side京一
4月2日。新学期への期待に胸を膨らませる4月の始めの方の日。それはこの麻帆良学園都市の学生でも例外ではない。……結局はただの春休みだが。
そんな日の早朝、俺は日課の朝瞬動10kmランニングを終えて一休みしていた。
「おはよーっ、京一!」
「おう明日菜。今日も早いな」
オッス。俺の名は赤羽京一。知っている人はお久しぶり。知らない人は初めまして。過去べるぜバブのオリ主として小説を書かれてエタって何回もこうして主人公使い回しを受けているどこにでもいる普通の高校生だ。正確には高校生と言えるのは数日後の入学式からだが。
「どこにでもいないわよ」
「モノローグにツッコミ入れんなよ。つか心読むな。そもそも読心なんてできたっけお前?」
「いや読んでないけどなんかツッコまなきゃいけない気がして……」
「なんだそりゃ」
一回目はべるぜバブの
え?なんでリメイク前の能力を把握してるかって?アレだ。REBORNでいう白蘭のパラレルワールドの共有だとかそんなんだ。多分。嘘です。
そんな俺に話しかけてきたのは最早ネギま!オリ主のテンプレとなっている幼馴染、物語のメインヒロイン、神楽坂明日菜だ。俺の
そこ、ネギから奪ったとか言うな。代わりにネギはウチに居候させてやってるから。
ところで聡明な読者の皆さんならお気付きだろう。俺とその幼馴染である明日菜が
実はもうネギま!の原作期間の魔法世界編、去年の夏の出来事なんだよね。もう終わってるんだよね。
詳しい事を話すと俺は気付いたらこの『魔法先生ネギま!』の世界に転生していて、麻帆良学園都市で生活していて、原作ヒロインの神楽坂明日菜の幼馴染になっていた。正確には3-Aと同年代だという事に気付いたタイミングで明日菜が転入して来たんだが。
まぁそこからの流れはなんとなく分かるよな。紆余曲折あって明日菜と仲良くなった俺はネギま!原作で明日菜が辿った未来を思い返す。
本人も覚悟するにせよ、目覚めれば当時の友人は誰一人生きてはいないし、不老不死になったはずの弟分・ネギはなんでか死んでるし、明日菜にもう一度会いたい一心でその100年を生きた親友あやかも火星独立戦争のせいで明日菜の覚醒が31年も遅れた事で再会は叶わずに寿命を迎えてしまった。
本当にこんな未来はあんまりだ。
しかもこれは数あるパラレルワールドの一つでしかないというのがまたキツい。『UQ HOLDER!』ではその空白の131年が描かれ、明日菜がいない事でヨルダ討伐ができず、貧富の差や諸々で人類の情勢は地獄絵図に。ネギも父親を救えずにヨルダに乗っ取られるし、苦労してヨルダを倒しても我が師匠ことエヴァンジェリンが犠牲になって1万2000年後にようやく復活して……仲間の不死者以外は誰もいなくなってしまったという煽りを受ける始末。
しかもネギま!で描かれた明日菜が目覚めた後の世界とはまた別の世界線だったから、そっちでネギが死んだ理由とか結局分からず終いだし。あっちは普通に師匠生きてたからね。どうやってヨルダ倒したんだ?まさかヨルダ倒さずに明日菜過去に送ったとかないよね?そっちでも近衛刀太が上手くやってくれたんだよね?
で、そのハッピーエンドに繋がる世界線は明日菜が超の協力で封印された直後の過去に戻ってヨルダ倒してナギ・スプリングフィールドを助けて一応のハッピーエンドを迎えるものの、それなら墓守り人の宮殿で眠ってる方の「今の」明日菜はどうなんのって話だし。目覚めた後、未来から帰って来た自分がこの自分をほっぽり出してみんなとワイワイ幸せに過ごしましたなんて知ったらどう考えても病むだろ。新たなバッドエンドを迎える気しかしねえ……。
……と、
じゃあ何とかして
で、実際なんとかなった。簡単に言えば人柱の代案を用意する事で明日菜を犠牲にする必要がなくなった。その際にラスボスのヨルダも倒したり、世界に魔法が公開されたりしたがまぁ気にしなくて良いだろ。
「……大変だったなぁ」
「何よ急に」
「こっちの話だ」
俺は自販機で買ったオレンジジュースを朝から新聞配達で一働きしていた明日菜に投げ渡す。これくらいのサービスはするよ、俺。
「ほれ」
「ありがと」
器用にジュースをキャッチした明日菜は早速ジュースを飲み始める。ずっと走って新聞配達してたんだから喉は乾くわな。
「もうじき高校生活が始まんのかー。高校からはまた共学だからお前らと同じ学校なのは普通に嬉しいな」
「そうは言ってもアンタはネギが麻帆良に来た時は一時期、女子中のウチのクラスで授業受けたじゃない」
「あー、共学化のテストケースとか言ってジジイが無理矢理ネギのサポート押し付けて来たアレな。中二の三学期だけだったけど、今でもよくあんな滅茶苦茶通ったと思うよ」
明日菜が再び魔法の世界に足を踏み入れるきっかけになったネギの赴任時の話で盛り上がる。正直あの頃は本気で悩んでたんだよな。明日菜をまた魔法に関わらせるのは死ぬ程嫌だったけど、明日菜がいなきゃヨルダを倒せないから色々と詰むからな。
「……ホントに、色々あったよな」
近くの木々を揺らす心地良い風が吹く。ついこの間中等部の卒業式やって花見しながら馬鹿騒ぎしていたのに、それが遠い過去のような錯覚を覚える。
「そろそろ一旦帰るわ。朝飯用意しねぇとネギはともかく小太郎が飢える」
「そうね、私もそろそろ帰んないと。このかが朝ご飯用意して待ってるだろうし」
二人で軽くランニング(自動車並の速度)しながら、ついこの間移動した高等部の学生寮に向かう。当然男女別だが案外近い所に建っている。
すると帰り道にて見覚えのある路面電車を改装して開かれている店を発見する。周りにはちらほらと客が集まり出している。こんな朝早くで事前告知無しでも客がそこそこ集まる店……それは麻帆良でも屈指の人気を誇る中華屋台だ。
「あれ?超包子?」
「珍しいな。学祭の期間でもねぇのに開いてるなんて」
超包子。超鈴音、葉加瀬聡美、古菲、絡繰茶々丸、そして四葉五月……超一味が開く店でとにかく早くて安くて美味いという学生に嬉しい店。それ故に麻帆良中の学生達はこの店が開かれると我先にと集まり出す。かく言う俺もファンの一人だ。
丁度良いし、朝飯はここで買って行くか?
そう考えていると俺と明日菜に気付いた古菲と茶々丸が駆け寄って来る。
「京一さん、アスナさん、おはようございます」
「おはよーアル京一!アスナ!」
「おはよう古ちゃん、茶々丸さん」
「おう!おはよ」
和やかに挨拶を交わすと古菲が試作メニューを渡してくる。超一味は偶に俺にこうして試作メニューを無料でくれたりする。店の設営や仕入れ、諸々の事を手伝っているからだが。まぁ今回は何も知らなかったから何もしてないんだけど。
「京一。コレ今朝店で作った新しいメニューネ。私のアイディア入ってるから試してみるアルヨ。ネギ坊主達の分もアルネ」
「サンキュー
超包子の試作メニューを古菲から受け取り、再び帰路に着こうとすると、今度は幼馴染の一人、雪広あやかが凄い形相で泣きながら割り込んで来た。あれ?今こいついたか?
「くーふぇさんんんっ!!」
「うおっ!?何アルかいいんちょ!?いきなり!!」
「どっから出て来たお前」
「あぁぁ貴女という人はなんと恐ろしい!!さりげなく流れるように京一さんに手作り料理を振る舞うとは!!魔性の女ですか貴女は!!」
「凄え言われようだな」
ぶっちゃけこれだけの事でここまで言うこいつの方が恐ろしい気がする。いや思い込みが激しいだけか?
「抜け駆けは許しません!」
指パッチンと共にズラリと並んで現れたのは雪広家お抱えの一流シェフ達。即席用のキッチンまである。ここ思いっきり超包子の店の前なんだけど。営業妨害じゃない?
因みに彼らを集めた理由は金に物を言わせて俺に高級料理を振る舞う為ではない。
「お待ち下さい京一さん!今この私が腕によりをかけて料理の真髄をご覧に入れます!!」
「お、おう……」
こいつはあくまでも自分で料理して俺に手料理を振る舞ってくれる。シェフ達はそのサポート役だ。毎回思うけど無駄遣いが過ぎない?
数分後、あやかの背後のテーブルにはズラリと美味そうな洋食が並ぶ。調理も盛り付けも早過ぎない?
「さあ京一さん!どうぞ召し上がって下さい!雪広流愛妻スペシャル手料理フルコース!!」
「いいんちょさん、京一さんは今古菲さんから朝食として試作メニューを貰ったばかりなのですが」
「良いよ茶々丸。持って帰って昼飯にでもするから」
流石にここまでやって貰って放置はできないので折衷案を出すとあやかは感極まったような表情で嬉し涙を流しながら拳を高く振り上げる。
「京一さん……私の為にそこまで……!この雪広あやか!生涯に一片の悔いなし!!」
「相変わらず安いなお前の生涯」
世界でも有数の財閥のお嬢様なのに人生がここまで安いとはこれ如何に。あやかは顔を真っ赤にして興奮した様子でキス寸前まで俺に顔を近づけ、手を握って迫って来る。
「そのお気持ちだけで私のこれまでの全ては報われましたわ!!」
「報われてないぞ」
「結婚しましょう!!!」
「あやかちゃん、俺の話聞いて」
こいつは小学生の頃からこうしてグイグイと迫って来る。ここまで熱烈に好意を寄せられて悪い気はしないけど、未だにこいつがショタコンに目覚めなかった事に違和感を感じる。
「コラーいいんちょ!アンタこそ抜け駆けすんなー!」
「お黙りなさいおサル!!」
「何よ受けて立つわよ!」
今まで空気になっていた明日菜が俺とあやかの間に割り込んで両手で突き離す。すると邪魔をされたあやかはキレていつものように明日菜と取っ組み合いのリアルファイトに突入。
色々とぶっ飛んでる麻帆良学園都市とはいえ、朝っぱらから道端でギャーギャー騒ぎまくる明日菜とあやか。見れば超包子に集まってる客達もどっちが勝つのか賭けを始める始末。これじゃ教室にいる時と変わんねーな。さっきの錯覚はやっぱ錯覚で合ってるわ。
「……こいつら本当に高校生なのか。中学生気分が抜けてないなんてレベルじゃねぇぞ」
いくら高等部に上がってもこれでは非常に不安だ。こいつら高校卒業までこのノリでいるつもりなのか?元3-A全員に言えそうなのがまた不安要素だ。
「……平和だなー」
まぁ良いか。
この馬鹿騒ぎを変わらず続けるこいつらが見たくて色々頑張ったとこもあるからな。明日菜とあやかの関係に再会できない涙なんて似合わない。こうして喧嘩友達やってるのが、
そこで俺はようやく背後からの視線というか気配に気付いた。まぁ超包子が開いてるなら居てもおかしくはない。
「おはよう馬鹿弟子。今日もモテモテで何より」
「嫌味かロリババア」
ぶん殴られた。
俺の背後で超包子特製のアイスクリームを食べていたのは俺の魔法・戦闘における師匠であり、明日菜達のクラスメイト。その実態は600年を生きる吸血鬼の真祖のロリババア。エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
「しかしますます争奪戦は激しくなっているようだな。あの二人は以前と大して変わらないとして、あの夏休み以降は、全員積極性が増しているように見える。やはりお前が神楽坂明日菜の為に色々やっていた事が明るみになったのが原因で危機感でも感じたか」
「最近は木乃香が一番ヤバい。近衛家のコネをフルに使って俺を囲い込みに来てる……」
なんなら抜け駆けと言える行為が一番多いのが木乃香だ。大抵はハルナや和美なんかに察知されて妨害を受けているが、その度に確かな舌打ちが聞こえている気がするが……きっと気のせいだ。木乃香は舌打ちなんてしない。うん。
「……京一」
「ん?」
「前から思っていたが、
「あ、馬鹿にすんなよ。とっくに次の目的はちゃんとあるぞ。良いか、俺は………やっぱ内緒」
「ん?そこまで言っておいて内緒はあるまい?」
その瞬間、このババアは俺に関節技を仕掛けてきた。しかもご丁寧に魔法で先んじて俺を拘束して。もう魔力の封印も無いからこのババア、フルパワー発揮し放題なのである。
「いでででで!!ギブギブ!!」
「なんだこれしきの事で情けない。ほらさっさと次の目的とやらを言え」
「内緒っつってんだろ!楽しみに待っとけ……いやぁぁっ!痛い痛い痛い!誰かぁーーー!!」
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side三人称
「あー、酷い目に遭った」
エヴァの関節技を魔法で抜け出して、逃げ出した後、京一はネギと小太郎とフェイトの待つ学生寮へと自販機で買ったヨーグルッチを飲みながら帰ろうとしていた。
その途中、またもや元3-A関係者が京一の前に降り立った。
「京一さん」
「ザジ?どうした?」
ザジ・レイニーディ。彼女もまた明日菜達のクラスメイトであり、麻帆良学園の魔法関係者。何より魔界の姫君らしい。
「例の件です。それと……京一さんに折り入ってお願いがあります」
「……聞かせてくれ」
京一に話の続きを促されるとまずザジはその『例の件』とやらの進捗報告を始める。
「まず例の件ですが、調査は続けていますが、裏金星の何処にも所在は明らかになっていません」
「……そうか」
「ですが、見つかったとしてもそう易々と手を出すべきではないかと。アレのお陰でアスナさんが
「ま、そうだけどよ……。だから見つかってもテラフォーミングが済むまでは下手に手を出したりはしねーよ」
「しかし思い付いても普通実行しますかあんな策。流石に正気を疑いましたよ」
どうにも客観的な視点で二人の話を聞いてもいまいち要領を得ない。盗み聞きされても問題ないように敢えて主語を抜かしているのが大きい。だがそれでもこの二人が話している事柄は特大の地雷案件なのが読み取れる。
「で、頼みってなんだよ?」
何かの報告に関する話は打ち切り、京一は恐らく本題であると思われるザジの頼み事について尋ねる。
「そうですね。……京一さん、どうかお力添えをお願いします」
「あん?」
「魔界に住む七大罪の悪魔、ベルゼバブ3世が人類の滅亡を目論んでいます」
ドラマ版ネギま!の主題歌「Pink Generation」は曲自体はかなり好き。原作のハッピーエンドルートに合ってると思う。ドラマの内容は酷かったらしいと情報しか知らないけど。
最初はいいんちょは素直になれない感じにしようかと思ったけど、オリ主に惚れてる場合だとそのパターンは使い古されてるので、ネギ君同様熱烈なパターンにしました。