レスラーニキvsゼブラマンの決着は年内投稿を目標にします。
新潟・魚沼シェルターで信越巡業の最終戦を終えた関西ガイアプロレス。リング上での出来事としては絶対的エースのレスラーニキがまさかの敗北という大荒れの結末だったが、エンターテイメント公演という観点では日程を無事完走でき、客入りも含めてまずまずの成功を収めたと言っていいだろう。関西ガイアプロレス御一行は魚沼市小出地区の薬師温泉に宿を取り、そこでつかの間の休憩を取って疲れを癒している。
「あぁっ~~、ふぅ」
レスラーニキは温泉の湯船で寛ぎながら、次回大阪城ホール公演に思いを馳せる。
関西ガイアプロレスの看板レスラーであるレスラーニキは、リング外のこと──つまりは如何にして観客を呼び込むかについても責任ある立場だ。いつものメンツでマンネリ化しないようニューフェイスのゼブラマンを投入し、因縁を積み上げて
もちろんレスラーニキとしては、リング上の一挙一動で観衆を魅せることに自信がある。参戦当初は馬頭観音の加護を持て余していた感のある馬ニキも、巡業中に力の使いこなしに慣れてきた。次の覆面剥ぎ試合、馬ニキと観衆をどちらもまとめてレスリングの世界に引き込んで、公演終了後に満足して家に帰ってもらう。それができると確信している。
ただ、不安があるとすればDDS-net有料配信視聴者についてだ。そもそも大阪城ホール会場にまで足を運んでくれるのは既存のプロレスファンが多く、プロレスを見る側の作法についてもそれなりに熟知している。それに対して配信映像で見るというと、新規層掘り起し策の一環であるため普段はプロレスと縁遠い人たちの割合が多くなる。彼らが現場に来てくれるなら、試合内容と現場の熱気で魅せて固定ファン定着に繋げてみせる。だが映像越しでは『ほんの一時の面白さ』ですら伝達できるかどうか。
レスラーニキはアイデアを出そうと頭をひねるのだが、メインの覆面剥ぎ試合とはまったく別のカラーの試合を前座に並べてバラエティ豊かにするという、ありきたりのネタしか思い浮かばなかった。
「ゼブラマンの人脈から誰か紹介してもらうとか?」
別にリング上でプロレスの試合をしてもらう必要はない。かつて華門神社の奉納試合のときはローカルアイドルを呼んで歌のコーナーをやったことがあるが、あんな感じで
うちの団体は名前に関西をつくように近畿圏は知名度があるから、九州や東日本など遠いところの有名人、できればDDS-net有料放送視聴の切っ掛けになってくれるような全国的知名度のある人。
「うーん…… 北海道のカス子ネキや宮城の幼女ネキなどは、客寄せパンダになってくださいとお願いしてもあちらにメリットないだろうし…… 今回の信越巡業で田舎ニキという手札は使ったし……」
レスラーニキが湯船から上半身を出して少し頭を冷やそうとしたところ、湯気の向こうから何名かの男が彼に近づいてきた。
「どうも、お疲れ様です」
ゼブラマンの覆面を脱いだ馬ニキ、魚沼興行で解説を務めた田舎ニキ*1、以前に新潟でガイアプロレスを開催したときにレフリーを務めたカズフサニキ*2の黒札3人が、レスラーニキの隣りに陣取る。男四人裸の付き合いという『うほっいい男』状態だが、この場にはクソミソニキもナマモノネキもいないのでセーフ。
「今度の大阪城ホール公演、私にアイデアがあるんですが聞いてもらえます?」
レスラーニキが相談するいい機会だと思ったところで、馬ニキの方から先に話を切り出した。とりあえず話を聞こうという姿勢を見せたレスラーニキに目礼で謝意を示した馬ニキは、カズフサニキに向き直った。
「この前、【降天使】サリエルを召喚して使役したと聞きましたが、とある天使を使いたいのです」
「サリエルは私ではなく命子ネキだけどね。まあいい、その特定の天使とは?」
「大天使カマエル*3です」
カマエルは14万4千もの能天使の指揮官とも1万2千もの「破壊の天使」を率いているともされるバリバリの武闘派で、カバラではセラフィム(熾天使)の位となっているが、七大天使に数えられることもある。
「旧約聖書でヤコブと格闘した天使ですか、確か英語版では"Jacob Wrestling with the Angel"とそのものズバリの翻訳でしたね」
カズフサニキは思案する。カマエルはサリエルと同一視されることもある存在で、サリエルを召喚したという縁がある。そこにレスリングという要素を追加すれば、どうだろうか。
「神の正義の執行者という強大な存在でなく、レスリングに長けた天使という劣化分霊でなら、召喚できるでしょう」
「アンチメシアンの急先鋒、セフィロスニキ*4あたりと試合させるのかい? 人は呼べるだろうけど、健全なプロレス試合でなく殺し合い残虐ショーになるのでは?」
カズフサニキの回答に、田舎ニキが懸念する。
「そこは、プロレスは筋書ありのショーということを承知してもらうしかありませんが、ガチの殺し合いにならないよう試合形式の方で縛りを入れます。ついでに多数の黒札ゲストを呼んでプロレスごっこに興じてもらおうかと」
馬ニキの悪戯っ子めいた言い方に、レスラーニキは彼の言いたいことを察した。
「ロイヤルランブルをやろうってか?!」
馬ニキがこくりと頷き、レスラーニキはその提案の実現可否について思案を巡らせる。
「即却下されると思いきや、熟慮とは。案外この企画も悪くないのですね」
「幼女ネキが主催したBCフェスみたいな、お祭り騒ぎはナンボあってもいいですからね」
カズフサニキがにやりと人を食ったような意地悪い笑みを浮かべると、田舎ニキもそれに同調する。
レスラーニキは複数の黒札が団結して悪だくみを始めた時点で、ある種の諦めを受け入れてロイヤルランブルを実現する方向に頭を切り替えた。
*
しばらくのち、関西ガイアプロレスの大阪城ホール公演が正式にアナウンスされ、同時に宣伝ポスターも公開された。
「りあむさ~ん、ポスター見ました? 私たち映ってるんご!」
「#関西ガイアプロレス #大阪城ホール公演」
「びやぁぁぁっ! なにコレ、ぼく聞いてないよコレ!」
「りあむさん、私たち三人一緒なら怖いものないよね!」
「#りあむ が #腰巾着 の汚名を返上する機会」
「あっあっあっ」
黒札美少女二人に挟まれていい感じに脳破壊を起こしているクソ雑魚霊能少女がいたり。
「ゼブラマンの配下にゼブラウーマンとゼブラマンレディーだと?! 推定ゼブラマンの中の人、黒札用高級式神は一体しか持っていなかったはず! まさか、中の人は我々の想定とは違うというのか?!」
「ゼブラマン&ゼブラマンレディーは、永井豪のデビルマン&デビルマンレディーのパロディなのは明白。ならばそこに仕組まれたギミックとは? わざわざ覆面で顔を隠す意味、永井豪要素、ずばり『顔を隠して尻隠さず』けっこう仮面だな!」
「このゼブラマンレディーのシルエット、ガイア連合むちむち部のあの娘に似ている…… 似ていない?」
「えっ、ガイア連合の気になるあの娘がけっこう仮面でおっぴろげキックだと?!」
「そこまでサービスしないだろ、常識的に考えて。でもミナミィネキならやるかも」
「それってつまり、ゼブラマンレディーの正体はミナミィネキってこと?!」
ポスターに隠された遊び要素を読み取ろうとして変に深読したあげく間違った結論を出す男たちがいたり。
「出演する黒札がこんなに多いなんて聞いてねぇぞ! 控室の段取りを一から考え直しだ! 誰だこんなメンツを手配した奴ぅ!」
公演を取り仕切るトヨトミニキが絶叫していたり。