫婦が彼らへと襲い掛かった。
****
「待て待て待て」
「あん?」
「あん?じゃねーよ。何だこの急展開。いきなり最終決戦みたいなノリで文章にされても何が何だか分かんねーよ」
話の腰を折り、読者の心情をそのままツッコミにして代弁した古市を京一は呆れながら諭す。
「馬鹿め。古市お前馬鹿め。過去の回想シーンだと分からんのか。去年の八月、魔法が全世界に公開された大事件の話だろうが。人類全てを微睡の夢の中に沈めようと目論む『始まりの魔法使い』とその野望を阻止すべく戦った俺達
「さも当たり前のように語られたって読者が世界観掴めてねーんだよっ!!今さらっと読者の誰も知らねーグループ名出したって分かんねーよ!!読者舐めんなっ!!」
ここは日本一ガラの悪い土地、石矢魔……ではない。埼玉県に位置する魔法使いの本拠地、麻帆良学園都市である。
そしてその学園の学生寮にて話しているこの二人は別に古い付き合いのある友人ではない。つい最近知り合っただけの仲だ。
先程からツッコミに妨害されて話を中断させられている彼の名は赤羽京一。この麻帆良学園都市の麻帆良学園高等部に通う学生であり、そこに所属する魔法使い。世の為人の為、陰ながら魔法を使う魔法界で最も尊敬される存在、『
そしてさっきからメタ発言を交えたツッコミのうるさいこの青年の名は古市貴之。ついこの間、日本一の不良校、石矢魔高校から転入して来た『転校生』である。
「……つってもなぁ、これからお前達がこの学園都市で過ごす上では魔法について世間一般よりも深く知っとかなきゃ不味いぜ?」
「そりゃそうだがなんでお前の武勇伝を延々と聞かされなきゃなんねーんだよ。そんなのもう世界中の人が知ってるよ。何度も特番やってたし」
「んだよお前ー。誰が悪魔に憑かれて崖っぷちになったり、家がぶっ壊されたりしたお前らを助けて保護してやったと思ってんだよー」
「うぐ……」
拗ねたようにグチグチ言ってくる京一に古市は反論できない。割と全て事実だからだ。自宅が半壊された後のフォローをして貰った恩がある為、あまり強くは出れない。
「とにかく、魔法に関する知識は覚えて貰うぞ。お前達が関わる事になっちまった悪魔についてもな。なんせ……」
「ビエェェェェェン!!!」
「ギャアァァァァァァァァァァッ!!」
京一が話を続けようとしたら寮の外から赤ん坊の鳴き声と古市の友人の悲鳴、そして高圧電流が放電された音が響いてきた。
窓の外に目を向ければ中庭にて黒焦げになって倒れ伏す古市の友人、男鹿辰巳の亡骸がそこにはあった。彼もまた石矢魔高校からの転校生である。
「……なんせもうこの一件は旧世界と裏金星……魔界の全面戦争になりかねない程の厄介事になってんだからよ」
京一の視線の先では未だにぐずっている緑色の髪をした悪魔……魔王の赤ん坊が男鹿の頭の上に座っていた。
ケツ丸出しで。