魔法使いと魔王の親   作:メンマ46号

6 / 6
6時間目 歓迎会

 -昨年8月某日、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)

 

 ナギ・スプリングフィールド杯決勝戦。

 

 互いのパートナーがそれぞれ一撃で倒され、試合は赤羽京一とジャック・ラカンの一騎討ち。戦闘レベルの低い者には目でその姿と動きを捉える事すら難しい程の超速で闘技場を縦横無尽に駆け回る。一般人レベルで理解できるのは闘技場の各所で響く刃同士のぶつかる金属音だけだ。

 

「「らあっ!!!」」

 

 そして突如、闘技場のど真ん中で動きを止めて互いに大振りの一太刀を浴びせんと全力で剣を振るい、正面からぶつかり合う。

 

 京一の持つ剣とラカンの持つ大剣の鍔迫り合いがギリギリと嫌な音を立てながら鳴り続ける。

 そして互いの刃の交差する点が持ち手寸前の所まで下がると、互いにバックステップを取って距離を離す。その瞬間に京一はその剣で中距離からの斬撃を放つ。

 

魔法の斬撃(セカレ・マギカ)ァ!!」

 

 放たれた斬撃は巨大化しつつも、先程の京一自身にも劣らぬ超速でラカンに命中。爆発音と聞き間違える程の轟音と共に衝撃波による砂煙が舞う。

 砂煙が晴れると左肩から腹にかけての大きな一本傷がその身に刻まれてダラダラと血を流すラカンが姿を現す。最強の余裕故に最初の攻撃はわざと喰らう事が多い漢だが、まさかこの鋼鉄の肉体を持つ漢がよりにもよって剣で深手を負わされるなど誰が思ったか。

 

「ほぉー?俺様にここまでデケェ傷を負わせるとは……驚いたぜ」

 

 普通に人間ならば明らかに重傷だが、それを気にした様子の無いラカンは京一が持つ黒刀を見て、その造り手を見抜く。

 

「その剣……作ったのはアルだな?」

 

 アルビレオ・イマ。ラカンと同じ紅き翼(アラルブラ)のメンバーであり重力魔法の使い手だ。現在はクウネル・サンダースと名乗り、麻帆良学園の図書館島で司書をしている。

 その彼が鍛造した剣こそが京一の武器、重力剣こと黒棒だ。

 

「……やっぱ分かる?」

 

「そりゃ分かるぜ。お前の魔力を込められるような剣は魔法剣やアーティファクトでもとびっきりのモンじゃなきゃお前の魔力に耐え切れずにぶっ壊れちまう。そんな魔力に耐えられる剣を作れるのはあいつくらいなもんだ」

 

 そこらの鍛治師どころか、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の名工でもこれ程の剣を打てる者は一握りだ。その上、最初から魔法を組み込まれて鍛造されている。そして業物としても魔法具としてもこれ程の品を作れるともなればラカンの言う通り、クウネルくらいのものだろう。

 

 だがそれを加味してもラカン相手にこれだけの傷を付けられるのは一重に京一自身の基礎能力と技量の高さと言えるだろう。

 

「それにしてもこの俺様の肉体に剣で深々とでけぇ傷を付けるとはなぁ……だが、今の一撃を受けたおかげで分かったぜ?オメーの戦闘スタイルと技」

 

 黒棒を持つ京一の右手を指差し、ラカンは余裕綽々で考察を披露する。思えば京一の知る原作知識でもネギの雷速瞬動についてベラベラと解説を入れていた。案外人の技の解析とかが好きだったりするのだろうか。勿論戦闘においてそれを見抜くのは重要ではあるが。

 

「磨き上げた剣技とバカ魔力に物を言わせた極大呪文。そして咸卦法。そこから導き出されるオメーの基本戦闘スタイルは至ってシンプル。魔力を込めた斬撃を飛ばす事。神鳴流の斬鉄閃や斬空閃によく似てるよな。勿論接近戦で直接斬るのがメインだろうがな。しかしてその真髄は飛ばす斬撃にその魔力による極大呪文を融合させてぶっ放す事。斬撃が強化される上に広範囲の魔法程、斬撃としてお前好みの規模に凝縮されて威力が跳ね上がる。まぁ俺でもまともに食らえばヤベェ程の威力になるわな。しかもシンプル故にバレたところで大して痛手もないと来た」

 

 これまでの試合で散々使って来た技ではあるが、それを見抜いた者はいなかった。ましてや一撃喰らっただけでここまで正確に考察し、理解した者などこの漢ただ一人。そもそも一撃喰らえば大概の奴は理解する前にそれで倒せてしまうのだから。

 

「魔力を剣に注ぐのにタイムラグもねぇくらいに洗練されてるから弱点らしい弱点もねぇ。近寄っても離れても斬られる。全くやりづれぇったらありゃしねえ」

 

「良く言うぜ。真っ向から耐えるどころかぶち破る気満々じゃねぇか」

 

 剣の間合いの内側に入り込む事も考えたが、肉弾戦も相当の物だ。本人が器用だから殴り合いをしながら魔法を使ったハメ殺し戦法をいくつも用意しているだろう。

 

「オメーに魔法を教えたのはあのロリババアでも、剣を教えたのはあの色黒の不死者だな?」

 

「まぁな。この戦闘スタイルを思い付いた時に詠春さんに教わるのも考えはしたんだが気を主体にしてる神鳴流じゃ相性が悪いのは明らかだったし。咸卦法使わねえとできなくなっちまう。だから十蔵さんに頼んだ」

 

 呑気に会話こそしているが、互いの顔は真剣そのもの。互いの一挙一動を決して見逃そうとはしない。観察と威圧。視線だけで空気が張り裂けるような雰囲気を放ち続ける。

 

「グダグダ話すのはここまでにしようぜ。()()()を助ける為に俺は優勝しなきゃいけねぇんだ。それを分かってて横槍入れて来たアンタにはムカついてんだわ。()()()

 

 京一はそれだけ言って再びラカンに斬りかかる。ラカンもまた剣を手にそれを迎え撃つ。刃同士がぶつかる瞬間、凄まじい衝撃が余波として闘技場全体に広がった。

 

 

 

「……はー、やっぱり京一の強さって滅茶苦茶よねー。ナギと同じくらい強いラカンさん相手に互角に戦えてるもん」

 

 観客席で試合を観戦している明日菜は20年前当時のナギ達紅き翼(アラルブラ)の戦いを思い返し、彼等と遜色ない程の強さを誇る幼馴染の異常性を再認識する。

 

「みんなもそう思うでしょ……せ、刹那さん!?楓ちゃんに古ちゃんも!?」

 

 呑気にそんな事を言って振り向いた明日菜の視線の先ではダラダラと刹那や楓、古菲と言った武術の達人達の全身から汗が吹き出ていた。

 明日菜は記憶を取り戻した事もあって、当時から紅き翼(アラルブラ)の戦闘を近くで見た経験を思い出し、そこまでこの戦いに圧倒されてはいない。しかし他のメンバーはそうではない。京一がこれまでの戦いでここまでの強さを出す前に敵を片付けていた事もあり、このレベルの戦いを目の当たりにするのは初めてだった。

 

「予想以上の凄さです……あの二人の対決は」

 

「か、身体の何処から出て来るのでござろうか……この大量の冷や汗は」

 

 それは武道四天王と呼ばれるまでに武の実力を高め続けてきたからこそ感じ取れるのだろうか。京一とラカンが気を元に発する殺気とも覇気とも言える凄まじい威圧感を直に感じていたのだ。

 半ば呆然としたような表情の古菲はゆっくりとその両手を頭に添えながら口を開く。

 

「……頭が痛いアル。それに変な音がするネ……身体の内側から……」

 

 それは、高まり過ぎた心臓の鼓動だった。

 

「うおらあぁぁぁっ!!!」

 

 振り上げた剣から放たれた圧力は暴風という言葉すら生温い程に強く、切るという言葉など足元にも及ばない程に鋭い。その突風に触れたもの全てをバラバラに切断してしまうだろう。

 それを真正面から受けたラカンは刻まれた切り傷で血だるまになりながらも後方に吹っ飛ばされるのみであり、普通に五体満足だ。

 

(身体強化は気によるもの……だがあの斬撃は間違いなく魔力……反発しねぇのは魔力の全てを剣に注いでいるから、身体に充満する気と一切触れ合わねえのか!!……あれ?つーか思い出したけど前に気で身体強化した上で浮遊術使ってなかったかコイツ!?)

 

 気と魔力をそれぞれ独立して使用している。この器用さは恐らく天性のもの。そして何より京一には咸卦法がある。それを使って同じ事をすれば威力は今の比ではない。

 それでもラカンの余裕は崩れない。それは最強故の自信か。むしろ笑みすら浮かべてしまう。嬉しいのだ。ここ20年ほど碌に現れなかった。自身に比肩する程の強者と出会えた事が。

 

「ガハハッ!!魔法の斬撃(セカレ・マギカ)の威力も上がってんなぁ!!だがこれっぽっちじゃ…「馬鹿野郎」あん?」

 

「今のは魔法の斬撃(セカレ・マギカ)じゃねぇ。剣圧だ」

 

 いつの間にか正面から背後へと回り込んでいた京一は冷めた声で聞く者が聞けばドン底に突き落とされる事実を告げる。ただ剣を振ってその圧力で生まれた鎌鼬をぶつけただけ。魔力は先程の分がちょっと残っていて一緒に放出されただけ。

 けど次は違う。込められるだけの魔力をありったけ込めて、斬撃の鋭さを、威力を、規模を。この筋肉ダルマをぶちのめせるだけの力を求めて上昇させる。

 

魔法の(セカレ・)……斬撃(マギカ)ァァ!!!」

 

 ラカンにゼロ距離で光る斬撃が叩き込まれると同時に闘技場の地面は大きく砕け、観客席にまで巨大な亀裂が広がった。

 

「おいおい、会場ぶっ壊れんじゃねーの?」

 

「大丈夫やて千雨ちゃん。きょういちくんはちゃんと考えてくれとるよ。でもこれで勝てたんちゃう?」

 

 ラカンに向けた一撃の破壊力と規模に戦慄する千雨と相も変わらずのほほんとしている木乃香。ラカンの強さは一応知ってはいるが、それ以上に京一の実力を知っているからこそ、千雨は会場が破壊される事を心配し、木乃香は勝利した可能性を見出す。

 一方で彼女らと共に試合を観るアーニャはあまりの規模の戦いを前に愕然としていた。そしてそのレベルの高さからふと浮かんだ疑問を隣の幼馴染に向ける。

 

「ねぇネギ……あの人、アンタのお父さんより強いんじゃないの?」

 

「……!!」

 

 アーニャの言葉にネギは何も答えられない。否、そもそも聞こえていない。今はこの眼前の最高クラスの戦いを見る事のみに全神経を注ぎ込んでいた。いずれは自分も父と同じ高みに至る為に、その領域にいる者達を決して見逃さない為に。

 そして一応引率を兼ねているはずの甚兵衛は酒を煽りながら呑気に観戦している。

 

「おーおー。若いってのは良いねー。後先考えずにジャンジャン暴れられて」

 

(……完成をこの目で見届けてから久しく見る技だが、やはり良い技だ。これは是非とも、いずれ斬り合ってみたいものだ)

 

 十蔵は弟子の成長と彼が磨き上げた技に内心賞賛を贈る。

 同時にこの大会に出場しなかった事を悔やむ。ジャック・ラカンが出場すると分かっていれば斬り合う為に出たものを。

 

 

 接近して懐に潜り込んで追撃で斬ろうとする京一の顔にラカンはカウンターのパンチを叩き込んで弾き飛ばす。下手をしなくても常人どころかそこらの魔法軍人では即死する程の殴打だったが、京一は頭から血こそ流しているが、意識が朦朧とする事もなく、ハッキリと安定した視界でラカンの姿を捉えている。

 

 そして後方に吹き飛びながらも剣を振るって斬撃を飛ばす。援護射撃なのか、周囲から100本近くの魔法の射手(サギタ・マギカ)(闇)がレーザーのようにラカンに向けて放たれる。一本一本が大魔法級の威力を有している上に何かしらの状態異常を引き起こす呪いが付加されている。

 ラカンはその事を見抜きつつ、それらを細かいながらも凄まじい速さのフットワークで躱す。流石にこれ以上攻撃を喰らうつもりはないようだ。

 

(マジでナギクラスのデタラメな天才じゃねえか!!それをエヴァとあの剣聖が育て上げた……もうあの頃のナギより強えぞコイツ!!)

 

 アーティファクト『千の顔を持つ英雄』で生み出した幾つもの巨大な刃が京一に一斉に襲い掛かる。その全ての斬撃を京一は黒棒一本を振り回して防ぎ、弾き、捩じ伏せる。そして攻撃の合間に()()()()()僅かな隙を狙い、突く。その瞬間に飛ばした斬撃がラカンの横腹を深く斬り付けて抉る。

 

「ゴフッ!?」

 

 流石に傷を負い過ぎた上に今のはクリーンヒットだった。ラカンは血反吐を吐いて膝が揺れる。その隙を京一は決して見逃さない。始動キーを唱えると続いて呪文詠唱を初める。

 ラカンは構わずアーティファクトで生まれ出した大剣を振るい、超速の剣閃を乱れ打ちし、京一もまた黒棒一本でそれを捌き続ける。

 

「オラァ!!」

 

 突き出した右の剛腕による剛拳が空気の圧力を押し出して衝撃波を京一の鳩尾に連続して叩き込む。先程の剣圧に対して“拳圧”という意趣返しだろうか。その一発一発が常人どころか歴戦の猛者でもとても耐えられない威力だ。当然、京一は喰らう度に吐血し続ける。

 

 それでも京一は剣を振るう事だけはやめない。無数の刃を弾き続ける。ラカンは吐血してできた隙を見てアーティファクトで新たに巨大な戦斧を生み出し、京一をミンチにしかねない質量と重量、そしてパワーとスピードを合算した一振りを叩き込む。

 

 それに遅れを取る事なく京一はダイヤルを回して重量を増加させた黒棒を振り回し、戦斧を大きく弾いた。

 

 刃同士のぶつかり合う金属音が響き、衝撃による火花が散る。

 

「契約により我に従え高殿の王、来れ巨神を滅ぼす燃ゆる立つ雷霆、百重千重と重なりて、走れよ稲妻」

 

 ラカンとの剣戟の最中、雷系最上位呪文の詠唱を終え、その魔法を刀身に宿らせた京一はそこから漏れ出し、迸る稲妻に最大限の切れ味を持たせて前に大きく一歩を踏み出す。

 

「ナギ以来だぜ……このワクワクはよぉ!!」

 

 その瞬間、ラカンは剣を捨てて同様に一瞬で京一の眼前まで前進する。

 

「こんな規格外のガキが出て来るから世界は面白え!!」

 

 ジャック・ラカンは最強の傭兵剣士と呼ばれるが、その実素手の方が強い。そのラカンが剣を捨てた。つまりは京一を本気で戦うに足る相手と認めたという事だ。

 

千雷の斬撃(キーリプル・アストラペー)!!」

 

「ラカンインパクト!!!」

 

 千の雷を融合させた斬撃をラカン目掛けて振り抜き、ラカンもまたそれを迎え撃つ為に全力全開の気を込めた掌底を繰り出した。

 

****

 

 -現在、埼玉県麻帆良市

 

 放課後、麻帆良学園の生協にて明日菜はクラスメイトに頼まれたおつかいをこなしていた。

 明日菜はクラス委員長であるあやかから渡されたメモ用紙を見て必要な物を買いつつ、ついでに切らしそうになっていた日用品を探す。

 

「その紙コップと紙皿を60…いえ、70下さい。それと……」

 

****

 

 -学園長室

 

「このクソたわけがぁぁぁっ!!」

 

「おぼろぉぉっ!!?」

 

 麻帆良学園の学園長室でヒルダはアランドロンを殴り飛ばし、数メートル吹っ飛ばしてから追い付いて、馬乗りになりながら彼の胸元を掴んで恫喝する。

 

「貴様まで捕まって魔力を封じられてどうする!?私やドブ男の様子を見るくらいなら何故一度魔界に帰って坊っちゃまの奪還だけでも要請しない!?」

 

「ひいいぃ!?ヒ、ヒルダ様!おやめくだ…ゴハァッ!?ご、ごか…グホッ!?」

 

 今にも殺しにかかりそうなヒルダとすっかり怯え上がったアランドロン。ヒルダの言っている事があまりにも正論であるが故にアランドロンは何一つ反論できない。やめてくれと頼むものの、言ってる途中で殴られる。

 

「ホントにノープランで来たのかこのおっさん……」

 

「ざまーみろ」

 

 流石に古市も呆れてしまう。いや、魔界に援軍を呼ばれるなど冗談じゃないので助かったとすら思うが。男鹿はそもそも魔王の親などという厄災を自分に押し付けたアランドロンがボコられている所を見て多少溜飲が下がったのか、ケラケラ笑ってる。そーゆーとこがベル坊に気に入られる理由なのに。

 

「いや取り敢えず学園長室……というか校内で暴力はやめて欲しいんじゃが」

 

 関東魔法協会の理事だけでなく一応教育者でもある近右衛門がアランドロンを殴り続けるヒルダにストップをかける。

 

 アランドロンを今すぐにでも斬り殺したいところだが、ヒルダは魔力を封じられた上、愛用のサーベルを仕込んだ日傘も取り上げられている為に諦める。

 

「それで京一よ、こやつが件の次元転送悪魔じゃな?」

 

「あ?話終わった?」

 

 京一は京一で学園長室のソファーで仰向けに寝転んでスマホゲームをやってる始末である。一生徒としても、麻帆良に所属する魔法使いとしても完全にアウトな態度と行動である。

 

「そーそー。つか男鹿が言ってんだから間違いねーだろ。ま、後で尋問でも拷問でもすりゃ良いさ」

 

「いや流石に拷問はせんから」

 

「んじゃ男鹿も古市もヒルダも行くぞ。この後色々あっから」

 

 そう言って勝手に部屋を出た京一に従って男鹿と古市はその後を追い、ヒルダもまた渋々それに着いていく形で学園長室を出る。

 

「え?ちょ……まだ話終わってないんじゃが。本題これからなんじゃけど」

 

 現在、学園長室はぬらりひょんみたいな頭したジジイとボッコボコに顔が腫れ上がった大きなおっさんが二人だけ残されているという居心地の悪い空間となっていた。

 

「……いや、どーすれば良いんじゃこれ」

 

****

 

「つーか、俺ら結局何の為に学園長室行ったんだ……?」

 

 学園長室から出た四人が廊下を歩く中、古市が当然の疑問を出す。昼休みにアランドロンを捕まえた件で放課後に呼び出されたのに、ヒルダがアランドロンにキレてボコって近右衛門の要件を聞かずにそのまま立ち去ったのだから。

 

「良いんだよ。むずかしー事は大人に任せときゃ。それよりやる事あるっつったろ?」

 

「お。そーいやそんな事も言ってたな」

 

「ダ」

 

 そんな話をしている内に四人は自分達の教室のある1年生校舎に戻って来た。しかし京一は自分のクラスではなく、ヒルダの所属するA組の教室の引き戸に手をかけ、開き、有無を言わせずに三人を教室に押し込んだ。

 

 男鹿達がA組の教室に入った瞬間、その中にいたA組とB組の生徒、総勢60名以上が一斉にクラッカーを鳴らし、口を揃えて叫んだ。

 

『男鹿君、古市君、ヒルダさん!ようこそぉ!!麻帆良学園へ!!』

 

 見ればA組の担任のネギとB組の担任のフェイトも一緒になってクラッカーを持っている。

 

「「は?」」

 

 予想外の事態に男鹿とヒルダはぽかーんとした顔をしている。二人の頭に理解が追いつく前にA組B組の生徒達は怒涛の勢いで三人に話しかける。

 

「いやー、転入がいきなりで間に合うか心配だったけどやってみりゃなんとかなるもんよね。ネギ君の時もそうだったし」

 

「石矢魔に住んでたって本当!?地元の人みんなヤンキー!?」

 

「豪徳寺先輩みたいなリーゼントもいた!?」

 

 突然の歓迎からの質問ラッシュに男鹿は戸惑う。何故なら男鹿はその目付きと喧嘩っ早さ、そしてその強さと悪名から基本的に怯えられた事しかないからだ。こんな風に好意的に接して来る人間など、男鹿からしてみれば謎生物と言っても良い。

 圧倒されている男鹿達を眺めながらポテチを摘みつつ、京一はあやかに話しかける。

 

「歓迎会の準備時間が心配だったけど、上手くいったみてーだな」

 

「ええ。人数はB組の方達もいましたので、買い出しや教室内の飾り付けも滞りなく。特にアスナさんのような足の速さと体力だけはあるおサルさんには遠慮なく使いっ走りをして頂きましたわ」

 

「誰がゴリラ女ですって!?バカいいんちょ!!」

 

「そこまで言ってねーだろ…」

 

 売り言葉に買い言葉で早速取っ組み合いを始める明日菜とあやか。A組の女子達はそれを見てどっちが勝つかに食券を賭け始める。喧嘩する二人のスカートの中を見れないかと鼻の下を伸ばした古市を始めとするB組の男子達は即座に京一の目潰しに見舞われた。

 

「うぎゃあああああっ!!」

 

 転げ回る古市達をよそに、あやかとの喧嘩を切り上げた明日菜はむしろこうして都合良く男鹿達をA組を連れて来るなど良くできたものだと思い、京一に尋ねる。

 

「てゆーか、そっちこそ良くこっちの準備が終わるまで時間稼げたわよね。三人共帰ろうとしなかったの?」

 

「ああ。ヒルダがおっさんを20分はボコってたからな。それで楽々時間は取れたぞ」

 

「それはそれでどうなのよ……」

 

 見れば常にハイテンションなA組の女子達は自分達のクラスに転入して来たヒルダを囲んで質問攻めしている。

 

「ねぇねぇ魔界ってどんなトコ!?私ら魔法世界(ムンドゥス・マギクス)には行った事あるんだけどさ、魔界もちょっと興味あるのよ!」

 

「ネギ君から聞いたんだけどさ!侍女悪魔って分類なんでしょ!?侍女悪魔ってそういう種族!?仕事や資格みたいな感じ!?」

 

「え、いや……」

 

 ヒルダはヒルダで人間を滅ぼしに来た悪魔という自分の正体を知った上でこのように接してくる彼女達に心底戸惑っている。

 

「ホラ、男鹿!お前ら用にクラスメイトの名簿作ってやったから!早く俺らの名前覚えろよ?」

 

 押し渡された紙束を受け取りつつ、男鹿は思わずある意味では失礼と言えてしまう質問をしてしまう。

 

「……なんでこんな事」

 

「決まってんジャン!?この学校クラス替えねーし、俺達三年間同じクラスなんだぜ?どーせなら楽しくやった方が得っしょ!!」

 

 そう言ったのは京一達と同じB組の生徒だ。しかし彼は魔法生徒ではなく、昨年の事件で初めて魔法の存在を知った一般生徒だ。

 麻帆良学園ではそのような細かい事を気にせずに、大雑把に流す生徒が多い。

 

 だからこそ、柄の悪い不良だったり、魔王の赤ん坊を連れているなどという特大の厄ネタを抱え込んでいる男鹿辰巳達を容易く受け入れていた。

 

「ダブ?」

 

「あははは、この子裸だー!」

 

「笑うとこじゃねーだろ……」

 

 いつの間にか男鹿の背中から勝手に剥がされ、女子に持ち上げられているベル坊。しかし男鹿はそれを見ても15mの距離制限を気にする余裕はない。

 

 それ程までに普通に受け入れて貰えた事の衝撃が大きかった。

 

****

 

 二、三時間続いた歓迎会を終えて後片付けを済ませた後、京一達は麻帆良学園の寮へと帰路に着く。

 古市は普通に先の歓迎会を楽しんでいたようで、クラスメイトとも普通に打ち解けたらしい。そしてなんだかホクホク顔をしている。

 

「ご機嫌だな古市」

 

「当然だろ!早速可愛い子と連絡先交換したんだからな!柿崎さんに、釘宮さんに、椎名さん!」

 

「あー美砂と円と桜子ね。まぁあいつらはするか」

 

 女好きの古市はA組のチア部三人娘とも仲良くなったようだ。いきなりがっつき過ぎな気もするが、その辺を笑って受け入れる所がA組の度量の深さだろう。まぁ恋愛対象として古市を見るかは完全に別問題だが。

 

「いやー?もしかして割とすぐに俺彼女できちゃうかもー?」

 

(三人共去年の体育祭で仮契約(パクティオー)求めてキスしてきた事は黙っとくか)

 

 既に三人共京一の手中で古市に希望は無かった。尚、結局仮契約(パクティオー)は不成立だったとか。

 それはさておき京一は男鹿達にこの歓迎会を開いてくれた同級生達の厚意を無碍にしないように釘を刺しておく。

 

「みんな良い奴らだぜ。仲良くしとけよ〜。お前らが石矢魔のヤンキーだとか、ベル坊が魔王って知った上で普通に接してくれんだ。あんな気の良い奴ら、中々いねぇぞ」

 

「……」

 

「男鹿?」

 

 男鹿は基本的に喧嘩を売られたり、怯えられたりするのが常だ。あんな好意的に接して貰う経験などほぼほぼ皆無だった。例外は隣にいる古市くらいか。

 

 初めてだった。負の側面を知られた上で笑って受け入れて貰えたのは。

 

 男鹿は自分でも気付かない内に笑みを浮かべて口を開く。

 

「……そうだな。ま、悪かねーな。これで勉強がなけりゃ最高なんだがよ」

 

「いや学生が勉強から逃げんな」

 

****

 

 -石矢魔高校

 

「姫川さん、例の写真です。男鹿の転校前、こいつが男鹿に接触しているという情報は本当でした」

 

「ん。ご苦労」

 

 名も無き一人の雑魚。そう呼ばれそうな不良が一枚の写真を取り出し、献上する。それを受け取ったのはアロハシャツとサングラス、そしてフランスパンのような銀髪のクソ長いリーゼントが特徴の男だった。

 

「……驚いたな。転入先があの学園とはいえ、まさかマジで男鹿の転校にこいつが関わっていたとはな」

 

 男の名は姫川竜也。姫川財閥の御曹司であり、この石矢魔高校の四大勢力の一角を担う男だ。彼はその写真……何故か赤ん坊が頭に引っ付いた男鹿辰巳を肩に軽々と抱えて歩く()()使()()の姿を見て驚く。

 

「“偉大なる魔法使い(マギステル・マギ)”赤羽京一」




 ・主人公の戦闘スタイル

 文字通りの「魔法剣士」。
 ラカンが見抜いた通り、『魔力を込めた斬撃を飛ばす』。シンプルに言えばこれだけ。勿論普通の剣技も魔法も使う。どちらも相当の腕前で紅き翼のメンバーにだって比肩するレベル。魔法はエヴァ、剣は十蔵に教わった。
 全力を出す時は飛ばす斬撃に込める魔力を使って呪文を発動して、斬撃と融合させる。威力はラカンの語った通りかなりヤバい。しかも咸卦法もマスターしてるからその状態で使えば……

 ヒルダと戦った時は完全に舐めプ。ナギ=ヨルダ戦?じゃ、弱体化してたし、書いたのはまだ探り合いの状況だったから……その後使ったよ。うん。

 ・主人公のスペック

 魔力量は木乃香と張る。魔法・気の戦闘や修得における「反則でデタラメな天才」。要するにナギと同じタイプ。実は一般家庭出身で魔法使いや神鳴流剣士なんかの血統ですらない。咸卦法も小学校低学年でマスター済み。後は徹底的に基礎を磨いて実戦あるのみ!

 ・『魔法の斬撃(セカレ・マギカ)

 「魔力を込めた斬撃を飛ばす」技の名前。一応主人公のオリジナルだが『魔法の射手(サギタ・マギカ)』に由来して名付けた。呪文を融合させる時は詠唱の事もあるので呪文の名前を優先して叫ぶ。例外は『魔法の射手(サギタ・マギカ)』を融合させる時くらい。本人が好んで融合させるのは『闇の吹雪』。主人公の加減で飛ばす斬撃を範囲攻撃として巨大化させたり威力重視で凝縮したりする事も可能。この技そのものには詠唱は不要なのも利点。他の呪文を融合できるのもその為。
 もうなんとなく分かるだろう?これほぼ月牙天衝。原理はちょいと違うけどね。魔法と融合させる云々も王虚の閃光と融合させたのと似たようなもん。本人も確立させ、完成させてから気付いた。

 ・なんで黒棒を?

 一応主人公の武器なのでそれなりに箔の付く武器という事でUQ HOLDER!の主人公である近衛刀太の武器を選んだというのと、実際に原作で黒棒は『火星の白』とか『神刀姫名杜』の力といった規格外の力を注ぎ込まれて使われるシーンがあった為、強大な魔力や大呪文を込めても耐える事ができると踏みました。

 ・アイツを助ける為に優勝する。

 実は具体的な事は決めてない。設定としては主人公が色々根回しした事で仲間がはぐれる事もなく、濡れ衣で賞金首にもなってない。にも関わらず、奴隷にされた奴が出てる。しかも一人だけだからある意味原作より悲惨。誰なのかは決めてないけど、今回観客席にはいなかった人だろうね。その上、金で解決できる問題じゃなくなったらしい。金に関しては主人公が備えていない訳がないからね。優勝すれば解決するらしいけど詳しい事はまた過去編かつ大会関連の話書く時に考える!

 ・歓迎会

 実際あんなカオスな生徒がわんさかいる麻帆良なら、男鹿みたいなのも普通に受け入れそうではある。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。